特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第13章 -1st_Wナユタの世界-

†第13章† -28話-[禍津大蛇]

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〔ナユタ復活の最終工程に入ったと思われます!全員警戒を強めてください!〕

 際限なく降り注ぐ雷に打たれ狂暴化した瘴気モンスターを片っ端から倒しまくっていたその時、アルシェが強制的に[揺蕩う唄ウィルフラタ]を繋いで注意喚起して来た。
 振り返り世界樹を見やればゆっくりではあるが世界樹の下部から魔方陣が順々に広がっているのが見て取れた。

「最終工程ね……。あの魔方陣ひとつひとつがナユタの構造情報を保有してるってところか」
『(差し詰め、神族のナユタへ加工中という事ですね)』
『(じゃあさ~、ここで世界樹を破壊しておけば復活しないのかなぁ~?)』
『(あら、アクア姉様にしては冴えた考えですね。わたくしも同じ考えですよ)』

 俺とクーの考察はほぼ同じ様だ。続くアクアの考えに同意するアニマだったけど馬鹿にされているのに気づかずアクアは「えへへ~♪」と喜んでいる。それで姉の威厳は保たれているのだろうか?



「ん?」



 見間違いかと思った。それは起き抜けの様に世界樹からその身をのそりと立ち上げ、ナユタの復活進行と共に世界樹をぐるりとまず一周して見せた。黒い、禍々しく、何とも言えない脅威と恐怖がぶるりと俺の身体を振るわせる。
 冷や汗が一気に噴き出して容易に顎から1滴、2滴と滴り落ちて行く。

「見えているか?」
『(お父さんと同じです。ボク達も当然見えているです)』

 ノイ以外は俺と同じく身を強張らせて得体の知れないアレを見つめ続ける。

「フランザ達はどうだっ!?アレが見えているか!?」
〔は、はい!アレとは、黒いミミズの様な、蛇の様なアレの事で間違いありませんよねっ!?〕
「そうだ!見えていない者はいるか!?」
〔……タルテューフォと拳聖けんせいエゥグーリア様は見えていない様ですが感じ取れる様です。この地の者は何も……。アレは……何ですか?〕

 それは俺が聞きたいくらいだ。今もなお出て来たところからどんどんと伸びて行き、既に何週も世界樹をその身で巻き付いてナユタを追って行く。分かるのはアレがこれから厄災を広げるであろう事。おそらく得体の知れない[破滅]という存在に関係しているという事くらいだ。

「アルシェ達は何ともないか?」
〔無事ではありますが、世界樹が尋常ではないほどに震えています…。
 外から見えているソレは世界樹から何かを無理やり剥がしているのではありませんか?〕

 剥がしている? 安易に考えられるなら世界樹が貯め込んでいたエネルギー。つまりは[神力エーテル]だと思われる。

「呼びかけの方はどうだった?」
〔反応はありませんでした、が、個人的な意見で言えば意識が希薄なだけで意思はあると思っています〕
「アレが完全に抜けたら意思が戻るかもしれない。その時にまた声掛けを頼む。
 ただし危険と判断した場合は安全第一を優先してゲートに戻れ。場所はマリエルが知っている」
〔わかりました〕

アラームが鳴り続ける脳内を無理やり抑え込み次の手を考える間にクーがアドバイスをしてくれる。

『(お、お父様…。とりあえず[転写]を数枚しておきましょう)』
「だな……」

ソレを画角に収めて数枚写真に収めた。
思考は止めない様に意識しつつとりあえずアレがこのまま世界樹を登り切るのは不味いと、どんどんと上昇していく危機感に従って妨害を試みる。

「《スタイルチェンジ/カレイドルークス!》」
『(一点突破だあああああ!)』
「《光竜一刀こうりゅういっとうっ‼》」

 精樹界エレジュアの力も分けてもらい威力を増した光の奔流は何の妨害も無くソレに到達して飲み込んでいく。
 しかし、奔流が収まったその場には時間稼ぎにも、何の影響も受けなかったソレが世界樹をとぐろを巻きながら登っていく様子だった。

「明らかに瘴気関連の悪しき物だぞ…。何故光属性の攻撃が効かない!?」
『(良くも悪くもお父様は力技になってしまっています。アレが呪いならば浄化する手段が定められているのかと…。
 もしくは神族や魔神族よりも上位存在の為効果が出ていない可能性も……)』

 クーの言う通りなら現時点で俺にはアレを止める術がない。可能性としては聖女だけか?
 でも現実的にクレアをこんな危険な場所に連れて来るなんて選択肢は取れない。第2形態を望んでいたとはいえアレがナユタと一つになった時に同じく攻撃が一切効かなければどうしようもないぞ。

「避難はどの程度で終わる!?」
〔希望者は急がせています!私達の様子から急いでくださる方がほとんどですが、アレの到達までには間に合わないかと……〕
「ちっ! 予め伝えるが、アレの全身が出た時点で世界樹の力は根こそぎ持って行かれる可能性がある。
 つまりバリアの消失と全方位から瘴気モンスターの襲撃が発生するぞ。すでに世界樹の半分も登っているんだ、10分も猶予は無いぞ!」
〔い、急がせます!〕

 揺蕩う唄ウィルフラタはアルシェが一斉接続した事で異世界に来ている全員に垂れ流されている。
 フランザ相手に喋っていた内容だがメンバーから離れているゼノウやトワインが上手く動いてくれることを願うばかりだ。
 アルシェに関しても精霊が居ないとはいえマリエルも合流しているならゲートまでの移動なら容易に出来るだろうし、俺が考えるべきはナユタ第2形態をどのくらい抑えられるか…だな。攻撃が効かなければ逃げ回って避難が済むまでの囮をしなけりゃならんし。

 その後も属性別に妨害を試してみたが何の成果も得られないまま、ついにナユタが魔神族として顕現する時が来た。
 構成の過程で魔方陣は歪められ神族ではなく魔神族として肉体を得たナユタが世界樹の天辺から生まれ落ちた……。
 その瞬間。


 ——バクッ‼


 ミミズとも蛇とも判断の付かなかったアレが瞳を開き、寸分違わず復活を遂げたばかりのナユタを大口を開いて一気に飲み込んでしまった……。

「オロチ…だったのか……。そういう、事か……」

 俺の小さな呟きは子供達にしか聞こえていなかった。
 何故なら俺の予想通りにナユタを取り込む前にオロチの身体は世界樹から抜け出しており、仲間たちと避難前の住民は全員バリアの消失と共に混乱と瘴気モンスターの襲撃に右往左往していたからだった。

『ほら、お父様ー!バリアが消えて瘴気が一気に流れ込んでいますわよー!
 光魔法で援護しないと避難も合流もままなりませんわー!』
「あ、そうだな…」

 放心していた俺と違って冷静にニルは状況を観察しており、俺をその一言で正気に戻してくれた。

「《星光せいこうを発する星々ほしぼしよ、魔力の奉納ほうのうを持って我は願う。》」
「《時には闇を、時には陽光ようこうを、瘴気に犯されし大地を浄化し清めろ。》」
「《永久とわとは願わぬ、今一時の安寧を降り注ぐ光刃こうじんにてもたらし示せ。》」
「《邪悪な意思を撃ち貫け、邪悪な存在を斬り払え。 亭々ていていたる我らが意思を理解し世界を守る糧と成れ!!》」

 詠唱に合わせて天上に光属性の魔方陣が出現した。俺の身体と七精剣しちせいけんカレイドハイリアから魔力が溢れ魔方陣へと飲まれて行く。空気中の瘴気を浄化して広がっていく魔方陣はある程度まで成長するとその輝きをより強く、強く発していく。
 以前使用した大魔法アルスマグナとは別仕様の個人技ではあるが、ゲート周りと世界樹との導線を確保するだけならこれで十分だ。

 射出準備を終えた光の魔法剣が切っ先を魔方陣から覗かせる。魔力の放出も止まりすべて完了した。
 俺は剣を振り下ろしながら詠唱を完成させる。


「《光剣流星群ミーティア・クラウソラスっ》!!!」


 空から光が降り注いだ。後にその光景を見た避難途中の村民は揃ってその様に証言している。
 味方や村民に当たる事も無く、押し寄せる瘴気を押し留める障壁の様に光を振り撒く光の剣が村の至る所に突き刺さりゲートへと導いてくれる。焦った仲間たちも瘴気による視界阻害や不意打ちを注意する必要が払拭された事を理解して攻勢に切り替え村人を誘導していく。

『(追加だあああああ!)』
「《俺式サンクチュアリフィールド!》」

 テンションが上がると熱血系になるベルの掛け声と共に地上に落とした光剣に範囲浄化魔法を施していよいよ持って戦いやすいバトルフィールドが完成した。導線の他にも適当に光剣をばら撒いたから敵が仲間の下へ辿り着く頃には瘴気の鎧の効果は半減しているだろう。

「次は第2形態、もしくは完全体の対処か……。
 世界樹が生かされるのかナユタはこのまま使い捨てにされるのかも要観察だけど、攻撃が有効かどうかで逃げの選択をしないと」

 あれを[禍津大蛇オロチ]と仮称するとしてその性質を俺は知っていた。
 魔神族の一人、隷霊れいれいのマグニと全く同じ力に見える。
 魔神族の復活は各世界の世界樹で行う必要があると知った時点から隷霊れいれいのマグニがおかしいとは思っていたけど、いよいよ持って破滅の本体との間柄が重要になって来た。マグニだけがその場に身体があれば復活出来るのをメリーが目撃しているのだ。
 元々の考察は本体が別にいて分御霊わけみたまで他人の身体に寄生して暗躍していると考えていた。
 破滅の分御霊わけみたまの一つが隷霊れいれいのマグニならば権能の一部が扱えてもおかしくはないか? そして能力的には目の前で覚醒を果たそうとして世界樹の樹上で蛇玉になっている[禍津大蛇オロチ]も世界樹に寄生していたわけだ。

 寄生能力が同じなら禍津大蛇オロチを倒せば破滅を弱体化出来るのかもしれない。
 だって自身を分けて各世界に解き放っているわけで、そもそもの目的は不明だけど一部を削っている事に変わりはないだろう。
 蛇玉がいつの間に深淵を覗けるような深く禍々しい色の球体へと変貌していた。あれから生まれる奴に手も足も出なければ各魔神族の世界を巡る計画も頓挫してしまう事を考えると祈らずにはいられない。

「気分良く元の世界に帰してくれよ…。どうにもならんかったら死んでも死に切れん!」
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