特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第12章 -廃都フォレストトーレ奪還作戦-

†第12章† -22話-[勇者PT二者面談]

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 とりあえずの指示出しはこんなもんかな。
 睡眠の為にセーバーPTとリッカを休ませた。

 リッカは使いすぎて無理をさせていたから、
 セーバーPTと交代で休眠に入るアルシェとゼノウPTと引き続き惰眠を貪って頂く予定だ。

 ポシェントとリッカは戦力として頼りになるからどちらかは起きていて欲しい。

「クライヴのおっさんはとりあえずゼノウPTでいいかな?」
「俺はかまわんぞ。邪魔をしている自覚はあるからな」
「まぁ、フランザが連れてきた手前もあるしな。
 俺もかまわない」
「ごめんね、みんな。
 とりあえずお試しでこっちに来てるだけだから・・・」

 クラン[サモン・ザ・ヒーロー]のクランリーダー。
 名をクライヴ=アルバードという爺さんは、
 俺も予定にない登場人物なのでとりあえず信頼出来る奴のところにぶっ込んでおこう。

 うちがどんなクランかってのもまぁ追々わかってくるだろ。

「アルシェ!教国に行ってくる!」
「わかりました。誰か連れて行きますか?」

 呼ぶとマリエルとその手を繋ぐタルテューフォを連れてアルシェが寄ってきた。
 なんだかんだで妹分が出来たと思って2人で可愛がっているのかな。

「トワインと精霊達を連れて行こうかな。
 一応精霊が通れる程度のゲートは開きっぱなしにしておこうと思う」
「じゃあ、こっちは交代まで待機していますね」
「あ、じゃあトワインさん呼んできま~す」

 そう言うとマリエルはさっさとゼノウPTが駄弁っている場へと駆けていき、
 直ぐさまトワインだけを連れて帰ってきた。

「教国へ行くのに私を連れて行くのですか?」
「進路相談も含めてな」
「あぁ、そうですね。それはお願いしたいです」

 ゼノウPTはそれぞれが無精の精霊と契約をしている。
 無精契約者は無精王アニマを通して俺や俺の契約精霊の魔法が扱える。
 ただし、その効果は6割程度まで下がってしまうので、
 精霊使いとしての方向性が決まれば属性別に特化した方が強くなれる。
 無精を属性持ちに変質させる方がいいのだ。

 今のところフランザ・ゼノウ・ライナーの3人はそれぞれが師事した・・・、
 というか元からの資質に合っていたのか属性の方向性も仮決定に至っている。

 トワインは俺に師事して全属性を満遍なく扱っている為、
 特定の属性に定めることが出来ないでいた。

「にーにぃ、とと様どうするのだよ?」

 なのだ、とだよ!が合体し始めている・・・。

「アルシェとマリエルの2人と一緒にここで待ってな。
 とと様が戻ってきたら、かか様のところに帰った方が良いって伝えてくれ」
「わかったのだよ!
 ねーねぇとマリーねぇと待ってる!」

 ねーねぇ?
 マリーねぇとはおそらくマリエルの事だろう。
 そして、ねーねぇは・・・。

「に、にーにぃがお兄さんなら私もその・・・妹が欲しかったですし・・・」

 アスペラルダは大丈夫だろうか。
 俺を養子にとか王様と王妃様は言っていたくらいだし、
 もしも俺とタルテューフォが籍に入ったら血が繋がらない王位継承者が2名も増えることになるじゃん。

 気軽に家族は増やすものじゃないんだぞ。

「みんな居るけど、
 もしも王様が暴れそうならすぐに呼ぶんだぞ」
「わかりました」

 アルシェに忠告だけ済ませると、
 残るメンバーのうち風精のセリア先生へと向かう。

「セリア先生。マリエルの加護の取得はいつ頃になりますか?」
『仮の加護が切れてから1日で取得出来ると思いますわ。
 ですから、誤差を考えても明日の朝になりますわね』

 それまでに戦況が激化しないことを願おう。
 マリエル達が戦えるか戦えないかでかなり戦力に差が出てしまうからな。

「テンペスト様は出てこられますか?」
『いえ、流石に期待は出来ませんわ。
 風精の尻ぬぐいを期待して居るのでしょうけれど、
 本体も力を失いつつありますから分御霊わけみたまでも難しいですわ』
「そもそもテンペスト様は何故ずっと大精霊の席に座り続けているんですか?」

 他の精霊王は闇精王アルカトラズ様と風精王テンペスト様を除いて世代交代をしている。
 何故テンペスト様は自然に弱り始めるまで風精や風の国を見守り続けているのだろう。

『あの方は無精王アニマ様を崇拝していますからね。
 当時の無精王から風の国を任された自負と責任を持っているからか、
 次世代の風精に譲る条件も厳しいのですわ』
「・・・アニマから直接テンペスト様に楽になるように言いますか?」
『他の若い大精霊と違って頭が固いからどうでしょう・・・。
 まぁ、余生くらいは自由になってほしいという気持ちはありますからひとつの手として覚えておきますわ』

 こっちも出て来て手伝ってくれると楽出来るかなって思っただけだし。
 やっぱり来ない前提で準備は進めておいた方が良さそうか。

「先生はボジャ様たちとこっちでアルシェをお願いします」
『わかっておりますわ。
 教国へ行くならブルー・ドラゴンも連れて行ってくださいまし。
 水無月みなづき君が居ないと少し機嫌が悪くなるので・・・』
「わかりました、連れて行きます。
 一応フロスト・ドラゴンエルレイニアは魔力を貯蔵中なのとアルシェの護衛で残していきます」
『何をするか知りませんけれど、
 聖女様にあまり迷惑を掛けてはいけませんよ』

 ははは、俺が迷惑を掛けるわけないじゃないですか。
 俺は返事をせずに顔を逸らし、
 ささっとゲートを開いてその場を逃げ出した。


 * * * * *
「という訳で、
 勇者のところまで案内して貰えるか?」
「どういう訳かわかりませんし、
 私はクレア様のアナザー・ワンです」

 目の前にはお馴染み。
 クルルクス姉妹の妹であらせられる、サーニャ=クルルクスさんが居る。

 残念ながらクレアは治療の為に席を外しているとのことで、
 聖女の天幕には何故かサーニャだけが残っていたので案内をお願いしてみた結果一蹴されてしまった。

「どうせクレアから応対を頼まれて残ってたんだろ?」
「その根拠は?」
「勘!」

 俺の簡素な回答にサーニャの片眉がピクリと動く様を見て、
 後ろに控えているトワインがハラハラした反応をしているのを感じる。

「悔しくはありますが正しいです。
 勇者の元へ案内すれば解放してくださるのですか?」
「いや、教国的に俺達は部外者なんだから、
 勝手にうろつく間は一緒に居てほしいな」
「ちっ・・・」

 舌打ちされてもクレアの命令だし言うことは聞いてくれるさ。

「じゃあ、案内しますから着いてきてください」
「よろしくおねがいしますっ!」
「サーニャには遠慮しなくていいぞ、トワイン」
「敬語はいらないと言いましたが、勘違いしないでください。
 水無月みなづき様のアナザー・ワンになった訳ではありませんので」
「隊長はもうちょっとデリカシーを持ってください・・・。
 ストレスで私がギブアップしそうです・・・」

 トワインが胃を抑えて小言を言ってくる。
 それを軽く受け流しつつサーニャに着いて行った先で魔力が練られている気配が強くなってきた。

 同時に訓練をしている勇者の仲間たちも視界に収まる。

「勇者は瞑想中だな。
 じゃあ先に勇者の仲間と接触するか」
「えと、隊長。
 今更ですが、私は何の為に連れてこられたんですか?」
「貴方、仲間にまで大した説明も無しに事を進めているのですか?」
「サーニャさんからここまで言われるなんて、何をしたんですか・・・」

 ですかですか五月蠅いな。

「俺だってアルシェと出会った頃はヘコヘコ頭下げて下手したてに出てたさ。
 でも、やっぱ王族の娘相手にタメ口聞いてさ、
 戦闘についても自信が付いてくると調子に乗っちゃうものじゃないか?」
「自分で言います?」
「他国にまでその過剰な自信を持ってこないでください」

 2人の言い分は俺も納得のご意見の為、反論は控えさせて頂く。

「いや、クレアもサーニャ達ももっと偉そうなら俺も・・・ね」
「ねって言われましても。
 多分ですが聖女様は言葉遣いも丁寧で年下ですし・・・、
 流石に偉そうには振る舞えないんじゃ無いですかね?」
「結局クレア様に甘えているだけではありませんか」

 まぁクレアは確かに初めから物腰柔らかかったけど、
 割とすぐに懐いて膝の上に乗ってきましたよ?
 そう考えると俺は悪くない可能性が出てくるよね?
 あと、お前達姉妹は初めからウザイだの雑だのと小声で零していただろ。

「はいはい、とにかく偉そうなのはなんか色々絡んでいるので変わりません。
 もう目的地に到着するので2人は黙りましょう!」
「ちっ」
「ちっ」

 あれ!?トワインもサーニャに影響されてない!?
 いま師匠に向かって舌打ちされておられませんでしたか!?!?
 年上だからってやめてください!

「お久しぶりです、水無月みなづき殿」
「久しぶりですね、マクラインさん」

 前に出て来て口を開いたのは騎士マクライン。
 装備が以前から新調されて強者感が強くなっている。

「今日来られるとは伺っていませんでしたが、
 どうかなされたのですか?」
「城に突入する前に精霊使いとして面談に来ました」
「面談ってなんだよ」

 魔法使いミリエステと弓使いヒューゴも続いて出て来た。
 後ろで斜に構えて様子を窺っているのが確か、魔法使いのフェリシアだったか?

「今皆さんには無精の精霊を契約させていますが、
 今後の事を考えれば属性持ちの方が役割に徹する事が出来るので、
 現時点でどういう方向に舵切りしているのか確認しようかと」
「面談って何をするのですか?」
「普通にどんな扱い方をしているかですね。
 職種的に予想くらいは出来ていますけど、
 まぁ今後の事を考えてって感じで気楽に構えてくれて大丈夫ですよ」

 エリアマネージャーが来た程度に考えてくれたまえ!
 店の雰囲気はどうだとか、バイトのヤル気はどうだとか、
 店舗としてでは無く企業としてサービス向上に何が必要かとか。
 たぶんそんな感じの事を聞くだけだろ。知らんけど。

「隊長、私はどうすればいいんですか?
 一緒に話を聞いてても力にはなれないですよね?」
「ついでだし流す程度に模擬戦しててくれ。
 前衛にはサーニャを使ってくれればいいから」
「何故私が?」
「暇だろ?」
「・・・ちっ」

 現時点での戦闘力とか知らないからね。
 トワインに模擬戦させておいて後で聞き出せばいいや。

「あ、サーニャは防衛に徹して抜かれないようにな。
 攻撃は全部トワインが行うこと」
「了解です」
「かしこまりました・・・。はぁ・・・」

 これで勇者PTの前衛であるマクラインを面談している間も怪我はしないだろう。
 というわけで、まずは魔法使いミリエステから聞きませう。

「ミリエステさんからお願いします。
 あとは終わり次第交代で話を聞こうと思います」
「わかりました」
「では、私たちは模擬戦を行っていますので、
 終わりましたら声を掛けてください」

 突然の訪問だったが意外と文句も言わずに聞いてくれるのな。
 おっと、もう夕方を過ぎて暗くなり始めているし、
 この一帯だけでも明るくしておかないと。

「《ライトボール!》」

 先日は直管蛍光灯をイメージして光球を並べていたけど、
 今回は丸形蛍光灯でいいっしょ。

「ベル、2つほど補填してくれ」
『はい、ぬし様! 《ライトボール!》』

 視力検査のCみたいに穴あきにわざとした丸形蛍光灯にベルの魔法が加わって完成した。
 古い家だとこれでいいけど、シーリングとかも魔法で再現出来ないかな・・・。

『ますたー、トワの模擬戦観てきてい~い?』
「いいよ、邪魔しないようにな。
 あ、お姉ちゃん。フラムとニルも連れて行ってくれ」
『あ~い。2人共お姉ちゃんに付いてきなさ~い』
『行きますわー!』
『アクア姉様、待って』

 見るのも勉強。
 まぁアクアは単に模擬戦を見て自分ならどうするかを考えるのが好きらしいし、
 ニルは付いてはいくけど観戦するかは微妙。
 フラムは一生懸命観戦するだろう。

「ベルも観に行きたかったら行っても良いぞ」
『ベルはぬし様と一緒に居たいです』

 愛い奴め。

「さて、さっそく話を聞かせてもらいますね」
「よろしくおねがいします」

 いくつか聞きたいけど、
 まずは彼女の戦闘傾向なんだよね。

「戦闘を何度か見ていますが、
 ミリエステさんは火属性を好んで使われてますよね?
 なんでですか?」
「私の父親も冒険者をしていたのですが、
 同じ属性を使い続けるとコントロールが良くなったり、
 威力も上がると言っていたので・・・。
 あとは爆発する魔法を使うとスッキリするからですね」

 ジョブレベルが上がれば魔法の扱いは確かに上手くなる。
 でも属性を限定して上昇するとはギルドでも聞いたことは無いな。

「お父さんは実感があったんですか?」
「あった・・・と思います。
 じゃないと娘にわざわざ何度も言いはしないでしょうし」

 確かに。
 加護以外にも特定の属性を強化する方法があるのか?

「ミリエステさん自身は実感あります?」
「実のところあまり実感はありませんね。
 スッキリするので使い続けているところが強いです」

 ガクッと崩れ落ちそうになった。
 結構あっけらかんとお答えになられますね。
 今までの人生が無駄になっている可能性もあるっていうのに。

「熟練度的にはありえそうな話なんですけどねぇ。
 本人があまり実感を感じていないのなら、
 長命種しかはっきりとした差が出ないのかもしれません」
「一応耳は尖っていませんが、エルフのクォーターなんです。
 父も歳の割には若いと評判ですし、
 私も普通の人間に比べると長生き出来ると思います」
「そんなずっと冒険者してますか?」
「あー・・・それもそうですね」

 駄目だこりゃ。
 次いきましょ。

「精霊の力は戦闘中どういう使い方をしていますか?」
「ヴァーンレイドの連射だったり、
 回避移動をする為にアイシクルライドを使ったり、
 エコーで横からモンスターが来ているなどを伝えたりですかね」
「魔法使いは後方で戦場を俯瞰出来ますからね。
 現状の立ち回り的には無精のままの方がいいですけど、
 単純に火属性特化の魔法使いを目指すなら火精かせいに染めた方がいいです」

 無精だからこそ他の属性の魔法も使えているけれど、
 火精かせいに染めた方が威力は上がるしオリジナルの火属性魔法も創り出せるようになる。

「もし火精かせいに染めるとしてもどうするのですか?」
「火属性の魔力をしばらく食料として与え続ければ無精から変化するそうです。
 あとは加護が貰えるのがベストなんですけど、
 そこは心当たりがあるのでまぁ・・・」
「心当たりがあるのが凄いです・・・」
「それまでは武器に魔法付与マジックエンチャントして食料にする感じですね」

 アクアと契約した頃は、
 精霊使いとしても未熟でアルシェが知らぬ間に付与してくれた亜神の加護のお陰でアクアの食料問題は解決していた。

 今となっては精霊の食料に関しては、
 無精が武器に魔法付与マジックエンチャント出来るところまで来ているから、
 どの属性の精霊になってもなんとかなる。

「例えば、1番弟子のマリエルは風精ニルとサブ契約していて、
 今は完全に風雷属性の方向にシフトしてます。
 でも、トワインは俺の2番弟子ですけど全属性を扱う訓練をしています」

 指を差した先でトワインが模擬戦をしている。
 その戦闘方法は弓使いというには多彩に富んでいた。

 雷の矢で速射を行い、
 炎の矢で爆発を起こし、
 風の矢で対象にノックバックを発生させ、
 氷の矢で身体の一部を凍らせて敵の行動を阻害する。

「本人も精霊使いとして修行しているのであそこまで多彩に扱えますけど、
 普通はもっと威力も低くなりますし使いこなすことは出来ないでしょう。
 無精の力を十全に扱うならあのくらい魔法を扱えないと・・・。
 正直、属性特化にした方がマシですね」
「彼女、加護は?」
「何も無い状態です。
 一応俺の後釜にと考えていますがトワインが別の道を選択するなら、
 それに近づけるように手助けするつもりです」

 俺が元の世界に帰った後に、
 何かの役に立つであろう全属性が扱える精霊使いは残しておきたいと思っている。
 加護についても各方面に許可をいただけるのであれば、
 俺と同じく亜神の加護を付与したいところだ。

「それぞれ単属性と全属性で長所も短所も出て来ます。
 まだ貴女方の精霊を染めるには時期尚早ですが、そろそろ方向性は考えておいてください」
「わかりました、よく考えて答えを出させて頂きます。
 ところで・・・、その浮かぶ卵は何ですか?」

 神妙な表情で頷いたミリエステ。
 その顔が持ち上がると共に視線は俺の隣へと注がれている。

「あー、ノイ。うちの土精が進化を始めたんですよ。
 今回はだいたい6時間くらいで出てくる予定なんで決戦には間に合いますよ」
「へぇ~、精霊の進化ってこんな感じなんですね。
 すごく貴重な光景ですよコレ」
「今となっては何故精霊と出会うのが極めて稀と言われているのはわからないんで、
 コレももう何度も見てる光景なんですよね」
「やっぱり精霊使いは規格外ですね」

 いやいや、よく考えてください。

「強さで言えばこっちは複数。
 そっちは基本的に1人なんですから計算式で言えばそんな不思議もないでしょう?」
「魔法を創れるとかはかなり・・・」

 まぁ、そこはね。
 特権に近い部分だからね。
 でも、魔法についての知識も必要だから結構大変なんだよ。

「あと、あっちの赤い精霊も初めて見るのですが」
「あー、フラム。イグニスソードが精霊になったんだ」
「エクス様と一緒なのですか?」
「エクスは精霊が剣になれるタイプだけど、
 フラムは剣が精霊になったタイプですよ」
「ちょっと違いがわからないです」

 どっちがどっちでも同じだから俺もどう説明すりゃいいかな。

「フラムは魔法剣として魔法を武器に巡らせた結果発生した精霊なんです。
 1年程度の期間を定期的に火入れをしてたら精霊化して・・・」
「気が長いですね」
「精霊化が目的では無くてただ感傷で手入れしているつもりだったんですよ」

 とりあえず、魔法使いミリエステの面談はこれで終わった。
 そのまま騎士マクラインと交代して面談を続けたが、
 まぁ予想通りマクラインはPTのタンク役を務めている事もあって土精方面に偏っていた。

「自分でも理解しているのですが、
 やはり魔法を自分で使うというのがどうにも上手く組み合わせられなくて・・・」
「精霊がサポート出来るならそれに越したことはないです。
 でも、無精のままだと他属性の魔法は使えても成長は遅く、
 メインは無精の鎧の制御に割かれて知能も低いです」
「防御力を上げる[《硬化スチール]は重宝しています。
 他にも武器の攻撃範囲を広げたり広範囲防御魔法とかが欲しいと思う事があります」

 なるほど、役割とか立ち回りに加えて、
 必要な魔法の構想も出来上がっているのか。
 マクラインはこのまま土精使いへの転向で正しいだろう。

 はい、次の方どうぞ。

「俺は特に・・・」
「トワインに全て攻撃の手を阻まれてまともに模擬戦で活躍出来なかったヒューゴ氏は勇者PT脱退っと・・・」
「おい!誰もそんな事言ってないだろっ!」
「自分の現状を理解されてますかぁ~?
 Lev.差が20近くある相手に完封されるって相当にヤバいですよ~?」

 一応外から見て以前に比べても攻撃力は上がっているし、
 射速も上がっていた。
 でも、ミリエステやマクラインに比べると同じ無精使いとは思えぬほどに上昇値は低すぎる。

 無精が協力的じゃ無い=親和性が低い=訓練してない。

「勇者が居ないうちに殺しておこうかなぁ・・・」
「っ!?何を考えてやがるっ!?」
「居ても居なくても戦力的に一緒でしょ。
 うちに来てる知能が低いけどめちゃ強い猪の方がまだマシだな」
「おま、お前が決めることじゃねぇだろ!
 俺はずっとメリオ達と冒険してきた仲間なんだぞっ!
 お前が茶々入れることじゃねぇ!!」

 興奮している様子から察して指を指揮棒のように動かして風の結界を張る。
 模擬戦の邪魔になる大声を出すんじゃ無いよ、まったく。
 あっちの気が逸れて怪我でもしたらクレアに手間を掛けさせる可能性もあるんだぞ。

「いやいや、こちとら人類の命運が掛かっているんですよ~?
 最悪でも勇者が魔王を倒せるように、
 仲間にもそれなりの基準を要求するのは当然です。
 分を弁えないと王族から許可をもらって殺すのも吝かでは無いですね」
「・・・っ!!?」

 勇者は召還された時点でチェンジが出来ないし、
 一応前向きにエクスとも向き合って強くなっているからいいけどさ。
 仲間はこの世界の住人の中から選べるわけだから、
 そりゃ弱い奴は足手まといだし切り捨てるなら早いほうがいい。

「身を退くならそれでもいいですよ。
 敵に寝返るでも隠居するでもどこぞで冒険者をするでもご勝手に。
 もう勇者には関係なくなるわけだし。
 ま、ママのところにでも帰るといいですよ(笑)」

 あははははは!!
 その顔!!すごい好き!!!
 今にも俺に襲いかかって殺したいって思っていますねぇ~!
 いいですよ~、殺せるならねぇ~。
 貴方程度の矢でも短剣でも簡単に対処できる程度にはプレイヤースキルが段違いですからねぇ~!

 最後は笑っちゃったよ(笑)
 あ~あ、顔真っ赤にしちゃってまぁ。
 こいつストレス発散に丁度良い玩具だなぁ。
 そんな反応されると手放したくなくなるじゃないか。

 アルシェが怒るし、教育に悪いからそんな事はしないけどね。
 死ぬなら死んでどうぞ。

「とりあえず、仲間にはそういう話はしないですがメリオには伝えておきます。
 勇者も勇者で今ひとつ殻を破れていませんからね。
 しばらくは選択の期間を設けますが、
 周囲の強者は本当に勇者の仲間のままでいいのか見極める為に一挙手一投足を見ているという事をちゃんと認識しておいてください」

 はい、次。

「ニル!トワインに[ハイソニック]を掛けてやれ!」
『かしこまりーですわー!!』
「隊長!?あれは私の認識が追いつかないんですけど!?」
「もっと戦闘に集中すればいずれ慣れるって」
「1週間くらい試しても慣れませんでしたが!?」
「がんばれー」

 身体が速くなっても思考速度が上がるわけじゃ無いからね。
 単純に剣を振ったり矢を放つ程度なら攻撃に集中すればどうにかなったりするけど、
 残念ながらトワインは精霊弓使いエレメントアーチャーだから、
 ほとんど普通の矢は使わずに魔法の矢ばかりを状況に応じて選択しながら扱う為、
 高速思考は技術的にほしいところ。

 スキル頂戴よ神様。
 ついでにヒューゴの心を完膚なきまでに折ってくれ。
 今は丁度ムキになって全力戦闘しているはずだから。
 今が折り時だから。

「失礼します」

 勇者最後のお仲間、魔法使いフェリシアが真正面に座る。
 この人も俺からすればいらない人かなぁ。

「ヒューゴの機嫌が悪かったのですけど、
 何を言われたんです?」
「田舎への移住をお勧めしただけですよ。
 希望されるなら貴女にも紹介しましょうか?」
「結構です」

 軽い挨拶も終わったことだし、
 さっさと面談を終わらせよう。

「フェリシアさんね、え~、ミリエステさんの影に隠れてサボってますね」
「いざとなった時に控えているんです。
 私は水氷属性の魔法が得意ですからミリエステの邪魔にもなりかねませんから」
「無精がいるんだからその言い訳が通るわけ無いでしょう。
 ミリエステさんと協力すればもっと効果的に敵を殲滅出来るはずなのに、
 サボってハイエナするだけの魔法使いが勇者PTに本当にいると思います?」

 敵だってこれからもっと強くなるだろうし。
 こいつらは既にLev.90台手前だからもっと強い敵が出るかは知らんけど・・・。
 勇者だってこのままじゃ、
 ちょっと特殊な能力を持っているからLev.100の中でも強い人という枠で収まってしまうぞ。

「そもそもなんで魔法使いが2人も居るんです?
 加護も無いなら得意不得意ってただの好き嫌いですよね?」

 精霊使いでない場合。
 基本的に魔法は魔導書を購入、
 もしくはダンジョンで獲得してから読むことで覚えられる。

 読めば消滅する魔導書だけれど、
 魔法陣が身体に溶け込むことで常に決まった威力、範囲の魔法を発動出来るようになる。
 まぁベクトルを持たせて多少の改変は出来るけど、
 全く新しい魔法を創ったりということは出来ない。

 つまり得意不得意は言い訳である。はい、QED。

「ミリエステさんが火幻属性を好んでいるとしても、
 今までの模擬戦などを見ていれば他の属性だって度々使っているし、
 端から見ても考えて動いてるなぁって分かるんだけど・・・。
 貴女はどうでも良い所で無駄に派手目な魔法を使いますよね?無駄に水氷属性の」
「価値観の相違ですね。
 私たちは効率的なPTなので、貴方にわからなくとも意味があるんです」

 面倒だなぁ。
 自分の考えに絶対の自信を持ってるタイプだ。
 あーだこーだと説明してやっても最後には、
 でも私はこう思うので大丈夫ですって言って聞かない奴だよ。

 自分を持つっていうのは良いことだけど、
 世界の命運と比べればゴミでしかないし、殺すべきなんだろうな。

「無精と契約させておくのが勿体ないですが、
 部外者が言って聞く人では無いことがわかったので、もう大丈夫ですよ。
 もう少し様子をみて判断をします。
 殺されるか田舎か、最終的にどこに落ち着くかわかりませんが頑張ってください」
「言われずともやっています」

 やってないから言ってるんだよ。
 どうせなら魔神族戦で2人とも名誉の戦死してくれないかな。

『ぬし様。魔力が収まっていきますよ』
「だな、勇者と話が出来そうだ」

 そろそろ勇者も瞑想が終わりそうだ。
 独断で勝手に仲間を殺す事も出来ないし、
 相談はするとしてメインの目的も早めに覚えちゃわないと。
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風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

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