特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第15章 -2ndW_アルダーゼの世界-

†第15章† -12話-[ひとまず帰還]

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 聖獣イグナイトから聴取した内容からどの方向から進んでも世界樹は星の真反対と言われた宗八そうはちとアルカンシェは聖獣と別れてしばらく進んだ頃に今日の探索を切り上げる事に決めた。突入した出入り口である亀裂は既に闇精が閉じてしまっているはずなので、帰りは予定通りゲートを開き王都から離れた平原の中心に繋げた為ここからは歩きで王都に向かわなければならないが……。
 それはそれで二人はデート気分で夕日をバックにのんびりヴリドエンデ城に戻って来た。

 城下町を抜けて城の門番に挨拶したところで兵士は慌てた様子で宗八そうはち達の側へ駈け込んで来た。
「アルカンシェ王女殿下!水無月みなづき殿!アルカイド殿下の元へお急ぎください!」
 火急の用でも発生したのか慌てる門番兵にアルカンシェが表情を変え問い質した。
「お二人が異世界へ入ってからすでに三日が経っております!殿下だけではなく各方面の方々がピリついておりますので急ぎ生存報告をお願いいたします!」

 門番兵からの報告に宗八そうはちとアルカンシェは顔を見合わせる。
 この世界と異世界の時間の流れがそこまで差があるとは想定していなかったのだ。あちらでの戦闘時間と聖獣イグナイトとの会話を考えても昼前に異世界へ渡って日暮れ前に戻って来たつもりだったのにまさか三日も経っているとは……。精々前後一日程度と考えていたのに。そりゃ大慌てさせたことだろう。

 門番兵に急かされるままに城に入ると先回りしていた兵士が近衛騎士カリガッソを連れてきたところだった。
「アルカンシェ王女殿下!良かった!本当にっ!」
「俺わい!」
 鬼気迫る顔で兵士同様に安否に安心したカリガッソは俺に表情を消して言い放つ。
「あ、水無月みなづき殿は殺しても死なないので心配はなかったです」
 ヒデェ……。心配してくれないカリガッソは二人を急ぎ足でアルカイドが待つ部屋へ案内する。

 コンコンッ!
「アルカンシェ王女殿下をお連れしました!」
 扉向こうからガタンガタンッ!と椅子が倒れる音と扉に迫る足音に全員が扉前から飛び退いた。
「ようやく帰ってきましたかっ!アルカンシェ様!」
「俺わい!」
 難産の待合室で待ち続けたご主人の様な勢いで扉を開けたアルカイドは表情を消して俺に顔だけを向け言い放つ。
「あぁ、宗八そうはちは殺しても死なないから心配はしていない」
 主従揃って何じゃい……。宗八そうはちは心配されず少し寂しかった。

 部屋へ招かれた二人はアルカイドに勧められるままに椅子へ座り、目の前で急速に進むティータイムの準備を見つめつつ心配を掛けた度合をなんとなく理解した。アルカイドとカリガッソに攣られて慌てているメイドさん達には悪いが二人の脳裏に浮かぶのは各地に放置されてしまった仲間達の安否であった。いや、安否は確実に問題ない事は理解しているけれど連絡もなく三日放置は流石に申し訳ない気持ちが出て来たのだ。反省する宗八そうはちとアルカンシェの耳に再び誰かしらが廊下を走り込んで来る音が聞こえた。

 コンコンッ!
「ラッセンです!入りますよ兄上!アルカンシェ様が無事に戻られたと聞き参じました!」
「俺わい!」
 突如記憶喪失になって目の前の奴がわからなくなったみたいな何の感情も沸いていない表情でラッセンは言い放つ。
「あ? あぁ……水無月みなづき殿も。よく戻ったな」
 兄弟揃って何じゃいっ! 宗八そうはちは激怒した。必ず、俺に無関心な両殿下と近衛を後悔する様な鬼訓練を施すと決意した。

 宗八そうはちはメイドに椅子を追加するように指示を出して子供達だけが集まる席へと肩を怒らせ離れて行く。
 子供っぽい理由で拗ねた宗八そうはちを声も掛けずに見送ったアルカンシェは改めて両殿下と近衛騎士に報告をする。環境の過酷さ、敵の強さ、聖獣の存在、世界樹の位置などだ。当然、ステータス強化をしただけの人間が挑める世界ではないので予定通り異世界の入り口が開いた際に漏れ出る魔物の討伐を主任務にして欲しいとアルカンシェは願い出た。

「マグマがそこら中に流れて緑はありませんでした。樹木は全て焼き尽くされて煤き火が燻っている状態で濃度の高い瘴気が空気に交じり火の粉がそこかしこから舞っている世界です。とても対策を取れない人間が足を踏み込める世界ではありません」
 真剣な表情のアルカンシェの報告に苦々しい顔を浮かべる面々。自国の問題を自分達の手で解決出来ない事に忸怩たる思いを寄せるラッセンは言い募った。
「我々に祝福を施していただければ行動することは可能なのでは?」
 加護さえ祝福されれば異世界へ行ける。そんな簡単な話では無い事を理解した上の言葉にアルカンシェは否定する。
「本来の祝福。つまり精霊王様から頂ける真なる加護は精霊王様の好意によって祝福されます。そして亜神の加護も真なる加護も片っ端からばら撒くことは出来ないのです。Sランクの魔物を相手に単身で戦えるステータスと技術は土台として当然必須ですし囲まれた時に生存出来る複数の手札。そして長い時間を掛けた精霊との絆。それらが揃わない限り精霊王様も私達真なる加護取得者も祝福を施すことはありません。環境適応するだけで解決する話では無いからです」
 そもそも精霊王が祝福する対象はかなり少ない。祝福は一定期間のインターバルが発生する事もあり最近鍛え始めた人よりも即戦力となる仲間がいる。下手な選択をするわけにはいかない。

 毅然とした態度で断るアルカンシェの様子に頭を冷やしたラッセンはソファーへ深く座り込む。
 ラッセンとて軍団長を目指す立場なので強力な魔物との戦闘や魔族との小競り合いなど幾つもの修羅場を潜り抜けたと自負があった。だが、目の前の年下の王女殿下はさらに過酷な修羅場を超えて来たのだ。その迫力は説得力を生み、自身の焦りと弱さを自覚させられ自然と眉根が寄り皺が出来てしまう。
 自分で気付き自分で感情を収めたラッセンの成長にアルカイドは嬉しそうに見つめた後アルカンシェへと向き直る。

「では、改めてアルカンシェ様と宗八そうはちを筆頭にあちらは任せるとしてもお仲間のうちどれだけ連れて行けそうなのです?」
 アルカンシェは少し考えるそぶりを見せてから答えた。
「加護によっては環境が厳し過ぎると感じました。水精と火精の契約者はもう一手魔法で涼しくすれば問題は無くなるでしょうけれど、闇精と光精と土精の契約者は難しいかもしれません。風精の契約者はギリギリの判断になりそう……と言った所ですね。少し魔法の開発時間を設ける必要があります」
 糸口は掴んでいる。そう口にしたアルカンシェの報告に満足げに頷いたアルカイド。
「わかりました。陛下には私から報告しておきますので対策をお願いします。次に異世界へ赴く際は時間の流れも考えて配慮してください」
 不可抗力だったのに……。とはいえ各方面に迷惑を掛けたことに変わりは無いのでアルカンシェは謝罪と承諾を伝えた。

 その後ラッセンからの伝言で各地のダンジョンにバラけていた仲間はゼノウが[揺蕩う唄ウィルフラタ]で連絡を取り合い自身のゲートで回収に動いてくれた為ヴリドエンデ城に戻って来ているとの事だった。戻れなかったとしても宿に泊まれば良いだけの話なのだが自分達が居なくても協力し助け合って帰って来た事に宗八そうはちは笑顔を見せた。仲間の成長が嬉しかったのだ。
 宗八そうはちの機嫌メーターが回復した事で両殿下と近衛騎士に対する怒りは沈静化した。彼らが熾烈な訓練を施される未来は回避された事を知る者は居ない。

「お兄さん、そろそろ皆に顔を出しに行きましょう」
 子供達のおやつも片付いたのを確認したアルカンシェが声を掛ける。宗八そうはちは子供達の口を拭いている所だった。
「ゼノウが頑張ったって話なら聞こえてたよ。あいつらにも方針を伝えなきゃならんし行くか」
 宗八そうはちが頷くと子供達は各々椅子から降りて一礼してから部屋を出て行く。
「それではアルカイド王太子殿下、ラッセン殿下。御前を失礼いたします」
「また来る。子供たちのおやつだけは用意しておいてくれ。じゃ」
 気安い関係になったとはいえ余りにも子供と王族との扱いの差に苦笑いを浮かべる両殿下と近衛騎士に見送られ宗八そうはちとアルカンシェはメイドに案内させて仲間が待つ場所へと移動を開始した。
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