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第08章 -瘴気の海に沈んだ王都フォレストトーレ編-
†第8章† -04話-[フェイズ2:外周班回収]
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「あー、マジでキリがないんだがっ!
範囲も広がってきてるからこれ以上は俺たちだけじゃ無理かっ!?」
『あるぅにごうりゅうはさんせ~い!
あくあもこれいじょうはへらせないよぉ~!』
セーバーたち外周班が仕事をした成果として、
俺たちに押し寄せてくる瘴気モンスターの数は順調にその勢力を増していった。
多少オツムが弱いのか、
1割くらいが外壁をよじ登ろうとするなか、
ほとんどの賢いモンスターは第一目標に俺とアクアを目指して襲いかかってくる。
「《光竜一閃!》」
ドパパパパパパパパパパパンッ!
両手持ちで振るうサンクトゥスの剣先から放たれる一筋の光は、
森の木々などには傷を付けること無く通り過ぎ、
瘴気から成る黒紫色のオーラを纏ったモンスターにのみHIT判定をする。
先の音は光の魔力が瘴気の鎧を剥ぎ取る音。
その際に弾ける光の粒子が全身に降り注ぐモンスター達には毒なのか、
苦悶の表情を浮かべつつも足が少し遅くなる。
『《勇者の剣!》』
その動きを止めてしまったモンスターに空から氷の槍が降り注ぐ。
一撃一撃が足や腕など四肢を撃ち抜いていき、
モンスターの行動に障害を与えていく。
すでにこの状態を2時間は続けていて、
襲いかかる4割は俺とアクアが処理をし、
残り6割はアルシェ達後方部隊の護衛に処理を任せている。
それもそろそろ抑えきれなくなってきた為、
次のステージに強制的に進んでしまうらしい。
〔ご主人様、ギルドに近い外壁に到達致しました〕
〔お父さま、これより突入します!〕
「応!気をつけて行ってこい!アクア、撤収するぞ!」
『あい!あるぅ、もどるからねぇ~!』
〔いつでも大丈夫です!〕
「先に武器を返却する。マリエルが引っ張り出してサーニャさんに渡してやってくれ!
ニルは魔法の発動と入れ替わりでアクアと交代して俺と合流!」
〔〔あいあいさー!〕ですわー!〕
メリーとクーの報告を受けて、ついに救出を始める準備が整ったことを知る。
この後は安全に救出を行うために俺も勇者達に混ざってギルド周辺に発生した瘴気モンスター、
もしくは障害の排除をすることとなる。
「メリーも準備はいいか?」
〔いつでも可能です〕
動きについては各員には伝え済み。
ここまでは敵勢力も瘴気モンスターだけしか出現しておらず、
今回のメインで有り敵陣での防衛というもっとも危険な場面へと転換するため、
チームは大きく2つに分けて、
中で救出する時間を稼ぐ班と外で治療と護衛をする班。
外には外周班のセーバー達を回す予定になっているが、
現在はメリーの合図が上がるまで外周を走っているはずだ。
彼らをアルシェと合流させる手助けも俺の仕事には含まれているので、
ギルド方面に向かいつつもアルシェの魔法の範囲内に入るまでは、
セーバー達とゼノウ達の守護も俺が勤める。
「全員、準備はいいな!」
〔〔〔〔〔『はい!』〕〕〕〕〕
「アクア、アルシェ!」
『〔シンクロ!〕』
「「『氷鮫の刃!』」」
発動はアルシェがいる場所。
アルシェが翳す手のひらの先に広がる平原から、
合計4本の氷鮫の刃が彼女たちを守るように出現しては巡回するように走り始める。
「《アイシクルキューブ!》」
身長の低いアルシェは少しでも敵影とシャークの軌道が読めるようにと、
視界を広めるために足下に氷を発生させて視点を高くした。
『《ダウンバーストランチャー!》ですわー!』
3本の放物線を描きながら飛んでいく風の塊が、
前衛として戦っていたマリエルとサーニャの上を通り過ぎ、
その前方に着弾する。
その場には少し広めの風のトラップが設置され、
上空からの強烈な風が間断なく地面に降り注ぐ。
あの場に足を踏み入れたモンスターを進めることは出来ず、
地面に身体ごと縫い付けられることだろう。
「さぁ、どうぞサーニャさん」
「ありがとう、マリエルさん」
上空をニルの魔法が通り過ぎている同時刻に、
マリエルは影の中から光る大剣を引っ張り出して元の持ち主に返却していた。
『じゃあいってきま~す!』
「あぁ、しっかりアルシェ達を守ってやれ!」
上空から宗八の影に飛び込んで潜る瞬間に交わす会話には、
アクアと宗八の絆が見て取れた。
先の大半は弱ったところをアクアの魔法で撃ち貫かれ煙のように姿を消したが、
生き残った十数匹は俺が処理しなければならない。
サンクトゥスを影に落としてからは相棒交代に合わせて雷光剣を装備し、
すでに武器加階も済ませている。
『ニル~!』
『アクア姉さまー!』
影に潜って交代をするために交差する2人の幼い精霊。
『ますたーをおねがいね~!』
『アルシェをお願いしますわー!』
パンッ!と、小気味良い音を立てて中空に浮遊する2人は、
すれ違い様にお互いの後を任せる台詞を伝えつつ手と手を打ち合わせる。
アクアはそのまま口の開いた出口から出ていき、
ニルは影の中に生えている宗八の手の中に飛び込んだ。
『おまたせ~、ある~』
「よろしくね、アクアちゃん」
『お待たせしましたわ-、宗八-!』
「応、良いタイミングだわ。頼むぞ!」
ドパァァァァァアアン!
遙か彼方の空で打ち上がるヴァーンレイド。
あの合図はメリーがこっちのタイミングに合わせて打ち上げたセーバー達撤退の合図。
すなわち、あのオベリスク群から離れるということは瘴気モンスターに襲われるし、
さらに運が悪ければ禍津核モンスターにすら襲われる危険性も孕む。
現在はオベリスク影響下で動く状況から、
浮遊精霊は全員影の中へと避難させているので、
襲われた際に怪我を負ってしまう危険性を多分に孕んだ状態だ。
精霊への命令は現時点で俺にしか出来ないため、
早めに合流して早めに浮遊精霊の鎧を纏わせないといけない。
「ニル」
『《雷纏!》』
「『《風精霊纏!!》』」
* * * * *
ドパァァァァァアアン!
退避の合図が空を赤く彩り、
空気を振るわせて知らせてくれる。
しかし、外周班のセーバー達はUターンをしたくとも出来ない状況に追い込まれていた。
「あっぶねぇなぁ、おいっ!」
「口じゃ無くて手ぇ動かせっ!」
足として利用していた馬は魔力切れで1頭減り、
逃げ出してさらに1頭が減った。
そして、少し前からオベリスクと挟むように、
背後から突如出現した大型モンスターに1頭殺され、
馬の数は3頭にまでその数は減ってしまっていた。
「・・・私が!」
「駄目に決まってんだろう!レベルも経験も俺たちと差があるとはいえ、
今は浮遊精霊の鎧が無いんだぞっ!
掠りでもすりゃ死んじまうぞ!」
自分が手綱を握る馬から背後に座るトーニャの気配と言葉に反応し、
叱咤を投げかける一方で、
必死に馬の進行を指示するセーバー。
彼ら外周班の前に現れたモンスターは、
予想通り数多く発見し辛いように配置された禍津核。
通り過ぎたあとからどういう絡繰りなのかは不明だが、
このタイミングでモンスターとして姿を変え、
襲いかかってきたのである。
「宗八っ!宗八っ!まだかぁ!?」
〔い・・・って・・・んばれ〕
「宗八は何だって!?」
「多分だが、いま向かっている、頑張れ。だとよっ!」
「せめてオベリスクの範囲内から出なければっ!」
襲いかかる禍津核モンスターは、
本来ランク3ダンジョンで見かけるフォレストゴブリンとサンダーバットが合計70体ほど。
大型に至ってはランク4のランパードトータスとフライングサイズ。
フォレストゴブリンの弓矢攻撃も、
サンダーバットの急降下も、
ランパートトータスの踏みつけも、
フライングサイズの斬り付け攻撃も、
全てが魔法ではなく己の所持する武器や肉体を使った攻撃のため、
威力の減衰は期待出来ず、
外周班は必死に回避と逃走を続けるしか無かった。
「受け流すのも不安定な状態できっついな・・・」
「馬にも負担をかけてしまいます・・・」
セーバーが馬の荒げる息を心配するなか、
後ろに座るトーニャが小さな動きでフォレストゴブリンの矢を斬り払う。
息のリズムが崩れてきている所をみると、
恐慌と体力の限界のどちらも来ているのだろう。
長くは持たなそうだ・・・。
「セーバー様っ!」
「「セーバーっ!」」
「っ!?」
意識を馬に向けたその小さな隙を見逃さず、
禍津核モンスターは一斉にセーバー達の乗る一頭に集中攻撃を仕掛けてきた。
小型モンスターの矢や体当たり程度ならば、
トーニャが大剣を最小の動きと技術で受け流す事は出来る。
現に注意の声を上げながらもしっかりと受けきっている。
しかし、その後に続く砲岩と大きな鎌が、
ほぼノータイムで襲いかかる次段についてはどう考えても避けきることは出来なかった。
回避指示を馬にするには遅すぎるし、
出来ていたとしても疲れて冷静ではない馬にその動きが出来たとは思えない。
どちらにしろ、
不安定な状態では如何にレベルも技術も高いトーニャが受けるとはいえ、
通常の大きさよりも大きなランパードトータスの吐き出す巨岩は、
馬への負担が大きすぎるし、
浮遊精霊を纏っていない現状で受けるにはあまりにも凶悪な威力を持っている。
その後すぐに鋭い凶刃が間髪入れずに斬り込んでくる。
これを避けるのも受け流すの無理に等しかった。
「セーバー様、飛びます!」
「は?うぉおおおおおおおおおおおお!!!」
自分と同じ判断を下したらしいトーニャは巨岩から目を離してセーバーの方を振り返ると、
一言だけ伝えてセーバーを掴んで馬から飛び降りた。
次の瞬間には巨岩が馬を押しつぶしながら、
自分たちのすぐ横の地面をえぐりながら通り過ぎていく様が目に映る。
間一髪生還したと思うも束の間。
凶刃を振るう為飛び込んできていたフライングサイズは、
直前になり標的が横に逸れたことをしっかりと目視しており、
その手に着いている鎌の軌道を変更させる。
「おいおいおいっ!まじかっ!」
「この攻撃では死にはしませんが、吹き飛ばされた衝撃で死ぬかもしれませんね・・」
オリジナルのフライングサイズはバイトルアントと同サイズの蟷螂型モンスターだ。
当然オリジナルに比べて比にならない俊敏性と筋力を持って、
予想できなかった軌道修正を行う彼に向けた中空状態の2人の会話。
焦りと予感をそれぞれが抱き、周囲の仲間も応戦しつつも声を張り上げる。
〔死んでもらっちゃ困るんだよなぁ!《翠雷を砕け!風刃剣戟!》〕
「『《翠雷破点突(はてんづき)!》』」
前半は揺蕩う唄からはっきりと・・。
後半は微かに自身の耳に生の声が聞こえた気がした。
そして、目の前に迫っていた凶刃に至っては、
空から飛来した目に捉えられない巨大な刃を察知して、
鎌を手元に引き戻し防御の姿勢を取るが、
およそ風が起こすとは思えない金属音を響かせながらフライングサイズを遙か後方まで吹き飛ばす。
「くぅ~・・・いてぇ。トーニャ、大丈夫か?」
「はい、生きています。今のは?」
「このタイミングに間に合うのは宗八だろう」
『ニルも一緒ですわー!』
地面に転がる2人の側にふわりと誰かが着地する。
声からして察してはいるものの、
先の合図からさほど時間も経っていないのにここまで到着できるものなのかと疑問も出るが、
ひとまず視覚にて確認するために足下から見上げることにしたセーバー。
まず、深緑のブーツを足の先から膝まで履いており、
そのブーツは途切れることも無く太ももの後ろからマントの一部と繋がっていた。
そしてマントもマントで、
先が7つに分かれ、うち2つはブーツへと伸びているのだが、
他の先端は円形の形を取っていて中央にはそれぞれ雷のマークが入っている。
2対1対2で1はお尻の部分だが、
綺麗に斜めに揃っていて若干のオシャレ感がこの場に似つかわしくなくイラっと来る。
頭に目を向けると、
足先は深緑であったのに上に行くにつれて色が薄く鮮やかになっているようにも見えた。
それになんだろうか、あの頭に着いている2つの長い耳は・・・。
いや、絶対にウサギの耳だ。
先ほど宗八とは別に聞こえた声の主はニルと名乗ったことから、
昨日進化していた風精霊のニルチッイだろうし、
確かに進化後の姿はウサギの耳を生やしていた。
「だからといって、男がウサ耳とはどうなんだ?」
「垂れてるし大きすぎないでしょ?
ニルがウサギの姿を手にした時点からこれは避けられなかったことなんで、
俺自身は諦めてますよ。
さぁ、立ってください。セーバー、トーニャさん」
* * * * *
「《出てきて護れ》」
この場はすでにオベリスクの影響範囲から外れているため、
まずはセーバー達を戦えるように整える必要があった。
俺の声に反応して影から浮遊精霊共が一気に出てきては、
各々の纏主の身体へと溶け込んでいく。
『やっとあの暗い空間から出られましたわ~。
セーバーは無事ですの~?』
「はいはい、無事だよ。
こっからは頼むぞ、リュースィ」
「あの風のおかげで敵の動きが遅くなっているみたいだ」
『ニルの魔法ですわー!』
アルシェ達のサポート用に設置した[ダウンバーストランチャー]。
上空から地面に対して強い強風を持って敵の動きを阻害する範囲バインド魔法で、
ニルの個人使用だと3つまでが限界だが、
俺と一緒であれば5つまで発動させることが出来る。
その為、後方から追いかけてきていた大型はともかく、
小型の禍津核モンスター達は今以上になかなか歩を進めることが出来ないでいた。
「ここからは戦闘しながらアルシェ達のいる後方へ下がってください。
途中でマリエルとサーニャさんが戦う前衛チームがいるので、
そこで合流した方が助かります」
「了解した」
「ここまでの状況はどうなっている?」
元より予定していた動きではあるが、
禍津核モンスターや瘴気モンスター次第で予定は未定になってしまう。
しかし、今回に至っては大きなズレは発生していない為、
作戦前に指示はしていたが、一応同じ内容を再度指示出しをする。
返事をするセーバーとは別に、
ゼノウが外周班のサブリーダーとして状況の開示を求めてきた。
当然ながらオベリスク環境下にいた彼らは、
作戦開始から長らく連絡を取れる状況ではなかった。
「一応作戦通りに進んではいる。
メリオPTは街の中の生存者を影に回収しつつギルドに向かっているし、
救出部隊のメリーとクーもギルド近くの外壁に到着している。
俺が外周班の回収と救出班のサポートのために前に出てきている関係で、
俺とアクアが抑えていた瘴気モンスターは概ねアルシェ達後方部隊の護衛隊が対処中だ」
「支援役の貴男が任せたって事は、抜けても対処できるって判断がついたんですか?」
「えぇ。瘴気モンスターは瘴気を纏った状態だと浮遊精霊の鎧と似た効果を持ちます。
そうなると体力勝負になってしまいますが、
一応サーニャさんの武器が光属性を持っていますし、
アクアとアルシェのコンビも居ますから今のところはなんとかなっているようですね」
「では、早めに合流すべきですね」
セーバーの仲間の質問は瘴気モンスターの説明に利用させてもらい、
シスターズの姉トーニャさんもクレアと妹が心配なのか、
合流に意欲を燃やすが・・・。
「先にデカブツは潰しておかないといけないなぁ・・」
『でも鎌は壊れていますわね-!』
俺の魔法剣を受け手後方へと吹き飛んでいったフライングサイズが、
土煙の向こうから勢いよく飛び出して俺たちへと迫ってくる。
しかし、今回使用した魔法剣[翠雷破天突]は、
大型の敵が使用する武器や鎧を破壊する為だけの技なので、
これで倒しきれるとは思っていなかった。
威力としては大きな鎌鼬(かまいたち)に振動と雷を付与して切断力
と突進力に特化している。
足下からしか生やすことの出来ない[蒼天氷覇斬]では、
倒すことは出来ても敵の弱体化は出来ないので、
別役割として編み出した剣技である。
そんな技をもろに受け止めたランク4の禍津核モンスターの武器はボロボロになっていた。
まぁ、実験としては成功なんだろうけど、
禍津核製ということは・・・。
「おい、せっかく壊れたってのにすげぇ早さで修復してんぞ」
「予想通りなので驚くことでもないですね。
大型はあの2体だけですか?」
「襲われた限りだとあの2体だけです。
他にも起動していない禍津核はあるかもしれません」
「なら、デカブツは俺とトーニャさんで対応しましょう。
小型は・・・まぁどっちでもいいです。
アルシェ達と合流する間に引き連れて行ってもいいですからね」
「「「「了解っ!」」」」
「正面からは瘴気モンスターも襲いかかってくる可能性があるからお気を付けて。
トーニャさんは影を通してあちらに送りますから・・・行ってください!」
俺のかけ声と共に走り始めるトーニャさんと、
残った2頭の馬に乗り換えて別方向へと走り始める4人。
敵さんも大型をぶっ飛ばした事で俺にヘイトが集まっているので、
小型も含めてほぼ全員が俺とトーニャさんに向かって攻撃を始めていた。
「ニル、トーニャさんに矢躱しを」
『ですわー!《ウインドディフェンダー》』
ニルの魔法[ウインドディフェンダー]。
矢躱しと言ったとおり、飛んできた矢の軌道をズラす程度の能力だ。
対象を中心にして周囲2mほどに風の結界を張り、
戦闘の邪魔にならない程度の支援を行ってくれる。
「?何が起こったんですか?」
「剣を振るう範囲外に風の結界を作りました。
フォレストゴブリン程度のランクの矢なら軌道をズラしてくれます」
「なるほど、戦闘に集中できると言うことですね。助かります」
「トーニャさんはどっちの相手がしたいですか?」
「相性を考えれば蟷螂ですが、
レベルや一撃の重さを考えれば亀を相手すべきですかね」
「そうですね、そうしてもらえると助かります。
代わりに小型もこっちで処理しますよ」
「では」
「ご武運を」
『ですわー!』
妹の方とほぼ同じ大きさの極大剣を持っているにも関わらず、
流石の加速力でトータスへと走り去るトーニャを見送る事はせず、
まずはフライングサイズと接敵する前に雑魚を叩いておく為動き出す。
『バットが動き回って狙いづらいですわー!』
「そういう時こそ、《風竜一閃!》」
一閃に触れれば当然切断されるし、
周囲に鎌鼬を起こす風竜一閃は動き回る敵相手には有効な攻撃手段だ。
首を斬り飛ばされる個体や身体を真っ二つにされる個体が居る中、
しゃがんで躱したり高く飛んでアクロバットに回避するやつも居たが、
そんなのは関係なしに遠慮無くぶっ放した風竜一閃は後追いの鎌鼬でその全てを切り刻んでいく。
『《ウインドブラスト!》ですわー!』
それでも後方に配置していた雑魚の核破壊までは出来ていなかった様子なので、
ニルが幾本もの魔法を撃ち放ちトドメを刺していく。
「やっぱランク3はもう相手にならないな」
『余裕ですわー!』
風精霊纏をすると全体的なステータスが向上する。
アクアとの[竜]は魔法特化型、
クーとの[天狗]は隠密機動型、
そしてニルの[鎌鼬]は近接特化型と成っている。
シンクロは1+1=2の計算式だが、
精霊纏に至っては1+1=3~4と戦闘力の質も上がる。
俺1人でこの場に居たならば、
風竜一閃だけでここまでの威力にはならず、
矢躱しも魔法では無く制御力で薄く風の護りを作る程度しか出来ないので、
絶対に当たらないという保証が出来なかったのだ。
「FUSHAAAAAAAAAAAA!!!」
その強化された中でも単体威力の高い[翠雷破点突]は、
先も説明したとおり武器の破壊を目的にしたものである。
上空の風を刃の形に整え、
高圧と翠雷を持って一点破壊に特化させた剣技。
それを持ってしても武器の破壊は出来ても本体へのダメージは通らなかった時点で、
ランク4のモンスターが3までとは一線を画す存在であることは容易に理解できた。
「キュクロプスの雪辱戦だ」
『誰も怪我させずに潰しますわー!』
当時の戦闘とは関係のないニルですら、
俺の感情が流れ込み鼻息荒めにやる気を漲らせている。
あの時は確かLev.20程度だったから倍近くまで上がっているいまならば、
1人でも対処出来るだろう。
あ、いや、1人じゃ無かったな。
「やるぞ、ニル」
『やってやるですのー!』
眼前に迫っても突進の速度を全く変えずに、
その勢いのまま俺たちを大鎌で斬り付けようと振り掛かってくる動きを冷静に見据えながら、
シャイイィィィィイイイイィィィイインッ!
と、小気味良いパリィの音が辺りに響き渡る。
威力は高い、速度も侮れない、図体も大きい。
それでも俺たちが勝つイメージしか頭には浮かんでこなかった。
鎌を捌いても敵の突進は衰えない為パリィをしながらも身体を後方へと蹴り上げる。
ニルで出来たマントは足まで伸びていて、
膝下からはブーツのような形を取っている。
能力で風を味方に付け浮遊に近い状態で後ろに一旦下がりはしたが、
次の瞬間には地面を再度蹴り上げて敵の懐へと逆に飛び込む。
右手の鎌は先ほど捌いたが、
次に左手の鎌が水平に振られたのを回避するのが飛び込んだ理由の1つ。
もう一つは・・!
「嵐脚!」
『《ストームインパクト!》』
名前の通りに嵐の様な暴風を脚という一点に集中させて蹴るだけの技ではあるが、
いつどの体勢でも撃てる高威力近接技という点を俺は高評価している。
鎌を避けられたあげくに、
ただのキックとは思えない衝撃を持って中空へと打ち上げられた大型カマキリは、
堅い表皮を砕かれながらも錐揉みしながらも、
攻撃の意思を捨てずに彼なりの鎌鼬を両手の鎌から発射する。
縦に2本の大きい鎌鼬を避けるのは容易いが、
今は城下町を背後にしているためそうもいかない。
「風竜嵐閃!」
その場で一回転する間に風を剣身に纏わせ、
風竜一閃と共に2本の鎌鼬へ向けて斬り放つ。
以前は木枯らし程度の範囲だった嵐閃は、
風精霊の恩恵を受けて竜巻とも思える効果範囲に広がって俺たちに迫る鎌鼬も、
吹き飛ばれて身動きの取れないフライングサイズをも飲み込んでその場で吹き荒れる。
嵐閃の効果は飲み込んだ敵に小さな一線が継続的に襲いかかるものだ。
表皮は砕いていたし、
このまま終わってくれるのが一番簡単なんだけど・・・。
『うっそ・・・ですわ・・・』
「風精霊から作られているとはいえ、
嵐閃の中から飛び出すってマジか・・・」
流石に俺たちのいる方向ではなかったにしろ、
前よりも強力になった嵐閃からボロボロになりながらも範囲外に飛び出してきた敵に、
送りたくもない賞賛を口にする。
しかし、時間を掛けていられない事情を考慮してほしい。
「四肢も半ば失い、回復に時間を使っている・・。
今がチャンスだな」
『ですわねー、メリーとクー姉さまがお待ちなのです。
さっさと逝ってくださいなー!』
バッ!と剣を天に掲げる。
『《レイボルト!》』
動けないフライングサイズに向けてニルが雷魔法を浴びせかける。
これには攻撃としての役割では無く、
ターゲッティングの役割があるのだ。
「《翠雷を砕け!雷刃剣戟》」
剣身の魔力が高まっていき、
翠色をした雷がパリパリと音を立てだし、
剣身を彩る光も強くなっていく。
『「《翠雷無双突!》」』
剣を振り切ると同時に剣身に溜まっていた魔力は消失し、
光も元の状態に収まっている。
ただし、空から一筋の雷がフライングサイズの目印に向けて落ちてきた。
空だけでは無く、
フライングサイズの身体からも空へ向けて一筋の雷が登っていき、
その2つが中空で交わったとき、
豪雷となって敵を討ち滅ぼす。
空から落ちてくる豪雷、敵の身体から発生し空へと登る豪雷。
凄まじい音と共に降り注ぎ登る雷の光のなかで、
フライングサイズの影が徐々に崩れ落ちていくのが遠目でも確認出来た。
アウルカリバーンを持っていない左手を自然と見つめ、
グッと握る拳の意味。
「やっとここまで来れた」
拳から力を抜き視線を剥がすと、
トーニャの方もほぼ同時にランパードトータスの核を破壊する様を見ることになった。
四肢をもがれ、
甲羅も粉々に割られた末に核を破壊されたトータスが可哀想に思える現場には何も言わずにトーニャへと近づいていく。
「トーニャさん、影からクレア達の元へ送ります。
あちらではアルシェの指示に従ってください」
「わかりました、ご武運を」
無駄な会話などをせずにさっさと影に入っていくトーニャ。
俺たちも余計な邪魔が入らないうちにメリー達の支援をする為に移動を開始しよう。
「行くぞ、ニル」
『かしこまりですわー!』
範囲も広がってきてるからこれ以上は俺たちだけじゃ無理かっ!?」
『あるぅにごうりゅうはさんせ~い!
あくあもこれいじょうはへらせないよぉ~!』
セーバーたち外周班が仕事をした成果として、
俺たちに押し寄せてくる瘴気モンスターの数は順調にその勢力を増していった。
多少オツムが弱いのか、
1割くらいが外壁をよじ登ろうとするなか、
ほとんどの賢いモンスターは第一目標に俺とアクアを目指して襲いかかってくる。
「《光竜一閃!》」
ドパパパパパパパパパパパンッ!
両手持ちで振るうサンクトゥスの剣先から放たれる一筋の光は、
森の木々などには傷を付けること無く通り過ぎ、
瘴気から成る黒紫色のオーラを纏ったモンスターにのみHIT判定をする。
先の音は光の魔力が瘴気の鎧を剥ぎ取る音。
その際に弾ける光の粒子が全身に降り注ぐモンスター達には毒なのか、
苦悶の表情を浮かべつつも足が少し遅くなる。
『《勇者の剣!》』
その動きを止めてしまったモンスターに空から氷の槍が降り注ぐ。
一撃一撃が足や腕など四肢を撃ち抜いていき、
モンスターの行動に障害を与えていく。
すでにこの状態を2時間は続けていて、
襲いかかる4割は俺とアクアが処理をし、
残り6割はアルシェ達後方部隊の護衛に処理を任せている。
それもそろそろ抑えきれなくなってきた為、
次のステージに強制的に進んでしまうらしい。
〔ご主人様、ギルドに近い外壁に到達致しました〕
〔お父さま、これより突入します!〕
「応!気をつけて行ってこい!アクア、撤収するぞ!」
『あい!あるぅ、もどるからねぇ~!』
〔いつでも大丈夫です!〕
「先に武器を返却する。マリエルが引っ張り出してサーニャさんに渡してやってくれ!
ニルは魔法の発動と入れ替わりでアクアと交代して俺と合流!」
〔〔あいあいさー!〕ですわー!〕
メリーとクーの報告を受けて、ついに救出を始める準備が整ったことを知る。
この後は安全に救出を行うために俺も勇者達に混ざってギルド周辺に発生した瘴気モンスター、
もしくは障害の排除をすることとなる。
「メリーも準備はいいか?」
〔いつでも可能です〕
動きについては各員には伝え済み。
ここまでは敵勢力も瘴気モンスターだけしか出現しておらず、
今回のメインで有り敵陣での防衛というもっとも危険な場面へと転換するため、
チームは大きく2つに分けて、
中で救出する時間を稼ぐ班と外で治療と護衛をする班。
外には外周班のセーバー達を回す予定になっているが、
現在はメリーの合図が上がるまで外周を走っているはずだ。
彼らをアルシェと合流させる手助けも俺の仕事には含まれているので、
ギルド方面に向かいつつもアルシェの魔法の範囲内に入るまでは、
セーバー達とゼノウ達の守護も俺が勤める。
「全員、準備はいいな!」
〔〔〔〔〔『はい!』〕〕〕〕〕
「アクア、アルシェ!」
『〔シンクロ!〕』
「「『氷鮫の刃!』」」
発動はアルシェがいる場所。
アルシェが翳す手のひらの先に広がる平原から、
合計4本の氷鮫の刃が彼女たちを守るように出現しては巡回するように走り始める。
「《アイシクルキューブ!》」
身長の低いアルシェは少しでも敵影とシャークの軌道が読めるようにと、
視界を広めるために足下に氷を発生させて視点を高くした。
『《ダウンバーストランチャー!》ですわー!』
3本の放物線を描きながら飛んでいく風の塊が、
前衛として戦っていたマリエルとサーニャの上を通り過ぎ、
その前方に着弾する。
その場には少し広めの風のトラップが設置され、
上空からの強烈な風が間断なく地面に降り注ぐ。
あの場に足を踏み入れたモンスターを進めることは出来ず、
地面に身体ごと縫い付けられることだろう。
「さぁ、どうぞサーニャさん」
「ありがとう、マリエルさん」
上空をニルの魔法が通り過ぎている同時刻に、
マリエルは影の中から光る大剣を引っ張り出して元の持ち主に返却していた。
『じゃあいってきま~す!』
「あぁ、しっかりアルシェ達を守ってやれ!」
上空から宗八の影に飛び込んで潜る瞬間に交わす会話には、
アクアと宗八の絆が見て取れた。
先の大半は弱ったところをアクアの魔法で撃ち貫かれ煙のように姿を消したが、
生き残った十数匹は俺が処理しなければならない。
サンクトゥスを影に落としてからは相棒交代に合わせて雷光剣を装備し、
すでに武器加階も済ませている。
『ニル~!』
『アクア姉さまー!』
影に潜って交代をするために交差する2人の幼い精霊。
『ますたーをおねがいね~!』
『アルシェをお願いしますわー!』
パンッ!と、小気味良い音を立てて中空に浮遊する2人は、
すれ違い様にお互いの後を任せる台詞を伝えつつ手と手を打ち合わせる。
アクアはそのまま口の開いた出口から出ていき、
ニルは影の中に生えている宗八の手の中に飛び込んだ。
『おまたせ~、ある~』
「よろしくね、アクアちゃん」
『お待たせしましたわ-、宗八-!』
「応、良いタイミングだわ。頼むぞ!」
ドパァァァァァアアン!
遙か彼方の空で打ち上がるヴァーンレイド。
あの合図はメリーがこっちのタイミングに合わせて打ち上げたセーバー達撤退の合図。
すなわち、あのオベリスク群から離れるということは瘴気モンスターに襲われるし、
さらに運が悪ければ禍津核モンスターにすら襲われる危険性も孕む。
現在はオベリスク影響下で動く状況から、
浮遊精霊は全員影の中へと避難させているので、
襲われた際に怪我を負ってしまう危険性を多分に孕んだ状態だ。
精霊への命令は現時点で俺にしか出来ないため、
早めに合流して早めに浮遊精霊の鎧を纏わせないといけない。
「ニル」
『《雷纏!》』
「『《風精霊纏!!》』」
* * * * *
ドパァァァァァアアン!
退避の合図が空を赤く彩り、
空気を振るわせて知らせてくれる。
しかし、外周班のセーバー達はUターンをしたくとも出来ない状況に追い込まれていた。
「あっぶねぇなぁ、おいっ!」
「口じゃ無くて手ぇ動かせっ!」
足として利用していた馬は魔力切れで1頭減り、
逃げ出してさらに1頭が減った。
そして、少し前からオベリスクと挟むように、
背後から突如出現した大型モンスターに1頭殺され、
馬の数は3頭にまでその数は減ってしまっていた。
「・・・私が!」
「駄目に決まってんだろう!レベルも経験も俺たちと差があるとはいえ、
今は浮遊精霊の鎧が無いんだぞっ!
掠りでもすりゃ死んじまうぞ!」
自分が手綱を握る馬から背後に座るトーニャの気配と言葉に反応し、
叱咤を投げかける一方で、
必死に馬の進行を指示するセーバー。
彼ら外周班の前に現れたモンスターは、
予想通り数多く発見し辛いように配置された禍津核。
通り過ぎたあとからどういう絡繰りなのかは不明だが、
このタイミングでモンスターとして姿を変え、
襲いかかってきたのである。
「宗八っ!宗八っ!まだかぁ!?」
〔い・・・って・・・んばれ〕
「宗八は何だって!?」
「多分だが、いま向かっている、頑張れ。だとよっ!」
「せめてオベリスクの範囲内から出なければっ!」
襲いかかる禍津核モンスターは、
本来ランク3ダンジョンで見かけるフォレストゴブリンとサンダーバットが合計70体ほど。
大型に至ってはランク4のランパードトータスとフライングサイズ。
フォレストゴブリンの弓矢攻撃も、
サンダーバットの急降下も、
ランパートトータスの踏みつけも、
フライングサイズの斬り付け攻撃も、
全てが魔法ではなく己の所持する武器や肉体を使った攻撃のため、
威力の減衰は期待出来ず、
外周班は必死に回避と逃走を続けるしか無かった。
「受け流すのも不安定な状態できっついな・・・」
「馬にも負担をかけてしまいます・・・」
セーバーが馬の荒げる息を心配するなか、
後ろに座るトーニャが小さな動きでフォレストゴブリンの矢を斬り払う。
息のリズムが崩れてきている所をみると、
恐慌と体力の限界のどちらも来ているのだろう。
長くは持たなそうだ・・・。
「セーバー様っ!」
「「セーバーっ!」」
「っ!?」
意識を馬に向けたその小さな隙を見逃さず、
禍津核モンスターは一斉にセーバー達の乗る一頭に集中攻撃を仕掛けてきた。
小型モンスターの矢や体当たり程度ならば、
トーニャが大剣を最小の動きと技術で受け流す事は出来る。
現に注意の声を上げながらもしっかりと受けきっている。
しかし、その後に続く砲岩と大きな鎌が、
ほぼノータイムで襲いかかる次段についてはどう考えても避けきることは出来なかった。
回避指示を馬にするには遅すぎるし、
出来ていたとしても疲れて冷静ではない馬にその動きが出来たとは思えない。
どちらにしろ、
不安定な状態では如何にレベルも技術も高いトーニャが受けるとはいえ、
通常の大きさよりも大きなランパードトータスの吐き出す巨岩は、
馬への負担が大きすぎるし、
浮遊精霊を纏っていない現状で受けるにはあまりにも凶悪な威力を持っている。
その後すぐに鋭い凶刃が間髪入れずに斬り込んでくる。
これを避けるのも受け流すの無理に等しかった。
「セーバー様、飛びます!」
「は?うぉおおおおおおおおおおおお!!!」
自分と同じ判断を下したらしいトーニャは巨岩から目を離してセーバーの方を振り返ると、
一言だけ伝えてセーバーを掴んで馬から飛び降りた。
次の瞬間には巨岩が馬を押しつぶしながら、
自分たちのすぐ横の地面をえぐりながら通り過ぎていく様が目に映る。
間一髪生還したと思うも束の間。
凶刃を振るう為飛び込んできていたフライングサイズは、
直前になり標的が横に逸れたことをしっかりと目視しており、
その手に着いている鎌の軌道を変更させる。
「おいおいおいっ!まじかっ!」
「この攻撃では死にはしませんが、吹き飛ばされた衝撃で死ぬかもしれませんね・・」
オリジナルのフライングサイズはバイトルアントと同サイズの蟷螂型モンスターだ。
当然オリジナルに比べて比にならない俊敏性と筋力を持って、
予想できなかった軌道修正を行う彼に向けた中空状態の2人の会話。
焦りと予感をそれぞれが抱き、周囲の仲間も応戦しつつも声を張り上げる。
〔死んでもらっちゃ困るんだよなぁ!《翠雷を砕け!風刃剣戟!》〕
「『《翠雷破点突(はてんづき)!》』」
前半は揺蕩う唄からはっきりと・・。
後半は微かに自身の耳に生の声が聞こえた気がした。
そして、目の前に迫っていた凶刃に至っては、
空から飛来した目に捉えられない巨大な刃を察知して、
鎌を手元に引き戻し防御の姿勢を取るが、
およそ風が起こすとは思えない金属音を響かせながらフライングサイズを遙か後方まで吹き飛ばす。
「くぅ~・・・いてぇ。トーニャ、大丈夫か?」
「はい、生きています。今のは?」
「このタイミングに間に合うのは宗八だろう」
『ニルも一緒ですわー!』
地面に転がる2人の側にふわりと誰かが着地する。
声からして察してはいるものの、
先の合図からさほど時間も経っていないのにここまで到着できるものなのかと疑問も出るが、
ひとまず視覚にて確認するために足下から見上げることにしたセーバー。
まず、深緑のブーツを足の先から膝まで履いており、
そのブーツは途切れることも無く太ももの後ろからマントの一部と繋がっていた。
そしてマントもマントで、
先が7つに分かれ、うち2つはブーツへと伸びているのだが、
他の先端は円形の形を取っていて中央にはそれぞれ雷のマークが入っている。
2対1対2で1はお尻の部分だが、
綺麗に斜めに揃っていて若干のオシャレ感がこの場に似つかわしくなくイラっと来る。
頭に目を向けると、
足先は深緑であったのに上に行くにつれて色が薄く鮮やかになっているようにも見えた。
それになんだろうか、あの頭に着いている2つの長い耳は・・・。
いや、絶対にウサギの耳だ。
先ほど宗八とは別に聞こえた声の主はニルと名乗ったことから、
昨日進化していた風精霊のニルチッイだろうし、
確かに進化後の姿はウサギの耳を生やしていた。
「だからといって、男がウサ耳とはどうなんだ?」
「垂れてるし大きすぎないでしょ?
ニルがウサギの姿を手にした時点からこれは避けられなかったことなんで、
俺自身は諦めてますよ。
さぁ、立ってください。セーバー、トーニャさん」
* * * * *
「《出てきて護れ》」
この場はすでにオベリスクの影響範囲から外れているため、
まずはセーバー達を戦えるように整える必要があった。
俺の声に反応して影から浮遊精霊共が一気に出てきては、
各々の纏主の身体へと溶け込んでいく。
『やっとあの暗い空間から出られましたわ~。
セーバーは無事ですの~?』
「はいはい、無事だよ。
こっからは頼むぞ、リュースィ」
「あの風のおかげで敵の動きが遅くなっているみたいだ」
『ニルの魔法ですわー!』
アルシェ達のサポート用に設置した[ダウンバーストランチャー]。
上空から地面に対して強い強風を持って敵の動きを阻害する範囲バインド魔法で、
ニルの個人使用だと3つまでが限界だが、
俺と一緒であれば5つまで発動させることが出来る。
その為、後方から追いかけてきていた大型はともかく、
小型の禍津核モンスター達は今以上になかなか歩を進めることが出来ないでいた。
「ここからは戦闘しながらアルシェ達のいる後方へ下がってください。
途中でマリエルとサーニャさんが戦う前衛チームがいるので、
そこで合流した方が助かります」
「了解した」
「ここまでの状況はどうなっている?」
元より予定していた動きではあるが、
禍津核モンスターや瘴気モンスター次第で予定は未定になってしまう。
しかし、今回に至っては大きなズレは発生していない為、
作戦前に指示はしていたが、一応同じ内容を再度指示出しをする。
返事をするセーバーとは別に、
ゼノウが外周班のサブリーダーとして状況の開示を求めてきた。
当然ながらオベリスク環境下にいた彼らは、
作戦開始から長らく連絡を取れる状況ではなかった。
「一応作戦通りに進んではいる。
メリオPTは街の中の生存者を影に回収しつつギルドに向かっているし、
救出部隊のメリーとクーもギルド近くの外壁に到着している。
俺が外周班の回収と救出班のサポートのために前に出てきている関係で、
俺とアクアが抑えていた瘴気モンスターは概ねアルシェ達後方部隊の護衛隊が対処中だ」
「支援役の貴男が任せたって事は、抜けても対処できるって判断がついたんですか?」
「えぇ。瘴気モンスターは瘴気を纏った状態だと浮遊精霊の鎧と似た効果を持ちます。
そうなると体力勝負になってしまいますが、
一応サーニャさんの武器が光属性を持っていますし、
アクアとアルシェのコンビも居ますから今のところはなんとかなっているようですね」
「では、早めに合流すべきですね」
セーバーの仲間の質問は瘴気モンスターの説明に利用させてもらい、
シスターズの姉トーニャさんもクレアと妹が心配なのか、
合流に意欲を燃やすが・・・。
「先にデカブツは潰しておかないといけないなぁ・・」
『でも鎌は壊れていますわね-!』
俺の魔法剣を受け手後方へと吹き飛んでいったフライングサイズが、
土煙の向こうから勢いよく飛び出して俺たちへと迫ってくる。
しかし、今回使用した魔法剣[翠雷破天突]は、
大型の敵が使用する武器や鎧を破壊する為だけの技なので、
これで倒しきれるとは思っていなかった。
威力としては大きな鎌鼬(かまいたち)に振動と雷を付与して切断力
と突進力に特化している。
足下からしか生やすことの出来ない[蒼天氷覇斬]では、
倒すことは出来ても敵の弱体化は出来ないので、
別役割として編み出した剣技である。
そんな技をもろに受け止めたランク4の禍津核モンスターの武器はボロボロになっていた。
まぁ、実験としては成功なんだろうけど、
禍津核製ということは・・・。
「おい、せっかく壊れたってのにすげぇ早さで修復してんぞ」
「予想通りなので驚くことでもないですね。
大型はあの2体だけですか?」
「襲われた限りだとあの2体だけです。
他にも起動していない禍津核はあるかもしれません」
「なら、デカブツは俺とトーニャさんで対応しましょう。
小型は・・・まぁどっちでもいいです。
アルシェ達と合流する間に引き連れて行ってもいいですからね」
「「「「了解っ!」」」」
「正面からは瘴気モンスターも襲いかかってくる可能性があるからお気を付けて。
トーニャさんは影を通してあちらに送りますから・・・行ってください!」
俺のかけ声と共に走り始めるトーニャさんと、
残った2頭の馬に乗り換えて別方向へと走り始める4人。
敵さんも大型をぶっ飛ばした事で俺にヘイトが集まっているので、
小型も含めてほぼ全員が俺とトーニャさんに向かって攻撃を始めていた。
「ニル、トーニャさんに矢躱しを」
『ですわー!《ウインドディフェンダー》』
ニルの魔法[ウインドディフェンダー]。
矢躱しと言ったとおり、飛んできた矢の軌道をズラす程度の能力だ。
対象を中心にして周囲2mほどに風の結界を張り、
戦闘の邪魔にならない程度の支援を行ってくれる。
「?何が起こったんですか?」
「剣を振るう範囲外に風の結界を作りました。
フォレストゴブリン程度のランクの矢なら軌道をズラしてくれます」
「なるほど、戦闘に集中できると言うことですね。助かります」
「トーニャさんはどっちの相手がしたいですか?」
「相性を考えれば蟷螂ですが、
レベルや一撃の重さを考えれば亀を相手すべきですかね」
「そうですね、そうしてもらえると助かります。
代わりに小型もこっちで処理しますよ」
「では」
「ご武運を」
『ですわー!』
妹の方とほぼ同じ大きさの極大剣を持っているにも関わらず、
流石の加速力でトータスへと走り去るトーニャを見送る事はせず、
まずはフライングサイズと接敵する前に雑魚を叩いておく為動き出す。
『バットが動き回って狙いづらいですわー!』
「そういう時こそ、《風竜一閃!》」
一閃に触れれば当然切断されるし、
周囲に鎌鼬を起こす風竜一閃は動き回る敵相手には有効な攻撃手段だ。
首を斬り飛ばされる個体や身体を真っ二つにされる個体が居る中、
しゃがんで躱したり高く飛んでアクロバットに回避するやつも居たが、
そんなのは関係なしに遠慮無くぶっ放した風竜一閃は後追いの鎌鼬でその全てを切り刻んでいく。
『《ウインドブラスト!》ですわー!』
それでも後方に配置していた雑魚の核破壊までは出来ていなかった様子なので、
ニルが幾本もの魔法を撃ち放ちトドメを刺していく。
「やっぱランク3はもう相手にならないな」
『余裕ですわー!』
風精霊纏をすると全体的なステータスが向上する。
アクアとの[竜]は魔法特化型、
クーとの[天狗]は隠密機動型、
そしてニルの[鎌鼬]は近接特化型と成っている。
シンクロは1+1=2の計算式だが、
精霊纏に至っては1+1=3~4と戦闘力の質も上がる。
俺1人でこの場に居たならば、
風竜一閃だけでここまでの威力にはならず、
矢躱しも魔法では無く制御力で薄く風の護りを作る程度しか出来ないので、
絶対に当たらないという保証が出来なかったのだ。
「FUSHAAAAAAAAAAAA!!!」
その強化された中でも単体威力の高い[翠雷破点突]は、
先も説明したとおり武器の破壊を目的にしたものである。
上空の風を刃の形に整え、
高圧と翠雷を持って一点破壊に特化させた剣技。
それを持ってしても武器の破壊は出来ても本体へのダメージは通らなかった時点で、
ランク4のモンスターが3までとは一線を画す存在であることは容易に理解できた。
「キュクロプスの雪辱戦だ」
『誰も怪我させずに潰しますわー!』
当時の戦闘とは関係のないニルですら、
俺の感情が流れ込み鼻息荒めにやる気を漲らせている。
あの時は確かLev.20程度だったから倍近くまで上がっているいまならば、
1人でも対処出来るだろう。
あ、いや、1人じゃ無かったな。
「やるぞ、ニル」
『やってやるですのー!』
眼前に迫っても突進の速度を全く変えずに、
その勢いのまま俺たちを大鎌で斬り付けようと振り掛かってくる動きを冷静に見据えながら、
シャイイィィィィイイイイィィィイインッ!
と、小気味良いパリィの音が辺りに響き渡る。
威力は高い、速度も侮れない、図体も大きい。
それでも俺たちが勝つイメージしか頭には浮かんでこなかった。
鎌を捌いても敵の突進は衰えない為パリィをしながらも身体を後方へと蹴り上げる。
ニルで出来たマントは足まで伸びていて、
膝下からはブーツのような形を取っている。
能力で風を味方に付け浮遊に近い状態で後ろに一旦下がりはしたが、
次の瞬間には地面を再度蹴り上げて敵の懐へと逆に飛び込む。
右手の鎌は先ほど捌いたが、
次に左手の鎌が水平に振られたのを回避するのが飛び込んだ理由の1つ。
もう一つは・・!
「嵐脚!」
『《ストームインパクト!》』
名前の通りに嵐の様な暴風を脚という一点に集中させて蹴るだけの技ではあるが、
いつどの体勢でも撃てる高威力近接技という点を俺は高評価している。
鎌を避けられたあげくに、
ただのキックとは思えない衝撃を持って中空へと打ち上げられた大型カマキリは、
堅い表皮を砕かれながらも錐揉みしながらも、
攻撃の意思を捨てずに彼なりの鎌鼬を両手の鎌から発射する。
縦に2本の大きい鎌鼬を避けるのは容易いが、
今は城下町を背後にしているためそうもいかない。
「風竜嵐閃!」
その場で一回転する間に風を剣身に纏わせ、
風竜一閃と共に2本の鎌鼬へ向けて斬り放つ。
以前は木枯らし程度の範囲だった嵐閃は、
風精霊の恩恵を受けて竜巻とも思える効果範囲に広がって俺たちに迫る鎌鼬も、
吹き飛ばれて身動きの取れないフライングサイズをも飲み込んでその場で吹き荒れる。
嵐閃の効果は飲み込んだ敵に小さな一線が継続的に襲いかかるものだ。
表皮は砕いていたし、
このまま終わってくれるのが一番簡単なんだけど・・・。
『うっそ・・・ですわ・・・』
「風精霊から作られているとはいえ、
嵐閃の中から飛び出すってマジか・・・」
流石に俺たちのいる方向ではなかったにしろ、
前よりも強力になった嵐閃からボロボロになりながらも範囲外に飛び出してきた敵に、
送りたくもない賞賛を口にする。
しかし、時間を掛けていられない事情を考慮してほしい。
「四肢も半ば失い、回復に時間を使っている・・。
今がチャンスだな」
『ですわねー、メリーとクー姉さまがお待ちなのです。
さっさと逝ってくださいなー!』
バッ!と剣を天に掲げる。
『《レイボルト!》』
動けないフライングサイズに向けてニルが雷魔法を浴びせかける。
これには攻撃としての役割では無く、
ターゲッティングの役割があるのだ。
「《翠雷を砕け!雷刃剣戟》」
剣身の魔力が高まっていき、
翠色をした雷がパリパリと音を立てだし、
剣身を彩る光も強くなっていく。
『「《翠雷無双突!》」』
剣を振り切ると同時に剣身に溜まっていた魔力は消失し、
光も元の状態に収まっている。
ただし、空から一筋の雷がフライングサイズの目印に向けて落ちてきた。
空だけでは無く、
フライングサイズの身体からも空へ向けて一筋の雷が登っていき、
その2つが中空で交わったとき、
豪雷となって敵を討ち滅ぼす。
空から落ちてくる豪雷、敵の身体から発生し空へと登る豪雷。
凄まじい音と共に降り注ぎ登る雷の光のなかで、
フライングサイズの影が徐々に崩れ落ちていくのが遠目でも確認出来た。
アウルカリバーンを持っていない左手を自然と見つめ、
グッと握る拳の意味。
「やっとここまで来れた」
拳から力を抜き視線を剥がすと、
トーニャの方もほぼ同時にランパードトータスの核を破壊する様を見ることになった。
四肢をもがれ、
甲羅も粉々に割られた末に核を破壊されたトータスが可哀想に思える現場には何も言わずにトーニャへと近づいていく。
「トーニャさん、影からクレア達の元へ送ります。
あちらではアルシェの指示に従ってください」
「わかりました、ご武運を」
無駄な会話などをせずにさっさと影に入っていくトーニャ。
俺たちも余計な邪魔が入らないうちにメリー達の支援をする為に移動を開始しよう。
「行くぞ、ニル」
『かしこまりですわー!』
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