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第14章 -勇者side火の国ヴリドエンデ編-
†第14章† -01話-[辺境の地-魔物群暴走後-]
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「はぁっ…はぁっ…はぁっ…。これで終わりかっ!?」
「………。……大丈夫。今メリオが倒した魔物が最後のようです」
見回せば魔物の死体で周囲は囲まれ点々と冒険者の姿も見受けられる。
魔物の流した大量の血がいくつもの血だまりを作り、土と血が混ざった粘度の高い何かは全員の足裏にこびり付いて滑るわ張り付くわと最悪だ。
「皆さん!お疲れ様でした!風上にお越しいただければ食事と水浴び場を提供いたします。
怪我をして動けない方がいらっしゃれば申し訳ないのですが肩をお貸しくださいませ!」
俺達の耳に届く声を俺は知っている。
時折旅の途中に現れては噂や事件の情報を提供する。今回は魔物群暴走の発生を知らせ俺達は人々を守る為に急いで駆け付けなんとか発生前に叩く準備を進めていた冒険者達と合流する事が出来たのだ。
彼女はアスペラルダの諜報侍女隊に所属していると名乗った。
各地に散らばり噂話などを集めては精査を行いオベリスクの破壊作業を行う、らしい。今は徹夜で戦って足元もおぼつかない冒険者たちに声を掛けて回っている。
「おい坊主。大丈夫か? 長時間の戦闘は不慣れだろう?」
「大丈夫ですよ。クライヴさんこそお歳なのですから無理をしないでくださいね」
「ぐぁっはははは!この程度で倒れる俺様じゃねぇさ!もう一夜くらいなら徹夜でも戦えるわっ!」
「流石はSランク冒険者……。頑丈ですね……」
心配げに寄って来た老年の大男はクライヴ=アルバード。
クラン[サモン・ザ・ヒーロー]の臨時クランリーダーをしていたがフォレストトーレの戦いを経て俺たちに付いて来てくれた剛腕戦鬼という武闘家系職業のSランク冒険者だ。魔法使いと弓使いが抜けて危うく見えたのだろう。しばらくは付き合ってやると言って今も付き合ってくれている。
「ミリエステは先に血を洗い流して来ると良い。俺達は周囲を見て回ってから合流するから」
「でも、私だけ先にって……」
「どこも女性冒険者を優先しているじゃろ。お前も一緒に綺麗になって覗きが無いか目でも光らせておけばいい」
「そういう事なら……。わかったわ。あとクライヴさんはデリカシーに欠ける言い方は止めてくださいね」
そう言い残して風上に急ピッチで設置が進む水浴び場へと足を向けた魔法使いはミリエステ=リテュエルセッテ。
火の魔法を得意とする一族の女性で近頃サラマンダー神の加護を受けた事で火精霊使いへと至っている。今回は魔物を倒すだけでなく足場の安全確保のために血溜まりなどを蒸発する作業も行ってくれた器用な女性だ。
最後に周囲を警戒しながら寄って来た重騎士はマクライン=ハウランド。
ミリエステと同様に彼もティターン神の加護を祝福された土精霊使いで魔法による進行方向の妨害や攻撃を一手に集めて冒険者たちの壁となり戦闘を度々安定させてくれた。防御力を上げる魔法も使用していたから思ったよりもダメージを受けていない事もその技量の高さを示している。
「スタンピードは治まったが本丸の迷宮は早めに制圧しないとまた魔物が大量発生する事になる。
どこまで俺達が関わるべきかも休息後に話し合わないとな」
「だね。ただひと眠りはさせて欲しいかな。ははは」
「マクラインも疲れているだろう? 食欲があるなら寝る前に一緒に配給を食おうじゃねぇか」
「もちろんご一緒させていただきます。それにしてもクライヴ殿は若者よりも幾分も元気が残っていますね」
笑い合いながらも足取りの重い冒険者に肩を貸しながらクライヴさんとマクラインを引き連れて風上に設営された水浴び場と配給所に立ち寄るとアスペラルダのメイドさんが駆け寄って来た。
「申し訳ないのですがマクライン様をお借りしてもよろしいでしょうか? 水浴び場の排水用の傾斜面と視線隠しに壁の設置をお願いしたく……」
「あぁ……なるほど、わかりました。メリオとクライヴ殿は先に配給を受け取って食べていてください」
「マクラインの分も受け取っておくから終わったら俺たちの所に来てよ。あの列に並ぶのは面倒でしょ」
配給所に視線を誘導するとマクライン達もそちらを見て納得顔になる。
元より冒険者たちに同行していた治療院のシスター達は食料と大鍋などを持参し後方支援を行っていた。今は石で組み上げた竈で調理を始めて出来た端から配給を始めているので列はそれなりに伸びていた。その調理場の隣には水無月さん達が良く用いていた簡易調理場セットが組み上げられていたのでアレは諜報メイドさんの持参品なのだろう。
マクラインとは一旦分かれて俺とクライヴさんは配給の列に並んだが、すぐに冒険者の代表の方々に呼び出され優先的に配給を受け取ってから代表たちが集まる天幕へと移動した。その際にマクラインやミリエステにも自分達の居場所を伝えてもらう様に依頼をしたから迷うことなく合流は出来るはず。
「おぉ!勇者殿、呼び立てて申し訳なかった」
「いえ、配給も受け取ったのでひとまず食べながらでも大丈夫ですか?」
「それは我々も同じですから大丈夫です。さっそくですが今後の予定を伺えればと思いお呼びしたのですが……」
「俺達は火の国を目指しているのですが、今回は偶々噂を耳にしたのでこちらに立ち寄ったに過ぎません。
迷宮の主を貴方方で討伐出来るのであれば無理にこれ以上は参加せずに一宿したら移動しようと思ってます」
魔物群暴走で倒した魔物のランクはC~Bが多かった事からも迷宮の主はランクAの魔物の可能性が極めて高い。
ここは辺境に近く、近隣の狩人が異変に気付き冒険者が調べた結果未知の迷宮を発見。しかし魔物を間引くには時すでに遅く魔物群暴走の発生は確定的であった為手透きの冒険者を辺境なりに集めて事に当たった経緯があった。
そして参加した冒険者を見るにAランク冒険者はそれなりに揃っている事は確認していたので急遽参加した俺達が討伐せずに功績は冒険者に譲るべきと考えたのだ。
俺達の立場を説明すると近隣の村の代表者たちは冒険者サイドの代表に視線を向ける。
「勇者殿の参加は心強く十分に報酬を受け取れるものと判断している。
しかしこのまま最後まで参加しない場合は働きに対して満足な報酬を渡せない事も事実だ。精々が魔物の皮や爪などの換金素材となるし出発までの時間を考えるとあまり量は期待出来ないのだが……」
「散財が出来るわけではありませんが各国からそれなりにお金は頂いていますのでその提案で十分です。
気になる噂もあるので今は先を急ぎたいと思います」
「了解しました。では、勇者殿のPTが休息している間に我々冒険者が素材の剥ぎ取りを行います」
「村の方からも少ないですが報酬をお渡しいたします。ギルドにも当然今回の魔物群暴走に勇者PTが参加した事はご報告させていただきます」
皆が疲れていたこともあり話し合いはすぐに終わりを迎えた。
実際、魔物群暴走を乗り越えたばかりなので次の魔物群暴走が発生するまでに猶予はある。残る冒険者が英気を養ってその間に増えた魔物を間引きして主の討伐を成すには十分だ。元々報酬目当てでも無い。
迷宮の主を討伐した場合、貯め込んだ財宝と異世界から流れて来る主相当のレアアイテムを手にすることが出来る。が、ランクSであれば装備を期待して多少強引にでも参加させていただいたかもしれないけれどランクAなら今の俺達には必要が無いのだ。
必要な話し合いも終わったので雑談を交えつつ食事を進めているとマクラインが合流して来た。
そして彼が食事をしている間に汗や土煙で汚れた身体を水で洗い流したミリエステと女性陣が合流したのを機に男性陣は席を立って入れ違いに水浴びに向かった。
「へぇ、これがマクラインが設置した水浴び場かぁ~」
「俺だけじゃなくて契約精霊のオーヴィルにも手伝ってもらったけどな。メイドさんの指示通りに壁やらを出しただけだ」
「いやいや、上等じゃねぇか!」
外から見る分には屋根が無くても問題は一切無い簡易的な岩だけで構成された部屋が3つ設置されていた。
入口は布で仕切られているだけなので女性陣の水浴びの時は警戒が厳しかった事だろう。入口に控えているアスペラルダのメイドさんに声を掛けた。
「空いてますか?」
「これは勇者様。現在は右の水浴び場が空いておりますのでお一人ずつどうぞ。
水浴び後はこちらのタオルを使って身体をお拭きください。中に洗髪料などアメニティも揃えておりますのでお好きにお使いくださいませ。最後に水を拭き取った布の返却と空いた旨をお伝え願います」
「わかりました」
視線で誰から行くかと伺うとマクラインもクライヴさんも俺で良いと頷いてくれたので先に利用させてもらう事にした。
「《ウォーターボール》。さぁごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」
入口からの視線を防ぐ布を捲ると2畳ほどの広さの個室に出た。
壁を見やればマクラインが施したであろう出っ張りがあってタオルを引っ掛けると装備を全て外して水球に身体を沈めていく。冷たいがべた付いて不快だった身体が綺麗になるのは心地が良い。
洗髪料の他にもボディソープも置かれていたので言われた通りに利用させてもらったけれど、元の世界の物に比べれば劣るとはいえこんな僻地で利用出来るのは素晴らしい。俺のPTは水無月さんの所みたいに闇精霊使いが居ないからインベントリに入らない分は手持ちの袋に入れて持ち運ぶ必要がある。
「エクスも後で利用するか?」
『(軽く水で濯いでくれる程度で大丈夫ですよ。人型を取ってまで水浴びする必要はありませんから)』
「わかった。メイドさんに綺麗な水を出してもらって後で洗ってあげるね」
『(よろしくお願いします、メリオ)』
身体を洗いながらギルドや時折現れるメイドさんから報告される水無月さんとアルカンシェ様の動向が頭を過ぎる。
つい先日、魔神族の一人である霹靂のナユタの討伐に成功したらしい。しかもその方法が魔神族の世界に乗り込んで原住民の救助も同時に行ったというのだから本当に敵わない。成果としては魔王討伐よりも凄いのではないだろうか?
彼らは強い。魔王もこのまま討伐出来るほどではと考えるのは何度目なのか……。それでも勇者と魔王は切っても切り離せない鏡合わせの様な関係である事は色んな作品でも同様だった事もあり、魔王討伐に関しては俺にしか出来ない事と割り切って先の考えを振り払う。
一応、俺も勇者として旅の合間に見かけた問題や事件の解決に協力したり、巻き込まれたりで装備もある程度整い現在は火の国経由で魔族領を目指している。それでも汎用性能の武器防具である事に不安を覚えている。
先代勇者の遺産でも残されていれば使わせてもらいたい所だけれど残っていたのは[エクスカリバー]のみ。噂の中にある勇者の鎧については優先して攻略してみようと仲間との話し合いで決まっている。
もう数日もすれば火の国ヴリドエンデに入国する事になる。また新しい出会いが良い方向に導いてくれるとあれこれと考えずに事に集中出来るんだけどどうだろうか……。
「………。……大丈夫。今メリオが倒した魔物が最後のようです」
見回せば魔物の死体で周囲は囲まれ点々と冒険者の姿も見受けられる。
魔物の流した大量の血がいくつもの血だまりを作り、土と血が混ざった粘度の高い何かは全員の足裏にこびり付いて滑るわ張り付くわと最悪だ。
「皆さん!お疲れ様でした!風上にお越しいただければ食事と水浴び場を提供いたします。
怪我をして動けない方がいらっしゃれば申し訳ないのですが肩をお貸しくださいませ!」
俺達の耳に届く声を俺は知っている。
時折旅の途中に現れては噂や事件の情報を提供する。今回は魔物群暴走の発生を知らせ俺達は人々を守る為に急いで駆け付けなんとか発生前に叩く準備を進めていた冒険者達と合流する事が出来たのだ。
彼女はアスペラルダの諜報侍女隊に所属していると名乗った。
各地に散らばり噂話などを集めては精査を行いオベリスクの破壊作業を行う、らしい。今は徹夜で戦って足元もおぼつかない冒険者たちに声を掛けて回っている。
「おい坊主。大丈夫か? 長時間の戦闘は不慣れだろう?」
「大丈夫ですよ。クライヴさんこそお歳なのですから無理をしないでくださいね」
「ぐぁっはははは!この程度で倒れる俺様じゃねぇさ!もう一夜くらいなら徹夜でも戦えるわっ!」
「流石はSランク冒険者……。頑丈ですね……」
心配げに寄って来た老年の大男はクライヴ=アルバード。
クラン[サモン・ザ・ヒーロー]の臨時クランリーダーをしていたがフォレストトーレの戦いを経て俺たちに付いて来てくれた剛腕戦鬼という武闘家系職業のSランク冒険者だ。魔法使いと弓使いが抜けて危うく見えたのだろう。しばらくは付き合ってやると言って今も付き合ってくれている。
「ミリエステは先に血を洗い流して来ると良い。俺達は周囲を見て回ってから合流するから」
「でも、私だけ先にって……」
「どこも女性冒険者を優先しているじゃろ。お前も一緒に綺麗になって覗きが無いか目でも光らせておけばいい」
「そういう事なら……。わかったわ。あとクライヴさんはデリカシーに欠ける言い方は止めてくださいね」
そう言い残して風上に急ピッチで設置が進む水浴び場へと足を向けた魔法使いはミリエステ=リテュエルセッテ。
火の魔法を得意とする一族の女性で近頃サラマンダー神の加護を受けた事で火精霊使いへと至っている。今回は魔物を倒すだけでなく足場の安全確保のために血溜まりなどを蒸発する作業も行ってくれた器用な女性だ。
最後に周囲を警戒しながら寄って来た重騎士はマクライン=ハウランド。
ミリエステと同様に彼もティターン神の加護を祝福された土精霊使いで魔法による進行方向の妨害や攻撃を一手に集めて冒険者たちの壁となり戦闘を度々安定させてくれた。防御力を上げる魔法も使用していたから思ったよりもダメージを受けていない事もその技量の高さを示している。
「スタンピードは治まったが本丸の迷宮は早めに制圧しないとまた魔物が大量発生する事になる。
どこまで俺達が関わるべきかも休息後に話し合わないとな」
「だね。ただひと眠りはさせて欲しいかな。ははは」
「マクラインも疲れているだろう? 食欲があるなら寝る前に一緒に配給を食おうじゃねぇか」
「もちろんご一緒させていただきます。それにしてもクライヴ殿は若者よりも幾分も元気が残っていますね」
笑い合いながらも足取りの重い冒険者に肩を貸しながらクライヴさんとマクラインを引き連れて風上に設営された水浴び場と配給所に立ち寄るとアスペラルダのメイドさんが駆け寄って来た。
「申し訳ないのですがマクライン様をお借りしてもよろしいでしょうか? 水浴び場の排水用の傾斜面と視線隠しに壁の設置をお願いしたく……」
「あぁ……なるほど、わかりました。メリオとクライヴ殿は先に配給を受け取って食べていてください」
「マクラインの分も受け取っておくから終わったら俺たちの所に来てよ。あの列に並ぶのは面倒でしょ」
配給所に視線を誘導するとマクライン達もそちらを見て納得顔になる。
元より冒険者たちに同行していた治療院のシスター達は食料と大鍋などを持参し後方支援を行っていた。今は石で組み上げた竈で調理を始めて出来た端から配給を始めているので列はそれなりに伸びていた。その調理場の隣には水無月さん達が良く用いていた簡易調理場セットが組み上げられていたのでアレは諜報メイドさんの持参品なのだろう。
マクラインとは一旦分かれて俺とクライヴさんは配給の列に並んだが、すぐに冒険者の代表の方々に呼び出され優先的に配給を受け取ってから代表たちが集まる天幕へと移動した。その際にマクラインやミリエステにも自分達の居場所を伝えてもらう様に依頼をしたから迷うことなく合流は出来るはず。
「おぉ!勇者殿、呼び立てて申し訳なかった」
「いえ、配給も受け取ったのでひとまず食べながらでも大丈夫ですか?」
「それは我々も同じですから大丈夫です。さっそくですが今後の予定を伺えればと思いお呼びしたのですが……」
「俺達は火の国を目指しているのですが、今回は偶々噂を耳にしたのでこちらに立ち寄ったに過ぎません。
迷宮の主を貴方方で討伐出来るのであれば無理にこれ以上は参加せずに一宿したら移動しようと思ってます」
魔物群暴走で倒した魔物のランクはC~Bが多かった事からも迷宮の主はランクAの魔物の可能性が極めて高い。
ここは辺境に近く、近隣の狩人が異変に気付き冒険者が調べた結果未知の迷宮を発見。しかし魔物を間引くには時すでに遅く魔物群暴走の発生は確定的であった為手透きの冒険者を辺境なりに集めて事に当たった経緯があった。
そして参加した冒険者を見るにAランク冒険者はそれなりに揃っている事は確認していたので急遽参加した俺達が討伐せずに功績は冒険者に譲るべきと考えたのだ。
俺達の立場を説明すると近隣の村の代表者たちは冒険者サイドの代表に視線を向ける。
「勇者殿の参加は心強く十分に報酬を受け取れるものと判断している。
しかしこのまま最後まで参加しない場合は働きに対して満足な報酬を渡せない事も事実だ。精々が魔物の皮や爪などの換金素材となるし出発までの時間を考えるとあまり量は期待出来ないのだが……」
「散財が出来るわけではありませんが各国からそれなりにお金は頂いていますのでその提案で十分です。
気になる噂もあるので今は先を急ぎたいと思います」
「了解しました。では、勇者殿のPTが休息している間に我々冒険者が素材の剥ぎ取りを行います」
「村の方からも少ないですが報酬をお渡しいたします。ギルドにも当然今回の魔物群暴走に勇者PTが参加した事はご報告させていただきます」
皆が疲れていたこともあり話し合いはすぐに終わりを迎えた。
実際、魔物群暴走を乗り越えたばかりなので次の魔物群暴走が発生するまでに猶予はある。残る冒険者が英気を養ってその間に増えた魔物を間引きして主の討伐を成すには十分だ。元々報酬目当てでも無い。
迷宮の主を討伐した場合、貯め込んだ財宝と異世界から流れて来る主相当のレアアイテムを手にすることが出来る。が、ランクSであれば装備を期待して多少強引にでも参加させていただいたかもしれないけれどランクAなら今の俺達には必要が無いのだ。
必要な話し合いも終わったので雑談を交えつつ食事を進めているとマクラインが合流して来た。
そして彼が食事をしている間に汗や土煙で汚れた身体を水で洗い流したミリエステと女性陣が合流したのを機に男性陣は席を立って入れ違いに水浴びに向かった。
「へぇ、これがマクラインが設置した水浴び場かぁ~」
「俺だけじゃなくて契約精霊のオーヴィルにも手伝ってもらったけどな。メイドさんの指示通りに壁やらを出しただけだ」
「いやいや、上等じゃねぇか!」
外から見る分には屋根が無くても問題は一切無い簡易的な岩だけで構成された部屋が3つ設置されていた。
入口は布で仕切られているだけなので女性陣の水浴びの時は警戒が厳しかった事だろう。入口に控えているアスペラルダのメイドさんに声を掛けた。
「空いてますか?」
「これは勇者様。現在は右の水浴び場が空いておりますのでお一人ずつどうぞ。
水浴び後はこちらのタオルを使って身体をお拭きください。中に洗髪料などアメニティも揃えておりますのでお好きにお使いくださいませ。最後に水を拭き取った布の返却と空いた旨をお伝え願います」
「わかりました」
視線で誰から行くかと伺うとマクラインもクライヴさんも俺で良いと頷いてくれたので先に利用させてもらう事にした。
「《ウォーターボール》。さぁごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」
入口からの視線を防ぐ布を捲ると2畳ほどの広さの個室に出た。
壁を見やればマクラインが施したであろう出っ張りがあってタオルを引っ掛けると装備を全て外して水球に身体を沈めていく。冷たいがべた付いて不快だった身体が綺麗になるのは心地が良い。
洗髪料の他にもボディソープも置かれていたので言われた通りに利用させてもらったけれど、元の世界の物に比べれば劣るとはいえこんな僻地で利用出来るのは素晴らしい。俺のPTは水無月さんの所みたいに闇精霊使いが居ないからインベントリに入らない分は手持ちの袋に入れて持ち運ぶ必要がある。
「エクスも後で利用するか?」
『(軽く水で濯いでくれる程度で大丈夫ですよ。人型を取ってまで水浴びする必要はありませんから)』
「わかった。メイドさんに綺麗な水を出してもらって後で洗ってあげるね」
『(よろしくお願いします、メリオ)』
身体を洗いながらギルドや時折現れるメイドさんから報告される水無月さんとアルカンシェ様の動向が頭を過ぎる。
つい先日、魔神族の一人である霹靂のナユタの討伐に成功したらしい。しかもその方法が魔神族の世界に乗り込んで原住民の救助も同時に行ったというのだから本当に敵わない。成果としては魔王討伐よりも凄いのではないだろうか?
彼らは強い。魔王もこのまま討伐出来るほどではと考えるのは何度目なのか……。それでも勇者と魔王は切っても切り離せない鏡合わせの様な関係である事は色んな作品でも同様だった事もあり、魔王討伐に関しては俺にしか出来ない事と割り切って先の考えを振り払う。
一応、俺も勇者として旅の合間に見かけた問題や事件の解決に協力したり、巻き込まれたりで装備もある程度整い現在は火の国経由で魔族領を目指している。それでも汎用性能の武器防具である事に不安を覚えている。
先代勇者の遺産でも残されていれば使わせてもらいたい所だけれど残っていたのは[エクスカリバー]のみ。噂の中にある勇者の鎧については優先して攻略してみようと仲間との話し合いで決まっている。
もう数日もすれば火の国ヴリドエンデに入国する事になる。また新しい出会いが良い方向に導いてくれるとあれこれと考えずに事に集中出来るんだけどどうだろうか……。
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