特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

文字の大きさ
305 / 450
第13章 -1st_Wナユタの世界-

†第13章† -20話-[魔神族ナユタ&メルケルス①]

しおりを挟む
『(パパ~!驚き桃の木!生き残りが居たよぉ~!)』
「(えぇ~!?それって世界樹壊したら一緒に滅びるパターンだろっ!?)」
『(ちょ~とアルが対話を試すから時間稼いでね~。世界樹はまだ結界を張る能力は残っているみたいだしこっちは気にしなくて大丈夫っぽい~)』
「(はいはい……おっと!)」

 愛娘との愛ある念話を邪魔するナユタにストレスを感じつつ油断なく雷を躱す。
 何度か雷のナイフを連射して来たけれど効果は無いと判断したのか別の攻撃手段に出て来たナユタは2種類の魔法を使い始めた。
 一つは対象の周囲から複数の雷が時間差で射出される。これは一応射出される一瞬前に電気の走りみたいな物が発生するから軌道を読んで全力回避は可能だ。六雷×三セットだから発動すればあまり余裕はない。
 もう一つが雷獣の存在。召喚魔法に類するものだと思われるが氷垢ひょうくのステルシャトーと違って使役して戦ってくれるタイプと見ている。物理攻撃は効果が無く魔法は効くものの一時的に身体がバラバラになってもすぐに元に戻って再び襲い掛かって来る。

「面倒臭ぇ!時間差×ナイフ×雷獣のコンボでナユタの元まで辿り着けねぇっ‼」
『(時間差はクールタイムが少しあります。その隙を突いて一気に進むしかないでしょう)』
『(あ~~~!ベルも役に立ちたいよぉおおおお!)』

 ナユタは当初の想定通り後衛タイプの魔神族だった事に間違いなかったけどここまで同じ後衛タイプのステルシャトーと違うもんかね⁉ 複数の魔法を連打して対象を遠距離に潰す生粋の魔法使い。とはいえ[ミョルニル]という近接武器も持っているから近接戦闘も出来ないわけでは無い事も分かっている。

「《スタイルチェンジ/カレイドウンブラ》《弦音つるね》《闇食やみはみ》」

 再び指を鳴らし雷ナイフを撃ち落とし闇光あんこう色に変化した剣を振るって時間差雷の発生ポイントを一掃した。残る雷獣はその光景に怯むことも無く襲い掛かって来た為一刀両断して一気にナユタへ近づく。
 アルシェ達が世界樹へ辿り着けたからこそスタイルチェンジで打開出来たのだ。ストームカレイドじゃないとジャマ―を発生させられなかったから助かったぜ。

「やっと喋られる距離に近づけたな!」
「こんなところまで追って来るとかマジで何なんだお前っ!くそがっ!死ね!死ね死ね!」
「今回は逃がすつもりは無いからお前こそ死にたくなければちゃんと戦った方がいいぞ!」
「この前は油断しちまったがここは俺のホームだぞ!簡単に殺せると思うなよっ!雑魚がっ!」

 う~ん、このクソガキ感よ。パートナーのメルケルスや上位者のシュティーナに比べるとなんでこうも格下っぽいんだろう。
 出会った最初こそ強さに差があったから脅威度は高かったけどこの一年で対策も立てられるようになったからこそ際立つクソガキ感と言うか不良少年感というか……。メンタルモデルとなった生贄のナユタ少年の精神年齢がその程度って事かもしれないな。

「《スタイルチェンジ/カレイドイグニス!》」
「ミョルニル!」

 近接範囲になった事とアルシェ達が世界樹に辿り着いた事でナユタの攻撃の大部分を引き付ける役割は終わりを告げ、カレイドハイリアはその剣身を赫焔かくえん色にその身を変え続け様に俺はナユタに斬り込んだ。対してナユタが叫ぶと空から一筋の雷が掲げた手に落ちてきてそのまま雷は鎚の形に変化して俺の剣を受け止める。
 が、ただの振り下ろしすら受け止めきれずに後退を余儀なくされたナユタを追って続け様に剣劇を繰り出す。属性的な相性もあるけどステータスがナユタと正面から潰せる程度には成長している事を確信して時間稼ぎに移行するのであった。


 * * * * *
「やっぱり……っ!貴女…面白いっ!」
「タイプの違うって話、戦えるようになるとわかりやすいね!」
『(お父様が言うにはメルケルスはスピーダー、ニル達はファイターって話でしたわねー!)』

 前回の戦闘経験からメルケルスは真っ直ぐ進む技術は完全に私達を上回っているけれど、それはあくまでがだ。加速力や細かなグリップは逆に私達が上回っているから対空戦のバトルメイキングはこちらで組み立てやすいだろうとアドバイスは頂いている。ただ、加速が乗ったブリッツはギリギリで回避しても衝撃波でダメージを負うし追い掛けて攻撃を仕掛けるのも無理があるから考えながら戦う必要がある。

「正面から[極地嵐脚ストームインパクト]を普通に蹴り込んでも威力負けしてこっちがダメージ負っちゃうよね?」
『(シザースで回避してから力を溜めてライダーキックですわー!)』

 ライダーキック……ってアレかぁ…。
 隊長の記憶をニルに共有してもらったからどういう代物かはわかっているし一応魔法として完成はしているけど何種類かあったよね? まぁいいや。必殺技候補の一つだけど止めてダメージ与えられるなら使っちゃお。

『(シザースですわー!あははは!当たりませんわよー!)』
「ちょこまかと……良い加減真正面から戦って……!」

 超音速で真っ直ぐ衝撃波と轟音を撒き散らしながら突進してくるメルケルスを左右に蛇行して回避する間際に愚痴を溢しつつ通り過ぎて行ったメルケルスが戻って来る前にこちらも迎え撃つ準備をしなきゃ。

「《天羽あまはね》シフト:雷天翔らいてんしょう!《限定解除リミットリリース!》」
『(チャージカウントー!3ー!)』

 私の詠唱を切っ掛けに右足を纏う魔法[天羽あまはね]がその翼を大きく羽ばたかせ魔力が集中し始める。その制御をしながら構えを取れば姫様と御揃いの腰に付いた大きなリボンも同じく魔力を高めながらドルルルゥと耳馴染みの無い音を響かせながらその時を今か今かと待ちわびている。

『(2ー!)』

 メルケルスの轟音が一時的に途切れ再び鳴り始めた事からも丁度切り返してこちらに向かい始めた事を理解しつつニルの声が自分の中で響き渡る。天羽あまはねも魔力が高まるにつれてその輝きを強めており、メルケルスから届く殺気も比例するように強まっていく。

『(1ー!)』

 実験した時よりも右足と腰には高濃度魔力が集まり今から自分が繰り出す攻撃の凶悪さを想像して私まで怖くなって来た。姫様も似た魔法の[ドラゴンダイブ]を初使用時は怖かったと言っていた。その気持ちを共有できた嬉しさと自分がどうなってしまうのだろうという恐怖が良い感じに混ざり合い覚悟を決めて、今、発動する。

「『《シルフィードスティングッ‼》』」

「《エアリーズプロテクト》」

 一瞬で景色は過ぎ去り、右足から出力された高濃度魔力が身体全体を槍の様な鋭利な形状で保護し切っ先は向かってきたメルケルスに蹴りを放つ。腰のリボンが推進力となりマリエル達はメルケルスに凶悪な攻撃力を持って突喊とっかんして柔らかで反発力のある風の防御膜を斬り裂き右足は盾に届き得た!

 が。

「———《ガストパリィ》」

 盾の表面が削れ始めた瞬間、冷静にパリィを行い自身へのダメージを軽微に抑えたメルケルスはその一瞬の攻防で盾の半分を失い盾を握っていた左腕を抉られこの交戦はマリエル達が勝利を飾った。魔法の効果が切れて通り過ぎた後にマリエル達が振り返るとメルケルスが瘴気に侵されているのかドス黒く粘り気のある血を流している姿が目に止まる。

「効果はあったね」
『(結果から見れば上々ですわねー。初見だから上手く行ったと考えておくべきですわー!
 盾と片腕が死んだのなら良いですけれど高濃度瘴気が漏れ出ていますし厄介かもしれませんわー!)』

 緑竜の魔石がまだ無いマリエル達の使用魔力は全て自前で頻繁に先の大魔法アルスマグナを使うことは出来ない。
 魔神族相手でも効く事が確認出来たのは重畳で宗八そうはちとアルシェに良い報告が出来ると浮かれ半分、こちらを振り返らずジワジワと瘴気を身体から漏らし始めるメルケルスを相手にこれからどうしようと焦り半分でこれからの戦闘を頭で組み立て始める。

「ふふふ、痛い……痛いなぁ……。いいわ、とても良い!《ブリーズリペア!》」
「ん? んん!?噓でしょ!?もしかして……」

 メルケルスが叫んだ瞬間、彼女の身体漏れ出ていた瘴気は濃度を増し黒紫こくしのオーラへと変質して感情の昂り様を表していた。そして詠唱の効果によって大破したはずの盾がみるみる修復されて行く様子にマリエルは驚愕し……。

「さぁ……もっと私を…傷つけて……!」
『変態ですわー!!!??』

 ニルはメルケルスの性癖にドン引きするのであった。
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
 お人好しで動物好きな最上悠は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏も、寿命から静かに息を引き取ろうとする。 「助けたいなら異世界に来てくれない」と少し残念な神様と出会う。  転移先では半ば強引に、死にかけていた犬を助けたことで、能力を失いそのひっそりとスローライフを送ることになってしまうが  迷い込んだ、訪問者次々とやってきて異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

処理中です...