特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

文字の大きさ
333 / 450
第14章 -勇者side火の国ヴリドエンデ編-

†第14章† -02話-[噂の地下遺跡-噂の救世主の鎧①-]

しおりを挟む
 長い年月で朽ちて所々崩れた遺跡の中で俺達は火を焚き交代で睡眠を取っていた。
 一緒に番となった方は数日前に紹介されて同行しているだけのあまりに薄い関係の為、会話の少ない空気に火の弾けるパチパチ音とどこか遠くで水が滴るポチョン音が嫌に広い空間に響いてしまう。

「む!またゴーストが寄って来た様ですぞ、メリオ殿」
「は、はい!《エンハンスホーリー!》」

 いち早く反応して立ち上がって警告を発する人物は元剣聖けんせい、セプテマ=ティターン=テリマーズ様。
 先日の魔物群暴走スタンピード参加後にユレイアルド神聖教国から与えられた馬車で移動している途中で水無月みなづきさんから連絡を受け、その際にしばらくの同行を提案されて受け入れた為この地下遺跡まで付いて来ているという訳だ。
 エンチャント魔法で彼の武器に光属性が付与された事を確認して俺達はゴーストの群れに挑みかかった。


 * * * * *
 ——数日前。

 ピリリリリリリリ!ピリリリリリリリ!
 自分達からはあまり使用しない人造アーティファクトの[揺蕩う唄ウィルフラタ]が耳元でコール音を発したので会話からその音へ意識を移すと目の前にウインドウが表示された。

[水無月宗八みなづきそうはちからの入電です][受電しますか? Y/N]

 時折アップデートを遠隔で行っているらしく、表示される文章は元の世界に近くなっている。
 もちろんYESに触れるとコール音はピタリと止まり代わりに水無月みなづきさんの声が届いた。

「はい、こちらプルメリオです」
 〔おう!久しぶりだなメリオ!今どの辺りに居る?〕
「えっと……。ついさっき火の国に入った所ですけど……」
 〔ちょっとお前の戦闘力向上の為に紹介したい人が居るんだけど今から合流しても良いか?〕

 久し振りに聞いた水無月みなづきさんの声は溌溂としていた。目標を達成した喜びがまだ残っている様だ。
 色々と手助けしてくれている人ではあるけど強さという視点で見れば勇者の自分よりも強いと感じているので正直対応には困る人の一人だ。けれど、善意が含まれている上に確かな効果を発揮している事も確かなのでもちろん返事は了承と伝え馬車を路肩へと止めた。

「尊師……いえ、水無月みなづき様からの連絡ですか?」
「うん。馬車で移動している事を伝えたから数分以内にゲートを繋げるってさ。(尊師?)」
「また厄介事の臭いがしないでも無いけど何か言っていたか?」
「戦闘力向上の為に人を紹介したいって。誰だろうね?」

 馬車を止めながらミリエステやマクラインに報告したけれどミリエステは何故そんなに嬉しそうなんだ?
 御者をしてくれているクライヴさんには馬車に残ってもらい、俺達は少し開けた場所へと移動したところで俺に張り付いていた闇魔法で描かれた鳥居が剥がれて大きく展開する。これが水無月みなづきさんが開発した長距離移動魔法の[ゲート]と呼ばれる代物だ。
 誰かに描くことでその人とすぐに合流する事が出来る。すごい便利だ。
 ゲートから出て来たのは水無月みなづきさん。そして見知らぬ袴姿のご老人と土精。

「おいすおいす!勇者PT全員元気そうで何よりだ!」
「お、おいす? お久しぶりです。ナユタを討伐したと聞いていますよ!おめでとうございます!」
「あはは~、ありがと。おかげで改善したい所も見つかったから今は休暇を理由に色々試行錯誤の毎日だよ(笑)」

 まだ強くなろうとしているのか……。
 挨拶もそこそこに水無月みなづきさんは初めて顔を合わせるご老人の紹介を始めた。

「こちら、セプテマ=ティターン=テリマーズ氏。え~と……剣がとっても得意なお爺さんです。
 メリオだけじゃなくてマクラインの剣術向上の指南役としてしばらく同行をお願いしようと思って連れて来た。あと、土精ファレーノ。セプテマ氏の契約精霊だ」
「指南役? 同行をお願いってちょっと色々と唐突なんですけど……」

 紹介ってそう言う事? というか、いきなり同行って緊急事態でもないのに受け入れ難いお願いなんだけど……。
 それにこのお爺さんに関して名前しかわかっていない所も二つ返事で了承する事にブレーキを掛けていた。
 困惑する俺達。笑顔の押し売りをする水無月みなづきさん。何故か楽し気なお爺さん。どう返事するのが正解だろうか……。

「え!? まさか剣聖けんせいかっ!?確か……セプテマ=テリマーズっ!マジかっ!えっ!?」

 そんな空気間の中で凄く大きい声が後方から響き渡った。振り向けば念の為馬車の見張りとして残ってくれたクライヴさんが興奮しながら駆け足で走り始めるところだった。「マジか!?マジか!?」とずっと小さい声でボソボソ言いながら駆け足の速度は興奮と共に上がっていく。当然視線はセプテマさんに固定されていた。

「ほ、本当に剣聖けんせいかっ!? 七精の小僧!お前が連れて来たのかっ!?」
「え、えぇ……そうですけど。クライヴのおっさんの食い付き凄いな」
「そりゃそうだ!高速剣のセプテマって言やぁ俺ら世代なら誰でも知ってる有名人だぞっ!今までどこに隠れてやがったんだっ!?」
剣聖けんせい……どうりで聞き覚えがある名前と思えばそう言う事か……!」

 クライヴさんが水無月みなづきさんに詰め寄っている横で会話を聞いていたマクラインが思案顔から納得顔へと変わって言葉を溢す。お爺さんの正体を水無月みなづきさんの代わりにマクラインが語った内容としては、十数年前に剣聖けんせいの称号を得た剣士が居たがその後行方知らずとなった為やがては剣聖けんせいの名前もここしばらく耳にしなかったのですぐに結びつかなかったらしい。
 マクラインは剣に通じていたので覚えていたけれどミリエステは魔法使いなので全く聞き覚えが無かった。
 そんな大物が何故水無月みなづきさんと知り合いで何故俺達に同行するという話になったのか……。

水無月みなづき殿、同行と先ほど言われていましたがセプテマ様は精霊使いとは言えクライヴ殿よりもお歳の様に見受けられます。旅に付いてくるには厳しいのではありませんか?」
「騎士殿。体力に関してはここしばらくリハビリに付き合ってもらったので問題は無い。
 病気になればぽっくり逝くかもしれんがソレはソレで十分とも考えている。今回は恩ある水無月みなづき殿が勇者の剣の技術を磨きたいと打診して来たので頷いたに過ぎない。君たちが断るなら水無月みなづき殿も強要はしないものと考えている」
「昔の記憶だから俺もはっきりセプテマ様の力量を覚えてねぇが今のお前達よりも剣術に関しては強かったように思う。
 こいつらの判断材料に俺と模擬戦を軽くしてもらえませんか?」
「あいわかった。それで良いかな、水無月みなづき殿?」

 その後の模擬戦は凄かった。スキルや魔法は禁止のルールではあったけど動きも速く攻撃力の高いクライヴさんが有利に進めると安易に考えていた俺をガツンと殴るかの様な強烈なイベントだった。
 初手自体は想像通りにクライヴさんが殴り掛かった。高速で殴打と脚撃でセプテマさんを後方に下げていく様を見てまず吹き飛ばない事に驚き、次に全て高速で翻る剣でクライヴさんの攻撃を受け流しながら剣を振るスペースを確保する為に前進に合わせて自分の意思で後退していた事実に驚愕した。
 手と足でコンボを繋げる連撃に対して剣一本で対処した。それだけ卓越した技術を持っていることは明らかだった。
 以前指導していただいたアナザー・ワン達とも違う力技ではない完全な技術の匠な技に俺は目を奪われたのだ。

「まぁここまでの技術を一朝一夕で身に付けろとは言わないけど、為にはなるだろ? メリオだけじゃなくてマクラインも」
「そう…ですね。水無月みなづきさんが剣術の指南役に抜擢するだけはあります……。俺は同行をしてもらおうと思うけど二人はどう? しばらく一緒に旅しても良いかな?」
「メリオが良いなら俺は構わない。クライヴさんは言わずもがなだろうしな……。ただ、男ばかりが増えるのはどうなんだ?」
「それは今更だわ。お爺さんが一人から二人になったところであまり気にはならないし。
 私的にはセプテマさんの契約精霊が女性型なのが嬉しいわ。やっと女子トークが出来そう♪」

 こうしてセプテマさんが俺達の旅にしばらく同行する運びとなった。
 クライヴさんは尊敬の念を込め初めから様付けで呼んでいた為俺たちもそうすべきかと伺いを立てたところ、本人から立場の訂正として剣聖けんせいの称号は返上したと聞いた。そもそも様付けも慣れないのでさん付けでも爺さん呼びでも構わないとの事。
 さっそくミリエステが土精ファレーノに話しかけて盛り上がっているところで水無月みなづきさんが俺の傍に寄って来た。

「じゃあ予定通り紹介も終わったし俺は帰るな」
「相変わらずフットワークが軽いですね。何か火の国で調べておきたい事とかあれば協力しますけど……」

 いつも何だかんだで頼んでもいないのに世話を焼いてくる水無月みなづきさんの背後にはアスペラルダが居るのだろう。
 それでもアスペラルダに対して俺達が出来る事は魔王を倒す事だけ。せめて実際にメッセンジャーとなっている水無月みなづきさんに何か出来ないかと話を振ったところで何者かが近くに降り立つ気配を感じて振り返ると。そこにはまた新しいメイドが立っていた。

「それには及びません。情報収集は私達の仕事にございますので。
 お久しぶりでございます、ご主人様」
「ん? おぉ!確かアナスタシアだっけ?」
「覚えていただけたようで嬉しゅうございます。ローテーションの任務ですが今は私が勇者様周りで情報収集の任に就いております」
「このまま魔族領まで入るつもりか?」
「流石に野を闊歩する魔物もB~Aランクがゴロゴロ居るそうなのでレベルを上げてからになるかと……」

 なんとメイドさんは水無月みなづきさんと顔見知りだったらしく会話に花が咲いている。
 どうやら身を隠しながら俺達の追跡や情報収集する為に野宿もする必要があるらしく、その辺りで安全に眠れる魔法を完全制御で使用出来る様にならなければ魔族領入りは国からの許可が出ないそうだ。
 今は彼女たちが収集した情報の紙束を渡された水無月みなづきさんが重点的に調べて欲しい事柄を選んでいる最中だ。

「これだな。自分の人影を見たら死ぬ。隷霊れいれいのマグニの手に似ている」
「かしこまりました。侍女諜報隊に周知しておきます」
「あと、メリオ達にもお願いしたいんだけど火の国ヴリドエンデの王族を調べてくれ。
 メリオ達は実際に謁見した時の印象を教えてくれれば助かる」
「その程度でいいなら任せてください。メイドさん達だと実際に会うのも難しそうですしね」

 火の国ヴリドエンデは魔族領からその他4カ国を守る立場にあるので4カ国は何か問題が発生したとしても火の国に救援を求めることが出来ない。その隙に魔族が責めて来ては元も子の無いからだ。
 そして最近名が上がって来たアスペラルダの至宝、アルカンシェ王女殿下とその護衛隊に興味を持ち始めている可能性があり、無理な求婚でもされれば面倒な事になるので事前にどういう考えを持っている人物なのか知っておきたいとの事だ。そりゃ心配だよな。
 無理をしない程度に探ってくれればいい。そう水無月みなづきさんは言い残し、新たにセプテマさんが俺達のPTにゲスト参加することが決定したのだった。
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
 お人好しで動物好きな最上悠は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏も、寿命から静かに息を引き取ろうとする。 「助けたいなら異世界に来てくれない」と少し残念な神様と出会う。  転移先では半ば強引に、死にかけていた犬を助けたことで、能力を失いそのひっそりとスローライフを送ることになってしまうが  迷い込んだ、訪問者次々とやってきて異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

処理中です...