特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第12章 -廃都フォレストトーレ奪還作戦-

†第12章† -38話-[瘴気に狂う高貴な樹姫②]

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 試しの1発目で決まるとも思っていませんでしたが、
 決まって欲しかったと願ってしまうのも仕方ない事ではありませんか?
 この巨樹が生きている事も私にとっては悪夢ですし、
 今現在もアルシェ様とご主人様とブルードラゴンが凍てつかせた樹氷もすでに大半が砕け散り、拘束の効力はほぼ無くなってしまってこれからどうしようかと頭を悩ませてしまう。

『お父さま経由で制御力を分けていただけているからこそどうにかなっていますが、この雨は厄介ですね』
「ご主人様も戦闘を始めてしまいましたし、
 どうやって上に昇りましょうか…」

 足場は空間を固めてご主人様の真似をして、
 瘴気の濃度が高いこの雨を置換で避けながらとりあえず思考を繰り返しながら次の目的箇所を見上げる状況から脱しなければ。

 下ではアナザー・ワンが2名援軍に来てくださいましたが、
 この瘴気の雨をあのようなフード付きマントだけで防ぎきれるものでしょうか?

『防ぎきれなくともヒールで回復しながらであれば長時間の戦闘も出来るのではないですか? あのマントだって聖属性付きですよ』
「高いスリップダメージが入るのに凄いですね。
 さぁ、クーデルカ様。そろそろ昇り始めましょう」

 ご主人様とシンクロしたクーデルカ様から流れ込んできた巨樹に発生する魔物の情報。
 その特性はひとまず集まった。
 情報があれば次の動きを予想して回避も出来ますし。

『行きます!《千手閻手ランページ・ダーク!》』

 空間の足場から飛び出した私たちの背面から生えた凶悪な見た目の二対三手の閻手えんじゅが6本。
 足が樹皮に掛かると落下が始まる前に2本の閻手えんじゅが上層へ伸びて引っかかり、
 左右の2本が支えの役割として横に伸びて樹皮を掴む。

「――はっ!!」

 残る2本を非常事態の落下防止のために背中に残したままメリーは九〇度の巨樹登木を開始した。
 護衛隊最速のAGIは伊達ではなく、
 落下してくる魔物は左右に回避、背後から追ってくる魔物は非常用閻手えんじゅで叩き落とす。
 雨は置換で防いだまま波動ブラストの予定ポイントまで無事辿り着けた。

『お父様はまだ掛かりそうですね』
「攻撃手段も多いですし、
 瘴気を少しでも消費するため大型の魔物も駆除されていますから……」

 待つことは従者として慣れていますが、
 ここでは待つだけでも妨害は入ってくるので安心は出来ませんね。
 高さによって襲撃を行う魔物の種類も変わるのですか…。

『枯れ葉の羽を持つ蟲?』

 初めは一匹だったその魔物は攻撃を仕掛ける事も無く、
 赤い目でこちらを観察しながらもゆっくりとその高度を落としていく。

「瘴気を纏ったまま襲ってこない?」
『また新種でしょうか? にしては、殺気ははっきりとしていますね』

 瘴気の狂化を受けて尚も攻撃を仕掛けてこない蟲に警戒をしすぎたのか、
 擬態や保護色を利用する魔物がいるとは思いもしなかったメリー達は、
 樹皮に擬態した個体に透明化していた個体に気づかず周囲を同じ魔物にいつの間にか囲まれていた。

 ただし情報を得ることは出来た。
 じっと動かない個体はやはり珍しいらしく、
 ほとんどは周囲を動き回って時には樹皮から離れ飛び立つ個体も居た。
 その挙動からの推察で、
 隠密・擬態・滑空の3つの手札を持っている事を踏まえてメリー達は戦闘を開始した。

「《火遁かとん!》」

 ばらまかれるは2㎝程度の黒い玉が4つ。
 千手閻手ランページ・ダークで自身を支えながらも振るわれた腕から放たれた黒い玉はメリーの高い投擲技術に従い襲いかかろうとした個体に高速でぶつかると大爆発を巻き起こした。

 実際、属性的に火属性の扱いは得意ではないものの、
 姉弟たちとの研鑽とシンクロによる膨大な制御力を用いれば普段は複数扱えない魔法でも使用は可能になる。

『お尻が光ってる個体が居ます!』

 周囲を動き回る敵を倒しきれずとも爆発させ続ける投擲が得意なメリーにクーは自身が気づいた変化を知らせる。
 どうやら敵が無駄に動き回っていたのは本命を隠す意味もあったらしい。

「収束が早くて止められません!回避行動に移ります!」

 爆殺で開いた道に飛び込むと同時に発射されたプラズマ弾は、
 若干のホーミング性能を見せつつも樹皮に当たると小爆発を引き起こした。
 魔法剣[闇食やみはみ]で無力化を試すか一瞬迷ったメリーだったが、
 成功するかもわからない上に一度も性能を見ずに試すには少々度胸が足りなかった。

 1発目の回避後には周囲の蟲はほぼすべてが下腹部を発光させて明らかにチャージの体勢だ。
 空中に居る蟲は体を曲げて、樹皮に居る蟲は体を反らせてこちらを狙っている。

『《双剣ダーケンライオット!》』
「《闇食やみはみ!》」

 一番近い蟲の下腹部に向けて漆黒の刃は放たれた。
 一閃と違って切断などの攻撃目的では無い[闇食やみはみ]は本来魔法を喰い散らし魔力を吸収する技だ。

「ギギィッ!!!?」

 蟲が鳴く。
 闇食やみはみを当てた下腹部の発光は無くなってはいるものの、
 こちらの闇食やみはみも同じく消えてしまっている。
 魔力の吸収もやはり瘴気生まれの魔物だと正常に作動はしない。
 それでも瘴気の消費に伴いチャージ分も霧散するならある程度は抑えつつ[火遁かとん]でHPを削って倒せば数は減らせますね。

 火遁かとんの仕様は中級の[フレアーヴォム]複数個を闇の膜で覆って亜空間を利用し押し込めただけ。
 私がヴァーンレイドを普通に使用しても射速も遅ければ、
 命中率も悪くて使い勝手が悪かった。
 他属性も同じようなものでしたが、
 同じく闇の膜で覆えば[投擲武器]の熟練度が影響して投げれば当たるようになるし射速も上がる。

『お父様が昇ってきます!』
「《氷遁ひょうとん!》」

 数が減ってきたとはいえ、
 敵のランクも高く瘴気も払えないメリー達の周囲にはまだ敵が残っていた。
 宗八そうはちの移動をいち早く察したクーデルカの声に従い、メリーは氷遁ひょうとんの玉を素早く各個体へ当てていく。
 ある魔物は凍結で落下し、ある魔物は樹皮に接着させられ動けなくしたうえでメリーは樹を蹴って飛び上がる。

「《黒玄翁くろげんのう!!》」

 メリー自身は樹から離れたものの[千手閻手ランページ・ダーク]はしっかりと樹皮を掴んでおり、
 メリーの体勢が整ったのを確認したクーデルカは閻手えんじゅの収縮を開始。

『《波動ブラスト!!》』

 勢いそのままに打ち込まれた大槌から穿たれる波動が波紋のようにキュクレウス=ヌイの体内に広がっていくが捜し物の反応は無い。
 真反対から自分たちよりも強力な波動が減衰なく流れてきたのであちらでも核は見つからなかったらしい。

「次のポイントへ移動します」
『《影縫かげぬい!》』


 * * * * *
「二点目も外れでしたか……」
『手伝いたいのは山々なんだけどねぇ~』

 シンクロの影響で宗八そうはちを介してメリー達の動きもある程度読みながらキュクレウス=ヌイの樹上から聖水セイントウォーターを滝のように流し続ける少女の名はアスペラルダの至宝、アルカンシェ=シヴァ=アスペラルダ。
 そしてパートナーの副契約精霊、水精のアクアーリィ。

 彼女達の役割はメインに瘴気の浄化を行い、
 フォレストトーレ城下町地下に大量に発生した瘴気の魔石ならびに瘴気の消費。
 浄化した端から瘴気を根から吸収するその体質?を利用した作戦だ。

 さらに上を取っている関係で宗八そうはちとメリーに瘴気モンスターが向かわないようにキュクレウス=ヌイを挑発し続けるというサブ目的もあった。

「《セイバーロード!》」

 戻ってきたのは湾曲した氷の刃。
 その流れを繋げるように魔力に還元して槍剣そうけんで受け止め、
 再度射出してはこちらを狙う魔物への牽制と撃墜を行う。
 こちらはメリーが闘った滑空しか出来ない蟲ではなく、完全飛行型の鳥類。

 動きが素早い上に風属性魔法と突進攻撃が厄介なのに、
 数も種類もなかなかに多い。

『ハミング~!』
「《勇者の剣くさかべ》スナイプ!」
「ゲポッ!?」

 魔物といえど音を武器にして闘う魔物は喉が大事らしい。
 いくつか対策を試したりニルにされて嫌な事を聴取した結果、
 使われる前に喉を攻撃するのが最適解と判明した。

 まぁ瘴気モンスターは脳をぶち抜けず部位破壊も出来ない瘴気のオーラに守られているので即死にはならなくてとも衝撃でノックバックを起こして魔法が止まるのでそれで対処している。

「《セイバーロード!》」
『《勇者の剣くさかべ》スナイプ!』
「《水華蒼天突すいかそうてんづき》!」
『《アクアテイル!》』
「《氷竜一閃ひょうりゅういっせん!》」
『《龍玉りゅうぎょくカノン!》』

 撃ち抜いては攻撃動作を止め、斬り伏せては墜としていく。
 アルシェとアクアがそれぞれが役割をこなし次々と襲いかかる魔物を撃墜しながらも足下からは止めどなく湧き出る[アクエリアス]がキュクレウス=ヌイが纏う瘴気の浄化を進める。

「制御力に余裕があるからなんとかなっていますけど……」
『8時間は無理だよねぇ~』

 魔法を手加減なしに使いまくっているおかげで高ランク魔物の包囲から抜け出せるし、
 減った魔力はクーデルカの[魔力接続ビータイリンク]で常に供給されるのでずっと戦い続けられる。

 長い戦闘とマンネリ気味の展開に緊張感はあってもさすがに飽きていた2人に生まれた隙。
 見慣れない魔物が飛び回る集団の中に混ざっている事に気づくのが遅れたのだ。

「なっ!?ぐぅぅぅぅ…あっ!」

 攪乱目的なのか飛び回り狙いを付けられないよう徐々に速度を上げていた鳥たちの中に何者かを背に乗せる個体が突如現れ強襲を仕掛けてきた。

『鳥の上に…緑の猿??!』

 辛うじて槍剣そうけんで攻撃を防いだものの、
 膂力がアルシェ達を上回っていた猿の棍棒に押し負けて体勢を崩してしまう。
 小さな隙は体勢を崩された事でこじ開けられ大きな隙へと変化する。
 宗八そうはちほど気配の察知に才のないアルシェとアクアは、
 さらに別個体からの追撃を受けて落下速度を速めてしまう。

『2匹目は鳥に乗ってなかったよ~!』
「それよりこの逆境からの脱出よ!
 このままキュクレウスの頭に落ちたら周囲全部が敵だらけになるっ!」
『あわわわわわ!どどどどど~しよ~!!』

 心象のアクアが腕をばたばた動かしながら右往左往している様子にアルシェは逆に少し冷静になれた。だからといって上は敵に取られ下は魔物の巣窟。

「[ドラゴンダイブ]で強行突破は?」
『溜めに時間が掛かるから無理~!
 でも、ヴァルキリーモードは賛成~!突破だけしてドレスアーマーに戻ろう~!』
「手順をリスト化!遅れれば被弾して押し切られますからねっ!」
『あいあ~い! 《|蒼天纏マテリアライズ!》モード:ヴァルキリー!!』

 全身の装飾という装飾が蒼天そうてん色の魔力に覆われ、
 輝きの下からは一瞬で近接戦闘用の衣装が現れる。
 衣装の力がステータスに反映された結果、STRが上がった分槍剣そうけんを握る手に力を込め振り回されないように固定する。

『ご~!』

 アクアの気の抜けそうな声とは裏腹に、
 片足のみ[アクアライド]が急加速を行いアルシェの身体は回転を始めると同時に[ホワイトフリーズ]が自然と周囲に振りまかれ敵の接近を牽制しつつ逃走√の確保を進める。

「ここっ! 《氷竜一槍ひょうりゅういっそう!!》」

 囲いの多少手薄になった綻びへ高濃度魔力を交えた一槍いっそうで無理矢理に道を作る。上層部とはいえすでに樹葉に囲まれている為、飛べない魔物の増援を警戒しつつ新設された氷の道を急ぎ前進する。

 枝葉や魔物の一部は凍てつき、
 現時点で問題となっているのは例の緑色の体毛をした猿と鳥のコンビだった。
 どうやら猿は単身でも空の移動が可能らしい。
 ただ理解が出来ない。

「風を枝に見立てて移動しているの?」
『賢いねぇ~』

 しかも風に捕まっているだけで結構な速度で移動してくる。
 鳥も中型程度。その飛行した跡の風を掴めばそれはそれは厄介な機動力を得る。
 中型の鳥に乗れる猿は小型なのに棍棒を持つ腕だけが異常発達しているので本当に一撃が重い。

「《ぐぅぅ…っ!水華蒼天突すいかそうてんづき!》」
『《氷結覇弾ひょうけつはだん!》』

 個々の強さはおよそランク8。
 ただし、禍津核まがつかくで発生していた赤鬼クリムゾンオーガとは差を感じる為、
 狂化を含めてもランク7+が適正かと冷静に考えながら鳥の突進と猿の棍棒を回避し防御し突き崩す。

 「抜け…たっ!!!」

 やっと開けた視界に広がる青空。
 槍剣そうけんで横から出てくる敵を牽制をしつつ急加速で一気に抜ければ、
 その加速で攻撃に失敗した魔物群は尚も追撃の姿勢を貫き追ってきた。

「アクアちゃん!」
『追撃を許さないアクアの本気を見よ~! 《降り注ぐお魚ミーティア・アクアリウム!!》』

 降り注ぐとは言いつつも発生源は槍剣そうけんであるからして。
 アルシェが空に向けてバック走をしながら構える槍剣そうけんから次々と水で出来た様々な魚が生み出されては魔物の全身を撃ちぬいていく。
 動きの速い魚は身体も小さく威力も低いが視界を埋める役割で量産され、その群れの中でパンパンに膨れ上がった河豚ふぐがぬるりと魔物に接触しては機雷のように大ダメージを与えていく。

『わはははは~!鳥も猿も敵ではないのだ~!!』

 普段はぽやぽや気質なのに戦闘中に興が乗るとハシャぐ所は親子の血か。
 半面その父親の方とも互いを支え合っているアルシェとしてはこれまた冷静になれたので多少雑になった魔法制御を整えることに集中する。
 キュクレウス=ヌイの頭から完全に抜け出して落とされる前の初期地点まで戻って来られたことに戦闘はまだ続いてはいるもののホッと一息ついた。

「《アクエリアス》」
『あ~、楽しかった~!ますたーも三点目はダメだったみたいだね~』
「お兄さんとメリーが核を見つけるまではこっちに引き付ける必要があるんだから、一旦落ち着いてね」
『あいあ~い』
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