特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第12章 -廃都フォレストトーレ奪還作戦-

†第12章† -27話-[土精霊と精霊使い]

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「パラディウム、ディグの魔法陣を」
『はい、こちらになります』

 目の前に展開される魔法陣をノイと共に覗き込む。
 魔法式から読む限りは超小型の石炭用ドリルって感じ?
 俺も正式な名前とは知らないけど、
 ダイヤモンドのトゲトゲが付いた平たいドリルを個人で使えるみたいな。

 イメージとしては今のまま範囲を大きくすると、
 トゲの間隔が空いて掘る効率が悪くなるっぽい。

「一度即席精霊魔法で出力しよう」
『了解です』

「『シンクロ!《ディ・ディグ!》』」

 足下に魔法陣が展開。
 それが回転して少し効率を見る為に掘ってみる。
 範囲としては半径2mくらいだけど、
 すぐに自分の立ち位置が落下を始めたので慌てて魔法の回転を止める。

「焦ったぜ」
『なら、もう少し声音を慌てさせてほしいですね。
 効率は落ちていないですから、
 骨子はこの魔法陣で良さそうです?』

 本来は1人分の魔法なので直系1~2mの範囲しか掘れない魔法が、
 今回創った魔法で直系4mほどまで拡大し効率低下も見られない。
 ただ、朝までに数十本の耕された地面のラインを作るにはまだまだ足りない。

「骨子はこれでいい。
 次は王城までのおおよそ50㎞の距離をどうするかだな・・・」

 このフォレストトーレの広さは大雑把に計算しても200平方㎞だから、
 城下町の中央に堂々と建つ王城までは・・・多分50㎞くらい。
 社会に出ると計算とかはPCがしてくれるし、
 自分で計算しないからどんどん数学や算数の記憶って薄くなるよな。

 ともかく、この距離を一気に耕したい。

「パラディウム・・・じゃなくて、ノーム位階の・・・えー。
 君、呼びづらいし名前無いの?」
『自分の立場ではまだ名前などは頂けません。
 もし精霊使いが下さるならありがたくその名を名乗らせて頂きますが』

 はいはい、スィーネと同じパターンね。

「トーレ=ノ=シュゴシャでいいかな」
『自分は守護者しゅごしゃではありませんし、その名付けはちょっと・・・』
「じゃあ、ヴィルトゲンってのはどうかな?」
『ありがとうございます。以後はヴィルトゲンとお呼び下さい』

 誇らしそうにお辞儀する彼の背後にはジト目で睨む土精が2人。
 パラディウムもネルレントもティターン様か前身に名付けてもらったんだろうか。

 あ、由来は深夜とかにアスファルトを削るデカイ機械から。
 警備員している時の役得は格好良いあれの作業風景を眺められる事だったなぁ。

「さっそくだけど、ヴィルトゲンはこの魔法使って[ディグ]と比べてみて欲しい。
 特にここから王城までの魔力効率も踏まえて考えて欲しい」
『わかりました』

 上位位階のパラディウムより3人のうち一番位階の低いヴィルトゲンに任せる。
 彼が扱えると判断すればパラディウム達が使うときに問題は起こらないだろうし。

「こっちは飛ばすディグの構想に入ろう。
 というか、ノイの魔法なら[守護者の腕マイストガーディアム]の[ブレイクパージ]か、
 俺の魔法剣で創るかの2択だろう?」
『マテリアル化を省けるなら魔法剣の方が楽ですが、
 マスターではなく土精の方々で分担するなら・・・』
守護者の腕マイストガーディアムをメインに据えて、
 ディグ系の魔法式を追記して改造するか」

 魔法式さえ理解すればあとの改造は土精に任せた方が無駄の少ない魔法を創れるはず。
 ディ・ディグが問題ないなら、
 拳の先端にでも展開して良い感じの掘削魔法に仕上がるかな。

『でも、基本魔法陣に沿った円状なのがどうも効率が悪いですね』
「そこなぁ・・・」

 横も問題だが深さも300mほどは念のため掘り起こしておきたい。
 如何な巨人を意識した[守護者の腕マイストガーディアム]であっても、
 所詮拳幅2m程度の岩腕だ。
 その先にディグ系の魔法陣を展開しても精々深さ3m程度だから・・・。
 今のままだと現実のオーガっていう機械と大して変わらない。

「ん~~~~~~」

 もし、現状のままやるにしても現場ひとつで100回魔法の行使が必要とか、
 手間も魔力の消費も無駄が多すぎるよなぁ。

 ――はっ!

処刑刀エグゼキューターの魔力刃ってどんな形まで加工出来る?」
『え、加工です?
 考えていたのは両手剣サイズと念のため極大剣の形は設定済みですが・・・』
「糸ぐらい細くしたら300m近くまで伸びるかな?」
『流石に200mが限界です。
 ご希望の形状変化は可能ですけど強度は極端に落ちるですよ?』

 強度に関しては心配には及ばない。
 何せ斬るのは地面だし、
 ディグの魔法と併用すれば豆腐を切るかのように地面を裂くことが可能だろ。

「とりあえず試そう」
「『シンクロ!』」
『《処刑刀エグゼキューター創作クリエイト!》》』

 ノイが創造してくれた剣を再び手に取り、
 次の一手の前に一度思考を止める。

「ディグを魔法剣に込めたらいつもの土属性魔力に還元されるよなぁ。
 エンチャント系に創り替えた方が良いかな?」
『ですね。剣の内部に込めると還元されるですから、
 外に纏わせないと効果が出ないです』

 じゃあ、即席精霊魔法で対処しますか。

『《エンハンスディグ》!』

 一般普及しているエンチャントは、
 魔力を纏わせて切れ味を上昇させる[エンハンスウェポン]と、
 同じく防御力を上昇させる[エンハンスシールド]が存在する。

 他にアクア達が創った属性を付与する[エンハンスアクア]などもあるけど、
 そっちは俺達というよりも量産型精霊使いの方々が使っているらしい。

『ブレード展開』
「おぉ・・・。なるほどな」

 最初に話を聞いたときに想像したのがダダ漏れ出力感のある、
 剣の超サイヤ人みたいなのをイメージしていたけど、
 実際に魔力刃を展開すると宝石みたいなカット面が刃となって剣は二周りほど大きくなっている。

「そして、これを・・・むむむ・・・」
『うぅぅ・・・。
 まさか敵を倒す為に創造したアーティファクトの最初の出番が地面を斬る事になろうとは思わなかったです・・・』
「ごめんって。
 今は嘆くのは後にして形状変化に集中してくれよ」

 ノイの頭を撫でて宥めてしばらく形状変化集中すると、
 剣身の横に飛び出していた魔力刃は徐々に剣幅を減らしていき、
 やがては剣先のみに収束しながら伸びていく。

 行けそうだな。

 一旦形状変化と止めて地面に剣を刺してから、
 ヴィルトゲンの元へと寄って効果のほどを確認しよう。

「どうだった?」
『掘る速度に関しては落ちないですね。
 魔力効率も範囲を広げるだけの[ディグ]から改善されて良い感じです。
 [ディ・ディグ]は範囲を広げるときに魔法式が自動で書き換わるので、
 そこも精霊にとっては革新的で面白いですよ!』

 ヴィルトゲンは興が乗ったのかテストしまくったんだな。
 そこら中穴ぼこだらけで足が取られそうだわ。
 魔法式の書き換えとは現代で言うエクセルの計算式みたいな感じだな。
 効果範囲を指定すると、
 効率を落とさないようにトゲの数とかが変わってムラ無く掘れるように調整されるわけだ。

「テストはその辺りで良いよ。
 土精の3人にはちょっと手伝って欲しいことが出来たんだ」
『何をすればいいんでしょうか?』
「今から地面を切り出すから、
 制御力で持ち上げて引っこ抜いて欲しいんだけど、出来るかな?」
『引っこ抜くですか?
 それはどのくらいの範囲を想定しているかに因りますが・・・』

 予定の範囲はまぁ50m四方で切り出して、高さが200m程度。
 最下層は切り出せないから土精の制御力で無理矢理引っこ抜いて欲しいと説明する。

『1人では出来ないでしょうが、
 ノイティミルを中心とした我々4人であれば可能でしょう。
 切り出した地面はどこに出しておきますか?』
「その辺に邪魔にならないように置いといていい」
『わかりました』

 土精への説明は終わったし、
 あとは観客の方々への説明をしておくか。

「全員集まって~!
 今から地面を50m四方で切り出して土精がそれを引っこ抜くから邪魔にならないように気を利かせて移動をお願いします」
「了解した」

 何をするか分かってないけど、
 邪魔をしに来た訳では無いファグス将軍がまず返事をし、
 その背後に立つ巨躯の拳聖けんせいも頷きで了承を示した。

「俺に出来ることはありますか?」
「今は無いな。必要そうな事が出来たら声を掛けるよ」
「わかりました」

 メリオは何かしたいらしいが、
 決戦は日中に行う予定なんだしお前はもう寝た方がいいんじゃないか?
 時刻は23時を回って24時に迫っている。
 作業を始めてから1時間以上何も進んでいない状態だから、
 そろそろ結果を出して場所の移動を始めないとアルシェとの交代時間までに終わらないかも知れない。

「じゃあ、始めます」
『いつでもどうぞ!』
『任せて下さい!』

 土精たちはヤル気の漲った声を聞き届け、
 俺達は再び集中して魔力刃を最後まで伸ばしきる作業に入った。
 剣の長さは魔力刃も含めて既に50mを越えている。
 それをさらに地面深くへと進めながら慎重に慎重に先端だけを伸ばしていく。

 そして、
 1分まるまる掛かってやっと飴細工のように細長い一本の魔力刃が完成した。
 もちろん本物の飴細工のように簡単に折れることはないが、
 イメージを崩すとすぐに元の形状に戻ろうとするので常に気を抜ける状態では無い。

「切り出し開始します」

 50m程度なら魔力縮地まりょくしゅくちで移動出来るのだが、
 今は形状のイメージに集中する為に自分の足で駆ける。
 やがて正確とは言えないけれど、
 とりあえず約50m四方での切り出しが終わった為、
 ノイは俺から離れて土精の輪に加わる。

「ふぅ・・・」
『第一段階クリアですね。ボクはあっちに行くですよ?』
「あぁ、頼むよ」

 魔力刃はイメージを手放した途端一瞬で形状を元の形へと復元していた。

『では、皆様よろしくおねがいします』

 二度目の疑似シンクロはすんなりと発動した。
 俺も観客メンバーに混ざりつつ見守っていると、
 しばしの沈黙の後、ゆっくりと切り出した大地が持ち上がり始めた。
 流石に200m地下の接地部分の破壊音は地上には響いてこなかったか。

「「「「「おぉ~~~~~~!」」」」」

 完全に大地から浮いた状態まで持ち上がったソレを見て、
 見物人も俺も思わず声を漏らす。
 この世界でここまでデカイ物は王城程度しか無い為、
 近場で見るソレは迫力満点だった。

 まぁ、ただの土塊なんだけど(笑)

『とりあえず、横たえておきます!』
「おねが~い!」

 土木工事してる気分になってくるな。
 あとは、大人のテトリスしているみたいな?
 漫才であったよなぁ。「それはここにまっすぐ降ろして下さい!はい、そうです!ゆっくり・・・ゆっくり・・・はーい、ストップ!」みたいな?

『みたいなとか言われても知らないです』
「心を読むんじゃ無いよ。それでどうだった?」

 アクアだったらポテポテ可愛らしい足音を鳴らすところを、
 聖壁の欠片モノリスの一枚に乗ったノイは帰った途端にツッコミを入れて来た。
 いずれにしろ可愛いので抱え上げて疑似シンクロの感想を伺う。

『パラディウムさんは流石に制御力があるですから、
 ノーム位階のヴィルトゲンさんかボクと一緒に持ち上げるのは可能ですね』
「ヴィルトゲンはノイと制御力どっこいなのか?」
『どっこいでは無いですけど、
 マスターのスパルタのお陰でボク達姉妹は制御力も鍛えてるですからね。
 余裕を持てるか持てないかくらいの差はあるです』

 どっちにしろ可能ではあるわけね・・・。

水無月みなづき殿、この後はどうされるのですか?』
「今さっきはアーティファクトの魔力刃にディグの魔法を纏わせた。
 今度は王都までの直線をディグで砂にしたいと思う」
『何かまた新しい魔法を創られるのですか?』
「いや、丁度良い魔法剣が既にあるから、
 属性を変えて大きさをめちゃくちゃ変えればなんとか出来そうなんだ。
 その纏わせる対象は見える状態にするから、
 土精の皆には魔法を創り替えて付与して欲しい」
『わかりました。頑張ります!』

 ポシェントが他2名の土精の元へと説明に戻って行く。
 俺も次の手を用意するには制御力が足りないから、手伝って貰わないとな。

「(クー、メリーと一緒に制御力を借りたいんだけど大丈夫?)」
『(何の問題もございませんよ、お父様。すぐにシンクロしますね)』

 念話で話を通してすぐにクーはメリーと共にシンクロしてくれた。
 ノイの橙色にクーの色がオーラに加わるけれど、
 単純な色の足し算では無いのか何色って呼ばれるかは知らないけど、
 少なくとも○ンコ色じゃない。

「さて、俺が地面の下を発動位置に指定出来ないから穴を作ったけど、
 これで把握が出来るな」
『地面の凹凸を考えて気持ち長めがいいですね』
「だな」

 次の手は魔法剣だ。
 さっきと同じく長細く発動する必要があるのだが、
 今回は俺とノイだけで無くクーとメリーのサポートもあるので、
 すでにイメージはブレる事無くはっきりと脳裏に浮かんでいる。

 故に俺は剣を高く振り上げる。

「《聖壁せいへきせ!重刃剣戟じゅうじんけんげき!》」

「『《聖壁重覇斬せいへきじゅうはざん!》』」

 剣はノイが創ったアーティファクトだ。
 つまり魔力容量も多く、
 俺自身も魔法剣の扱いに慣れて必要な魔力量を調整して敵に合わせる事も出来るようになっている。
 しかし、今回は通常使う魔法剣よりも大型化させなければならないし、
 不足の事態が起こることも考えて、
 処刑刀エグゼキューターに貯まっている魔力を全て注ぎ込み魔法剣を発動させた。

 斬ッ!

 結果はイメージ通り[蒼天氷覇斬そうてんひょうはざん]の属性違いの剣身だけが地下200mから標高10m程まで発生した。
 他の違いとしてはオリジナルは氷属性の魔力を帯びた氷の刃であったが、
 こちらは橙色の・・・なんだろうこれ?
 少なくとも鉄では無い。半透明なのでおそらく水晶の類いだろうか?
 ソレに土属性の魔力が帯びている状態だ。

「(一旦これで大丈夫。また頼むと思うから)」
『(はい、いつでもお呼び下さい)』

 ひとまず目的は達したのでクー達とのシンクロを切ることとした。
 あとは俺だけの制御力で対応可能だ。

「で、これ材質は?」
『ん~~、タンジェリンクォーツですね。
 どうやら込めた魔力によって発動時の鉱石が変わるようです。
 ボクはティターン様のところで色々鉱石を食べさせて頂いていたので、
 それも影響していると思うです』
「クォーツって事は水晶?鉄より硬度があるのか?」

 その辺の硬度はWikiを見ないとわからん。
 アクアの場合は氷の硬度が上がるだけだったけど、
 ノイは土精だからその特性が出て材質が魔力量によって変わり攻撃力に影響を及ぼすって事か・・・。

 強いならなんでもいいけど。

『高濃度の魔力が剣から失せましたが、
 水無月みなづき殿が発動させたのがこの剣身ですか?』
「剣の魔力全部使って発動させた。
 これに[ディ・ディグ]をエンチャントしたい。
 ただ、発動範囲を剣から半径25mほどに設定してエンチャントして欲しい」
『上下には発動しないようにですか?』
「上は発動して良いけど、下は剣が下がる可能性があるから」
『わかりました。イメージはノイに?』
「託してるから後は上手くやってくれ」
『任せて下さい!』

 ノイを連れてまたパラディウムは去って行く。
 行ったり来たりさせてちょっと申し訳ない気になってきた。
 ともかく、これで地割れ計画から始まった水はけの良い王都計画はちゃんと始められそうで良かった。

「メリオ、手伝ってくれ!」
「何をすればいいですか?」

 わんわん!
 他の仲間も興味がある奴も声が聞こえる程度のところまで寄ってきて、
 ファグス将軍も呼んでないので近くに来ている。
 拳聖けんせいは獣人だから耳が良いのか寄っては来なかったが耳がピンと立っていた。

「今からこの剣身を王城に向けて走らせる。
 それと同時に魔法で土を掘るから進行上に兵士が居たら注意喚起してくれ。
 あと、王城に直接当たりそうならコールで連絡をくれ、解除パージするから」
「わかりました、行ってきます!」

 文句も言わずにパシられるとは・・・。
 空を飛べる脚甲グリーブ型のアーティファクトを発動させたメリオは文字通り飛んでいった。

 わんわん!

「ファグス将軍。
 一応これで成功すれば他の所も同じように対処を進める予定ですけど、
 12本で大丈夫ですかね?」
「幅はこの50mか?」
「その予定ですね。
 求めればもっと広範囲で対応は可能でしょうが、
 負担も改良の時間も多くなりますから・・・」
「数を増やすのは問題ないのか?」
「問題はあまりないですかねぇ。
 手順が完成すればあとは脳死・・・じゃなかった、
 穴を空けて魔法剣で剣身を作ってエンチャントして掘るだけですから。
 あまり頭を使う必要がなくなる分かなり楽です」
「ふぅ~む。基本はこのままでいいだろう。
 ただ、時間と君らに余裕があれば間に増やせばいいと思う。
 多いに越したことはない」

 まぁ結局その辺りか。
 今回は勇者に任せた注意喚起や魔法剣の進行についても以降は俺がやらないといけない。
 移動魔法を持っているし消費も多くはないけど、
 時間は多少掛かるのは確かだ。

「じゃあ、そうします。
 朝にはアルシェ様が水を撒くのでそっちのご協力もよろしくおねがいしますね」
「任せておけ!
 そっちの魔法の結果を見届けたら俺達は戻る事にする。邪魔をしたな」
「見てるだけなら邪魔ではないですよ。良い土産話になりました?」
「もちろんだ!はははは!」

 夜なのに元気だなこの将軍は。
 拳聖けんせいにも一応視線を向けたが、
 耳が立ったり寝たりを繰り返しているから何かを伝えようとしている意思は感じるけど、
 結局何もわからんかった。

 多分、ファグス将軍と一緒に戻るって言っていると思って気にしないでおこう。

『マスター、エンチャントするですよ』
「お、完成した?やっていいぞ」
『『『『《エンハンスディ・ディグ!》』』』』

 土精達が改良して効果範囲の変わったエンチャントが魔法剣に掛けられた。
 これで下準備が完了した事になるが・・・。

「これで下準備か・・・。自分で抱えたとはいえ面倒だな」

 まぁ地面を土に解したところを一部踏み固められても、
 ここまで広範囲に耕しておけば水はけに問題は無いだろう。
 それに地割れに比べればかなり兵士は動きやすいはずだ。
 結果オーライなんだろうな。多分。

「じゃあ始めるぞ、メリオ」
〔いつでもどうぞ!〕

 揺蕩う唄ウィルフラタで繋げっぱなしのメリオに声を掛けつつ、
 俺は大穴の中へと飛び込む。

 200m先の底は真っ暗で月の光も届かない。
 けれど、今は橙色の光を灯す水晶製のアホみたいにデカイ剣身が生えているからそれなりに視界は確保出来ている。

 制御力で重力を操って落下ダメージを無くして着地すると、
 ノイもちょうど降りてきた。

『シンクロ』
「さ~てやりますか!」

 ポルタフォールで行って以来だけど出来る事は知っている。
 あのときは大型のスライムを倒す時に使ったんだったかな。

 剣身に手を添えて、最後の詠唱を揃えて口にする。


「『《砂鮫の刃ブレイドシャーク!》』」


 * * * * *
 聖壁重覇斬せいへきじゅうはざんで出現した剣身は、
 加速という過程を飛ばして最高速度で直進を始めた。

 一応[蒼天氷覇斬そうてんひょうはざん]との違いとして、
 周囲に重力を発生させて逃げ足とかを鈍らせようと改良していたけどそれが功を奏したらしい。

 剣身が触れた大地が直後に土となって崩れ落ちる。
 すると酷い砂埃と雪崩のような土に襲われる結果になったのだが、
 重力の影響下で動き出す前に真下に落とされるので俺達が批難する時間は十分に取れた。

「あとの事考えてなかったわ」
『マスターの機転があって助かったですね。
 まぁもしも生き埋めになっても土精霊纏エレメンタライズすれば脱出は容易ですけど』

 ノイ迫真のどや顔。

水無月みなづきさん、見てますか!?凄い光景ですよ!〕
「いま娘のどや顔見るのに忙しいから後にしてくれ」
〔何を見てるんですか!?
 直線上にある廃墟も破壊するし、
 地面の見え方が完全に変わるんで俺ちょっと感動してます!〕

 君は何に感動しちゃってんだろうね。

「成功してる?」
〔水を流してないので確実ではないですけど、
 これは成功といって良いんじゃ無いかと思います〕
「わかった。ほどほどで解除パージするからちゃんと見ておいてくれよ」
〔わかりました〕

 マリエルが居れば土の状態を確かめさせるところだけど、
 今は就寝中だから土精にでも具合を確かめて貰うか・・・。
 そんな事を考えているところで目の前の空間が揺れて不安定になる。

『おー!やっぱりアレはアニキの魔法だったデスカラァ!』
「調査は終わった?」

 歪んだ空間から出て来たのは闇精カティナだった。
 瘴気の魔石を回収してもらい調査を任せていたはずだが・・・。

『アニキはあちしを過大評価してるデスケドォ・・・。
 紅い夜の研究結果も出せていないウチに瘴気の魔石だったデスヨ?
 流石にあちしも手が回らないデスカラァ!
 嫌々でキティエラ室長の所にも手伝って貰っている状態デスヨ・・・』
「何だかんだでやっぱり仲良いじゃん」
『ぐぬぬ・・・。
 ともかく、目立つ魔法を見に来ただけデスカラァ!
 あちしはこれで一旦帰るデスヨ!』

 結構無理を言ってる自覚はあった。
 研究するのは好きだし良いんだけど時間も使ってられないからね。
 やってくれるカティナに頼りっきりなのは確かなんだ。

「お疲れ様。いつも助かってるよ。
 クーは影の中に居るから会って行くと良いよ」
『じゃあお言葉に甘えるデスカラァ!
 アニキも無理しちゃダメデスヨ!クーが悲しむデスカラァ!
 ノイも頑張れー!』
『あ、はい。お疲れさまです』

 同じ眷属のクーへの愛が大きいけど、
 他属性のノイには近所の子供に向ける程度の関心しかないカティナはそう言って影に飛び込んでいった。

 それにしても他の研究室にも手伝って貰っているのか。
 流石にカティナ以外のところにも面倒を掛けているとわかると何か手配をしておいた方が良いな。
 今の時期だとなんだろう。お節料理でもケータリングしようかな。

「パラディウム、土の状態を見て貰える?」
『空気も含んだ良い土壌になったと思いますよ。
 最後に重力で舞い上がる土をすぐ落としたのが功を奏しましたね』
「じゃあ手順は今ので良さそうかな?
 最初の50m四方を切り取る部分は俺が未熟な所為で省けなくて申し訳ない」

 魔法剣の発生位置調整に視認が必要なのは、
 俺がそういう訓練を想定して行ってこなかった事が原因だ。
 土の中以外であればやりようはあるのだが、
 どうにも全てが埋まっている状態の場所を設定するイメージが出来なかった。

 その一手間が無ければ土精の負担も減るんだよねぇ。

『問題ありません。
 今回は試す時間もあって掛かりましたが、
 手順や魔法が完成してしまった今となっては残りは作業ですよ』

 俺もそう思う。

「次の現場まで外周に沿って回っていけば着くんだけど、
 移動はどうしようかな・・・」
『土精はボクのオプションに乗せて移動出来るですよ。
 セーバー達はどうするです?一緒に乗せるです?』

 現場に到着してから会話に参加はしていなかったけれど、
 実のところ護衛としてセーバーPT5名を連れて来ている。
 今は周囲の浄化、ならびに小規模の瘴気溜まりが無いかと家捜しをしているところだ。

 彼らは地上移動をメインにしているが、
 ここまで荒れた城下町を通っていては時間が掛かってしまう。

「八枚で丁度か?」
『乗せるのは良いですけど、
 細かな気配りは出来ないですよ?』
「事前に伝えておけばなんとかするだろ。
 落ちたら移動先の作業中に合流しろとかでいいし」

 拾ってるほど暇ではないし、
 実際居なくとも作業を進めることは可能なのだ。
 聖壁の欠片モノリスは小盾であって本来は人を乗せる予定は無い。
 不思議な浮力で落ちないような設定もしていないので、
 バランスを崩せばそりゃ落ちるし、
 ノイも八枚全部を操作出来るとは言え落ちた奴のカバーまではやってられない。

「という前提でお前らも一緒に移動しようと思ってる」
「え?落ちたら回収してくれないのか?」
「もち!」
「もちじゃねぇよ」

 メリオからの連絡を受けて魔法を解除パージして結果も見届けた後に、
 ファグス将軍とエゥグーリアはアーグエングリン陣営へと帰っていき、
 勇者達も満足して教国陣営へと帰っていった。

 ファグス将軍達は見回りついでに戻るとのことで徒歩だったが、
 勇者たちは魔法の制限上で街へは行けるが中途半端な位置にある教国陣営に自分たちで戻ることも出来なかったのでゲートで送ってやった。

「もう決まったことなので必死こいて聖壁の欠片モノリスに捕まっててくれ」
「クランリーダー、速度とかって・・・」
「もう1時過ぎてるし全速力で行きたいところだけど」
「落ちないように頑張ります・・・」
「横暴だぁー!」

 セーバーは風精リュースィが一緒だしアネスは魔法使いだから、
 風の護りで移動時に発生する風圧をどうにか出来る自身がある様子だが、
 他3名は前衛・オールマイティ・弓使いと不安そうな顔だ。

「リュースィが広範囲に風避けを発生させて、
 その後ろから着いてくれば後は捕まっていれば大丈夫だって」
『まぁその程度なら問題ありませんわ~。
 ただリーダーさんは、そのぉ~、移動速度が・・・』
「だよな。今ってひと蹴りで」
「周囲を見ながら安定するのは20mくらいかな。
 最大だと60mまで伸びているな」
『普段からそこまでの風避けを使いませんからぁ~、
 他に制御力を割かなければなんとかなるとは思いますわぁ~』

 方針が決まってしまえば覚悟を決めるしか無い。
 土精にも同じ説明をするためにきびすを返した背中に「頑張るぞー!」とか「死にませんように!」とか掛け声が聞こえるけど気にしないでおこう。

 さっさと仕事を終わらせてしまおう。
 アルシェじゃないけど俺も徐々にゾワゾワが強くなっている。
 決戦が近付いている気がする。人間側も、魔神族側も。

 対処出来る想定外だったらいいんだけどな・・・。
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手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

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