特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

文字の大きさ
322 / 458
閑話休題 -|霹靂《へきれき》のナユタ討伐祝い休暇-

閑話休題 -90話-[ナユタの民の新天地②]

しおりを挟む
「ラフィート王への謁見をお願いします」
「確認して参りますので少々お待ちください」

 今日遊びに行くよ。そう伝えておいたの顔パスにはならずしっかりと門番に止められた。
 前回と同じように顔見知りの兵士が館の中へと確認に向かうのを見送りつつ腕を揉む。
 先の戦いで魔力筋肉マジカルマッスル神力エーテルに耐えられず損傷した事が原因で筋肉痛に似た痛みが腕に残っているのだ。精霊の呼吸エレメンタルブレスによる超強化の弊害だな。
 自然回復を待つしかないとの事なのだが歩き回るには支障はないので休暇を早めに取得する為にフォレストトーレへの移民話を持ち掛ける為にラフィートの元へとやって来た。

「中へどうぞ」
「ありがとう」

 以前よりもさらに増築された元領主館。新たに増えた通路を案内された先にお馴染みの仕事部屋が存在した。
 元町長のゲンマール氏や貫禄の出て来た文官達の最奥に目的のラフィートが書類に埋もれて出迎えてくれた。

「文官は育ってそうなのに何故以前にも増して書類に埋もれているんだ?」
「…旧王都の残骸から集められるだけの資料を掘り起こしたからな。その整理に人が割かれているんだ……」
「丁度1週間ほど食事なし睡眠なしで働ける果実が手に入ったから一つくらい回そうか?」
「なんだその異常な効果は!? 劇物で働くほど終わっておらんわ!」

 見回してみれば確かに薄っすら隈があるものの全員ちゃんと生活は出来ているように見える。
 人材登用も増築も進めてさらに王都の復興に新事業のギガファームとくればそりゃ目まぐるしい事になるだろう。文官冥利に尽きるな。
 そんなずっと忙しい彼らにさらに仕事を持ち込む俺はなんて悪い奴なのか。本当に申し訳なく思うけど人材紹介でもあるし許してくれよな☆。

「今日は何の用だ? 伝言で本題を出さずに遊びに行くとだけ聞いた時は頭を抱えたぞ」
「まぁ真剣な話なんだけど……。魔神族の討伐完了の報告とその事後処理でご相談に来ました」
「わかった。ここでは狭いから多目的ホールへ移動しよう。皆も手を止め同行すると良い」
「「「「はい!」」」」

 ラフィートのひと声でゲンマール氏や文官の方々は素早く机の上の資料を整理して退室していく。
 一致団結。旧王都陥落から今まで協力して盛り立てて来たメンバーは絆も連携も一段と強いと感じる場面だった。
 全員が退室して多目的ホールとやらに移動したのを確認してからラフィートは立ち上がり、俺と近衛の数人を引き連れてまたまた増築された通路を通って目的地へと到着した。
 近衛が扉を開いてラフィート共に入室するとすでに全員が着席していたので、ラフィートも空いている席に着席し近衛は近くの壁際に待機する。

「さて、宗八そうはちは壇上に上がってくれ。さっそく話をやらを聞かせてもらいたい」
「わかりました。まず既にアスペラルダのギュンター王から霹靂へきれきのナユタ討伐の報は届いている。と考えて宜しいですか?」
「王族間通信魔道具も城の残骸から回収出来たからな…。今朝方連絡を頂いて周知済みだ」

 王族間通信魔道具とはビデオ電話の様な使い方が出来る迷宮産アーティファクトの事だ。
 送信機と受信機が必要で魔力を流せば動くので電気は不要。これのデチューン版が[揺蕩う唄ウィルフラタ]でもある。

「一応、報告の対象は魔神族と関わりがあってその後も協力してくれているラフィート様とゲンマール氏だけなんだけど…。
 君たち文官メンバーならびに近衛メンバーも知っておいて損はない事なんだが、普通は知らせたところで[破滅の呪い]で破滅に関する危機意識の欠如や違和感の見逃しなどが起こる。
 その呪いを回避するには精霊と契約するかへ待つ関連で強烈なショックを受ける必要がある」

 後者の強烈なショックはゲンマール氏。前者の精霊契約がラフィートとなる。
 ラフィートの側近である彼らは漏れなく無精と契約しているので呪いの対象からは外れているのでこの度報告会に参加する流れとなった。協力者が多いに越したことはない。以前であれば諜報員として秘密裏に調査・解決する事で事情を知らぬ人々を守り危険から遠ざけられると思っていたが、フォレストトーレ旧王都の戦いで否応なしに人手が必要になったので無精契約者を増員して人海戦術を取らざるを得なくなった。
 ここまで大々的な事件が起きては民草に伝える必要は無いがある程度協力者の周りには伝えておく必要も出て来る。

「今日まで何度か顔を合わせていると思いますが、俺が何をしているのかわかっていない方が多いでしょう。
 今日は映像で報告が出来ますのでそれを観て理解してくださると助かります。
 さっそく助手を紹介します。闇精クーデルカと光精ベルトロープです」

 影からスッと現れたクーとベルは手分けして全員に紙媒体の資料を配っていく。
 上映しながら資料に目を通してくれれば時系列的にも登場人物に関しても着いて来られると思う。

「新しい魔法か?」
「えぇ。限定的な場所でしか上映出来なかったんですけど光魔法と合わせる事で可能になりました」

 適当に茶を飲みながらの報告では無いのでついついラフィート相手でも敬語を使ってしまう。

『《よるとばり》』
『《ライトボール》』

 クーの影から夜が広がっていく。床、壁、天井を次々と夜へと変えていき、天井には星が輝き、窓の外は夜の街並みへと変わっている。
 この魔法は[安全地帯セーフティーフィールド]の発展型だ。あれは野宿する時用の魔法だったが今は使う必要が無くなってしまったからな。この部屋だけ亜空間となり内部で起こる何もかもを外には洩らさない。
 映像を見やすくする為ではあるが星明かりだけで手元の資料を読めとは言えないのでベルが申し訳程度の明かりて各員を照らしてサポートした。

『《ミラーコート》』
『《レコードリプレイ》』
「それでは上映会ならびに報告会を始めます」

 木製の壁が白色に発光するモニターとして変化し、それをディスプレイにクーの魔法が発動した。

 * * * * *
 視点は全て俺かクーかメリーの三者の誰かとなっている。
 異世界に入る前の地竜の島から始まり、突入時の戦闘、異世界の壊滅具合を目の当たりにして荒事に慣れていない文官はすでにグロッキー状態。近衛は突入時の敵の数に絶望的な印象を受けた様だが、今はフォレストトーレよりも酷い状況の異世界に唖然としていた。

「旧王都は長く見ても瘴気の影響を半年ほど受けていたことになりますが、この異世界は少なくとも一世紀から二世紀瘴気の影響を受けているので星全体がこのように高濃度の瘴気に覆われています。もちろん上空に抜けても瘴気が漂っているので綺麗な空気というのは存在していません」
「よく無事に活動出来ましたな。お仲間には妖精族の少女が居たでしょう?」
「長時間の活動は確かに厳しいですが俺たちは光魔法で浄化することが出来ますので時折浄化休憩を挟みながら進みました」
「なるほど…。光魔法は必須ですな」

 ゲンマール氏はそんな中でも息を呑みながらも食い付いていた。
 事後処理の瘴気の浄化活動を見学していたらしいので旧王都との差もきちんと理解した上で質問もしてくる。
 うちのメンバーについても頭に叩き込んであるようだ。

「目的地は世界樹。世界が存続する中心となるくさびである世界樹を破壊すればこの異世界。
 ナユタの世界は崩壊し魔神族の一人を永久に葬る事が出来ると考えた結果の作戦でした」
「魔神族の成り立ちだな。星の人口が三分の一まで減ると世界樹が出現し生贄を得て守護者を創造する。
 その守護者しゅごしゃは神族と現地では呼ばれており、破滅の介入によって魔神族へと成った…か。ん?現地?」
「ラフィート様の疑問に答える為にも次の場面に移ります。
 我々はフォレストトーレ旧王都の件もあった為人類は全滅していると想定していました。が、世界樹の生命力は想像以上でバリアを周囲に張って人類を生き残らせていたのです」
「……これか。人と、妖精か?魔族?」

 タレア族は半魚人だ。元は魚人だと思われるが人と交じり合ったことで半魚人が大半の種族となっている。
 どちらかと言えば妖精の部類とは考えているけれど異世界の住人だからその成り立ちも異なり現状は獣人などの亜人類と処理される事だろう。
しおりを挟む
感想 89

あなたにおすすめの小説

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

処理中です...