特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第14章 -勇者side火の国ヴリドエンデ編-

†第14章† -09話-[影]

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 城から出て1週間の調査期間を設けてメイドさんから渡された資料を元に自分達の足と目で事実確認を行った。
 そこで最後に被害の出ていない村を巡ってみる事とした。上手く行けば被害を防げるかもしれないと思ったからだ。
 到着した村は王都よりも魔族領に近い場所に位置している村だ。

「すみません。自分と同じ顔に出会ったって話を聞いた事ありませんか?」
「え? あぁ……確かジョルジュが慌てた様子でそんな話をしてたなぁ……。
 でも、みんな本気にしなかったよ。時間帯も朝方だったし寝ぼけていたんだろって」
「ジョルジュさんに詳しい話を聞きたいんですけど、どこの家の方ですか?」
「あっちに進んだ先に少し離れた畑がある。今頃ならそこで耕してるんじゃねぇかな」

 村人が指差す先に進む。この村は人口が50人に満たない小規模の村の様だ。
 洗濯をする女性や薪を担ぐ男性に挨拶しつつ道を進めば確かに集落から少し距離があるところに家と畑があった。
 畑には男が一人、鍬を手にしてはいるもののどこか浮かない顔をしていた。

「すみません。ジョルジュさんですか?」
「え? えぇ……ジョルジュは俺ですけど……何か御用で?」
「影を……自分と同じ顔をした人物に出会ったと話をしていたらしいですけど、詳しく聞かせてもらえませんか?」
「詳しくって言っても三日前に日課の散歩をしていたんだ。
 そしたらさ、森の奥から視線を感じて……魔物かと思って身構えて様子を見たらさ。俺だったんだよ……。
 無表情の俺がずっと俺を見ててさ……俺、怖くなってすぐに村に走ったよ。でも、誰もこの話を信じてくれなくて……寝ぼけていたとか白昼夢とかなだめられた事で本当はどうだったのかわかんなくなった……。今ははっきり見た、とは言えん」

 周囲から見間違えと重ねて説き伏せられた事と混乱していた事も相まって曖昧な記憶だけで事実だと自分を納得させることは出来ない。それでも本当の事はわからないのでモヤモヤしているといった様子のジョルジュ。
 散歩コースと顔を見たとされる森の位置を確認して俺達はジョルジュに別れを告げた。
 ここで何か情報を得られなかった場合、別の村も早めに回りたいからだ。

「とりあえず影かどうかわからない程度の情報だったな……。メリオはどう思う?」
「どうって言われてもその影だかなんだかに会えてもいないしさ……何とも言えないよ」
「証拠を残さず近しい人間と自身を殺す影ですか……。人間業では無い、くらいでしょうね」
「だなぁ。<万彩カリスティア>ほど卓越した魔法使いなら出来なくは無いだろうが、無名でこれ程となると有り得ねぇ。
 それに死体の傷も大型の魔物みたいな引っ掻き傷から刺突と幅が広い。マジで謎だぜ……」
「特に危険な魔物の気配も周囲にはありませんでしたぞ。やはり新種の魔物か……もしくは魔族やも……」

 マクラインに感想を求められたけれど現場を押さえられない以上頭の良くない俺にはこれ以上わからない。
 ミリエステも不気味な状況に魔物の仕業を考え、クライヴさんもそれに同意を示す。さらにセプテマさんは魔族の存在までも疑う始末だ。魔族が人間領に入り込んでいる可能性。確かにそれも疑った方が良いほどに隠密性が高い事件に思う。

 明るいうちに散歩道を巡り、途中にある件の森の中にも足を踏み入れて調査をしてみたけれどそれほど深くない森だった。
 小動物が生活圏にしているだけで魔物はおろか人と見間違えそうな木のうろなども見当たらず再び散歩道へと戻って来たその時。

「きゃああああああああああ!」
「人殺しだ!」
「ディメールの所がやられた!息子のオルメンデだ!里帰りした妹のクレジナも斬りつけて逃げやがった!」
「あの野郎!捕まえろ!」

 警戒していたジョルジュの家ではなく村の方から俺達の元まで響く叫び声が上がる。
 影とは関係が無いかもしれないが勇者としても人としても静観するわけにも行かないと考えて全員で村へと駆け出した。
 村の出口から飛び出して来た人物は村人に追われているにも関わらず無表情で服は血に濡れていた。

『やはり……!メリオ!アレを斬ってください!人ではありませんっ!』
「え!?」
『身体は虚を突く為です!本体は影の方です!』
「儂が身体を斬りましょう。メリオ殿達は影の方をお願いしますぞ!」
「わ、わかりました!」

 光精エクスの確信を持った発言は念話ではなく直接エクスカリバーから発せられたのでみんなにも聞こえていた。
 突然の事にどこから見ても人にしか見えない相手を斬る事に躊躇する俺に対してセプテマさんの判断は早く、一気に相手の前まで進み出て一息に横降りで上半身と下半身に切断する。
 しかし、エクスの言の続きにある様に本体は影にある。身体は切断されたにも拘らず血は一切流れる事は無く切断面は真っ黒だ。

「はぁっ!」

 身体を斬られたことで動きが鈍った影を俺が斬り付けると身体の方にも傷が付いた。
 続けてマクラインとクライヴも影へと追撃を掛け、身体は陥没し斬り傷も増えてやがて炸裂した。残ったのは真っ黒な液状の何かと魔石。

『メリオ!ジョルジュの家へ急ぎましょう!別固体の犯行がバレたならすぐに動き出すはずです!』
「わかった!皆、先に行くね! 《輝動!》」

 ジョルジュさんの家まで障害物の無い直線上に移動してすぐに魔法で急行すると、家の前にジョルジュさんと同じ顔で無表情の魔物が今まさに家に入る所だった。家の煙突からは煙が上がっている。つまり夕飯の支度で火を扱っているのだ。家の外に出る可能性は低い。

「待て!」
「……おや、いきなり高圧的ですね。この村に何の用でしょうか?」
『(同じ要領で身体の後に影を!)』

 一度止まり、声を掛けてすぐに再度[輝動]を発動させて擦れ違いざまに一刀両断する。
 先ほどと同じく血の一滴も漏らさずに動きを止めた影に返す刃を突き立てると両断されてもバタバタと暴れていた体が次第に緩慢となって行きやがて黒い液体と魔石を残して姿を消した。
 騒ぎに気付いたジョルジュさんも家から飛び出して来て俺と黒い液体を目にして大変に驚いていた。

「あ、貴方はお昼過ぎに訪問してきた方……ですよね? その、一体何をされていたんですか?」
「今、火の国で多発している同じ顔の人物に殺される事件を追っていまして、丁度ジョルジュさんと同じ顔に人物と鉢合わせしたので討伐したところです。村の方でも同様の事件がさきほど発生したので急ぎジョルジュさんの元へ駆けつけて間一髪間に合いました」
「それは…どうも?」

 今まさに命の灯が消える所だった。
 なんて説明しても直前で防いだ為ジョルジュさんは目を白黒させるだけでお礼も曖昧な言葉だった。
 仕方がないとは言え肝を冷やした俺の心情としては複雑だ。問題点としては結局本性を現さない限り魔物を見分けるのが難しい。その一点だろう。
 ひとまずの説明を聞いたジョルジュさんは一旦宅内へ戻ると火を消してから村の方へと駆けて行った。入れ替わりに仲間たちが村から移動してきて合流した。

『敵の正体は私が知っています。本来は魔族領に生息している魔物なのです』
「そんな魔物がなんでこっちに出没してるんだろう?」
『手引きがあった事は確実でしょう。アレは森の奥で静かに暮らす臆病な魔物だったはずですから……』
「魔物を操って引き込んだ……。なら一番疑わしいのはテイマーって事かしら?」

 確かにエクスの言う通り魔族領の森の奥で静かに生息する魔物が自主的にこちらに侵入してあまつえ人を襲っている。
 強い魔物が生息域に現れ魔物群暴走スタンピードの様な状況になる事はあっても魔族領の他の魔物がこちらへ姿を現さないにも関わらず影の魔物だけ出て来るなんておかしな話だ。
 ミリエステの言う[テイマー]が引き込んだのなら裏切者が居る可能性も浮上して来る。

「どちらにしろエクス様が情報を知っているならそれを元に国王に報告して対策を取るべきだろう」
「解決まで面倒を見るべきか、それとも自国で処理すべきかは改めて国王に問えばいいさ」

 マクライン、クライヴさんの言葉を受けてあまり顔を出したくもない王城に一路戻ることとなった。
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