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ご『“友だち”の有効活用/ふれる冬』
1 スピカにて
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木枯らしに吹かれ、足下の落ち葉が舞う。
今日もふたりは待ち合わせ。
いつもよりちょっと遠い場所、いつもよりかなり早い時間。いつもより暖かい格好で、いつもより多めの荷物を背負っている。
軽やかな足取りで待ち合わせ場所へ向かうサキは、風でよれたマフラーを巻き直す。
(ちょっと待たせてみようかな。でも今日は寒いしなぁ)
冬のにおいが混じった風にときおり体が煽られ、その都度歩みを止められる。この調子では、故意でなくとも彼を待たせることになるだろう。
そんな心配をしていたサキ。背中のリュックをピョンピョン弾ませながら、結局いつもどおり約束の時間より早く着いてしまった。
(あれ?)
待ち合わせの目印の場所から少し離れたビルの大きな広告看板の下に、いつも定刻ぴったりに来るはずのハルがいる。初めて見るダウンジャケット姿。遠くからソッと眺めていると、浮かれていた心は次第にそわそわし出す。
こちらにはまだ気づいていない。
サキは緩む口元を押さえながら忍び足で近づき、携帯電話をいじるハルの背中に向かって大きく「わっ!」と声を出した。
手元から視線を外したハルが振り向く。
ハルの瞳だけが下へ動くと、込み上げてくる感情が抑えられないサキと目が合った。
見つめ合って数秒、「こんばんは」と挨拶する彼の表情は一向に変わらない。
冷ややかに感じる視線に、汗がドッと吹き出たサキは、仕切り直すように熱を帯びた手を合わせた。
「……結構待ちました?」
「今来たところだ」
「そうなんですか?」
ハルは返事をする代わりに、見上げるサキの乱れた前髪を一撫ですると、サキは軽く唇を噛んで目をそらした。
「行こうか」
「はい」
自然と差し出された手を、サキは軽く握る。自分の手のひらよりハルの方が冷たく感じて、ふと隣を歩く横顔を見上げた。
そのかじかんだ手にどれだけ長く待っていたかを教えられ、サキはちょっとした罪悪感に胸が締め付けられた。
「ハルさん。そっちの手も貸してください」
突き刺す空気にさらされた素肌。
両手を握ると歩きづらい。
「……あったかいですか?」
「あったかい」
「もっとあったかくなる方法教えてあげましょうか?」
「うん?」
「へへ、こうするんです」
得意気になるサキは、繋いだ手を離して、自分の手をそのまま背中へ持っていき、リュックとの隙間にはさみ込んだ。
「小学生の頃こうやって学校行ってました」と笑う。
それでは両手がふさがって危ないとハルは咄嗟に思ったが、真似してみる。
早い時間。人通りは少ない。バス停までの距離を、足下に気を付けながらそうやって歩いた。
ベンチに座っても、バスが来るまでサキの両手は、背中とリュックの間にはさまったまま。
薄い水色の空に白い明けの三日月。
これからもっと陽が昇り、少しでも暖かくなることを願いながら、夜の訪れを待ちわびる。
ゆるい上り坂。四角い窓から遠ざかる街を見下ろす。
サキは行き先を知らない。知っているのは、お泊まりするということだけ。今日はハルの番。全ては彼任せ。
(ハルさんのしたいことってなんだろう)
乗っているのはサキとハルと、前の方でときおり頭を上下に揺らしているおばあさんと、ベテランそうな顔つきの運転手さんだけ。
うねる山道に、サキの顔色が悪くなっていく。暑苦しいマフラーを外し、焦点は合わせずボーッと窓の外を眺めている。
「もうすぐだから」
サキの手に触れたハルは、乗り物酔いに効くというツボを押しながら、到着を待った。
温度差に身震いを起こす。遠くの方でカラカラとなにかが転がる音が聞こえた。
サキは大きく空気を吸い込む。枯れた葉っぱのにおいがした。
「ゆっくりでいいから」
「すみません……」
サキが回復するまで、待合所のないバス停で少し休むことにした。目的の場所はまだまだ先だが、その前に寄り道したかった。その場所まではさほど遠くない。
ひしゃげたガードレールの先に、黒い屋根のログハウスが一軒、ポツンと現れた。
深緑色のドアのガラス窓には、神話に登場しそうな翼の生えた髪の長い美しい女性が白い線で描かれたロゴステッカーが貼られている。その絵の下に『ス ピ カ』と、カフェの名前がカタカナで表記されているが、ドアベル近くに吊り下げられた古い看板は英語表記だった。
ドアノブには“CLOSED”と書かれたボードが引っかけられている。ハルがお構いなしにドアを開けると、チリリンチリンと可愛らしいベルが鳴り、テーブルを拭いていた男性が振り向いた。
「いらっしゃ……おー!」
緑色のエプロンをつけた男性が、布巾片手に笑顔で近づいてくる。
「待ってたよー、え、娘?」
ハルはチラッとサキを見て、「うん」と答えた。
「結婚したとは聞いていたけど、こんなに大きい娘がいたなんて聞いてない聞いてない! 何歳? 小学生?」
「中学生」
「あ、中学生か! 中学生!? え、じゃあ、結婚してすぐ?」
「うん」
「言ってよー」
「忙しかったから……」
「じゃあしょうがないな~名前は?」
二人の会話に、サキは面には出さなかったが内心困惑していたと思う。
男性はハルの後ろで小さくなるサキへ視線を向けた。
「おはよう、朝早かったでしょう。疲れてない? 今モーニング持ってくるから、適当に座っててね」
男性は足早に奥の部屋へ向かい、ハルとサキは近くのテーブルに着く。
「宇生一鶴。俺の同級生」
テーブルの上の小さなスペースシャトルの置物を見ていたサキの目が、ハルの顔へと移動する。
「さっきはごめん」
「……へ?」
「嘘をついた」
焼きたてのパンのにおいが、男性が消えた奥の部屋から漂ってくる。
サキはフッと小さく笑って、伏し目がちに「おとーさん」と呟くと、目をそらしたハルはきまりが悪そうに首を触った。
サキが目を向けた壁には、惑星の写真が何枚かそのまま貼られてある。
ティラミスみたいに何段も積み重なった、地層のような見た目の惑星。赤に近いオレンジ色をベースに、所々墨で描いたような黒い模様がある惑星。イクラみたいな赤い月や、星をたくさん散りばめて作られた雲のような天の川。どの写真も額には入れず、無造作にテープで直接壁に貼り付けられてある。
本物かと疑ってしまうほどハッキリクッキリと写っている惑星に、サキは静かにゾッとする。
「はい、お待ちどうさまです」
運ばれてきたトレーの上には、レタスとトマトのサラダと殻の剥かれたゆで卵と分厚いトーストとホットミルクと氷のない水。
ふたりは手を合わせて「いただきます」と言った。
「にしても、久しぶりだねぇ。何年ぶり? Kくんから連絡もらったとき、すげぇ嬉しかったよぉ」
トマトをフォークで刺すサキの眉がピクリと動く。
「俺とお父さん同級生なんだけどさ、あ、聞いた? 幼稚園の頃からの幼馴染みで、高校まで一緒だったんだ。さすがに大学までは無理だったなぁ。俺、Kくんほど頭良くなかったから」
一鶴はあっけらかんと笑う。
「そうだ。クロワッサンとバターロールもあるけど、いる?」
「はい!」
そうサキが答えると、一鶴は笑顔でまた奥の部屋へと向かった。
ハルはチラリとサキの顔を覗き見て、ゆで卵の反発力を感じながらフォークで真っ二つにした。
「無理しなくていい」
「え?」
「まだ具合悪かったら、残してもいいから」
「ペコペコです」
サキは大きく口を開いて、しっかりと焦げ目のついたトーストを豪快にかじった。
朝食にしては遅すぎるし、昼食にはちょっと早いモーニングセットを、ふたり向かい合って食べる。
スピカのBGMはスチーム式加湿器の蒸気が噴射する音と、ラジオパーソナリティーの柔らかな笑い声。
そこに、パンを山盛りに積んだバスケットも持って一鶴が戻ってくる。そっと置いたが、バターロールが一つ転がってテーブルに落ちた。
「好きなだけ食べて」
「わーい」
一鶴は気にせず落ちたバターロールを拾って二口で食べた。
「このパン美味くない?」
サキはツルツルピカピカに輝いたバターロールに噛みつく。噛んだままパンの匂いを吸うのが好き。脳がパンの香りで満たされる感じがして、よくやってしまう。
「特にここのクロワッサンは、表面が甘くてカリカリしてて好きなんだよねぇ。あ、余ったパン持ってく?」
サキの表情を見ていたハルは財布を出す。
「いくらだ?」
「いいからいいから! このパンね、大森のくまさんっていう麓のパン屋さんに毎朝配達してもらってるから、お客さん来ないと毎日たまってっちゃうんだよ。それで、残りを捨てるのはもったいないから、立ち寄ってくれたお客さんに、たまに配ってるんだ。パン屋さんの宣伝も兼ねて。だからお代は結構! そもそもパンの相場がわかんねぇよ」
「そんなに残るのか?」
「今日みたいに全然人来ないからねぇ」
「表の看板が準備中になっているからじゃないか?」
「あー! またひっくり返すの忘れてた。じいさんに怒られるんだよねぇ」
急いで入り口へ向かった一鶴だったが、「と思ったけど、ふたりがいる間はこのままにしておこう」と言って戻ってきた。
「あ、そうだ」
一鶴はエプロンのポケットから取り出した一枚の写真を二人に見せた。
「去年地元帰ったときに撮ったんだ」
降り積もる雪が枯れた木々を白く染め、白い空気が空の色に染められた、美しい冬の大地を切り取った風景写真。その中央に、天使が降りてきたような光の柱がある。ボヤけた無数の小さな氷の結晶が、太陽光で照らされ、キラキラと輝いている。
「ダイヤモンドダスト」
一鶴の言葉をサキが疑問符を付けて復唱する。
「色んな条件がバッチリ揃ったときにだけ見られる自然現象……」
一鶴は空いたコップに水を注いで、「西森小春って覚えてる?」と聞いた。
唐突な質問に、写真を見ていたハルの目が微かに動く。
「小5? の頃に、転校してきた女の子なんだけど、覚えてない? 卒業前にまた転校しちゃった子」
非常に珍しく、世にも美しい自然現象を捉えた写真。その光景を確実に視界に入れているはずなのに、
「あの子亡くなったんだって」
いくらまばたきをしてもピントが合わない。これは正しく失敗写真に違いない。
「中学卒業してすぐ事故に遭ったそうだよ。同窓会で聞いたんだ。集めるときみんなの連絡先調べててそれで知ったんだって」
ハルは誰にも気づかれないようにソッと深呼吸して、水の入ったコップを手前に寄せた。
「……事故で死んだと聞いたのか?」
「そう。バスの事故だって。覚えてる?」
また一から水を注がれた満タンのコップを握る手を、サキは見ていた。その手の動きで、水を飲もうとしているわけではないとわかってしまった。
「いいや、覚えていない」
「俺もあんま覚えてないんだけどな。今度みんなで手ぇ合わせに行こうか~って話をしてるらしい」
「大勢で押し掛けたら迷惑だろ。やめた方がいい」
ハルはコップを持ち上げ、ほんの少しだけ水を飲んだ。唇を潤す程度の。その不自然さにサキの心が揺れる。
「それよりおじいさんは元気?」
「……それが、おととし体壊してな、今はもう……」
「そうだったのか……それはざんね」
「ピンピンしてまーす! へへ、今日Kくん来るって伝えたら顔出すっつったんだけど、腰痛めてるからやめとけーって俺が言ったんだ」
「お元気そうでなにより」
「そんなこともあって、しばらくはこの店手伝うことにしてる」
「連絡をしたときはもう、海外にいると思っていた」
「まあねー、本当は行こうとしてたんだけど、新しい機材買ったりなんだりしてたら資金なくなっちゃって……」
「次はどこへ行くんだ?」
「アラスカ。オーロラだよオーロラ!」
「高校の頃から言っていたな」
「そう! あ、覚えてる? あの頃二人でさ、東の海沿いの方までバイク走らせてオーロラ見に行ったの」
「覚えてる」
「何度かトライしたんだけど、どれもまったくダメで、結局一回も見られなかったんだよな。だから、いつか絶対撮ってやろう! って思ったんだ~。そういや今もバイク乗ってる?」
「いいや、結婚してからはもう……」
「手放したのか!」
「ああ」
「もったいないなぁ。また一緒にツーリングしたかったのに。ここまではなにで来たの? 車?」
「バス。近くまでバスで行こうかと思ってる」
「だったらバイク貸すよ。荷物積んどくから食べ終わったら店の裏きて」
一鶴は素早くエプロンを外し、二人を残して店を出た。
店を出るとき、ハルはノブに引っかけられているボードを裏返した。
店の裏にあるガレージに向かうと、一鶴はオフロードバイクに荷物を固定しているところで、ハルが手伝いに入った。
「いいでしょう! はい、乗ってっていいよ」
「助かる。久しぶりだから、少し走ってもいいか?」
「どうぞ!」
ハルはバイクにまたがり、こなれた動作でエンジンをかけた。その音にサキは一瞬ビックリしたがすぐに慣れた。
軽くバイクを走らせるハルは、敷地をグルリと大きく回る。
「俺、サキのお父さんに憧れて、バイクの免許取ったんだよ」
一鶴はハルを眺めながら言った。
「高校入学して……あ、違う、2年のときだ。2年の春からKくんバイクで通うようになってさ。それまでは俺もKくんも電車通学だったんだけど。俺の知らないうちに免許取っててさ、なまらびっくりした」
サキは思いきって聞いてみる。
「あの、“ケイくん”って、なんですか?」
「あだ名だよ。最初はみんな“博士”って呼んでたんだけど、いつからか“K”になったんだよなぁ」
「学生の頃はどんな感じだったんですか?」
「先生からはよく落ち着きがないって言われてたよ」
「へぇ、意外ですね……!」
「そう? 俺、結構落ち着いてるように見える? 年取ったのかなぁ」
「え?」
「え?」
「あ……宇生さんじゃなくて……」
「お父さんの方ね、はいはい。俺の印象は、つかみどころがない奴って感じで、近寄りがたかったなぁ。あと、本をよく読んでたイメージ。それは今もかな?」
「……そうですね」
サキは一応、彼の娘として調子を合わせた。
友だちとして付き合いはじめて数ヶ月。今でも普段なにをしているのか全くわからない、素性の知れない人。
「だから頭良いんだろうなぁってずっと思ってたけど、実は中学までは俺の方が成績良かったんだよね。高校生になって、Kくんが猛勉強し始めてからはどんどん成績が伸びて、あっという間に越されたよ」と笑う。
「勉強に目覚めたんですかね」
「前々から行きたい大学があったんだって。その大学に会いたい人がいるから、どうしてもそこに行かなきゃダメなんだって言ってたよ。今まで見たことがないくらい、Kくん必死そうだったから、10年以上も前だけど、そのときのこと、すげぇ覚えてるわ」
ハルに向けていた目をそらして、サキは足下の小石を軽く踏んで、つま先で転がした。
「必死になるくらい大切な人だったのかな……」
「そうね。サキのお母さんかな」
「どうでしょう」
「うらやましいよ……」
一鶴はポケットに手を突っ込んだ。
「サキは、お父さんと仲良いだろ?」
「そう、ですかね……」
「うん。お父さんのこと好き?」
「はい」
「俺も好き」
サキは思わず一鶴の顔を見た。
「あっ、そういう意味じゃないよ! ずっと独身だけど。俺は女性が好きです」
一鶴はなぜか会釈する。それにつられてサキも軽く頭を下げた。
「俺は父親と仲悪くて、最後の最後まで喧嘩してた。だから、君たち見てると……」
一鶴の言葉がふいに止まる。
「要するに、喧嘩するにも健康が一番ってこと」
ハルが戻ってくる。
「意外と乗れた」
「体が覚えてるんだなぁ」
「宇生くん、後ろ乗って」
「俺?」
「タンデムの練習」
「あい」
ハルの後ろにまたがる一鶴は楽しそうな顔をしている。そんな彼をうらやましく思うサキはまた後悔していた。
「すみませーん! ここってやってますー?」
声のする方を見れば、店先に男女三人組が立っていた。
「やってますよー! 今行きまーす!」
バイクから降りた一鶴は脱いだヘルメットをハルへ託す。
「ごめん、戻しておいて、ガレージはそのままでいいから」
一鶴は「気をつけて」と言い残し、急いで店へ向かった。
バイクを降りてガレージへ向かうハルの後ろをついていくサキが聞く。
「バイク、好きなんですか?」
「特に好きではない」
持たされたヘルメットを、収納されている棚へ戻す。
「じゃあどうして免許取ったんですか?」
「大した理由じゃない」
ハルは適当なサイズのヘルメットを手にする。
「ハルさん、博士って呼ばれてたんですか?」
「……あいつになに聞いた?」
「え」
ハルは、その後もなにか聞きたそうなサキに、ヘルメットを被せた。
「行くぞ」
荷物が邪魔をして、余計にうまく乗れないサキを引っ張り上げる。
「ど、どうしたらいいですか」
「両膝でここ、腰の辺りをしっかり挟んで、手は肩か腰を掴め」
あまりの近さに動揺するサキは、遠慮がちにハルの肩に手をかけた。
「出すぞ」
ハルはエンジンをかけ、ゆっくりとバイクを発進させたが、サキは慌てて止めさせた。
「ちょちょちょちょっと待ってください!」
「どうした」
「落ちそうで怖いです……」
「もっとしっかり挟んで、下半身を安定させるといい」
サキは「はい」と返事をして、肩に置いた手をハルの腰へソッと移動させた。
「俺の動きに合わせてもらえると助かる」
「動き?」
「カーブのとき、俺と同じように体を傾けてもらえると助かる」
「難しそう……」
「頭で考えるな。あんたなら自然にできる。大丈夫」
バイクを走らせ数十分。サキの腰を掴む力が強くなる。
赤信号で止まり、ハルは振り向いた。
「怖いか?」
サキは首を横に振る。
「寒い?」
それも違うと首を振ったが、青信号で再び走り出すと、今度は背中に顔をうずめてギュッとしがみついた。
夕飯の食料を調達するため道の駅へ立ち寄る。
「降りられるか?」
小さく返事したサキの声は、明らかに元気がない。バイクから降りるとそのまましゃがみ込んでしまった。
「酔ったか?」
ハルはすぐにサキのヘルメットを取ってあげる。顔は熱を帯びていて、体調が悪そうに見えた。
「大丈夫か?」
「なんだか、すごく、疲れました……」
「歩けそうにないか。俺は少し買い物してくるが、どうする? ここで待っているか?」
「はい……あの、ちょっと……トイレ、行きたいです……」
「わかった」
足を気にしながら、サキは公衆トイレに向かう。それを見届けたハルは、サキが体調を崩した原因に気づいた。
トイレに行っている間に買い物を済ませようと思っていたが、今の彼女を一人きりにさせるのは気が引ける。
ハルはトイレの出入り口付近に立ち、周りの人の動きに注視しながら、サキが戻ってくるのを待った。
今日もふたりは待ち合わせ。
いつもよりちょっと遠い場所、いつもよりかなり早い時間。いつもより暖かい格好で、いつもより多めの荷物を背負っている。
軽やかな足取りで待ち合わせ場所へ向かうサキは、風でよれたマフラーを巻き直す。
(ちょっと待たせてみようかな。でも今日は寒いしなぁ)
冬のにおいが混じった風にときおり体が煽られ、その都度歩みを止められる。この調子では、故意でなくとも彼を待たせることになるだろう。
そんな心配をしていたサキ。背中のリュックをピョンピョン弾ませながら、結局いつもどおり約束の時間より早く着いてしまった。
(あれ?)
待ち合わせの目印の場所から少し離れたビルの大きな広告看板の下に、いつも定刻ぴったりに来るはずのハルがいる。初めて見るダウンジャケット姿。遠くからソッと眺めていると、浮かれていた心は次第にそわそわし出す。
こちらにはまだ気づいていない。
サキは緩む口元を押さえながら忍び足で近づき、携帯電話をいじるハルの背中に向かって大きく「わっ!」と声を出した。
手元から視線を外したハルが振り向く。
ハルの瞳だけが下へ動くと、込み上げてくる感情が抑えられないサキと目が合った。
見つめ合って数秒、「こんばんは」と挨拶する彼の表情は一向に変わらない。
冷ややかに感じる視線に、汗がドッと吹き出たサキは、仕切り直すように熱を帯びた手を合わせた。
「……結構待ちました?」
「今来たところだ」
「そうなんですか?」
ハルは返事をする代わりに、見上げるサキの乱れた前髪を一撫ですると、サキは軽く唇を噛んで目をそらした。
「行こうか」
「はい」
自然と差し出された手を、サキは軽く握る。自分の手のひらよりハルの方が冷たく感じて、ふと隣を歩く横顔を見上げた。
そのかじかんだ手にどれだけ長く待っていたかを教えられ、サキはちょっとした罪悪感に胸が締め付けられた。
「ハルさん。そっちの手も貸してください」
突き刺す空気にさらされた素肌。
両手を握ると歩きづらい。
「……あったかいですか?」
「あったかい」
「もっとあったかくなる方法教えてあげましょうか?」
「うん?」
「へへ、こうするんです」
得意気になるサキは、繋いだ手を離して、自分の手をそのまま背中へ持っていき、リュックとの隙間にはさみ込んだ。
「小学生の頃こうやって学校行ってました」と笑う。
それでは両手がふさがって危ないとハルは咄嗟に思ったが、真似してみる。
早い時間。人通りは少ない。バス停までの距離を、足下に気を付けながらそうやって歩いた。
ベンチに座っても、バスが来るまでサキの両手は、背中とリュックの間にはさまったまま。
薄い水色の空に白い明けの三日月。
これからもっと陽が昇り、少しでも暖かくなることを願いながら、夜の訪れを待ちわびる。
ゆるい上り坂。四角い窓から遠ざかる街を見下ろす。
サキは行き先を知らない。知っているのは、お泊まりするということだけ。今日はハルの番。全ては彼任せ。
(ハルさんのしたいことってなんだろう)
乗っているのはサキとハルと、前の方でときおり頭を上下に揺らしているおばあさんと、ベテランそうな顔つきの運転手さんだけ。
うねる山道に、サキの顔色が悪くなっていく。暑苦しいマフラーを外し、焦点は合わせずボーッと窓の外を眺めている。
「もうすぐだから」
サキの手に触れたハルは、乗り物酔いに効くというツボを押しながら、到着を待った。
温度差に身震いを起こす。遠くの方でカラカラとなにかが転がる音が聞こえた。
サキは大きく空気を吸い込む。枯れた葉っぱのにおいがした。
「ゆっくりでいいから」
「すみません……」
サキが回復するまで、待合所のないバス停で少し休むことにした。目的の場所はまだまだ先だが、その前に寄り道したかった。その場所まではさほど遠くない。
ひしゃげたガードレールの先に、黒い屋根のログハウスが一軒、ポツンと現れた。
深緑色のドアのガラス窓には、神話に登場しそうな翼の生えた髪の長い美しい女性が白い線で描かれたロゴステッカーが貼られている。その絵の下に『ス ピ カ』と、カフェの名前がカタカナで表記されているが、ドアベル近くに吊り下げられた古い看板は英語表記だった。
ドアノブには“CLOSED”と書かれたボードが引っかけられている。ハルがお構いなしにドアを開けると、チリリンチリンと可愛らしいベルが鳴り、テーブルを拭いていた男性が振り向いた。
「いらっしゃ……おー!」
緑色のエプロンをつけた男性が、布巾片手に笑顔で近づいてくる。
「待ってたよー、え、娘?」
ハルはチラッとサキを見て、「うん」と答えた。
「結婚したとは聞いていたけど、こんなに大きい娘がいたなんて聞いてない聞いてない! 何歳? 小学生?」
「中学生」
「あ、中学生か! 中学生!? え、じゃあ、結婚してすぐ?」
「うん」
「言ってよー」
「忙しかったから……」
「じゃあしょうがないな~名前は?」
二人の会話に、サキは面には出さなかったが内心困惑していたと思う。
男性はハルの後ろで小さくなるサキへ視線を向けた。
「おはよう、朝早かったでしょう。疲れてない? 今モーニング持ってくるから、適当に座っててね」
男性は足早に奥の部屋へ向かい、ハルとサキは近くのテーブルに着く。
「宇生一鶴。俺の同級生」
テーブルの上の小さなスペースシャトルの置物を見ていたサキの目が、ハルの顔へと移動する。
「さっきはごめん」
「……へ?」
「嘘をついた」
焼きたてのパンのにおいが、男性が消えた奥の部屋から漂ってくる。
サキはフッと小さく笑って、伏し目がちに「おとーさん」と呟くと、目をそらしたハルはきまりが悪そうに首を触った。
サキが目を向けた壁には、惑星の写真が何枚かそのまま貼られてある。
ティラミスみたいに何段も積み重なった、地層のような見た目の惑星。赤に近いオレンジ色をベースに、所々墨で描いたような黒い模様がある惑星。イクラみたいな赤い月や、星をたくさん散りばめて作られた雲のような天の川。どの写真も額には入れず、無造作にテープで直接壁に貼り付けられてある。
本物かと疑ってしまうほどハッキリクッキリと写っている惑星に、サキは静かにゾッとする。
「はい、お待ちどうさまです」
運ばれてきたトレーの上には、レタスとトマトのサラダと殻の剥かれたゆで卵と分厚いトーストとホットミルクと氷のない水。
ふたりは手を合わせて「いただきます」と言った。
「にしても、久しぶりだねぇ。何年ぶり? Kくんから連絡もらったとき、すげぇ嬉しかったよぉ」
トマトをフォークで刺すサキの眉がピクリと動く。
「俺とお父さん同級生なんだけどさ、あ、聞いた? 幼稚園の頃からの幼馴染みで、高校まで一緒だったんだ。さすがに大学までは無理だったなぁ。俺、Kくんほど頭良くなかったから」
一鶴はあっけらかんと笑う。
「そうだ。クロワッサンとバターロールもあるけど、いる?」
「はい!」
そうサキが答えると、一鶴は笑顔でまた奥の部屋へと向かった。
ハルはチラリとサキの顔を覗き見て、ゆで卵の反発力を感じながらフォークで真っ二つにした。
「無理しなくていい」
「え?」
「まだ具合悪かったら、残してもいいから」
「ペコペコです」
サキは大きく口を開いて、しっかりと焦げ目のついたトーストを豪快にかじった。
朝食にしては遅すぎるし、昼食にはちょっと早いモーニングセットを、ふたり向かい合って食べる。
スピカのBGMはスチーム式加湿器の蒸気が噴射する音と、ラジオパーソナリティーの柔らかな笑い声。
そこに、パンを山盛りに積んだバスケットも持って一鶴が戻ってくる。そっと置いたが、バターロールが一つ転がってテーブルに落ちた。
「好きなだけ食べて」
「わーい」
一鶴は気にせず落ちたバターロールを拾って二口で食べた。
「このパン美味くない?」
サキはツルツルピカピカに輝いたバターロールに噛みつく。噛んだままパンの匂いを吸うのが好き。脳がパンの香りで満たされる感じがして、よくやってしまう。
「特にここのクロワッサンは、表面が甘くてカリカリしてて好きなんだよねぇ。あ、余ったパン持ってく?」
サキの表情を見ていたハルは財布を出す。
「いくらだ?」
「いいからいいから! このパンね、大森のくまさんっていう麓のパン屋さんに毎朝配達してもらってるから、お客さん来ないと毎日たまってっちゃうんだよ。それで、残りを捨てるのはもったいないから、立ち寄ってくれたお客さんに、たまに配ってるんだ。パン屋さんの宣伝も兼ねて。だからお代は結構! そもそもパンの相場がわかんねぇよ」
「そんなに残るのか?」
「今日みたいに全然人来ないからねぇ」
「表の看板が準備中になっているからじゃないか?」
「あー! またひっくり返すの忘れてた。じいさんに怒られるんだよねぇ」
急いで入り口へ向かった一鶴だったが、「と思ったけど、ふたりがいる間はこのままにしておこう」と言って戻ってきた。
「あ、そうだ」
一鶴はエプロンのポケットから取り出した一枚の写真を二人に見せた。
「去年地元帰ったときに撮ったんだ」
降り積もる雪が枯れた木々を白く染め、白い空気が空の色に染められた、美しい冬の大地を切り取った風景写真。その中央に、天使が降りてきたような光の柱がある。ボヤけた無数の小さな氷の結晶が、太陽光で照らされ、キラキラと輝いている。
「ダイヤモンドダスト」
一鶴の言葉をサキが疑問符を付けて復唱する。
「色んな条件がバッチリ揃ったときにだけ見られる自然現象……」
一鶴は空いたコップに水を注いで、「西森小春って覚えてる?」と聞いた。
唐突な質問に、写真を見ていたハルの目が微かに動く。
「小5? の頃に、転校してきた女の子なんだけど、覚えてない? 卒業前にまた転校しちゃった子」
非常に珍しく、世にも美しい自然現象を捉えた写真。その光景を確実に視界に入れているはずなのに、
「あの子亡くなったんだって」
いくらまばたきをしてもピントが合わない。これは正しく失敗写真に違いない。
「中学卒業してすぐ事故に遭ったそうだよ。同窓会で聞いたんだ。集めるときみんなの連絡先調べててそれで知ったんだって」
ハルは誰にも気づかれないようにソッと深呼吸して、水の入ったコップを手前に寄せた。
「……事故で死んだと聞いたのか?」
「そう。バスの事故だって。覚えてる?」
また一から水を注がれた満タンのコップを握る手を、サキは見ていた。その手の動きで、水を飲もうとしているわけではないとわかってしまった。
「いいや、覚えていない」
「俺もあんま覚えてないんだけどな。今度みんなで手ぇ合わせに行こうか~って話をしてるらしい」
「大勢で押し掛けたら迷惑だろ。やめた方がいい」
ハルはコップを持ち上げ、ほんの少しだけ水を飲んだ。唇を潤す程度の。その不自然さにサキの心が揺れる。
「それよりおじいさんは元気?」
「……それが、おととし体壊してな、今はもう……」
「そうだったのか……それはざんね」
「ピンピンしてまーす! へへ、今日Kくん来るって伝えたら顔出すっつったんだけど、腰痛めてるからやめとけーって俺が言ったんだ」
「お元気そうでなにより」
「そんなこともあって、しばらくはこの店手伝うことにしてる」
「連絡をしたときはもう、海外にいると思っていた」
「まあねー、本当は行こうとしてたんだけど、新しい機材買ったりなんだりしてたら資金なくなっちゃって……」
「次はどこへ行くんだ?」
「アラスカ。オーロラだよオーロラ!」
「高校の頃から言っていたな」
「そう! あ、覚えてる? あの頃二人でさ、東の海沿いの方までバイク走らせてオーロラ見に行ったの」
「覚えてる」
「何度かトライしたんだけど、どれもまったくダメで、結局一回も見られなかったんだよな。だから、いつか絶対撮ってやろう! って思ったんだ~。そういや今もバイク乗ってる?」
「いいや、結婚してからはもう……」
「手放したのか!」
「ああ」
「もったいないなぁ。また一緒にツーリングしたかったのに。ここまではなにで来たの? 車?」
「バス。近くまでバスで行こうかと思ってる」
「だったらバイク貸すよ。荷物積んどくから食べ終わったら店の裏きて」
一鶴は素早くエプロンを外し、二人を残して店を出た。
店を出るとき、ハルはノブに引っかけられているボードを裏返した。
店の裏にあるガレージに向かうと、一鶴はオフロードバイクに荷物を固定しているところで、ハルが手伝いに入った。
「いいでしょう! はい、乗ってっていいよ」
「助かる。久しぶりだから、少し走ってもいいか?」
「どうぞ!」
ハルはバイクにまたがり、こなれた動作でエンジンをかけた。その音にサキは一瞬ビックリしたがすぐに慣れた。
軽くバイクを走らせるハルは、敷地をグルリと大きく回る。
「俺、サキのお父さんに憧れて、バイクの免許取ったんだよ」
一鶴はハルを眺めながら言った。
「高校入学して……あ、違う、2年のときだ。2年の春からKくんバイクで通うようになってさ。それまでは俺もKくんも電車通学だったんだけど。俺の知らないうちに免許取っててさ、なまらびっくりした」
サキは思いきって聞いてみる。
「あの、“ケイくん”って、なんですか?」
「あだ名だよ。最初はみんな“博士”って呼んでたんだけど、いつからか“K”になったんだよなぁ」
「学生の頃はどんな感じだったんですか?」
「先生からはよく落ち着きがないって言われてたよ」
「へぇ、意外ですね……!」
「そう? 俺、結構落ち着いてるように見える? 年取ったのかなぁ」
「え?」
「え?」
「あ……宇生さんじゃなくて……」
「お父さんの方ね、はいはい。俺の印象は、つかみどころがない奴って感じで、近寄りがたかったなぁ。あと、本をよく読んでたイメージ。それは今もかな?」
「……そうですね」
サキは一応、彼の娘として調子を合わせた。
友だちとして付き合いはじめて数ヶ月。今でも普段なにをしているのか全くわからない、素性の知れない人。
「だから頭良いんだろうなぁってずっと思ってたけど、実は中学までは俺の方が成績良かったんだよね。高校生になって、Kくんが猛勉強し始めてからはどんどん成績が伸びて、あっという間に越されたよ」と笑う。
「勉強に目覚めたんですかね」
「前々から行きたい大学があったんだって。その大学に会いたい人がいるから、どうしてもそこに行かなきゃダメなんだって言ってたよ。今まで見たことがないくらい、Kくん必死そうだったから、10年以上も前だけど、そのときのこと、すげぇ覚えてるわ」
ハルに向けていた目をそらして、サキは足下の小石を軽く踏んで、つま先で転がした。
「必死になるくらい大切な人だったのかな……」
「そうね。サキのお母さんかな」
「どうでしょう」
「うらやましいよ……」
一鶴はポケットに手を突っ込んだ。
「サキは、お父さんと仲良いだろ?」
「そう、ですかね……」
「うん。お父さんのこと好き?」
「はい」
「俺も好き」
サキは思わず一鶴の顔を見た。
「あっ、そういう意味じゃないよ! ずっと独身だけど。俺は女性が好きです」
一鶴はなぜか会釈する。それにつられてサキも軽く頭を下げた。
「俺は父親と仲悪くて、最後の最後まで喧嘩してた。だから、君たち見てると……」
一鶴の言葉がふいに止まる。
「要するに、喧嘩するにも健康が一番ってこと」
ハルが戻ってくる。
「意外と乗れた」
「体が覚えてるんだなぁ」
「宇生くん、後ろ乗って」
「俺?」
「タンデムの練習」
「あい」
ハルの後ろにまたがる一鶴は楽しそうな顔をしている。そんな彼をうらやましく思うサキはまた後悔していた。
「すみませーん! ここってやってますー?」
声のする方を見れば、店先に男女三人組が立っていた。
「やってますよー! 今行きまーす!」
バイクから降りた一鶴は脱いだヘルメットをハルへ託す。
「ごめん、戻しておいて、ガレージはそのままでいいから」
一鶴は「気をつけて」と言い残し、急いで店へ向かった。
バイクを降りてガレージへ向かうハルの後ろをついていくサキが聞く。
「バイク、好きなんですか?」
「特に好きではない」
持たされたヘルメットを、収納されている棚へ戻す。
「じゃあどうして免許取ったんですか?」
「大した理由じゃない」
ハルは適当なサイズのヘルメットを手にする。
「ハルさん、博士って呼ばれてたんですか?」
「……あいつになに聞いた?」
「え」
ハルは、その後もなにか聞きたそうなサキに、ヘルメットを被せた。
「行くぞ」
荷物が邪魔をして、余計にうまく乗れないサキを引っ張り上げる。
「ど、どうしたらいいですか」
「両膝でここ、腰の辺りをしっかり挟んで、手は肩か腰を掴め」
あまりの近さに動揺するサキは、遠慮がちにハルの肩に手をかけた。
「出すぞ」
ハルはエンジンをかけ、ゆっくりとバイクを発進させたが、サキは慌てて止めさせた。
「ちょちょちょちょっと待ってください!」
「どうした」
「落ちそうで怖いです……」
「もっとしっかり挟んで、下半身を安定させるといい」
サキは「はい」と返事をして、肩に置いた手をハルの腰へソッと移動させた。
「俺の動きに合わせてもらえると助かる」
「動き?」
「カーブのとき、俺と同じように体を傾けてもらえると助かる」
「難しそう……」
「頭で考えるな。あんたなら自然にできる。大丈夫」
バイクを走らせ数十分。サキの腰を掴む力が強くなる。
赤信号で止まり、ハルは振り向いた。
「怖いか?」
サキは首を横に振る。
「寒い?」
それも違うと首を振ったが、青信号で再び走り出すと、今度は背中に顔をうずめてギュッとしがみついた。
夕飯の食料を調達するため道の駅へ立ち寄る。
「降りられるか?」
小さく返事したサキの声は、明らかに元気がない。バイクから降りるとそのまましゃがみ込んでしまった。
「酔ったか?」
ハルはすぐにサキのヘルメットを取ってあげる。顔は熱を帯びていて、体調が悪そうに見えた。
「大丈夫か?」
「なんだか、すごく、疲れました……」
「歩けそうにないか。俺は少し買い物してくるが、どうする? ここで待っているか?」
「はい……あの、ちょっと……トイレ、行きたいです……」
「わかった」
足を気にしながら、サキは公衆トイレに向かう。それを見届けたハルは、サキが体調を崩した原因に気づいた。
トイレに行っている間に買い物を済ませようと思っていたが、今の彼女を一人きりにさせるのは気が引ける。
ハルはトイレの出入り口付近に立ち、周りの人の動きに注視しながら、サキが戻ってくるのを待った。
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