特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第14章 -勇者side火の国ヴリドエンデ編-

†第14章† -17話-[エピローグ②]

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 朝一番で登城したにも関わらず優先順位の高い謁見が控えているという事ですでに数時間を控室で無駄にしていた。
 昨夜の話し合いが尾を引いて気まずい空気のまま宿で朝食を食べ登城する道程も会話は少なく控室でもお茶を飲む音だけが響く辛い時間は大変にストレスで俺の前に謁見している奴は誰だ、とイライラする時間を過ごして2時間程経った頃にドアをノックされた。

「勇者ご一行様、お待たせいたしました。謁見が間もなく始まりますので準備をお願いいたします」

 ドア越しのメイドさんが声掛けで俺達はのそりとソファから起き上がって準備をする。
 準備と言っても装備や服装に乱れが無いかを確認する程度だが、それを済ませてメイドさんに連れられて長い廊下を歩いていく。だが、とある廊下の曲がり角で少しだけ見えた後ろ姿に心がざわついた。

「俺達の前の謁見ってアルカンシェ王女殿下だったんですか?」
「申し訳ございません、私は詳しくは知らされておりませんので……」

 知っているのか知らないのか上手いポーカーフェイスでメイドさんは回答を回避した。
 俺の言葉を受けて顔が強張ったのはマクラインとミリエステの二人だけ。クライヴさんとセプテマさんはそもそも昨夜の件を気にしていないのか二人だけで会話をしている姿をちょくちょく目撃しているし今も変わらない表情で黙々と俺達の後を付いて歩いている。
 ようやっと辿り着いた謁見の間に繋がる大扉の前で案内役のメイドさんと別れ兵士の方が引き継いだ。

「勇者プルメリオ様ご一行!入場‼」

 扉は開かれ普段よりも人の多い謁見の間へと足を進める。
 先の双子殿下の件でアルカンシェ様達を警戒しての事なのか、別件なのかは不明だが妙にピリついた場を進み陛下の前で膝を着く。二度の許可をいただいた後に今回の謁見で事件の解決を宣言した。

「この度依頼されました影の事件。その解決の報告をさせていただくべく謁見を申し入れさせていただきました!」
「では、全貌を勇者の口から聞かせてもらおうか……」

 ドラウンド国王陛下から依頼を受けてからの流れを説明し、殺人事件を起こしていた影の正体が[シャドウラーカー]であった事やテイマーとしてヴリドエンデ国領内へ侵入していた魔族が馬の身体に人の上半身が生えたケンタウロスである事。また、実際には21人目の魔族が魔族領側に居てネズミ型魔物を利用して何かしらの情報を伝えている可能性は捨てきれない事も報告した。完璧に遂行したとは言えない状況であるとは理解しつつもこれ以上はテイマーへの知識が浅い以上これ以上確信めいた情報を伝えることも出来ない事を宰相や王太子は理解を示し国王へと伝えてくれる。

「あいわかった。よくぞ依頼を遂行してくれた。これにて勇者プルメリオへの依頼は完了したと判断する!褒美の話はしていなかったが何か希望があるなら相談に乗ろう。もし特になければ金銭と宝物庫ほうもつこから好きな物品をPT各一人に付き一つ持って行くと良い」
「ありがとうございます。仲間と相談の上で決めさせていただこうと思います」
「うむ、急ぐことはないのでじっくり検討してほしい。此度は本当に助かった、礼を言う」

 礼を言う。その言葉を皮切りにして国王以外の全員が俺達に向けて頭を下げた。
 陛下からは感謝の言葉と身を持って礼を臣下が行う。その姿をみて主従とか仲間って難しいけどこういう絆を見せられるととても羨ましく感じてしまう。
 最後に宰相が声を張り上げて閉会の言葉を口にする。

「それでは!これにて謁見は閉会とする!」

 ——パリン……。
 その時何かが割れる音が聞こえた気がした。とても微かで聞こえ辛く気の所為であったのかと思いたかったが何故か確信を持って何か悪い事が起きたと思える音が城の壁を隔てて外から聞こえた気がしたのだ。視線を窓の外へと向けていると大扉の外が騒がしくなり始める。

「謁見中失礼致します!緊急との事でアルカンシェ王女殿下一行が再び見えられておりますが如何致しましょう!」

 大扉を全開ではなく人一人が通れる程度に開き入室した兵士は一歩踏み入ったその場で声を張り上げる。
 やはり俺達の前に謁見をしていたのはアルカンシェ様と一行という事は水無月みなづきさんも居た訳だ……。ざわつく心を抑えつけドラウンド国王陛下がどの様な判断を下すのか待つ。

「緊急ならばこのままここに呼べ!勇者メリオよ、重ね重ねで悪いと思うがアルカンシェ王女の内容次第では力を貸してもらえないだろうか……」
「俺達もまだ力を付けるべきかと悩んでおりましたので報酬の件も含めて考えさせていただきたいです」
「前向きに検討いただけるだけで助かる。では、このままアルカンシェ王女との謁見に移る!」


 * * * * *
「アルカンシェ=シヴァ=アスペラルダ王女殿下一行!入場‼」

 事前にメリオ達が謁見中との情報を受け取っていた為、大扉が開いた先でセプテマ氏も含めた全員が揃っていたけれど入室したアルシェとマリエルは特段反応もせずに歩を進める。礼儀上急ぎとはいえ膝を折らざるを得ないので二人は合わせて膝を着こうとしたがドラウンド国王陛下から止められる。

「良い。緊急と聞いている故、その必要は無い。さっそく内容を伺いたい」
「陛下、ありがとうございます。それでは説明させていただきます。先ほどの謁見時にお伝えした魔神族の異世界ですが、何の因果か先ほどヴリドエンデ城下町の上空で繋がった可能性があります」
「なっ!?それは本当かねアルカンシェ王女!」
「今、私の護衛隊長が確認に行っていますが少なくともどこかの空間に繋がった事は確かです。その繋がり先次第では城下町が戦場になる可能性が高いので急ぎ再度の謁見を望みました」

 アルシェの説明を受けてざわつく謁見の間の面々を宰相や将軍がなんとか抑えようと声掛けを行う。
 実際にアルシェ達が先の謁見で報告した内容は常軌を逸した規模の話でありとても本当にあった出来事とは思えない箇所が幾つもあった。しかし、半信半疑とは言えアルシェと護衛達の武勇伝は大小の違いはあれどヴリドエンデに届いていた事もあって完全に否定出来ないのも事実である為、アルシェの今の説明が本当であれば城下町や王城に被害が出てしまう事はほぼ確定であった。

「良く気付き良く報告してくれた。国王として礼を言う。確認にはどのくらい掛かりそうか分かるかね?」
「気付いてすぐに向かいましたのでそれほど時間は掛からないかと。あぁそうでした……ここに直接向かわせてもよろしいでしょうか?」
「あ? あぁ構わない。情報を知らなければ動きようが無いからな、今は礼儀よりも速度が大事だ」
「だそうです、宗八そうはち

 アルシェの言葉を皮切りに水無月宗八みなづきそうはちは次元を飛び越えて謁見の間に現れた。
 どよめき警戒を露わにする将軍や兵士、ただ驚き言葉を失う王太子や宰相を他所に宗八そうはちはアルシェと国王に礼を取って一歩前へと進み出た。

宗八そうはちから報告させても宜しいでしょうか?」
「皆、落ち着け!彼が突如現れた事は後回しだ!報告を頼む」

 俺が声を荒げ大声で報告をせずとも国王は冷静に臣下を静めるひと声を上げザワツキは治まっていく。
 改めて全員の視線が俺に集まった事を確認してから説明を始める。

「驚かせて申し訳ありませんでした。空間接続の件ですが結論から言えば即戦場になるわけではありません」
「どういう事かね?」
「実際に見せながら説明いたしますので皆様は陛下の周囲に集まって下さい。一方向からしか視認出来ないので」
「わかった、全員俺の周りに速やかに移動しろ!」

 ガシャンガシャンと鎧を着た方々の移動音がしているうちに皆で確認出来るようにゲートを描く。
 移動が完了したのを確認したあとゲートを開き繋がった先に映る風景は青空を背景に明らかにおかしな亀裂とどこかに繋がる30㎝幅の穴が空いていた。そこからは赤黒いもやが漏れ出ている。

「アルカンシェ様から軽く説明があったかと思いますが、残念ながらここから漏れ出ているものは瘴気。これからこの穴は1~2か月程で徐々広がっていき、やがて異世界の魔物が押し寄せる事となるでしょう。また、瘴気は超高温の熱を持っていたのでおそらくですが火属性に特化した魔神族の世界と考えられます」
「そ、それで……? 穴は塞ぐことは出来ないのか?」
「すぐには難しいでしょう。対応には闇精霊の協力が必要ですしその間瘴気は漏れ続けているので瘴気精霊の対応も必要となります。私達としても2度目の邂逅なので正しい対策もわかっておりません」
「ふむ……報告ご苦労。ひとまず緊急で対策が必要な我が国の問題がまたひとつ発生した、という事だな……」

 穴から瘴気が漏れている様子が見える状況で説明したからか呑み込みが早いな。
 剣などで間接的に熱量も計った事で俺の言い分は信憑性があると判断したらしい。助かるには助かるが、もしも闇精霊への協力を求められると俺達の目的である乗り込んで魔神族と世界樹の討伐が出来なくなってしまうのでこれからの動き方を考えないとな……。俺達としてもこんなピンポイントの場所とタイミングで異世界が繋がった事も違和感があるし。人が入れる程に穴が広がるまでの間に苛刻かこくのシュティーナに事情の説明と魔神族の情報も貰いたいし接触を待ちますかね……。
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