特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第12章 -廃都フォレストトーレ奪還作戦-

†第12章† -16話-[メリー&クー VS 青鬼]

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『魔力を高めても2秒程度ですね』

 クーデルカが魔法で創造した人工アーティファクト[虚空暗器こくうあんき]。
 姉のアクアが創造した人工アーティファクト[お魚さんソード]と違い、
 双剣ダーケンライオット大剣ダインスレイフ、遠距離で使用する大型チャクラムの光狩圓こうがえんに大槌である黒玄翁くろげんのう
 そしてダーケンブルームの4つを主に使用して戦闘を繰り広げていたが、
 今し方双剣ダーケンライオット影縫かげぬいの杭として影に打ち込んでみたものの、やはりあまり効果は期待出来ないらしい。

「《編盾あみたて!!》」

 迫った単純な殴打を地面から生えてきた閻手えんじゅが交互に重なり盾となり受け止める。
 しかし、一枚では受け止められない事は既に実験済みの為、
 先んじて四枚重ねで受け止めた。

 考え無しに殴る蹴るだけを繰り返す敵であれば時間稼ぎになる。
 ただ、相手は高ランクの青鬼インディゴオーガ
 残念ながら時間稼ぎをしてこちらに利はないし、
 何より敵は腰を落とした正拳突きを少しの溜めを行った後に放つと、
 盾は散り散りにはじけ飛んだ。

「タイプ:ダーケンブルーム!《ほうき星っ!》」

『《多重閻手マルチプルダーク!》シフト:八重刃』

 名の通り、ダーケンブルームは星のように流れ、それを握るメリー達自身を一瞬で青鬼インディゴオーガの懐まで運んでくれる。

 そして、クーの発動した魔法によりダーケンブルームの先端に馬上槍ランスの円錐を模した先端が付与されるとそのまま青鬼インディゴオーガを腹を貫いた。

「致命傷ではありませんっ!退きますっ!」

『《千手閻手ランページ・ダーク!》』

 青鬼インディゴオーガは腹に穴が空いても動きに支障はなく、
 メリー達をその両腕で抱き込もうとしてきた為、
 クーデルカは魔法で迫る2本の腕を一瞬でも止めてその隙にメリーはバックステップで脱出した。

 戦闘には慣れてきた。
 しかし、本来の目的である[黒玄翁くろげんのう]を打ち込む隙を作れていない。
 討伐の手順として[黒玄翁くろげんのう]を通して[波動ブラスト]を流し込み、
 その反応から核の位置を割り出して[月虹一閃げっこういっせん]で破壊するつもりであった。

「仕方ありません。
 黒玄翁くろげんのうは質量も大きいですからどうしても大きめの隙を作ってからでなければ逆にこちらの隙を作るだけになってしまいます」
『わかってはいますが・・・、禍津核まがつかく瘴気モンスターは本当に厄介ですね。
 まぁ、本来クー達で相手が出来るランクの敵ではありませんから・・・』

 青鬼インディゴオーガが交差させた腕を開けばその腹に空けた穴は既に修復された状態で2人の目に止まる。

 土手っ腹は外れでしたか・・・。
 あれで核の端にでも擦れば御の字だったのですが。
 穴と言っても数cmしか刺さっていませんでしたし、
 肉体の大きさから見れば大した傷でもありませんか・・・。

 メリー達は無傷になった青鬼インディゴオーガ一瞥いちべつすると横移動を開始。
 武闘家のように無骨な印象の青鬼インディゴオーガはいちいち視線でこちらを追わずに気配を読んでいるらしい。
 ただし、こちらも気配を消したり姿を消したりとトリッキーに敵の索敵を回避するので特にこの点は苦ではない。

『他の魔法は今以上の攻撃力はありません。
 どうあっても[黒玄翁くろげんのう]を当てるしか手が無くなりました』
「基本は身体強化で隙が出れば、という事ですね。かしこまりました」

 2人に取れる作戦は残りひとつしかない。
 それをお互いが認識すると、自然と次の詠唱を重ねて口にする。


「『《タイプ:黒玄翁くろげんのうっ!!!》』」


 手にしていたダーケンブルームは霧状となって姿形を変え、
 代わりに模られたのは黒く輝く大槌。
 本来は[多重閻手マルチプルダーク]の手数として使っていた黒玄翁くろげんのう
 それを[虚空暗器こくうあんき]にそのまま組み込んだ為、プロセスは楽になり切り替えもスムーズになっていた。

「やはり、少々軽いですね」
『ハリボテですからね。
 隙が出来次第畳み掛けたい所ですが、最初のチャンスでどこまで叩けるかが鍵になります』
「心して掛かります」

 作戦は言わずもがな。
 支援特化の闇精霊らしい正々堂々とは異なるトリッキーな戦い方を選んだ。

『行きましょう!』
「よろしくおねがいします!」

 黒玄翁くろげんのうを両手に握ったメリー達は何度目かの接触を行うべく青鬼インディゴオーガへ駆け寄っていく。

 ただ今までと違う行動を取るのは何もこちらばかりではなかった。

 青鬼インディゴオーガは両手の平で地面を強く叩くと、
 地震と共に地面は割れ、石飛礫いしつぶてだけでは無く砂塵も宙へと舞い上がって周辺一帯を覆い尽くしてしまう。

 その様子を見届けたメリー達は直ぐさま方向転換を行い、
 砂塵の濃い部分の外周を走り始めた。

「意図がどこまであるにせよ、我々の位置を特定するには良い環境を作りましたね」

 先の行動で地面は隆起や陥没をして凸凹している上に、
 土地柄的に樹木も多くて倒木はさらに走り続ける自分たちの障害となる。

 そして、舞い上がった砂塵は[隠遁ハイド]を使っていても、
 位置を知らせる痕跡をいくつも残してしまう。

「『《波動ブラスト!!》』」

 手にする大槌を使ってメリー達は自分達の周囲を一回転するように薙ぎ払う。
 選択した[波動ブラスト]は本来敵の体内で魔力爆発を起こすことで高防御力を無視するという使い方なのだが、今回は空中でそれを起こすことで砂塵を吹き飛ばしたのだ。

「っ!?」

『そう来ますかっ!!』

 視界を確保する為の動作はメリー達にとって必要なものだった。
 その少ない隙を狙って青鬼インディゴオーガは仕掛けてきた。

 地面から腕だけを出現させるという登場だった。

 その腕はメリー達を掴む動作をしていたが、
 回避されたのが分かるとすぐに地面に再び潜っていった。

青鬼インディゴオーガが影の索敵に引っかからなかった理由がわかりましたね』

「まさか、地面の下を移動してきていたとは・・・。
 しかし、地面の中でも影は有効なのでは?」

『普通ならば砂の隙間に存在する影にて索敵に引っかかります。
 ですが、青鬼インディゴオーガはおそらく地面に潜るという概念で動いています』

「???ど、どういうことでしょうか?」

『概念とはその存在が認識している常識の事です。
 青鬼インディゴオーガは地面の中を自由に移動出来るという常識を持って魔法で潜っていると思われます。亜空間とは別の空間があると言えばわかりやすいでしょうか・・・』

 メリーにそう説明するクーデルカですら現状に多少の混乱を抱いていた。
 空間に多少の違和感でもあればクーデルカも事前にその場を離れる事が出来た。
 なのに、一切違和感も気配も追えずにいきなり足下から出現したのだ。

「対策はございますか?」

『残念ながら概念には概念を当てるのが定石だそうですが、
 お父様曰く、戦闘に概念を持ち出すのは最大の悪手だそうです』

「その心は?」

『どちらも相手の概念を理解出来ずお互い攻撃出来ないまま無為に時間を使うからだと』

「それは確かに悪手ですね」

 今は1分1秒がおしい。
 敵ながらあっぱれと言いたくなるほどに効果的で頭にくる戦術だ。

『概念は理解出来ませんが、おそらく固有結界とでもいうべき代物かと思われます。
 ダーケンブルームで境界を掃けるのではないかと・・・。
 潜口魚せんこうぎょも実際のところは独自の亜空間を持っていたわけですし』

「流石です、クーデルカ様!《タイプ:ダーケンブルーム!》」

 メリーは駆け出す。
 少なくともその足下に青鬼インディゴオーガが潜んでいる事は間違いないので、
 離れながらダーケンブルームで地面を掃いていく。

『うぅむ・・・、そうなりますか・・・』

「目には変わっておりませんが明らかに境は無くなったと認識は出来ます。
 ですが、地面はそのままですね」

 掃いた為地面の上に乗っていた土や石ころは退いている。
 されど、地面は地面のままそこに存在していた。

 潜口魚せんこうぎょの時は掃いた先に空間があったのに。

『概念の壁を掃いても地面の中を移動するという部分が解決していないという訳ですかっ!!』

 振り返る動作のわずかな隙を突いて今度は上半身だけを地面より生やして突進してきた。
 その速さにギョッとしつつすぐさま回避行動に移る。

 どうやら潜っている間は鈍重で動かなかった身体も素早さを手に出来るらしい。

『いずれにせよ、概念の壁は邪魔です。
 試したいこともありますし魔力を高めて一気に払ってしまいましょう』

「かしこまりました」

 宗八そうはちの世界で言えばペイントの筆を太い物へ変更するように、
 掃く範囲は魔力を注げば注ぐほど拡大して概念の壁は取っ払われていく。

 その間も腕やら脚やらが地面から逐次生えてはメリー達を襲い続け、
 メリー達も回避する為に縦横無尽な動きを要求された。
 体操選手もびっくりの技を連発しても息切れを起こすこともなく、擦ることなく回避しきる。

「土煙が完全に失せないですね」

『おそらく青鬼インディゴオーガの中に居るのは土精霊なのでしょう。
 土煙の目くらましも地面割で足場崩しも、そして地面に潜る概念も結びついています』

 地面から出てくるまでは察知出来なくても、
 出て来さえすれば影は発生する。
 影が出来れば察知して回避行動が出来る。

「これで粗方掃き終わりましたね」

『では、改めて攻勢に移りましょう。《タイプ:黒玄翁くろげんのう》!》』

 もう何度目かの武器タイプを変更して黒い大槌はメリーの手に握られる。
 さあ攻撃だ!と勢いづいて動き出したいところだが、
 クーデルカは難しい顔をしてしかめる。

『・・・フロスト・ドラゴンエルレイニア様も少し拙いですね。
 大勢に魔力を分けていただいておりますから残量が心許ない状態です』

「精霊達の魔力はほとんどフロスト・ドラゴンエルレイニア様に肩代わりしていただいておりますし、
 人数を考えれば1日でも持つことが驚きです」

『ここからはクー達の魔力だけで戦いましょう』

「かしこまりました。行きます!」

 目の前にある地面は概念という何かが失われ、
 残るは青鬼インディゴオーガの潜む箱庭だけ。

 概念を操るという点に於いては脅威を感じるが、
 それは干渉が出来ない無敵を相手にする場合だ。
 しかし、守りは砕いた。
 あとは逃げ込んだネズミを一方的に追い詰めて追い詰めて、
 そして追い詰めるだけだ。

『《守護者の波動ガーディアムブラスト》』

 姉の一人である土精ノイティミルが巨大な岩腕で打ち出す波動ブラスト
 それを短い間に時間を見つけては教わったクーデルカは、
 見事それをモノにして打撃に於いて有効打を放てる準備を怠らなかった。

 狙うは極力概念空間の中心点。
 実際の所はそこまで範囲は広くはなく、精々始めに砕かれた地面の範囲がほとんどであった。

 故に青鬼インディゴオーガが作った円状の陥没に向けて鎚を振るえば・・・。


「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA~!!!!」


 狭い箱庭では威力は減衰することなく全域に広がる。
 堪らず全身にヒビが入り弱った青鬼インディゴオーガは上半身だけを地面から生やした状態で悲鳴を上げる。

 下半身は固有結界が失われた事で地面で押しつぶされ失われているらしい。
 血も出てないけれど、そのまま倒れる青鬼インディゴオーガの下半身は確かにスッパリと存在していなかった。

「予想以上の成果です、クーデルカ様」

『上手く行きすぎましたが、行って損はありません。
 あれが演技でなければ下半身を修復する余裕も無いほどに核にダメージが入ったのでしょう』

 それに先に波動ブラストで核の位置も判明した。
 今までであれば特に肉厚になり護りやすい胸元ばかりであったのに、
 何故か今回に限り頭部に核は埋め込まれていた。

「人型だからといってそこまで模す事もないでしょうに・・・」

 メリーは哀れみの瞳を青鬼インディゴオーガへと向ける。
 今も尚、指先から砂へと還っていき、徐々に息の根は終わりを魅せていく。

『トドメを』

「かしこまりました。《タイプ:ダーケンブルーム》」

 歩いて近付いても何を成すことも出来ぬ死に体へ足を運ぶ。
 ダーケンブルームを両手を構え、最後に強敵を瞳に捉えて記憶する。
 強く、勉強になる敵だったと。


「《月虹一閃げっこういっせん》」


 頭部を虹の一閃が刻まれると、
 目元からズルリと流れ落ちる。
 中身には粉々に砕けた核の欠片が散らばっていた。

『やはり土精霊でしたね。
 ただしスィーネ様よりも下の位階・・・、それであの強さですか』
「ともかく影に回収して時間の許す限り集団を対処しつつアルシェ様と合流致しましょう」

 ふぅ、と嘆息しながらメイド服に付いた土をはたく。
 太陽はもう山の向こうへと消えるまで幾ばくもない事を確認して、
 メリーとクーデルカはPTメンバーと共に再び駆け始めた。


 * * * * *
「《サンダースタンピード!!》」

 雷の鎚[ミョルニル]から溢れ出すように打ち上げられた太い雷から幾重にも分かれた雷が降り注ぐ。

「雷の速さって慣れんな」
『慣れたら本当に人じゃなくなるですよっ!ほら来た!』

 レイスと瘴気の掃除を進めているうち、
 いつの間にか霹靂へきれきのナユタと接近していたらしい。
 雪崩れ込むように戦闘が始まり今に至る。

「すぅ~・・・んっ!ふっ!ふっ!おっ!んっ!っしゃ!!」

 既に数時間は使っている精霊の呼吸エレメンタルブレス
 脅威的なステータスの上昇に初めは振り回されていたけれど、
 それも次第に慣れていき、今やこんな神業染みた事すらも可能になった。

 手にするお魚さんソードで雷速にも劣らない剣速で、
 ひとつ、ふたつ・・・みっつよっついつつ・・・、むっつ。

 降り注ぐと言っても当たるのは範囲の一部だ。
 その一部をこうやって帯電する水属性の剣で受け取っていけば・・・。
 ほぅら、ノーダメージでやり過ごせた。

『剣の雷をはやくどっかやるですっ!!』
「はいはい」

 ガッと地面に突き立てたお魚さんソードからはスッと帯電していたものは抜けていき、
 今にも剣を壊さんとバチバチ耳にも痛い音は消え去る。

「アポーツ!」

「効かないって学習しねぇのかっ!馬鹿がっ!」

『マスター!口が悪いですっ!』

 引き寄せたいのか?
 お前が俺の所に来たいのか?
 どっちにしろ接近戦がご所望ならこちらから向かおうじゃあないかっ!

「《光竜一閃こうりゅういっせん!》」

 瘴気で悪い視界の確保に加えて倒したレイス達の瘴気を掃除すると、
 同時にクラウソラスは宝物庫ほうもつこへと収納。

魔力縮地まりょくしゅくち!」

 道が出来れば寄って斬りますっ!
 カアァァァァァァッッン!!!

「久しぶりだなぁ、ナユタ!」
「お前、しつこ過ぎる!!
 俺達を追撃する為に城下町を凍り漬けにする騎士がいるかっ!?」

「残念ながら騎士じゃねぇし、この街はもう死んでる!
 お前達の所為でなぁ!!今更凍らせたところで誰も文句を言わない!!!」
「イカレてやがるっ!!《アスポーツ!》」

 おっと危ない。
 これでマリエルはやられたって聞いてるからな。
 直接接触されないように腕が伸びてきたのが見えたからすぐ回避する。

「《雷神舞踏らいじんぶとう!》」

「それは卑怯だろっ!!《来よ!雷神剣アウルカリバーン!》」
『《金剛こんごう!》《砂爆原サンドマイン!!》』

 一瞬で知覚範囲から脱する速度を得たナユタが視界から消える。
 先走る雷を覆うにも認識した時にはナユタはそこを通り過ぎている為、
 魔力を高めた金剛こんごうで一回くらいは受ける覚悟をノイに手伝って貰いつつ新しい得物を宝物庫ほうもつこより呼び出す。

 パリパリ・・・。
「こっちか!」

「なんだそれはっ!?」

「S極に反応するN極剣と言えばわかるかな?」

「意味がわからないっ!!」

 なるほど、そういう知識のない世界の住人か。
 雷速で迫るミョルニルの鎚に直接当たらないようにアウルカリバーンで捌くと、
 ほぼ同タイムで2撃目が振るわれている。
 これも力任せな身体能力でギリギリ回避すれば3撃目が放たれている。
 改めて導いてくれる剣の指示に従って捌くと同時に4撃目。
 これは踏み込んだ先にあったノイのトラップ魔法が発動して体勢を崩す一助となる。

 リズムさえ掴めばなんとかノーダメージで行ける物だ。

「ちっ!仕留められなかったか・・・」

「1、2、3、4・・・」

「なんだその数字はっ!」

「次にお前が雷神舞踏らいじんぶとうを使うまでの時間を計ってるんだよ。
 まぁ、俺が口で数えなくても優秀な娘が数えてくれてるけどなっ!」

「防戦一方のくせにその余裕はどこから来ているっ!」

 そりゃ、胸の奥からムクムクと。
 俺が見た雷神舞踏らいじんぶとうはこれで2度目だ。
 マリエルとの戦闘でも短い時間しか使っていなかったようだし、
 空で戦った時も同じように時間は短かった。
 そして今も。

 完璧とはほど遠いが、
 これで[アポーツ]に[雷神舞踏らいじんぶとう]は対策が取れた。
 対策が取れないのは[アスポーツ]か。
 他にも魔法を使いはしてもそこまで積極的には使ってこない。
 使うタイミングは距離が開いた際だけだ。

『マスター!ボクの認識速度から超過してるですよ!』

「ソニックを併用してるからなっ!
 じゃないと雷神舞踏らいじんぶとうどころじゃなくて普通の斬り合いも追いつけねぇんだよっ!」

『手足が千切れてもボクの所為じゃないですからねっ!!』

「おまっ!恐ろしいこと言うんじゃ無いよ!
 言っちゃったら本当になるかもしれないだろっ!!」

 周囲に近寄る瘴気モンスターを岩で串刺しにしながら不吉な事を口走るノイ。
 雨も予定通り降り始め、
 そろそろアクアとクーが動いてくれる事だろう。

「《ファーストチャージ!!》」

 バンッ!!!!!!

 ナユタがミョルニルを掲げて叫ぶとほぼ同時に一筋の雷が轟音を伴って落ちてきた。
 耳はその衝撃でキーーーンとしているし、砂塵も舞い上がる。

「《セカンドチャージ!!》」

 バンッ!!!!!!

 衝撃にビビってる間に再び落ちる雷は心なしか先ほどよりも太くなかっただろうか?
 衝撃で強風と小石が身体にもぶつかりその威力を物語る。

「《ファイナルチャージ!!!》」

 ガンッ!!!!!!!

 おい!今のは雷の落ちる音じゃ無かったぞ!!
 手で目を守りながら見るミョルニルが尋常ならざる力を宿した事を感じる。
 地面はパリパリと音を立てて電流が走っていて、
 この一帯の磁界も狂っている。

 アポーツから身を守る為に身体を覆う磁界の結界も解けそうになり、
 制御力を回して再び身体に固定した。

「そういうのは時間を掛けてチャージするものじゃないのか?」

 雨で誤魔化せているだろうか。
 頬を伝い顎から落ちる滴の中に冷や汗が混ざっている事を。
 本能が叫んでいる。
 あれを受けてはいくらなんでもヤバい事を。

「そうそう使える技じゃ無いが。
 お前はもう邪魔をするな・・・、ここで消した方が後の為だ・・・」

 震えないように気をつけながら虚勢を張った。
 幸いここに居るのは俺と勇者とマリエルとセリア先生、あとブルー・ドラゴンフリューアネイシア
 あれの威力や範囲はわからないが、
 巻き込まれる可能性は考慮しておいた方が良い。

「総員、全力退避!俺から離れろ!!」
〔〔〔了解!!〕〕〕

 対処に頭を回転させる。
 俺は死んでもいい。
 だが、他の奴らは役割があるんだ。
 ここで死なせるには忍びない人材。

 連撃の類いか?
 一撃タイプか?
 その場で範囲攻撃?

「《雷神舞踏らいじんぶとう!》」

「ちっ!」

『マスター、流石に拙いです。ボクの魔法で吸収出来る規模じゃ無いですよ!
 触れたら蒸発しちゃいます!!』

 ノイは周囲の雑魚を狩るついでに[アイアンランス]を設置しまくっていた。
 理由はひとえに少しでも雷を逃がす為。
 ダメージ軽減に繋がるなら足掻くのは当たりまえだろう。

「直撃しなければなんとかならないかな?」

『甘いです!空間制御で防御するなんてあの速度を追えない時点で無策と同じですよ!!
 大人しく全面防御にシフトするです!《聖壁の欠片モノリス!!》』

 ノイは俺の考えを見抜きながらも防御を固める。
 その手配は素早く瞬く間に視界は聖壁の欠片モノリスで塞がれて全面が防御の構えを取った。

 しかし、聖壁の欠片モノリスを重ねて防御力を上げる事も出来ないこの運用では、
 直撃を免れたとしても大ダメージは受けてしまう事を2人は理解していた。

 瞬間―。

 聖壁の欠片モノリスの外が強烈な光に包まれたと認識する間もなく、
 俺達は音も通らない、何も聞こえない光に包まれた。
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