巻き込まれて死亡?!神様、責任とってくださいね?

紅子

文字の大きさ
10 / 23

私のテント

しおりを挟む
とうとう、初野営がやってきた。峠の途中にある野営場所には、私たちのほかにも数組の商隊がいる。そこに《肉追い人》のリーダーが挨拶に出向いていた。後から来た者が先にいる者に挨拶をするのが礼儀らしい。

「俺らはこのあたりに陣取る。サイカはここにテントを張ってくれ。その周りに俺たちのテントを張る」

「了解」

焚き火から少し離れたところにテントを出した。

「サイカ。また強力な結界を組み込みましたね」

そうかな? 安全第一だよ。

「私、攻撃力も防御力も0だからね。ヴィーグがいないと死んじゃう。出来るだけ、安心安全快適な旅をしたい!」

「・・・・まあ、己の能力を自覚して最大限に活用するのはいいことです」

「そんなに凄いのか?」

「俺たちには分からねーな」

「魔法師でも特級でないと見抜けないでしょうねぇ。魔物が来てもこの中にいれば、襲われませんし、地面に固定されていますから動かせません。攻撃すれば返り討ちに遭いますよ。それに、この中に入れるのは、指定した者だけ。サイカのテントにはサイカ本人とヴィーグのみです」

そこまで見抜ける副ギルド長って、何者ですか?魔法陣描き?回復師?治癒師?魔術師?魔法剣士?全部?あり得る。ああ。だから副ギルド長なのか。じゃあ、ギルド長はもっとすごい人?

「見張り、いらねぇってことじゃねぇか」

「まあ、そうですね」

副ギルド長の呆れた顔も分からなくはないけど、攻撃手段を持ち、ダンジョンに行けるあなた達と同じに考えないでもらいたい。

「さすが、魔法陣描きだな」

「依頼すると一体いくらかかるんだか」

「金貨50枚は確実にします」

一家4人が1月暮らすのにだいたい金貨3枚と考えるとお高い。

「金貨50枚・・・・。だが、それだけの価値はあるな」

《肉追い人》は、本気で自分たちのテントにこの魔法陣を組み込むことを検討し始めたようだ。マジか。

「この旅が終わって、シーアーバンスに帰ったら、その半額で、これ、譲ろうか?」

ばっと《肉追い人》の4人が一斉にこちらを向いた。だって、私にとっては、テントと魔石の費用しかかかっていないし。ボロ儲け?

「ひとり用かぁ」

「だが、大きくなると費用もかさむよな」

「半額は破格だ」

「どうせ、2つはいるんだ。1つはこれでも・・・・」

どうやら、ひとり用のテントなのが気にかかっているらしい。でも!

「これ、ヴィーグのためにも中を拡張してあるから広いよ」

全員の目が零れ落ちた。

「阿呆ですか~!!!それなら、100枚は下らないわ!」

「まあまあ。私に損はないし。魔石を使ってるけど、魔力の補充はいるからさ。ただ、他の人に言うときには、金貨100枚だって宣伝してね」

そうすれば、無闇矢鱈に依頼は入らないでしょう。

「消費魔力はどれくらいだ?」

リーダーの目が本気になった。

「一日中使って1年で空になる。毎日補充すれば、そんなに魔力は必要ないよ。中、見てみる?」

「いいのか?!」

私は、テントの登録をリセットした。

「どうぞ」

みんな興味津々で中に入っていく。その前にもちろん丸洗いしてもらったけどね。汚したくない。

「広い」

「ちょっと、宿より豪華じゃない?ベッドまであるのぉ?!4台並べても余裕がありそう」

ふふ~ん。中は、地面の石が気にならないように簀の子の上に分厚い絨毯を敷き、さらにその上に毛足の長いラグを重ねてある。ナーサリーに買ってきてもらった寝袋は、必要なかった。ひとり用のテントなら、畳まずに1番小さい無限鞄に仕舞えるのだ。

「あり得ない」

「あー!もう!サイカ!!!やり過ぎです!」

中を見てもらったところで、一度外に出た。すぐに私とヴィーグの登録をしておく。

「買った!金貨30枚だ」

「売った!受け渡しは、シーアーバンスに戻ってからね?」

「よし!野郎ども、王都のダンジョンで稼ぐぞ!」

「「「ウッス!」」」

「やる気出るわぁ」

「よっし!」

「ふん!」

「サイカ、サイカ♪」

副ギルド長が期待を込めて私を見る。

「分かったよ!同じ値段で、副ギルド長にも売るけど、帰ってからね?」

「ああ。楽しみですねぇ」

まあ、金貨60枚か。いい儲けだよね。そうだ!ギルド長の分も用意しておこう。副ギルド長と同じ値段なら買う気がする。なんといっても副ギルド長と同類だし。



「今日の夕飯は、これな」

その後、落ち着いてから出された食事は、スープとパン。肉と野菜がゴロゴロ入っていて食べ応え充分。パンもふかふかで言うことなし。スープもパンも今朝街で仕入れたもの。峠の途中で野宿をする人用のサービスが充実していた。スープはもちろん煮物焼き物お摘まみからデザートまで、どれもお一人様から団体様まで持ち帰り可能だ。おかげで食事に困ることはない。

「今日の見張りは、明日の御者と馬に乗る奴優先で、中に副ギルド長、でいいか?」

そうか。見張りがいるんだね。

「一応、結界の魔法陣で私たちのいる辺りは囲ってるよ?」

「他の商隊の手前もありますからね。それで構いませんよ」

「私も見張りしようか?ヴィーグと一緒だし、結界の魔法陣もあるから、出来ると思うよ?」

みんなするのに私だけしないのもねぇ。それに、結界があれば、野盗も入っては来れない。魔物は、ヴィーグがいるから、この野営地には近づきもしないだろう。

「では、私の前に組み込みましょうか。時間は2時間」

「そうしてくれると助かるな」

そうして決まった順番は、明日の御者のニコラと馬で移動するライネルが1時間、私が2時間、副ギルド長が2時間、馬車内で護衛するキャロと馬に乗るリーダーのバルトが1時間。私と副ギルド長は、昼間馬車内で眠れるからね。

「じゃ、さっさと寝るぞ」

私は、ヴィーグに起こしてもらえるように頼むとベッドに潜り込んだ。

『サイカ、時間だ』

「ん~?」

『見張りをするのだろう?』

見張り?

「そうだった!」

ライネルと交代して見張りにつく。

「見張りって暇だね」

『野盗も魔物も手出しできないと分かっておるから、余計に退屈なのだろう。普通はもっと気を張って2人で行うのだがな』

「詳しいね、ヴィーグ」

『伊達に長く生きてはおらん』

暇すぎて、ヴィーグとお喋りという独り言を呟く私は、端から見たら、イカれた人に違いない。欠伸をしながら2時間、頑張った。その間中、こちらを凝視する者たちがいたのだが、性能のよすぎる結界のおかげとでも言うべきか。私たちの誰も、こちらの動向を抜け目なく見張る気配に気づくことはなかった。ヴィーグは、・・・・。うん。後で要改善だね!そして、表面上は何事もなく2時間過ぎ、副ギルド長と交代した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されました。親友は第一王子に惚れられて、ぽっちゃりな私は聖女として精霊王とイケメン達に愛される!?〜聖女の座は親友に譲ります〜

あいみ
恋愛
ーーーグランロッド国に召喚されてしまった|心音《ことね》と|友愛《ゆあ》。 イケメン王子カイザーに見初められた友愛は王宮で贅沢三昧。 一方心音は、一人寂しく部屋に閉じ込められる!? 天と地ほどの差の扱い。無下にされ笑われ蔑まれた心音はなんと精霊王シェイドの加護を受けていると判明。 だがしかし。カイザーは美しく可憐な友愛こそが本物の聖女だと言い張る。 心音は聖女の座に興味はなくシェイドの力をフル活用して、異世界で始まるのはぐうたら生活。 ぽっちゃり女子×イケメン多数 悪女×クズ男 物語が今……始まる

無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いてほしい!!

カントリー
恋愛
懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。 でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。 大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きなぽっちゃりした女子高校生。 今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。 異世界先は獣人の世界ークモード王国。住民の殆どが美男美女で、おデブは都子だけ。 ダーク 「…美味そうだな…」ジュル… 都子「あっ…ありがとうございます!」 (えっ…作った料理の事だよね…) 元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが… これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。 ★いいね・応援いただけると嬉しいです。創作の励みになります。

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

千年に一度の美少女になったらしい

みな
恋愛
この世界の美的感覚は狂っていた... ✳︎完結した後も番外編を作れたら作っていきたい... ✳︎視点がころころ変わります...

好感度0になるまで終われません。

チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳) 子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。 愛され続けて4度目の転生。 そろそろ……愛されるのに疲れたのですが… 登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。 5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。 いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。 そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題… 自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。

"番様"認定された私の複雑な宮ライフについて。

airria
恋愛
勝手に召喚され 「お前が番候補?」と鼻で笑われ 神獣の前に一応引っ立てられたら 番認定されて 人化した神獣から溺愛されてるけど 全力で逃げ出したい私の話。 コメディ多めのゆるいストーリーです。

処理中です...