特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第13章 -1st_Wナユタの世界-

†第13章† -06話-[逸る拳聖①]

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 翌日。目の前で里帰りから帰ってきてリフレッシュしたマリエルが敬礼しながら報告に現れた。

「姫様の一の戦士。マリエル=テンペスト=ネシンフラ、ただいまを持って復帰します!」
「応、お帰り。ってか、一の戦士……?
 まぁ好きに名乗るといいよ。アルシェには挨拶して来たんだろうな」
「やだなぁ~、姫様より先に隊長の所に来るわけないじゃないですかぁ~(笑)」

 一の戦士うんぬんはタルの影響かな?
 アルシェの配下としてちゃんとアルシェを一番に考えているところはマリエルらしいな。
 出会ってからも変わらない多少俺を舐めた態度も信頼あっての物だし俺は気にしないぞ。だから俺以外にはするんじゃないぞ?

「アルシェには先に伝えてるけど今日からはナユタの世界に入るメンバーで連携を重点的に訓練するからな。
 セーバーとはお前もタイプが違うしちゃんと手札を覚えろよ」
「姫様と隊長と私とメリーさん、そこにセーバーさんですよね。了解でっす!
 でも、せっかくフラム君と契約したリッカさんは連れて行かないんですか? ノイちゃんとタルちゃんペアも」
「ユニゾンが出来ないと瘴気精霊に飲まれる可能性があるからな……。
 なるべく早めに瘴気を散らす魔法の開発はするけど万が一を考えると四人のうち誰が瘴気に飲まれても面倒になることは確実だからさ。
 四人はゼノウPTやセーバーPTと組ませて異世界から侵入して来る奴らの掃討を担当させる。こっちの方が飲まれる確率は低いだろう」
「それはそうですけどねぇ……」

 ピリリリリリリリ!ピリリリリリリリ!
[リリトーナ=イブニクスから入電。繋げますか?][Y/N]

「ありゃ? ちょっとコール入ったから先にアルシェのところ行ってろ。
 ニルもこの数日で魔法式の整理をしたらしいからその辺も確認しとけ」
「りょうか~い! 《エアライド》」

 YESっと…、あれ?今マリエルが俺の知らない魔法を発動させてホバーしながら飛んでいったように見えたんだが!?
 空じゃなくて地面を飛びながら移動出来る簡易的な飛行魔法を知らない内にニルと一緒に造っていたんだ!格好良いからあとで俺も教えてもらおう!

〔鎮魂式以来です、水無月みなづき様。少々お時間宜しいでしょうか〕
「ご無沙汰です。時間なら大丈夫ですよ、アーグエングリンのギルマスが朝からどうしました?」
〔ありがとうございます。実は……今、ギルドにエゥグーリア拳聖けんせいがいらっしゃっておりまして……〕
「は?」
水無月みなづき様達はいつ手合わせに来るのか…と……〕

 そういえば徒手空拳の心得があるエゥグーリアにマリエルを中心に俺たちにも教えて欲しいと教練のお願いをしていたが、優先すべき事が重なって後回しにしていたな。そんなに楽しみだったのかエゥグーリアよ…。
 こっちも楽しみにはしているけど、目下ナユタの世界との戦闘を控える身としてはちょっとタイミングが悪い。

「あー……、そうですね……。わざわざギルドまで押しかけてこちらに連絡を入れるほど楽しみにしてもらっていて申し訳ないのですが、魔神族関連で現場を動く事が難しいので数か月待ってもらう事になりそう。と、伝えてもらえます?」
〔伝えてはみます……、少々お待ちください〕

 そう言い残すとリリアーナさんはコールをミュートにして説得に当たったようだ。
 それから2分も待たずにミュートは解除され、リリアーナさんの疲れた声が流れて来た。

〔説得失敗しました……。水無月みなづき様方に合流するそうです…〕
「は? 合流って……エゥグーリアはアーグエングリンの客将ですよね?
 勝手に軍を離れる事も勝手な行動も絶対ダメでしょう?」
〔そこもご説明したのですが、ならば王に直談判する!……と、飛び出してしまって……。
 もし本当に合流の許可が下りましたら水無月みなづき様は受け入れる事は可能ですか?〕
「まぁ戦力としては申し分ないし訓練してほしい俺たちの所に来てくれるなら喜んで受け入れますけど……」

 メインはマリエルとタルテューフォが相手をする事になるだろう。あとは面白がってセプテマ剣聖けんせいが混ざるかもしれないが、俺は俺で気の使い方とか気に関する知識をエゥグーリアには教えてもらいたい。
 他国の者だから継続してPTを組む事は出来なくとも一時的にでも力を借りられるのは願っても無いことだ。

〔出来得る限り思い止まって頂けるよう王とも協力して尽くしてみますが、もしもの時は大義名分を用意して合流する運びとなると思います〕
「わかりました。その際は迎えを寄こすのでまた連絡ください」
〔はい、ご配慮感謝します。それでは〕

 切断が切れる音を聞きながら思う。面倒な事になったな…。


 * * * * *
 猪突猛進に迫るお馬鹿のストレートパンチを捌き顎に掌底しょうていを食らわせてやれば「ぎゃん!」と悲鳴を上げて空に打ち上げられるタルテューフォに追撃を加えようと後を追って空へ自身を魔力縮地まりょくしゅくちで弾き飛ばす。

「なんでにーにぃは避けるのだ!」
「お前が単調にしか攻撃しないからだろっ!ほら隙有り!」
「痛~いぃ!何でにーにぃの攻撃は痛いのだ!」
「肉弾戦の時は[波動ブラスト]を使う様に普段から訓練してるからだよ!
 人間よりステータスが種族的有利だからって考えなしに突っ込んでくるなっ!バカタレ!」

 俺の追い打ちに落下しながらもブー垂れるタルヘおしおきの再追撃を行おうとしたがここでマリエルが死角からエントリーしてきた。
 マリエルは跳ねて同じ高度に来ただけで[エアライド]は継続したまま打ち合いに発展する。

「お前、帰省している間に練習してただろ!明らかに慣れ過ぎだぞ!」
「隊長がこんな体にしたんでしょ!族業の手伝いしてもすぐに終わっちゃって暇だったんですよ!」

 俺も[エアライド]を試してみた所、地形が凸凹しているルートを通る際は確かに有効だと思ったけれど戦闘には向かないという感想だった。やはり空中に浮かんだままなので踏ん張りが効かず腕の振りや足蹴りなどが全て肉体だけでなんとかしなけりゃならなくなって威力が出なかった。

「ところがぎっちょん!部分的に[ソニックブースト]を使いこなせば威力と姿勢制御は賄えるんです!」
「クソッ!真なる加護で増強した制御力をこれでもかと活用しやがって!ぐあっ!」
「タルちゃん、今!」
「【猪獅子流/セカンドフィスト!】」
「ところがぎっちょん!」

 マリエルの激しい攻撃と[エアライド]の熟練差によって押し負けた俺に再びタルテューフォの拳が目の前に迫る中、短い間に俺の頭に並ぶ手札は回避(体術)・反射(光魔法)・置換(闇魔法)の3つだった。俺の防御力をタルが抜けるとは思っていないが俺の中では論外の選択で回避も一般的過ぎるから今回は置換で対処しよう。

「《空間接続ディメンションコネクト!》」
「うぉぶっ!」
「タルちゃーーーーん」

 タルテューフォの突き出した拳は俺に触れる直前で消え失せ、繋げた空間から生えたタルの拳は自分自身の腹部へと深々と刺さり息が止まった声が耳元で聞こえた。そのまま凄い勢いで地面を転がっていくタルにマリエルの声が響くが声音的に心配する気持ちが全く篭っていない事は明白だった。

「お前なぁ……」
「タイミングはばっちりだったでしょう?
 でも、置換はメリーさんが出来るからやるなら反射をして欲しかったんですけど」
「誰の影響だ、そのスパルタ思考は」
「隊長に決まってるじゃないですか」

 マリエルも猪突猛進で一辺倒なタルテューフォを心配してわざと俺に絶妙なタイミングでけしかけたらしい。
 それも俺の手札も考慮した上で彼女の戦力向上に役立てようと俺を利用して、タルテューフォが地面を転がるところまで織り込み済みだったようだ。予想通りの展開とはいえマリねぇと慕うタルに酷な事をする。

 ピリリリリリリリ!ピリリリリリリリ!
[アインス=ヴォロートから入電。繋げますか?][Y/N]

 うわ……、リリトーナさんの連絡から二時間くらい経ったところで今度はアスペラルダのギルマスからだと!?
 絶対エゥグーリアの件でしょコレ。出たら面倒になること確実だろう……出たくねぇ。
 けど、出ないわけにもいかないよな。はぁ。

「はぁーい、お疲れ様ですアインスさん」
〔お疲れ様です水無月みなづき様。予想も付いておられると思いますがエゥグーリア拳聖けんせいの件でご連絡しました〕

 でしょうね。二時間の間に何があったのか大人しく聞きますよ。
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