特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第16章 -勇者 VS 魔王-

†第16章† -05話-[精霊使いの強力な手札]

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 ——時は巻き戻り。
 宗八そうはちが山越えへと離れたヴリドエンデ王国の教練場に残ったアルカンシェ達は、予定通りに事を運び次の段階として無精契約の儀に入った。冒険者たちは事前にギルドから渡されていた[スライムの核]を使用し、経験豊富なアルカンシェ達の指導の下で次々と無精の契約に成功していき早々に冒険者全員が無精契約者と成った。
「残るは精霊使いとして何が出来るかを勉強していただき本日は解散となります」
 耳に残る響きのある言葉に、興奮して仲間内で集まっていた視線が再びアルカンシェに引き寄せられる。
 会場を見回し全員が耳を傾けている事を確認したアルカンシェは再び口を開いた。
「改めての説明となりますが精霊には七つの属性がございます。一つは今しがた皆様が契約した無属性の無精。無精王アニマ様経由で他属性の様々な魔法を扱う事が出来ますが、その威力や効果は六割程度に落ちてしまいます。契約者の人間が魔導書で覚えた魔法については影響はありません。次に……」
 アルカンシェの隣で平たい胸を張りアピールしていた青い髪の三歳児のアクアーリィと視線がぶつかる。
「水属性の水精。アクアーリィです」
『あ~い!アクアだよぉ~!七姉弟の第一長女やってま~す!無精と違ってアクア達変質済みの精霊はその属性の魔法しか扱えないんだよぉ~。水属性は魔法使いらしい後方からの射撃が得意で~す!ちゃんと射撃をサポートする魔法もありま~す!』
 能天気な声を発しながら両手をブンブンと振り回し各方向に挨拶するアクアーリィに冒険者の視線は自然と吸い寄せられた。
 各々感想は様々で子供らしい仕草に顔をほころばせる者が多い中でも流石は精霊だ。濃い髪色に煌めく瞳。幼いとはいえ恐ろしく美しい容姿に精霊信仰から来る畏怖の感情が心に広がる。
「次に地属性の土精。ノイティミルです」
『ご紹介に預かりましたノイティミルです。七姉弟の第二長女の席をいただいているです。地属性は防御力を上昇させる肉体強化と仲間を護る防御魔法が得意で攻撃魔法は中~近距離まで対応可能です。水精程遠距離に対処は出来ないです』
 ノイティミルの説明が終わるとすぐさまアクアーリィが抱き着き仲の良さそうな姿にほっこりする。
 冒険者の中には誤魔化されず他属性の精霊で姉弟?だったり第二長女とは?と疑問を浮かべる頭の回る者も居たが、今の流れを止める程の事でも無いので後から聞こうと黙ったまま水精と土精の姉妹のスキンシップを目に焼き付けていた。

「次に闇属性の闇精。クーデルカです」
『皆様、初めまして。七姉弟の次女クーデルカと申します。闇属性の強みとしましては、サポートが充実しているという点かと思います。時空にアイテムを保管し、時空を渡り、敵を闇で包み足止めし、他の属性も少し扱えます。ただ、加護が無ければほとんどが扱うのは難しい為不断の努力が必要となります』
 挨拶初めに綺麗なカーテシーで冒険者の度肝を抜いたクーデルカは、闇魔法の利便性と共に扱いの難しさを説明した。
 加護があり且つ慣れればこれ程便利な魔法は無いと宗八そうはちも口にする程有用なのだが、時空に干渉する点から高水準の魔法制御力を要求される。簡単に多方面で便利な手段が手に入るわけでは無いと釘を刺した。
「次に風属性の風精。ニルチッイです」
『七姉弟の三女ニルチッイですわー!ニルは空を飛ぶのが大好きですからお父様と共に自由な翼を組み上げましたわー!人も空を飛べるのですわー!風属性は速度を、裏の雷属性は破壊力を底上げしますわー!速射も得意ですから味方の援護や敵の接近を許してもカバー出来る攻撃力を得られる所が強みですわー!』
 説明しながら自ら空を飛びアピールするニルチッイの天真爛漫で楽しそうな姿に再び冒険者はほっこりする。それに有用性として挙げられた点は前衛でも後衛でも活かせそうな特色を持っていたので興味を惹かれる冒険者が多く散見された。もちろん空を飛びたい少年心をくすぐられた者も多く居た事は秘密だ。

「順番的には四女となる無精のアニマ様の紹介なのですが、今は宗八そうはちに付いて行ってしまっているのと無属性については説明済みなので割愛します。次は光属性の光精。ベルトロープ」
 冒頭で確かに無属性の紹介はされていたが、その際に無精王と紹介されたアニマが宗八そうはちと共に行動しているという点が自然を装ってしれっと流れて行ったが気付く者は気付いていた。ただでさえ人生の中でひと目見られれば奇跡とまで言われた精霊を今日だけで複数人拝めているのに精霊の上に立つ精霊王が一人の人間と共に……? 気付かなかった事にしよう……と気付いた者は思考する事を放棄した。今の感動を余計な情報で沸き上がる負の感情に汚されたくなかったのだ。
『七姉弟の五女!ベルトロープですうううううっ!光魔法は回復とは違う再生を使用する事が出来ます。体力の回復は無属性ですが、ユレイアルド神聖教国が取り扱っている肉体欠損の再生は光魔法で使用出来ます!その他我々が敵対している破滅に対して非常に有効でベルが居る事でお父様もお姉さま達も大変楽に敵を処理出来ているのですうううううっ!あとあと、反射で飛んできた魔法などを弾くことも出来るので防御面もバッチリですうううっ!あとあとあと、火精フラムのお姉ちゃんです!』
『え?ちがう……』
 長男の寸分も遅れなかった疑問の声を無視して五女は笑顔を振りまく。
 隣に居るのに無視する五女に抗議の意味を持って腕を引くが手元も見ず叩き落とされた。それを不満に思い更に激しく腕を掴む長男に対抗して激しく抵抗する五女の子供らしい微笑ましさに冒険者たちは癒される。中には子供を持つ親もおり、故郷の親元に預けている幼い子供を思い出し郷愁に駆られる。
「次が最後です。火属性の火精。フラムキエです」
『七姉弟の長男フラムキエ。先の光精ベルトロープの兄』
『はぁああああああ……?』
 隣の五女から反論の声が上がるが無視した。
『火属性は地属性と逆で攻撃力を上昇させる肉体強化と高い威力の魔法が得意。ただ、威力が高い分乱戦になると使用出来る場面が限られるから必然的にプレイヤースキルが求められる。敵が離れても魔法で足止めして最接近も出来るから前衛ならオススメ。後衛でも魔法の選択で戦い様はあるから考えれば結構面白いと思う。以上……(ベル、何?)』
『(何じゃないでしょおおお!私がお姉ちゃん!)』
 長男と五女の攻防が逆転しただけの手遊びが再放送される。
 とりあえず、属性に伴う戦闘方法の方向性を示したことで冒険者達も自分の戦闘スタイルと相談をし始めた。もちろん、加護を持たず無精の力を借りる程度なので劇的に有利な状況作りが出来るわけでは無いが、それでもスタイルと噛み合う魔法を扱えれば有利に戦況を進められるのは間違いない。

 ある程度時間を与えて魔法の力の運用方法を考えさせた後でアルカンシェは声を掛ける。
「今、色々な考えが頭を駆け巡っている事でしょう。ですが、その前に私達が精霊と共に組み上げた魔法をいくつか紹介いたしますので参考にしてください」
 宗八そうはちがこの世界へやって来てから各属性の魔法を幾つも組み上げてきたわけだが、この世界の住人からしてみれば魔導書で覚えられる魔法一覧以外の魔法は全て新魔法に分類される。凡そ二年と半年が過ぎるまでの間に初期の方で組み上げられた魔法は宗八そうはちを介さずとも真なる加護を持つ仲間と子供達が協力して更新され続けている。
 いくつか披露する中でも目を引いたのは以下の魔法。
「《捻氷柱弾ツイストアイシクル》」
 ——チュインッ!という音を置き去りに会場の端に位置取ったアルカンシェから放たれた[勇者の剣くさかべ]の最新形態魔法は真反対の端に立てられた鎧案山子の頭に見事命中して見せた。勇者の剣くさかべの頃は片腕程の長さがある氷の槍を飛ばす魔法でここまで速度も無かったのだが、魔法式の知識が蓄積された事と制御力が十分に成長した事で消費MPは同等+小型化+超加速する氷の弾丸へと進化した。
「《振動精密戦略タクティカルエコー》」
 範囲内で発せられる音響から戦場全体の動きを把握しながら、範囲内限定で術者の声を対象へ届ける事が出来る。
 音だけで戦場を支配するだけの魔法で宗八そうはち達の様に戦場がそれぞれとなる者にとっては無用の長物だがクランとして戦うのであればこれほど有効は魔法は無いだろう。以前にも使用していた[エコー]を正当進化させたわけだ。
「《死霊王之御手アンサンググロウ》」
 闇魔法であると紹介され、尚且つ加護を持たない限り使用は出来ないと念押しをされたうえで最後にメリーが披露したのが宗八そうはちが好んで使用していた[空間征服イグノアパースペクティブ]を進化させた見えざる手だった。
 今までは空間という概念の勉強が足りず、視界内の手が隠す範囲を空間支配するという地点から地道に勉強を進め、次の段階で斬撃を離れた地点で疑似再現した。そして最終的に視界内を問わず魔法の有効範囲内であれば対象を握り潰す事も、殴り飛ばす事も可能となった。更に追加性能として自身の腕をこの魔法で支える事で……。
「はっ!」
 侍女が拳で地面を割るという荒業もやってのけ冒険者をビビらせた。単純なステータスの膂力+魔法力で得られる異常な破壊力だ。
 披露した中でこの魔法だけは七精の門エレメンツゲートの中でも準必殺技として認められた完成度の高い魔法だった。

「これにて精霊使いの魔法の説明は一旦完了となります。今後ご意見があればギルドを通して伝えていただければ出来得る限りお答えする事を約束いたします。それではまたお会いする機会がずっと先である事を願いながら本日は解散とさせていただきます。お疲れさまでした」
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