特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第16章 -勇者 VS 魔王-

†第16章† -07話-[ばびゅんと調査開始]

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「私達の情報屋としての前身はただの占い師だったんだ。ただ種族柄時間は膨大にあったからね、遊び半分で研究して百年くらいか? 占いと言っても複数考え出してそれぞれの精度がどんどん高くなって、身近な事や遠く離れた地での事も同じ結果を叩く様になったんだ。だからそれらを総合的に判断して情報の精度も七割と回答したんだよ」
 占いを生業にする者は宗八そうはちの暮らしていた世界でも存在した。ただ、違いとしては個人に焦点を当てた占いとは異なり、パメラ達の占いはかなり大雑把な枠組みで行われている様に聞こえた。それに種族も気になった。
「時間が膨大にある種族とは?」
 パメラはにやりと笑うと揚々と語る。
「ハイエルフさ。人間で言うとエルダーエルフと言えば分かるかい?」
 さりげなく宗八そうはちが人間である事にあたりをつけている口振りに宗八そうはちは気付かない振りをして質問を繰り返す。
「まぁ私は流石に当時の生き残りではなく、森から出てこの村を開拓した時代のハイエルフの末裔だ。さっきの小娘達もそれぞれが家族伝来の占いを習得した占い師でもある。ただ、ハイエルフの血は代を経る毎に薄くなっていってね……。私は先祖返りみたいなもんさ……」
 つまり、何らかの理由で森を出たエルダーエルフの子孫が暮らす辺境村という訳だ。結界やら予言めいた未来視は、エルダーエルフの先祖から受け継いだ力の一部なのだろう。

「次に俺の事だ。占いで調べたのだろう? その整合性を確認したい」
「いいだろう。聞かれると思っていたからまとめておいたよ。実はここ数年は気になる占い結果が多かったから情報は追っていたんだよ……。えっとまずは、生まれは異世界。アスペラルダで精霊の契約者と成る。未知の敵と遭遇。勇者と繋がりを持つ。聖女と繋がりを持つ。竜と繋がりを持つ。大精霊と繋がりを持つ。地の領域にて異世界の主を討伐。火の領域にて異世界の主を討伐……。ざっとこんなもんかな? 占い結果とは言え自分でも信じられないような奇天烈な結果が多いことは否めないねぇ……」
 占い師本人が戸惑いつつも報告した結果に宗八そうはちは七割の意味を強く感じ取っていた。
 未知の時は魔神族の事だろう。地の領域は土の国アーグエングリンの事で異世界の主は霹靂へきれきのナユタを指している。最後の火の領域が火の国ヴリドエンデだが、異世界の主という単語が神族も含んでいるので占いで出た結果をパメラ達が知る知識から当てはめた言葉という事もわかった。
 つまり、どこどこの地で強敵が出現するという結果の場合、敵が魔神族なのか高ランク魔物なのかなどの細部まではわからないという事だ。どちらにしろ、生まれが異世界と知っている人物は限られているのに占い結果から異世界を当てはめたのは素晴らしいと感じた。

「いいだろう。俺達に何をさせたいって?」
 七割だろうが身を隠しながら力を蓄えた占いの力だ。長い時を生きたパメラも七割と口にしつつも占いに誇りを持っていることは見て取れた。ならば、今までの大枠だった占いをこちらで絞った枠で占ってもらえれば訪れた事の無い地の情報収集も出来る事になる。多少外れる事はあってもスライムと魔神族を間違える様なミスは流石に無いと信じたい。
 パメラ達情報屋を信じる事から始めた宗八そうはちは、まず彼女らの希望を聞いてみる事にした。
「話が早くて嬉しいね。——魔界を救って欲しい」
 ???
 内容は単純だが要領を得ない。
「わかっているわ。アナタにその気は無いのでしょう? でも、勇者と繋がりがあるなら通せるわよね?」
 なるほど……。わかっているのか……。
「魔王は勇者しか倒せない……。予想は当たっているか?」
「その通りよ。因果の影響ね」
 今の宗八そうはち達の強さは魔王を軽く凌駕していると自負はあった。
 しかし、何故だろうか魔王を勇者の代わりに倒せるイメージが浮かばなかった。逆に勇者メリオの方がしっくりきて良い戦いになるイメージが浮かぶくらいだった違和感は因果という不可逆の力の所為だったわけだ。魔王と勇者なのだからそんなもんだろうと意識は持っていたのですぐに納得出来た。所詮俺は群衆モブなのだ。

「この地図を見て。魔王はどうしようもないけど、こっちも早めに対処する必要がある」
 カウンターの下からパメラが取り出した筒紙を広げると、それは魔族領の地図だった。
 その地図に黒い石を幾つも置いていき、その範囲は地図から見てかなりの広範囲に広がっている。
「この範囲に何が?」
 宗八そうはちの疑問にパメラは答える。
「わからない。でも、煙の様に確実に広がっている事と命が失われている事はほぼ確実と言っていいわ。同胞が減る事はアナタにとっても良くはない事なのでしょう?」
 世界樹の事を知らずとも知らなくて良い情報まで掴んでいるらしい。
 確かに魔神族に対抗する為に地力を鍛える事に注力してた為に海の外の世界については情報を集められていない。外の大陸があり、そこに人が住んでいるかどうかは不明だが、魔族が減る事態は宗八そうはちにとって良い話では無かった。
「余計な事は口にしない方が良い。俺達は特に特殊な立場だからな」
 人差し指と言葉で黙れと伝えるとパメラは瞳を大きくした後に閉じて頷いた。

「少しこっちでも調べさせてもらうが良いか?」
「ご随意にどうぞ」
 許可をもらってから宗八そうはちは念話で次女クーデルカに声を掛ける。
「(クー、メリーと共に魔族領の地図の模写をしてほしい。こちらへ来れるか?)」
『(お任せください。直ぐにそちらへ向かいますのでお待ちくださいませ)』
 クーデルカは闇精なので自力でこちらに空間を繋げてやって来るだろう。続けて三女ニルチッイに念話で語り掛けた。
「(ニル。マリエルと共に至急魔族領で確認してほしい事がある。出来る限り早めにこっちに合流する準備をしてくれ)」
『(かしこまりーですわー!えっと……アルシェからはいま許可を貰えたのでアスペラルダ城のゲートに繋げてくださいまし―!)』
 いつでも元気な風精ニルチッイの声につい口角が上がる。
 目の前の地図は不完全とはいえ大雑把な大陸の形の上に各地の集落や村が記載されている。全てを自分達で視認したわけでは無いにしても占いで判断した土地情報を記入した地図は十分に役立ちそうだ。

 連絡してから間もなく宗八そうはちの側でゲートが開く。闇精クーデルカがメリーを連れて来たようだ。
「お待たせいたしました。メリー=アルカトラズ=ソルヴァ、現着いたしました」
『≪七色の子供達エレメンタリス≫が次女、闇精のクーデルカ=シュテールが最愛のお父様の下へ参りました』
 ——ガタッ!
「なっ!?」
 驚き席を立つパメラを手で制し落ち着いて二人を向かい入れる。
「この地図を模写して勇者に渡してやれ。予備はしっかりな」
「存じております。それではさっそく取り掛からせていただきます」
 闇精クーデルカが影から大きな紙を取り出すと二人で連携して魔族領の地図を模写し始めた。
「あ、えっと…‥。さっそく取り掛かって頂いて恐縮だけれど、懸念として穏健派の魔族が人族領に避難を希望する可能性があります。その手配もお願いします」
 思わず敬語になる。調べる許可を答えただけで事態が一変した事に流石のパメラも驚愕を禁じえなかった。
 突然現れた闇精クーデルカとメリーに驚きつつも伝え損ねていた依頼の続きを宗八そうはちに伝える。

「それはヴリドエンデ王国に丸投げするしかないな……。魔族に対する国民たちの影響を考えるとトリビシェン砦付近に簡易避難所を用意するしか無いだろうが、どちらにしろ事実確認した上でなければ奏上も出来ないから一旦棚上げだ」
 パメラの懸念は理解出来るし早めに動き出すに越したことは無い。
 しかし、避難して来る対象が敵対視している魔族ともなれば簡単に扱っていい案件じゃない。いつ避難民が駆け込み始めても良いように下準備はしっかりと手回ししておかないと大混乱に陥るぞ……。

「その煙とやらのおおよその規模は分かるか?」
 冷静な宗八そうはちの様子に汗が伝う。
 自分達が考えていたよりも宗八そうはちが大物であった事に自分の足場が崩れ始めた事を意識し始めた。自分でも突発的に依頼する内容にしては度が過ぎていると理解はしている。だというのに、驚きや戸惑いは表さないまま冷静に仲間を何かしらの手段で呼び寄せた……。
「少なくとも百万人規模の被害に達していると思われます……」
 当初こそ約その半分程度だった脅威は範囲を広げる程に命は失われ数は増す占い結果となった。
 このまま広がり続ければ隠れ里であるこの村までも飲み込まれるのは時間の問題であった為の依頼だが、自分達が考えていた以上に目の前の偽魔族が大物なのではないかと理解が進む。異世界人と言う事はわかっていても実力に関してははっきりと認識出来ていなかった。
「敵の動き次第だな……」
 そんな大軍を目の当たりにしたことの無い宗八そうはちにとっては想像だに出来ない数だった。
 それでも有象無象ならば余裕で討伐できる自信はあるが、もし指揮を下に百万が動いていた場合は流石に宗八そうはち達と言えど不安の欠片程度は心に刻まれる。
 何しろ宗八そうはち達は少数精鋭なのだ。数で攻められれば確実に守り切れない場所が出てくる事が弱点であった。

「依頼は以上か?」
 真剣な瞳の宗八そうはちに問われパメラは戸惑いつつも肯定する。
「は、はい……」
 返事を聞きながらの念話の回答が届いた宗八そうはちは闇精クーデルカに指示を飛ばす。
「クー、アスペラルダ城と繋げ」
『かしこまりました』
 念話で準備が整った事を風精ニルチッイが連絡して来たので闇精クーデルカにゲートを繋げさせる。
 再び空間の歪みの向こうから一人の少女と一人の幼女が歩み出て来る。
「お待たせしました~。マリエル=テンペスト=ライテウス、ただいま参上しました」
『≪七色の子供達エレメンタリス≫が三女、風精のニルチッイ=イノセンシアがばびゅんと来ましたわー!』
 突然の宗八そうはちの呼び出しは基本的にろくでもない事が多い。
 だというのに、気負った様子がないマリエルの様子は超えて来た修羅場の数が実力を証明していた。その隣で元気に名乗りあげた風精ニルチッイはそのまま宗八そうはちの足に抱き着いて甘えていた。

「で、私は何をすればいいんですか?」
『お父様、こちらで十分でしょうか?』
 マリエルの問いと同時に宗八そうはちの考えを熟知している闇精クーデルカが簡易的に書き写しパメラが危険視していた範囲を記した地図を広げて見せて来た。
「完璧だ。ありがとう」
 宗八そうはちの言葉に頬を染め嬉しそうな闇精クーデルカはメリーの下へと戻り次の写し作業に入った。
 片手で受け取った地図はマリエルに渡しつつ、空いたもう片手で足元の風精ニルチッイの頭を撫で繰り回す。マリエルは相棒の様子に目も向けず地図に目を通していく。
「これってまさか魔族領の地図ですか?」
 宗八そうはちの予定を知っており視界に角が生えた女性が映り込んでいる事からも予想が出来ていたが、まさかのまさかだ。さっそくこの男は当たりを引いたってわけだ……。流石は隊長。意味が分からん。
「察しの通りだ。そこに示されている範囲に何があるか調べて来てくれ。それも超特急で」
 超特急という言葉にマリエルは本気の仕事だと理解した。
「ニル、行くよ~」
『あ~れ~お父様ぁ~!』
 デレデレだった風精ニルチッイの腕を掴み店の外に歩き出したマリエルと、名残惜しそうな声で鳴きながら連れていかれた風精ニルチッイは姿を消した。その後に凄まじい風切り音が聞こえて店の中にも強い風が吹き込んで来た。

「とりあえず、情報が集まるまで数分待ちってところだな……」
 カウンター向こうで怒涛の展開に着いていけていないパメラが目を点にして驚いている。宗八そうはちの呟きは風で掻き消された事でパメラはこれ以上の混乱に陥る事を避ける事が出来た。
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