特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

文字の大きさ
335 / 450
第14章 -勇者side火の国ヴリドエンデ編-

†第14章† -04話-[噂の地下遺跡-噂の救世主の鎧③-]

しおりを挟む
 コツコツと足音が嫌に響く。
 通路の明かりはランプのみで一つ一つの間が開き過ぎていて長い通路はほとんど暗闇に覆われている。
 踏みしめる度に黒く変色し乾燥した血痕が砕けて粉末へと変わっていく。

 ——そして、俺達は最奥に辿り着いた。
 ダンジョンは攻略できるように出来ている。
 ダンジョンボスのランクが高くなればなるほど攻撃の厄介さは向上していく。だから動き回ったり幅広い戦略を組み立てられるように高ランクになればなるほどボス部屋の広さは広大になっていく訳だ。崩れたボス部屋の入り口は半透明の膜で内部が見えない仕様ではあるが……。

「こりゃ、A+かSの広さだな……。ボス影もかなり長身の人型だぜ」

 ボス部屋の境目を経験豊富なクライヴさん覗きながら敵ランクを看破する。
 こういう広さの天井には巨大な結晶が生えており、それが光源として部屋全体を照らして視界を確保してくれているらしい。
 問題はダンジョンのボス部屋へは1PTしか入室出来ないけれど、迷宮ワンダリングのボス部屋は制限が無い点。今回のこの部屋はどちらが採用されるのか……。

「クライヴ殿、儂と共に手が通るか試してみよう」
「わかりました。先に俺が……通りましたね」

 ここでも年長者組が率先して試してくれた。無事に別PTの二人の手が膜を通った事で迷宮ワンダリングのルールが適用されていると判断出来た。共に潜って来た6人全員でボス戦に挑むことが出来る。そんな小さな事にホッと息を吐く。
 確認を終えればひと休憩を挟んで全員でゲートの膜を通り過ぎボス部屋へと足を踏み進めた。

「ふむ、リッチですな。特殊な魔法を使う故攻略は面倒ですぞ」
「確か異世界の魔導師と言われているのでしたか? 使用する魔法がこの世界の魔法とは異なるので厄介でした」

 セプテマさんとミリエステの解説を聞きながら全体を見回すと入口から一番遠い位置に玉座が置いてあった。その豪奢な椅子には一つの金基調の全身鎧が鎮座している。
 おそらくあれが[救世主の鎧]なのだろう。縮尺がおかしいのはアレが巨大な事を示している。
 戦場の確認を終えてから俺達は顔を見合わせ互いに頷き足を前に出した。

 部屋の中央付近で地面から少し浮いた長身の魔導師、リッチ。Aランクダンジョンのボスの1体でミリエステが言った通り魔法が厄介だ。
 何せ個体ごとに得意な属性と使用魔法が異なるのだ。Aランクのボスからは性能のランダム性が時々設定されているダンジョンボスが配置されるので何週も攻略するには不向きとされている。
 20歩ほど進めば中央で陣取るリッチがこちらに反応して両手を広げる。開いた胸の前に光が集まっていき、それは長尺な杖へと形が整っていく。

 前衛陣が駆け出した。俺とクライヴさん、遅れてマクライン。
 中衛にセプテマさん。後方にミリエステとアナスタシアさんが陣形に沿って魔法の準備を行う。
 あの杖顕現の完了が戦闘開始の狼煙となる。それまでの間にリッチに接近しておきたい。その一心で足を速めた。


 ——ガシッ!


 しかし、突然の異常事態に俺達は一様に足を止める事となる。
 ここは最奥。ダンジョンだけでなく迷宮も同様に最奥に迷宮ワンダリングボスが控えているのだ。

「なんだとっ!?」

 大きな腕部が2つ、リッチの背後から飛んで来て奴の腕間接を掴んで離さない。
 リッチも突然の出来事に抵抗して振り払おうとしているが全く剥がぬまま杖顕現は続いている。

 ——ガシャン、ガシャンとリッチの後方でさらに鈍い音が聞こえる。
 それは玉座に鎮座していた巨大鎧がバラバラとパーツごとに分解されていく音だった……。

「おいおいおい!嫌な予感がするぞっ!だけじゃないのかっ!?」

 救世主の鎧が最奥部に残されていた場合。
 おそらく族の誰かが装備した後は死ぬまで暴れ、装備者が死ねば次に装備する者が現れるまで休眠期に入ると考えていた。
 俺達が装備するようにインベントリからか、もしくは普通に着込むのかそこまでは判断出来なかったけれど見るからに俺達が想像していた装備じゃない。

「取り込んでる……」

 暴れるリッチにバラけたパーツが集まっていく。魔導師が鎧を
 やがて、リッチは巨大な鎧から頭だけを覗かせた奇妙な姿となり果てた。抵抗してグリグリ動かしていた首もどんどんと緩慢になって、完全に沈黙したかと思えば再起動したリッチは狂気に堕ちた表情と声にならない咆哮で激しく荒れ狂った殺気を奔流として俺達へと放ってくる。ゾクリとした寒気とびりびりと肌を打ち付けるプレッシャーに各々が得物を握る手に汗が滲む。
 顕現した杖を鎧が棍棒の様に握り込んだ事で止まっていた戦闘が仕切り直されボス戦の幕が開かれた。


 * * * * *
『高ランクのアンデッドです!《エンハンスホーリー!》』
「2対1体の敵は初めてだ。気を引き締めて行こう!」

 救世鎧リッチの機動力は遅かった。
 1歩は大きくとも巨人族やエティンなどのオーガ種と同じ様に巨体が機動力を阻害している。杖は杖の役割ではなく杖術なのか棍棒なのか不明だけれど近接武器として扱うつもりらしい。その時点で杖はリッチではなく鎧が操っているのだろう。

「オーヴィル、防御魔法をくれ!【カバームーブ!】」
『《ハイスチール》《エンハンスシールド》』
「こっちは攻撃と防御どっちもだ!」
『《スチール》《エンハンスシールド》《ストリングス》《エンハンスウェポン》』

 技能スキルで機動力を上げつつ防御力も上げたマクラインが俺のすぐ後ろに続き、別方向から高速機動で救世鎧リッチに迫るクライヴさんも無精に掛けられる限りのサポートを付けさせる。
 そのままの勢いでクライヴさんは死角に入り込み脇を殴り込んだ。が、中身が詰まっていない様な音と硬い物同士がぶつかり合った音が同時に発せられる。

「硬ってぇ!?」
「《輝動!》。ぐっ!?斬撃も効果薄いっ!?」

 続いて俺が逆を突いて斬り込んでみたが硬度が高すぎて何度も続けて攻撃していられないと判断する。
 今の一撃の感じだと10撃も続けたら俺の握力が早々に死んでしまう!

「次!魔法いくわよ!《ブレイズレイド!6連!》」

 ミリエステの声が届く。視線が交差したクライヴさんと共に救世鎧リッチから離れると6つの火球が一気に着弾する。
 そのうち2つが俺達前衛陣を狙って振り回された杖に当たり盛大に爆発を起こした。
 何が有効か分からないから全員で効果のほどを目を皿にするつもりで見つめている内に救世鎧リッチを中心に複数の霜が地面を走る。

「水氷攻撃!霜から外れろっ!」

 杖への爆発は腕が仰け反っていたのでノックバック効果を確認しつつ霜から外れるとすぐに霜の後を追って氷柱が津波の様に押し寄せた端から退いていく。本体に当たった火球の行方は効果が薄いのかダメージを負った様には見えない。
 属性的な相性か? 特攻属性があれば助かるんだけど……。

「あれはリッチの固有能力の魔法抵抗フィールドが鎧にも効果をもたらしておるな……。ほんに厄介な」
「ミリエステ様!MP補給はこちらで行います!《魔力接続ビータイリンク》」

 ——バラッ。
 戦闘開始早々に怖気が走る。発動を潰すには発動が早く俺達は退いたばかり。
 さきほどバラバラになった鎧の各箇所に光が走る。

「防御態勢!クライヴさん!」
「応よ!」
「こっちは俺がなんとか受けます!【グローリーガード!】。セプテマさん!」
「任せよ!《ユニゾン!》【高速剣!】」

 前衛は救世鎧リッチの動きに反応してマクラインの影に集まり、後衛はセプテマさんの影へと集う。
 ——直後。リッチをその場に残して救世主の鎧がバラバラに分かれて俺達全員へと雪崩の如く襲い掛かって来た。
 傍に歯を食いしばりながら盾に当たる猛攻を防ぐマクラインを横目に後方へも視線を向けるとすべての鎧パーツを剣1本で弾き飛ばしている姿を見て絶句する。あれ……人間? やっぱり水無月みなづきさんの紹介する人は普通じゃなかった……。
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
 お人好しで動物好きな最上悠は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏も、寿命から静かに息を引き取ろうとする。 「助けたいなら異世界に来てくれない」と少し残念な神様と出会う。  転移先では半ば強引に、死にかけていた犬を助けたことで、能力を失いそのひっそりとスローライフを送ることになってしまうが  迷い込んだ、訪問者次々とやってきて異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

処理中です...