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第04章 -王都アスペラルダ編Ⅱ-
†第4章† -07話-[今日が最後のアスペラルダ]
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「わかった、では明日出発するのだな・・・」
「はい。朝から出れば、夕方にはアクアポッツォに着けますし、
予定よりも長く居着いてしまいましたので」
「普通であればもう少し居てもいいと言うところではあるが、
宗八(そうはち)が旅をして得た情報は我々の知らなかった物ばかりだ。
お主に任せっきりで悪いとは思うがよろしく頼む」
「アルシェも支えてくれていますし、
各地でも協力してくれる人が居ますので大丈夫です。
魔王が討たれるまでの間に集められる情報は集めたいと思いますから」
「すまんな、宗八。
偶々こちらへ来てしまったお主に任せっきりになってしまって・・・」
「任せっきりというわけではないですよ。
俺が出来るのは情報の収集と、
寄った町で見つけた問題に協力することだけです。
実際、発生している問題が病気だったりしたならば、
寄る事もしないでしょうし」
こちらのメンバーにはアスペラルダ王国の一人っ娘がいる。
俺が付いていながら彼女にもしもの事があれば、
アスペラルダの民に申し訳が立たない。
最悪、メリーは見捨てて俺と精霊達の命を賭してでも守りきる覚悟はしている。
その時、アルシェ以外が生き残れないとしてもだ。
「精霊使いに関してはお任せします。
接触に関しては近いところにいれば自分たちが向かいますので」
「うむ。オベリスクに関しても対応出来そうなメンバーの選出を進める。
極力こちらで対応するゆえ、異変の発見を頼む」
「ありがとうございます。
国を超えれば連絡も難しくなりますから、
アインスさんに伝言を頼む予定ですが、
王様にもこれを渡しておきましょうか?」
「いや、それはアインスにも確認されたのだがな、
私は政務があって好きな時に話せない。
アインスからの言伝のほうがまだしっかりとした情報が受け取れるであろう。
それに、それは仲間の証でもあろう?
残念ながら仲間の役はアルシェに任せるよ」
オベリスクの研究情報は魔法ギルドから、
正確にいえばカティナのチームから送られてくる予定で、
窓口で確認をする者がいれば現在確認がされている場所を案内される。
しかし、誰にでも教えると情報が錯綜してしまうので、
何かしらの対策はされるとの事。
アスペラルダ王国軍の中でも将軍と副将、
副将補佐までしか開示されておらず、
選出メンバーも兵士からだけでなく冒険者にも範囲を広げるらしい。
「それで、今から向かう風の国・・フォレストトーレについてなんですが、
あちらの王には連絡無しに向かっても大丈夫でしょうか?」
「以前にフィリップが渡したマントを着けていけば良い。
あれを着けるのはアスペラルダ王族だけだからな」
「・・・えっと。俺は養子に入ってませんが?」
「まぁ、いいじゃないか。
養子でも婿養子でも変わらないだろ(笑)」
その2つも結構変わるんですけどねぇ!!
まぁ、もしも!万が一!
魔王が討伐されても帰還魔法が発動しなかった場合は、
アスペラルダに帰化してもいいかとは思う。
俺にとってアルシェはまだまだ妹分だし、
アルシェにしても頼りになる従兄弟の兄ちゃんって感じだろうしな。
「そういえば、パーティーはどうするんだね?
メリーが戦闘に参加するようになったとしても、
メンバーとしては3人だろう?
もう2人君のパーティに入れるはずだが?」
「そこはまだ検討中ですね。
実際その地に協力者がいれば事足りていますし、
アクアポッツォには現在修行中の娘がいます。
ネシンフラ島で幼いアルシェの相手をしていた村長の孫です」
「・・・あぁ、私はその時町長と会談をしていたが、
確かカエル妖精の村に王妃が視察に行った時、
アルシェも付いて行ったことがあった。
その時の相手をしてくれた娘かな?」
「その娘で合っています」
「しかし、カエル妖精は島から出ると・・・」
「その対策と戦闘訓練をあちらの守護者が担当してくださっています。
今頃猛特訓の成果が出ているんじゃないかと・・」
アルシェ命!その一心で訓練をしていると思う。
俺としては戦闘方法は一緒に考えていきたいので、
とりあえずカエル化の対策をしておいてくれれば良いかな?
魔法の才能はアルシェとの訓練で確認したし、
あとは武器による戦闘の才がどれに分類されるか・・・。
俺が片手剣、アルシェが槍、メリーが片手剣カテゴリの短剣、
他の知り合いだとセリア先生の弓くらいか?
一応、アルシェのメイン装備は棍棒カテゴリの杖で、
メリーも投擲を扱える。
出来れば役割を分けたいから、
あとは両手剣、棍棒カテゴリのハンマー、斧、手甲が候補になるけど。
どう考えても男のカテゴリしか残ってないな・・・。
「まぁ平和になったら、アルシェの側仕えにでも使ってください」
「本人と面接をしてみないと約束は出来ないが、覚えておこう」
「じゃあ、受かるように鍛えておきますよ」
「楽しみにしておくよ。
そうだ、アインスが1度顔を出してほしいと言っていたよ」
「わかりました、このあとにでも顔を出します。
王もアルシェとはしばらく会えませんからね。
父親としてもしっかりと甘えておいてください」
「わかりまし・・た(笑)」
王と護衛隊隊長、アルシェの父親と俺、
といった感じで真面目な話の合間にも、
気安い話も出来る王様との対話もこれが最後だ。
明日になれば俺達は朝から出発する予定で動く。
アインスさんに会うタイミングは今日しかないので、
さっさと会いに行こう。
* * * * *
「こんにちわー。
アインスさん居ますか-?」
『いますか~?』
俺が図書室の前を通った時に、
丁度アクアも興味があった本を読み終え、
出てきた所に鉢合わせた。
町に降りてギルドに向かうことを伝えると勝手に付いてきたわけだ。
「あっ、水無月様ですね。
あちらから入って2階へ上がられてください。
そのままギルドマスターのお部屋へ行かれて大丈夫です」
「わかりました」
ギルドカウンターの受付嬢からの案内で、
カウンター向こうへ入る為の跳ね蓋を通り2階へ上がる。
上から見ると結構な人数のギルド職員がいることが伺えた。
廊下の上部には部屋ごとに名前が記載されていて、
学校の教室を思い出す。
『あ、あったよ~』
「こりゃ立派なドアしてんなぁ~」
上ばかり見ていた俺とアクアだが、
先に見つけたのはアクア。
しっかりとマスター部屋と記載され、
ドアの装飾も周りのドアと全く違う。
コンコンッ
「はぁーい!どうされましたー?」
「水無月です」
『あくあで~す』
「あぁ、鍵は開いているのでどうぞ入ってください」
ノックした直後の声はこちらに意識が向いていない様子であったが、
名乗りを聞くとしっかりと意識した声質へと変わる。
お言葉に甘えてドアを開けると、
書類仕事に精を出すアインスさんが、
これまた立派なデスクで仕事中だった。
「切りの良いところまで終わらせたいので少々お待ちくださいね」
「わかりました」
少しした所で再びドアがノックされ、
職員の方がお茶とお菓子を持ってきてくれた。
『わぁ~♪』
「こら、アインスさんを待たんか」
「あぁ、気にしないでください。
全部食べて頂いてもかまいませんよ」
「すみません、ありがとうございます」
『ありがとーございます!』
感謝を伝えた直後にすぐにこっちを振り向いてくる。
アクアの目の中にはお菓子食べたいとくっきり書かれていた。
ちょっと見つめ合った後にコクリと頷くと、
お菓子に飛びかかってさっそく1つをかじり始める。
お皿に乗ったお菓子はクッキーで、
全部で6枚乗っかっていた。
「お待たせしました!
お呼び立てしたのに申し訳ありませんでした!」
「いえ、気にしないでください。
明日には王都を出ますし、直接話した方がいいんですよね?」
「そうなります。
ではさっそくお話をさせていただきますが、
水無月さんはレベルおいくつになられましたか?」
「えっと・・・いまは25ですね。
ダンジョンに入ってないのに結構上がってるなぁ・・・」
「それだけ濃厚な冒険だったという事ですね。
実はレベルが30になった冒険者をリーダーを据えて、
ひとつの集団の登録が出来ます。
これは[クラン]と呼ばれるシステムになりまして、
王族の方がレイドの認定をしなくても発動する事が出来ます」
「アルシェがいれば出来るわけじゃないんですか?」
「水無月様方は国を超えられますよね?
そうなるとアスペラルダの姫では許可を出せないんです。
お次の国ではフォレストトーレの王族の許可が必要となり、
その場にいない状態でキュクロプスのような大敵が出現した場合、
被害が広がってしまいます」
魔法ギルドが組み上げた謎のシステム。
レイドとは5パーティ最大人数が25人で行う戦闘の事で、
その際には戦闘範囲を一定に定めて、
被害が広がらないように不可侵エリアが出来上がる。
フォレストトーレ王族然り、他の国の王族然り、
じゃあ連れて行けと話が進むわけもないので、
クランがあれば俺達に対処しきれない敵に遭遇しても、
応援がくるまでの足止めにはなるだろう。
「話は理解しました。
それはどうすればいいんでしょうか?」
「はい。メンバーは人間だけでなくすべての生き物が対象となり、
クランによるレイド発動であれば30人までが一度に戦闘が可能です。
例外として契約制例は数に含まれませんので、
アクアーリィ様とクーデルカ様を抜いて29人まで登録出来ます。
一同が介して戦闘になれば人数に合わせてバフが掛かる機能もあります」
「何か必要なアイテムとかありますか?」
「ギルドカードが必要となります。
言ってしまえば、精霊でもギルドカードを発行して頂ければ、
登録自体は可能です」
「・・・裏があります?」
「いえ、今回は本当にありません!
ただ、その・・システム上ギルドカードを介さないといけなくて・・・」
本当に申し訳なさそうにヘコヘコしているアインスさん。
まぁ、これがこの世界のシステムで、
お借りしている立場の俺が文句をいう筋合いじゃない。
必要ならば受け入れるんだけど、
始めの接触から金の亡者の印象を植え付けられたので警戒してしまった。
『きにしなくていいよ~。
ますたー、おこってるわけじゃないの~』
「印象というか、俺はこの世界の人じゃないので、
ギルドの在り方に警戒をしていたんです。
アインスさんにはいつもお世話になっていますし、
貴方自身は信用しています」
「あ、ありがとうございます!」
自分には関係ない話のご案内をしたところクレームに繋がったみたいな、
そんな空気になりかけたところをアクアに救われた。
ナデナデしてやろう。
ついでに俺用に取り分けていたクッキーも一枚譲ってあげる。
「揺蕩う唄を持っているメンバーで構成しようと思いますけど、
アインスさんも大丈夫ですか?」
「あ、はい。そうだろうと思っていました。
でも、私は戦闘にほとんど参加出来ないと思いますが・・・?」
「それは理解しています。
頼りにするって意味でもメンバーに入ってもらいたいんです。
おそらく現状の知り合いは全員戦闘に参加出来ない人達ですし」
「そういうことであれば、わかりました。
私も水無月様のクランへ参加させて頂きます。
現状近場のメンバー候補はどなたでしょうか?」
『すぃーね!』
「ポルタフォールの守護者ですね」
『う゛ぉじゃじじい!』
「アクアポッツォの守護者、ヴォジャノーイのヴォジャ様ですね」
『かてぃ~!』
「魔法ギルドの彼女ですね」
「見事に精霊ばかりですね・・・」
俺だって人間の頼りになる人と出会いたかったんだけど、
ダンジョンがない町だと腕の立つ冒険者はいなかったんだよぉ。
「決まっているメンバーは、
俺、アルシェ、メリー、アインスさん、マリエルですね。
候補がさっきの3人とセリア先生って所ですかね」
「始めのお三方以外精霊か妖精・・・。
まぁ!個性があるクランですね!
今はまだ結成出来ないんですが、
それまでにクランの名前も決めておいてください!」
あーーーーー!
名前かぁ・・・、キャラ名も悩むのに組織名とか思いつかないよぉ。
アルカンシェ護衛隊じゃ駄目かな?
『ダメ』
こいつっ!心を読んだだとっ!?
じゃあお前が考えるか?
『みんなとそうだんします』
そうですか。
ひとまずは保留にせざるを得ない話ではあったが、
俺の要求レベルも足りていないし、
メンバーもまだまだ足りないけど、
こちらも候補を探しておきたい。
「それはフォレストトーレでも受け付けることは出来ますか?」
「はい、アスペラルダ以外のギルドも根幹は一緒なので、
どの国でもどの町でも受付は可能ですよ」
「あっちでアインスさんみたいな立場の人はいますか?」
「私みたいな立場?」
「苦労人というか頼りになるギルド職員って意味です」
「うぅ・・・、そうですね・・・。
やはり、フォレストトーレ王都にある支店のギルドマスターですかね。
名前はパーシバル=アイナーという見た目幼女のドワーフです」
「ドワーフは土属性の妖精になるんですか?」
「ですね!体は小さいけど力はパワフルですから、
私よりよっぽど荒事に向いていますよ!」
「じゃあ王都に入ったら顔出しておきます」
アインスさんの用事を済ませて表に出る。
明日のうちにアクアポッツォで、
全員のステータス確認だけは忘れないようにしよう。
始めて全員で確認したのは死霊王の呼び声最下層攻略時だったし、
そこからかなりレベルも技も増えたから一旦整理しておかないとな。
「ちょっと本屋寄っても良いか?」
『いいよ~。なにかうの~?』
「部隊の動かし方とか兵法が載った書物を少々」
『ZZZzzzzz』
「おい・・・」
寝たフリをするアクアのほっぺをむにむにしながら、
目的の本屋さんに向かう。
今後本当に30人やそれ以上で戦う場面が来た時に、
指示を出すのが俺だけってのは厳しい。
多くても5人くらいの頼れるリーダー候補を育てる為にも、
俺がまず勉強を始めないといけない。
まぁ、今のところはアルシェと一緒に勉強するとしましょう。
* * * * *
「アルシェ~、今良いかぁ?」
「大丈夫ですよ。そのまま入ってください」
買ってきた物と図書館から持ち出してきた兵法本と、
俺が買ってきたお菓子を持ってアルシェの部屋を訪れる。
お茶は部屋にいるメイドさんが淹れることが出来るし、
飲み物に関しては問題ないかな。
「あら?アクアちゃんは?」
「途中でどっか行った」
「じゃあ、難しい話があるんですかね?
お茶を用意してくれる?」
「かしこまりました」
今日はメリーでもクーでもない別のメイドさんだった。
とはいえ、どっかで見た覚えが・・・あ!
クーと出かけた時に覗いていたメイドの1人だ!
あれから特に俺にアクションを起こす事もないし、
出会う機会もなかったが、まさかこんな所で出会うとはな。
「どうぞ」
「あぁ、ありがとうございます。
このお菓子を皿に並べて貰えますか?」
「こちらは?」
「クーと一緒に買った焼き菓子ですね」
「・・・かしこまりました」
用意されたお皿に菓子も並べて、
いざ話し合いの時間としゃれ込む。
「まず、アルシェは兵法・・・えっと、
戦略については勉強しているか?」
「いいえ。魔法の扱い方は教えて貰っていますが、
他は王として必要な勉強ばかりで、
戦略についての話は一切習っていません」
「よし。今後の状況によっては、
俺と別の戦場で戦う事にもなり得る。
そうなった時に指示を出す・・・まではいかなくとも、
その場で共に戦う仲間の支援を出来るように、
戦況の判断や支援についての勉強を進めたいと思う」
「私だけですか?」
「今はな。俺とアルシェだけだ。
出来ればクランの事も考えて、もう2~3人はと考えている」
「わかりました」
納得して貰えたところでインベントリから兵法本を取り出す。
それと城に戻る前に工房へ寄って突貫作業で作ってもらった鎖と、
異世界ボードゲームも机に広げる。
「これは簡単な戦術本から中級くらいの本を見繕ってもらった。
これで勉強もしながら、このゲームでも感覚を覚えてもらう」
「これ初めてみました」
「そりゃそうだろ、俺が指示して無理矢理作ってもらったからな。
本で勉強するだけでなくこういった遊戯も用いれば、頭に入りやすいだろう」
「あちらにはこういった物もあるんですねぇ~」
ボードゲームの駒を手に取りながら感心するアルシェ。
流石に先の演習のような包囲戦は無理だし、
各個人の戦力に差があるなんて事もない。
魔法兵と剣士兵と指揮官の駒をルールに則り動かしていくタイプで、
将棋の異世界版って感じかな?
「アルシェ、この鎖を制御で作れるか?」
「えーと・・・ん~~~~~。これでどうですか?」
両手を握り込んで小さな胸に押し込んで手の平に精製を試みる。
開いた手の平には確かに、彼女の拳大の鎖の輪が2つ出来上がっていた。
「うん、良く出来てるな。
じゃあ手を。イメージを受け取ってくれ」
「はい」
「「シンクロ」」
俺とアルシェの体から蒼いオーラが漏れ始める。
俺が今後の戦力に使いたい汎用性のある魔法のイメージをアルシェへ送り、
確かにアルシェは受け取ってくれた。
「制御じゃなくても?」
「発動は魔法で良いけど、
その後の操作は手足を動かすように出来ればいいかなって思う。
制御か魔法かはその都度アルシェの判断に任せる」
「わかりました。あむ。あら、塩味ですね」
「俺の気に入った味だ。渋い味のお茶と合うんだ」
「では今回のお茶はストレートで飲むとしましょうか」
しばし菓子とお茶を堪能して、
ボードゲームの説明に入る。
ルールを勉強しながらやってもらおうと、
一緒の同席していたメイドさんにアルシェの相手をお願いする。
「私は従者ですので」
「問題ない。アルシェからも口添えしてもらう」
「大丈夫ですよ、お兄さんに巻き込まれたと言えば、
大抵の事は許されますから」
「・・・姫様がそう言われるのであれば・・・」
ルールは簡単。
歩兵が剣士兵に置き換わり、
飛車が弓兵、その他王将以外が魔法兵となる。
行動は1ターンのうちに2駒動かす事が出来る。
移動に違いはなく、みんな一様に周囲1歩だけ進める。
ステータスは、
剣士兵:HP4 攻撃力2 攻撃範囲:1
弓兵 :HP2 攻撃力1 攻撃範囲:3
魔法兵:HP1 攻撃力1 攻撃範囲:2(着弾地点と隣の2マス攻撃)
指揮官:HP5 攻撃力2 攻撃範囲:1
兵科は色で判別、ダメージを受けたらダメージカウンターの乗っけて判断。
これを将棋と同じように並べて、
剣士兵9駒、弓兵2駒、魔法兵8駒、指揮官が1駒となる。
ダメージカウンターの数はかなり作ってもらったので、
ルールを変化させていろんな戦略を構築出来るように調整した。
ルールの説明をして、
俺がゲームマスターになり2人にひとまず遊んでもらったんだけど。
結果。メイドの勝ち。
「す、すみません姫様っ!」
「いえ、私の勉強不足ですから気にしないでください。
それにしてもこれ難しいですね」
「ルールをもっと理解すればもっと出来るだろうけど、
まぁぶっつけ本番じゃあこんなもんだろ。
実際、流れを掴んでからはメイドさん優勢を変えられなかったし」
「今後は時間を見つけてこれをしていこうって事ですね」
俺も将棋をやってみようと思ってネットでやってみたけど、
ムカつく顔したNPCに2枚落ちでぼろ負けした。
あの時は夜中の23時だというのに「くっそぉー!」と叫んだものだ。
ルールがわからないと蹂躙されて気がつけば、
王が殺されている悪魔のゲームだ。
同じく麻雀も勉強しようとした事があるけど、
とりあえず合わせる絵と数字を覚えて勝てる時もあった。
しかし、エロゲーの麻雀だった為、
あがりのタイミングと点数が全く覚えられなかった。
「アクアちゃんやメリー達の強化案はあります?」
「アクアは龍のどこか部位を再現出来ればいいなと考えてる。
メリー達・・というかクーの方はもう始めてるよ」
「そうですか。
ところで、模擬戦で最後に使った魔法を私、
知らなかったんですけど?」
「あはは、ビックリした?」
「ビックリというか、クーちゃんが言わなければ使った事すら気付きませんでしたよ」
アルシェが聞いているのは闇制御の文字魔法の事だろう。
「あれは自分に無理をさせる魔法なんだよ。
あの時は集中力をあげて卿の剣筋を見切ってパリィしたんだ」
「だから、すぐに寝たんですか?」
「集中力をあげるということは脳に負荷が掛かる事だ。
その結果頭痛がひどかったから、その痛みから逃げる為にわざと眠ったんだ」
「へぇ。他にはどんな利用でどんなデメリットになるんですか?」
「例えば空腹の時に[満腹]という文字を飲ませると、
数秒間の満腹感が得られる。
しかし、その間に消化をしようと胃が酸を発生させるから、
効果が切れると前よりも飢餓感が襲ってくる」
「ふんふん」
「身体能力でも、
腕に[剛力]や足に[跳躍]の効果を乗せれば数秒間超人になるけど、
効果が切れたら腕や足の筋肉とか腱が引き千切れると思う。
この場合回復魔法を掛けても傷口はふさがっても、
千切れた内部は回復しないってことだ」
「そうですね。
回復魔法は砕けた骨も回復してくれませんし」
ヒールやリザレクションといった回復魔法。
これらは確かに体力や表面的な傷を回復してくれるが、
それは浮遊精霊の鎧によって骨が折れたり肉が裂けたりしない事が前提だ。
鎧を越えた1撃による肉体破壊は自然回復と医学の進歩でしか解決方法がない。
「逆にデメリットを産まない利用方法を探している所だけど、
ひとつデメリットをあまり気にしないでいい利用を考えた」
「それは?」
「治癒だ。
さっき言った肉体の内部にヒールは効かない。
でも、文字魔法は飲む事で効果を発するだろ?
だから体の内部が要因になる不調や、
生活に不便な肉体破壊をされた冒険者の復帰に使えないかと思っている」
「それは・・・出来たら確かにすごいですけど・・・。
それって本当にデメリットはないんですか?」
「もちろんあるよ。
でも健康的な生活をしばらく続ければ問題なくなる。
例えば骨の接着であればカルシウム不足になるし、
病気を治したらしばらくは抵抗力が落ちて病気になりやすくなったりすると思う」
「カルシウムはよくわかりませんけど、
病気を治したのに病気になりやすくなるのは、
どうなんですか?」
「治しづらい病気を治して風邪とかを引きやすくなるっていえばわかるか?」
「あぁ、そういうことですか・・・」
とはいえ、なんでもかんでも出来るわけじゃない。
これが[飛翔]とかなら構造上飛べないし、
病気の完治に関しても俺の制御力が低いと大した効果は期待出来ない。
集中ですら3秒しか効果がないなら、
事前に用意した奇策でも戦況に意味を見いだせるかと言われれば、
んなわけねぇだろと言わざるを得ない。
医学的な知識や病気に関する知識もあるに超した事はないだろうし、
人々を癒やすのはまだまだ先の話だ。
この日はゲームをしたり、
兵法書を一緒に読み進めたりして時間を使った。
明日は午前のうちにアクアポッツォに戻って、
マリエルの回収後に出発しないといけない。
順路としては、
アクアポッツォ→関所→マリーブパリア→ハルカナム→フーリエタマナ→フォレストトーレを予定している。
これでも小さい集落をいくつも抜いて町を経由するように計画したが、
予定通りに進まないのが旅というものだ。
途中で精霊関係や人間関係や魔神族関係で足止めもされてしまうだろう。
無理をしないと通せない状況は関わりたくないけど、
アルシェが姫として見逃せないという時の為に、
俺も含めてもっと出来る事を増やしたり、
今持っている武器を研ぐことが求められる。
特に俺は付け焼き刃が多いから、
この辺でひとつひとつの練度を鍛えておきたい。
一閃、嵐閃、制御と手札はこの半年で増えたと思うが、
結局極めた1撃に叩きつぶされる程度の技量なのだ。
元の世界に戻るまでに情報収集と対策検討、
それにアルシェを無事に国に返す事。
これらは勇者とは違うけれど、
意味もなく異世界に来たってよりは意義のある事だろ?
タイムリミットも刻々と進んでいるようだし、
あと半年もしたら勇者も魔王と戦い始めるかも知れない。
色々と手を打ちたいけど、
ひとつずつやっていこう。
俺は1人じゃ無いんだしな。
「はい。朝から出れば、夕方にはアクアポッツォに着けますし、
予定よりも長く居着いてしまいましたので」
「普通であればもう少し居てもいいと言うところではあるが、
宗八(そうはち)が旅をして得た情報は我々の知らなかった物ばかりだ。
お主に任せっきりで悪いとは思うがよろしく頼む」
「アルシェも支えてくれていますし、
各地でも協力してくれる人が居ますので大丈夫です。
魔王が討たれるまでの間に集められる情報は集めたいと思いますから」
「すまんな、宗八。
偶々こちらへ来てしまったお主に任せっきりになってしまって・・・」
「任せっきりというわけではないですよ。
俺が出来るのは情報の収集と、
寄った町で見つけた問題に協力することだけです。
実際、発生している問題が病気だったりしたならば、
寄る事もしないでしょうし」
こちらのメンバーにはアスペラルダ王国の一人っ娘がいる。
俺が付いていながら彼女にもしもの事があれば、
アスペラルダの民に申し訳が立たない。
最悪、メリーは見捨てて俺と精霊達の命を賭してでも守りきる覚悟はしている。
その時、アルシェ以外が生き残れないとしてもだ。
「精霊使いに関してはお任せします。
接触に関しては近いところにいれば自分たちが向かいますので」
「うむ。オベリスクに関しても対応出来そうなメンバーの選出を進める。
極力こちらで対応するゆえ、異変の発見を頼む」
「ありがとうございます。
国を超えれば連絡も難しくなりますから、
アインスさんに伝言を頼む予定ですが、
王様にもこれを渡しておきましょうか?」
「いや、それはアインスにも確認されたのだがな、
私は政務があって好きな時に話せない。
アインスからの言伝のほうがまだしっかりとした情報が受け取れるであろう。
それに、それは仲間の証でもあろう?
残念ながら仲間の役はアルシェに任せるよ」
オベリスクの研究情報は魔法ギルドから、
正確にいえばカティナのチームから送られてくる予定で、
窓口で確認をする者がいれば現在確認がされている場所を案内される。
しかし、誰にでも教えると情報が錯綜してしまうので、
何かしらの対策はされるとの事。
アスペラルダ王国軍の中でも将軍と副将、
副将補佐までしか開示されておらず、
選出メンバーも兵士からだけでなく冒険者にも範囲を広げるらしい。
「それで、今から向かう風の国・・フォレストトーレについてなんですが、
あちらの王には連絡無しに向かっても大丈夫でしょうか?」
「以前にフィリップが渡したマントを着けていけば良い。
あれを着けるのはアスペラルダ王族だけだからな」
「・・・えっと。俺は養子に入ってませんが?」
「まぁ、いいじゃないか。
養子でも婿養子でも変わらないだろ(笑)」
その2つも結構変わるんですけどねぇ!!
まぁ、もしも!万が一!
魔王が討伐されても帰還魔法が発動しなかった場合は、
アスペラルダに帰化してもいいかとは思う。
俺にとってアルシェはまだまだ妹分だし、
アルシェにしても頼りになる従兄弟の兄ちゃんって感じだろうしな。
「そういえば、パーティーはどうするんだね?
メリーが戦闘に参加するようになったとしても、
メンバーとしては3人だろう?
もう2人君のパーティに入れるはずだが?」
「そこはまだ検討中ですね。
実際その地に協力者がいれば事足りていますし、
アクアポッツォには現在修行中の娘がいます。
ネシンフラ島で幼いアルシェの相手をしていた村長の孫です」
「・・・あぁ、私はその時町長と会談をしていたが、
確かカエル妖精の村に王妃が視察に行った時、
アルシェも付いて行ったことがあった。
その時の相手をしてくれた娘かな?」
「その娘で合っています」
「しかし、カエル妖精は島から出ると・・・」
「その対策と戦闘訓練をあちらの守護者が担当してくださっています。
今頃猛特訓の成果が出ているんじゃないかと・・」
アルシェ命!その一心で訓練をしていると思う。
俺としては戦闘方法は一緒に考えていきたいので、
とりあえずカエル化の対策をしておいてくれれば良いかな?
魔法の才能はアルシェとの訓練で確認したし、
あとは武器による戦闘の才がどれに分類されるか・・・。
俺が片手剣、アルシェが槍、メリーが片手剣カテゴリの短剣、
他の知り合いだとセリア先生の弓くらいか?
一応、アルシェのメイン装備は棍棒カテゴリの杖で、
メリーも投擲を扱える。
出来れば役割を分けたいから、
あとは両手剣、棍棒カテゴリのハンマー、斧、手甲が候補になるけど。
どう考えても男のカテゴリしか残ってないな・・・。
「まぁ平和になったら、アルシェの側仕えにでも使ってください」
「本人と面接をしてみないと約束は出来ないが、覚えておこう」
「じゃあ、受かるように鍛えておきますよ」
「楽しみにしておくよ。
そうだ、アインスが1度顔を出してほしいと言っていたよ」
「わかりました、このあとにでも顔を出します。
王もアルシェとはしばらく会えませんからね。
父親としてもしっかりと甘えておいてください」
「わかりまし・・た(笑)」
王と護衛隊隊長、アルシェの父親と俺、
といった感じで真面目な話の合間にも、
気安い話も出来る王様との対話もこれが最後だ。
明日になれば俺達は朝から出発する予定で動く。
アインスさんに会うタイミングは今日しかないので、
さっさと会いに行こう。
* * * * *
「こんにちわー。
アインスさん居ますか-?」
『いますか~?』
俺が図書室の前を通った時に、
丁度アクアも興味があった本を読み終え、
出てきた所に鉢合わせた。
町に降りてギルドに向かうことを伝えると勝手に付いてきたわけだ。
「あっ、水無月様ですね。
あちらから入って2階へ上がられてください。
そのままギルドマスターのお部屋へ行かれて大丈夫です」
「わかりました」
ギルドカウンターの受付嬢からの案内で、
カウンター向こうへ入る為の跳ね蓋を通り2階へ上がる。
上から見ると結構な人数のギルド職員がいることが伺えた。
廊下の上部には部屋ごとに名前が記載されていて、
学校の教室を思い出す。
『あ、あったよ~』
「こりゃ立派なドアしてんなぁ~」
上ばかり見ていた俺とアクアだが、
先に見つけたのはアクア。
しっかりとマスター部屋と記載され、
ドアの装飾も周りのドアと全く違う。
コンコンッ
「はぁーい!どうされましたー?」
「水無月です」
『あくあで~す』
「あぁ、鍵は開いているのでどうぞ入ってください」
ノックした直後の声はこちらに意識が向いていない様子であったが、
名乗りを聞くとしっかりと意識した声質へと変わる。
お言葉に甘えてドアを開けると、
書類仕事に精を出すアインスさんが、
これまた立派なデスクで仕事中だった。
「切りの良いところまで終わらせたいので少々お待ちくださいね」
「わかりました」
少しした所で再びドアがノックされ、
職員の方がお茶とお菓子を持ってきてくれた。
『わぁ~♪』
「こら、アインスさんを待たんか」
「あぁ、気にしないでください。
全部食べて頂いてもかまいませんよ」
「すみません、ありがとうございます」
『ありがとーございます!』
感謝を伝えた直後にすぐにこっちを振り向いてくる。
アクアの目の中にはお菓子食べたいとくっきり書かれていた。
ちょっと見つめ合った後にコクリと頷くと、
お菓子に飛びかかってさっそく1つをかじり始める。
お皿に乗ったお菓子はクッキーで、
全部で6枚乗っかっていた。
「お待たせしました!
お呼び立てしたのに申し訳ありませんでした!」
「いえ、気にしないでください。
明日には王都を出ますし、直接話した方がいいんですよね?」
「そうなります。
ではさっそくお話をさせていただきますが、
水無月さんはレベルおいくつになられましたか?」
「えっと・・・いまは25ですね。
ダンジョンに入ってないのに結構上がってるなぁ・・・」
「それだけ濃厚な冒険だったという事ですね。
実はレベルが30になった冒険者をリーダーを据えて、
ひとつの集団の登録が出来ます。
これは[クラン]と呼ばれるシステムになりまして、
王族の方がレイドの認定をしなくても発動する事が出来ます」
「アルシェがいれば出来るわけじゃないんですか?」
「水無月様方は国を超えられますよね?
そうなるとアスペラルダの姫では許可を出せないんです。
お次の国ではフォレストトーレの王族の許可が必要となり、
その場にいない状態でキュクロプスのような大敵が出現した場合、
被害が広がってしまいます」
魔法ギルドが組み上げた謎のシステム。
レイドとは5パーティ最大人数が25人で行う戦闘の事で、
その際には戦闘範囲を一定に定めて、
被害が広がらないように不可侵エリアが出来上がる。
フォレストトーレ王族然り、他の国の王族然り、
じゃあ連れて行けと話が進むわけもないので、
クランがあれば俺達に対処しきれない敵に遭遇しても、
応援がくるまでの足止めにはなるだろう。
「話は理解しました。
それはどうすればいいんでしょうか?」
「はい。メンバーは人間だけでなくすべての生き物が対象となり、
クランによるレイド発動であれば30人までが一度に戦闘が可能です。
例外として契約制例は数に含まれませんので、
アクアーリィ様とクーデルカ様を抜いて29人まで登録出来ます。
一同が介して戦闘になれば人数に合わせてバフが掛かる機能もあります」
「何か必要なアイテムとかありますか?」
「ギルドカードが必要となります。
言ってしまえば、精霊でもギルドカードを発行して頂ければ、
登録自体は可能です」
「・・・裏があります?」
「いえ、今回は本当にありません!
ただ、その・・システム上ギルドカードを介さないといけなくて・・・」
本当に申し訳なさそうにヘコヘコしているアインスさん。
まぁ、これがこの世界のシステムで、
お借りしている立場の俺が文句をいう筋合いじゃない。
必要ならば受け入れるんだけど、
始めの接触から金の亡者の印象を植え付けられたので警戒してしまった。
『きにしなくていいよ~。
ますたー、おこってるわけじゃないの~』
「印象というか、俺はこの世界の人じゃないので、
ギルドの在り方に警戒をしていたんです。
アインスさんにはいつもお世話になっていますし、
貴方自身は信用しています」
「あ、ありがとうございます!」
自分には関係ない話のご案内をしたところクレームに繋がったみたいな、
そんな空気になりかけたところをアクアに救われた。
ナデナデしてやろう。
ついでに俺用に取り分けていたクッキーも一枚譲ってあげる。
「揺蕩う唄を持っているメンバーで構成しようと思いますけど、
アインスさんも大丈夫ですか?」
「あ、はい。そうだろうと思っていました。
でも、私は戦闘にほとんど参加出来ないと思いますが・・・?」
「それは理解しています。
頼りにするって意味でもメンバーに入ってもらいたいんです。
おそらく現状の知り合いは全員戦闘に参加出来ない人達ですし」
「そういうことであれば、わかりました。
私も水無月様のクランへ参加させて頂きます。
現状近場のメンバー候補はどなたでしょうか?」
『すぃーね!』
「ポルタフォールの守護者ですね」
『う゛ぉじゃじじい!』
「アクアポッツォの守護者、ヴォジャノーイのヴォジャ様ですね」
『かてぃ~!』
「魔法ギルドの彼女ですね」
「見事に精霊ばかりですね・・・」
俺だって人間の頼りになる人と出会いたかったんだけど、
ダンジョンがない町だと腕の立つ冒険者はいなかったんだよぉ。
「決まっているメンバーは、
俺、アルシェ、メリー、アインスさん、マリエルですね。
候補がさっきの3人とセリア先生って所ですかね」
「始めのお三方以外精霊か妖精・・・。
まぁ!個性があるクランですね!
今はまだ結成出来ないんですが、
それまでにクランの名前も決めておいてください!」
あーーーーー!
名前かぁ・・・、キャラ名も悩むのに組織名とか思いつかないよぉ。
アルカンシェ護衛隊じゃ駄目かな?
『ダメ』
こいつっ!心を読んだだとっ!?
じゃあお前が考えるか?
『みんなとそうだんします』
そうですか。
ひとまずは保留にせざるを得ない話ではあったが、
俺の要求レベルも足りていないし、
メンバーもまだまだ足りないけど、
こちらも候補を探しておきたい。
「それはフォレストトーレでも受け付けることは出来ますか?」
「はい、アスペラルダ以外のギルドも根幹は一緒なので、
どの国でもどの町でも受付は可能ですよ」
「あっちでアインスさんみたいな立場の人はいますか?」
「私みたいな立場?」
「苦労人というか頼りになるギルド職員って意味です」
「うぅ・・・、そうですね・・・。
やはり、フォレストトーレ王都にある支店のギルドマスターですかね。
名前はパーシバル=アイナーという見た目幼女のドワーフです」
「ドワーフは土属性の妖精になるんですか?」
「ですね!体は小さいけど力はパワフルですから、
私よりよっぽど荒事に向いていますよ!」
「じゃあ王都に入ったら顔出しておきます」
アインスさんの用事を済ませて表に出る。
明日のうちにアクアポッツォで、
全員のステータス確認だけは忘れないようにしよう。
始めて全員で確認したのは死霊王の呼び声最下層攻略時だったし、
そこからかなりレベルも技も増えたから一旦整理しておかないとな。
「ちょっと本屋寄っても良いか?」
『いいよ~。なにかうの~?』
「部隊の動かし方とか兵法が載った書物を少々」
『ZZZzzzzz』
「おい・・・」
寝たフリをするアクアのほっぺをむにむにしながら、
目的の本屋さんに向かう。
今後本当に30人やそれ以上で戦う場面が来た時に、
指示を出すのが俺だけってのは厳しい。
多くても5人くらいの頼れるリーダー候補を育てる為にも、
俺がまず勉強を始めないといけない。
まぁ、今のところはアルシェと一緒に勉強するとしましょう。
* * * * *
「アルシェ~、今良いかぁ?」
「大丈夫ですよ。そのまま入ってください」
買ってきた物と図書館から持ち出してきた兵法本と、
俺が買ってきたお菓子を持ってアルシェの部屋を訪れる。
お茶は部屋にいるメイドさんが淹れることが出来るし、
飲み物に関しては問題ないかな。
「あら?アクアちゃんは?」
「途中でどっか行った」
「じゃあ、難しい話があるんですかね?
お茶を用意してくれる?」
「かしこまりました」
今日はメリーでもクーでもない別のメイドさんだった。
とはいえ、どっかで見た覚えが・・・あ!
クーと出かけた時に覗いていたメイドの1人だ!
あれから特に俺にアクションを起こす事もないし、
出会う機会もなかったが、まさかこんな所で出会うとはな。
「どうぞ」
「あぁ、ありがとうございます。
このお菓子を皿に並べて貰えますか?」
「こちらは?」
「クーと一緒に買った焼き菓子ですね」
「・・・かしこまりました」
用意されたお皿に菓子も並べて、
いざ話し合いの時間としゃれ込む。
「まず、アルシェは兵法・・・えっと、
戦略については勉強しているか?」
「いいえ。魔法の扱い方は教えて貰っていますが、
他は王として必要な勉強ばかりで、
戦略についての話は一切習っていません」
「よし。今後の状況によっては、
俺と別の戦場で戦う事にもなり得る。
そうなった時に指示を出す・・・まではいかなくとも、
その場で共に戦う仲間の支援を出来るように、
戦況の判断や支援についての勉強を進めたいと思う」
「私だけですか?」
「今はな。俺とアルシェだけだ。
出来ればクランの事も考えて、もう2~3人はと考えている」
「わかりました」
納得して貰えたところでインベントリから兵法本を取り出す。
それと城に戻る前に工房へ寄って突貫作業で作ってもらった鎖と、
異世界ボードゲームも机に広げる。
「これは簡単な戦術本から中級くらいの本を見繕ってもらった。
これで勉強もしながら、このゲームでも感覚を覚えてもらう」
「これ初めてみました」
「そりゃそうだろ、俺が指示して無理矢理作ってもらったからな。
本で勉強するだけでなくこういった遊戯も用いれば、頭に入りやすいだろう」
「あちらにはこういった物もあるんですねぇ~」
ボードゲームの駒を手に取りながら感心するアルシェ。
流石に先の演習のような包囲戦は無理だし、
各個人の戦力に差があるなんて事もない。
魔法兵と剣士兵と指揮官の駒をルールに則り動かしていくタイプで、
将棋の異世界版って感じかな?
「アルシェ、この鎖を制御で作れるか?」
「えーと・・・ん~~~~~。これでどうですか?」
両手を握り込んで小さな胸に押し込んで手の平に精製を試みる。
開いた手の平には確かに、彼女の拳大の鎖の輪が2つ出来上がっていた。
「うん、良く出来てるな。
じゃあ手を。イメージを受け取ってくれ」
「はい」
「「シンクロ」」
俺とアルシェの体から蒼いオーラが漏れ始める。
俺が今後の戦力に使いたい汎用性のある魔法のイメージをアルシェへ送り、
確かにアルシェは受け取ってくれた。
「制御じゃなくても?」
「発動は魔法で良いけど、
その後の操作は手足を動かすように出来ればいいかなって思う。
制御か魔法かはその都度アルシェの判断に任せる」
「わかりました。あむ。あら、塩味ですね」
「俺の気に入った味だ。渋い味のお茶と合うんだ」
「では今回のお茶はストレートで飲むとしましょうか」
しばし菓子とお茶を堪能して、
ボードゲームの説明に入る。
ルールを勉強しながらやってもらおうと、
一緒の同席していたメイドさんにアルシェの相手をお願いする。
「私は従者ですので」
「問題ない。アルシェからも口添えしてもらう」
「大丈夫ですよ、お兄さんに巻き込まれたと言えば、
大抵の事は許されますから」
「・・・姫様がそう言われるのであれば・・・」
ルールは簡単。
歩兵が剣士兵に置き換わり、
飛車が弓兵、その他王将以外が魔法兵となる。
行動は1ターンのうちに2駒動かす事が出来る。
移動に違いはなく、みんな一様に周囲1歩だけ進める。
ステータスは、
剣士兵:HP4 攻撃力2 攻撃範囲:1
弓兵 :HP2 攻撃力1 攻撃範囲:3
魔法兵:HP1 攻撃力1 攻撃範囲:2(着弾地点と隣の2マス攻撃)
指揮官:HP5 攻撃力2 攻撃範囲:1
兵科は色で判別、ダメージを受けたらダメージカウンターの乗っけて判断。
これを将棋と同じように並べて、
剣士兵9駒、弓兵2駒、魔法兵8駒、指揮官が1駒となる。
ダメージカウンターの数はかなり作ってもらったので、
ルールを変化させていろんな戦略を構築出来るように調整した。
ルールの説明をして、
俺がゲームマスターになり2人にひとまず遊んでもらったんだけど。
結果。メイドの勝ち。
「す、すみません姫様っ!」
「いえ、私の勉強不足ですから気にしないでください。
それにしてもこれ難しいですね」
「ルールをもっと理解すればもっと出来るだろうけど、
まぁぶっつけ本番じゃあこんなもんだろ。
実際、流れを掴んでからはメイドさん優勢を変えられなかったし」
「今後は時間を見つけてこれをしていこうって事ですね」
俺も将棋をやってみようと思ってネットでやってみたけど、
ムカつく顔したNPCに2枚落ちでぼろ負けした。
あの時は夜中の23時だというのに「くっそぉー!」と叫んだものだ。
ルールがわからないと蹂躙されて気がつけば、
王が殺されている悪魔のゲームだ。
同じく麻雀も勉強しようとした事があるけど、
とりあえず合わせる絵と数字を覚えて勝てる時もあった。
しかし、エロゲーの麻雀だった為、
あがりのタイミングと点数が全く覚えられなかった。
「アクアちゃんやメリー達の強化案はあります?」
「アクアは龍のどこか部位を再現出来ればいいなと考えてる。
メリー達・・というかクーの方はもう始めてるよ」
「そうですか。
ところで、模擬戦で最後に使った魔法を私、
知らなかったんですけど?」
「あはは、ビックリした?」
「ビックリというか、クーちゃんが言わなければ使った事すら気付きませんでしたよ」
アルシェが聞いているのは闇制御の文字魔法の事だろう。
「あれは自分に無理をさせる魔法なんだよ。
あの時は集中力をあげて卿の剣筋を見切ってパリィしたんだ」
「だから、すぐに寝たんですか?」
「集中力をあげるということは脳に負荷が掛かる事だ。
その結果頭痛がひどかったから、その痛みから逃げる為にわざと眠ったんだ」
「へぇ。他にはどんな利用でどんなデメリットになるんですか?」
「例えば空腹の時に[満腹]という文字を飲ませると、
数秒間の満腹感が得られる。
しかし、その間に消化をしようと胃が酸を発生させるから、
効果が切れると前よりも飢餓感が襲ってくる」
「ふんふん」
「身体能力でも、
腕に[剛力]や足に[跳躍]の効果を乗せれば数秒間超人になるけど、
効果が切れたら腕や足の筋肉とか腱が引き千切れると思う。
この場合回復魔法を掛けても傷口はふさがっても、
千切れた内部は回復しないってことだ」
「そうですね。
回復魔法は砕けた骨も回復してくれませんし」
ヒールやリザレクションといった回復魔法。
これらは確かに体力や表面的な傷を回復してくれるが、
それは浮遊精霊の鎧によって骨が折れたり肉が裂けたりしない事が前提だ。
鎧を越えた1撃による肉体破壊は自然回復と医学の進歩でしか解決方法がない。
「逆にデメリットを産まない利用方法を探している所だけど、
ひとつデメリットをあまり気にしないでいい利用を考えた」
「それは?」
「治癒だ。
さっき言った肉体の内部にヒールは効かない。
でも、文字魔法は飲む事で効果を発するだろ?
だから体の内部が要因になる不調や、
生活に不便な肉体破壊をされた冒険者の復帰に使えないかと思っている」
「それは・・・出来たら確かにすごいですけど・・・。
それって本当にデメリットはないんですか?」
「もちろんあるよ。
でも健康的な生活をしばらく続ければ問題なくなる。
例えば骨の接着であればカルシウム不足になるし、
病気を治したらしばらくは抵抗力が落ちて病気になりやすくなったりすると思う」
「カルシウムはよくわかりませんけど、
病気を治したのに病気になりやすくなるのは、
どうなんですか?」
「治しづらい病気を治して風邪とかを引きやすくなるっていえばわかるか?」
「あぁ、そういうことですか・・・」
とはいえ、なんでもかんでも出来るわけじゃない。
これが[飛翔]とかなら構造上飛べないし、
病気の完治に関しても俺の制御力が低いと大した効果は期待出来ない。
集中ですら3秒しか効果がないなら、
事前に用意した奇策でも戦況に意味を見いだせるかと言われれば、
んなわけねぇだろと言わざるを得ない。
医学的な知識や病気に関する知識もあるに超した事はないだろうし、
人々を癒やすのはまだまだ先の話だ。
この日はゲームをしたり、
兵法書を一緒に読み進めたりして時間を使った。
明日は午前のうちにアクアポッツォに戻って、
マリエルの回収後に出発しないといけない。
順路としては、
アクアポッツォ→関所→マリーブパリア→ハルカナム→フーリエタマナ→フォレストトーレを予定している。
これでも小さい集落をいくつも抜いて町を経由するように計画したが、
予定通りに進まないのが旅というものだ。
途中で精霊関係や人間関係や魔神族関係で足止めもされてしまうだろう。
無理をしないと通せない状況は関わりたくないけど、
アルシェが姫として見逃せないという時の為に、
俺も含めてもっと出来る事を増やしたり、
今持っている武器を研ぐことが求められる。
特に俺は付け焼き刃が多いから、
この辺でひとつひとつの練度を鍛えておきたい。
一閃、嵐閃、制御と手札はこの半年で増えたと思うが、
結局極めた1撃に叩きつぶされる程度の技量なのだ。
元の世界に戻るまでに情報収集と対策検討、
それにアルシェを無事に国に返す事。
これらは勇者とは違うけれど、
意味もなく異世界に来たってよりは意義のある事だろ?
タイムリミットも刻々と進んでいるようだし、
あと半年もしたら勇者も魔王と戦い始めるかも知れない。
色々と手を打ちたいけど、
ひとつずつやっていこう。
俺は1人じゃ無いんだしな。
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