特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第15章 -2ndW_アルダーゼの世界-

†第15章† -19話-[再探索②]

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 毎日朝の訓練を終えて汗を流し朝食を食べてから異世界探索に約10時間繰り出した。
 星の大きさ次第ではあるけれど法定速度に比べてさらに速く移動している宗八そうはち達は海も渡り別大陸へとやって来ていた。

 地震と噴火する火山を前に宗八そうはちは呟いた。
「この大陸もひでぇな……」
 それに同意するアルカンシェ。
「アスペラルダにあるのは休火山ですし活火山を見るのって実は初めてです。町の近くで噴火すると考えると怖いですね」
 火山には鉱物や硫黄など希少な素材が豊富ではあるが死と隣り合わせである為、安全を優先にアスペラルダでは火山の近くに町や村は作らない様にしていた。鉱山が豊富なわけでは無いが魔族と戦う為に協力関係を取る各国との貿易で十分金属や宝石は潤っているので火山の怖さを目の当たりにして探索組の面々は緊張感を持って前進する。

 セーバーが汗を拭いながら周囲を見回す。
「この辺りは今までよりも気温が高いな……。火山の所為で空気も廻るし魔法で熱気を抑えるにしても限界があるぞ」
 彼の言葉に同意するのは風精霊使いのマリエルとライナーだ。滅入り始めた三人に宗八そうはちが声を掛ける。
「ヤバそうなら暖かめの[コキュートスルーム]に切り替えるか? 普通なら一瞬で凍死してもおかしくない魔法だけどこの大陸なら丁度良いかもしれない」
 三人は悩む。現在は[クールルーム]で涼しい空気を用意し[エアロサーモス]でその空気を閉じ込める事で異世界の熱気に対抗している。しかし、今までの大陸は千度前後でも多少暑い程度に抑えられていたが今は汗が止まらず体力がどんどんと削られていると実感できる程の暑さを感じていた。[クールルーム]はエアコン程度の範囲で空気を涼しくしてくれるが宗八そうはちが新しく創った[コキュートスルーム]は言葉通りマイナス何百度に設定出来る魔法で涼しいどころではない。
 悩みはするがこの状態では仲間に迷惑を掛けるとそれぞれが考え、ひとまず一番暖かい設定で魔法を掛けてもらう事となった。

「《コキュートスルーム》」
「うおっ!おぉ~~~……。うおっ!」
 一番頑丈で凍死し無さそうなセーバーに魔法を掛けると変な反応をする。その理由を彼は語った。
「エアロサーモスがあると凍える程寒かったから風二枚で作っている空気の層の一枚を解除して外の熱気と混ぜる事で中和しようとしたんだ。基本的には暑くも寒くもないんだが、時々凍結のデバフになる」
 体の動きを封じる凍結のデバフが発生するなら戦闘中は危ない場面が出て来る。今回創った魔法はこの異世界の熱気を再現する為の[マグマルーム]の反対魔法を大雑把に組み上げたものだ。そういうデメリットがあるにしても彼らの環境が改善するなら失敗とは言え造っておいて良かったと宗八そうはちは考えた。あとは子供に任せれば凍結のデバフが出ない様に調整をしてくれる。
「アクア、頼んだぞ」
『(アクアにお任せ~♪)』
 これまた宗八そうはちに丸投げされた依頼に第一長女アクアーリィは喜んで了承する。
「調整しながら移動を続けるぞ。速度は落とすけど何かあればすぐに知らせろ」
 セーバー、マリエル、ライナーの三名はリーダーの言葉に頷き後を追う。

 環境適応能力の高い加護を持つ宗八そうはちとアルカンシェを含むその他のメンバーも熱気が上昇した事は把握していた。
 すでに風精使いの全員の[クールルーム]は限界まで下げている。それでも数十度下がっただけでは熱気の上昇量を打ち消すことは出来ておらず汗が浮き始めていた。まだまだ海を渡る必要があるかもしれず、今後更に暑い大陸に足を踏み入れる必要が出る可能性を考えればクールとコキュートスの間の魔法も創るべきだと宗八そうはちは考える。今はセーバーを人身御供にして調整を進めるとしよう。

 この大陸は熱気も酷ければ魔物もそれに応じて強くなった。さらに1ランク高い魔物が群れで現れる。
「アルシェ、フランザ、トワイン!足止めしろ!セーバー、リッカ、ディテウスは後ろに抜かせるな!マリエルは第二陣を遅らせろ!」
 先の大陸で現れた木炭のトレントが更に大型に成長したトレントが一方向から40体以上の群れで駆けて来る。木炭らしく打ち合わされる音は甲高く美しい事が耳に触る。群れの合奏は爆音となって意思疎通の邪魔となる為、声が届く間に最低限の指示を出す。
「《銀世界!》」「《フリズドスフィア!》」「《シャインスコール!》」
 アルシェの広範囲足止めに加えフランザが凍てつく光球を複数射出し上半身まで身動きを阻害する。加えてトワインが空へ放った矢は瘴気と灰の空気を斬り裂き上空で炸裂。止まったトレントが集まる範囲に光の矢が降り注ぐとトレントは瘴気の鎧を剥ぎ取られ苦しみだす。その隙に前衛陣は急接近して第一陣を蹴散らし始めた。

 宗八そうはちは地精ノイティミルにオプションを借りて聖壁の護腕ディバインラームで目に付くトレントを内側から破壊していく。
「《極剛波動ブラストマクスィール!》」
 セーバーは氷に抵抗してギチギチ音を立て抵抗するトレントを嵐の破壊力を持って粉砕する。
「《嵐破剣ヴァルテリアブレイク!》」
 リッカは丁寧に一体一体を細切れにしていく。
「二階堂流!虚鞘抜刀こしょうばっとう!【桜花おうか!】」
 ディテウスは自分に出来る最大の突きを放ち高ランクトレントの硬い身体に棒で風穴を開けて行く。
「《水華蒼天突すいかそうてんづき!》」

 順調に前衛が数を減らす中、少しだけ遅れて到着予定だったトレント達はマリエルの敵愾心ヘイトを向けて襲い掛かるも互いの大きな体が邪魔をして小さく俊敏で空を駆けるマリエルを捕える事が出来ずにもたついていた。
「《鈍足のバロック!》」
 更にAGIを下げる音楽を撒き散らしデバフを受けたトレントは順調に第一陣から距離が離れて行った。

「(お兄さん!第二陣へ攻撃開始します!)」
 素早く戦場を見回しトレント以外の魔物が死角から寄って来ていない事を確認したアルカンシェは宗八そうはちへ念話する。現時点でフランザとトワインのサポートがあれば第一陣は安全に処理出来ると判断したので。宗八そうはちもすぐに答える。
「(いいぞ!)」
 数を減らしたとはいえ密集気味の大きなトレントが遮蔽物となり奥に居る第二陣を相手取るには技術が必要だった。
「アクアちゃん!」
『(氷纏マテリアライズ~!スナイプモード~♪)』
 氷のドレスアーマーが形状変化し遠距離を狙う為の軽装に切り替わる。瞳には標準装備として[ウォーターコンタクト]が仕込んでありズームが可能になったアルカンシェは第二陣に向けて攻撃の準備をする。
「《氷属性武器精製アイシクルウェポン:ランサー》」
 入手済みの装備を魔法で召喚する魔法を唱えたアルカンシェの背後に八本の槍が生成される。召喚されたのは当然グラキエスハイリア。弓を引くような姿勢になったアルカンシェの手元に一本の氷の槍が装填され……。
「《流星蒼槍グリムアルカンシェル!》」
 詠唱と共に後方に引いた腕の指先が槍の石突に触れるとアルカンシェの水色の魔力を帯びた氷の槍が手前のトレントの間を縫う様に射出されてマリエルが足止めしていたトレントの頭部を撃ち抜き転倒させる。防御力の高いトレントを倒すには至らずとも的確に頭部を狙い撃ちにしてバランスを崩したどの個体もすべからく転倒して足を止められる。

 槍の射出の為に横移動を始めたアルカンシェの邪魔に成らぬ様にフランザとトワインは立ち位置を調整した。
 宗八そうはち達も第一陣のトレント達を片付け終わり前進するとトレントは全員のろのろ転倒から起き上がろうと動いていた為そのまま襲い掛かりトレントは綺麗に全員討伐された。
 手透きになった者から周辺警戒に切り替えたが特に魔物の増援が入る様子は無く戦闘は終了したと判断した。

 その日も大した発見も無く探索は終了してしまうも[コキュートスルーム]の調整をアクアーリィが完了させてくれたおかげで加護の無い残留メンバーが異世界へ同行出来る可能性も見えて来た。結局は風魔法と氷魔法を仲間に掛けてもらわなければならない上に手を離せない時に魔法が切れれば焼死してしまう事を考えれば万全とは言えないがその辺りは焦る話でもない。
 次の日も、次の次の日も、そのまた次の日も宗八そうはち達は進み、海だったモノを渡り、新たな大陸へと上陸したのだった。
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