巻き込まれて死亡?!神様、責任とってくださいね?

紅子

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野盗の暴露

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翌日は、私たちが一番最後に野営地を後にした。カタカタと心地よい揺れが眠気を誘う。

「サイカ。眠いなら、寝てしまって構いませんよ」

「副ギルド長は・・ふぁあ、眠くない、の?」

「私は慣れていますからね」

「そっか・・・・ちょっと、ねむい、かも」

見張りって大変だ。御者と馬で護衛する2人が優遇された理由が分かる。御者にうとうとされたらと思うと怖いよね!うつらうつらとしていた私の意識は、いつの間にか沈んでいた。







それからどのくらい経ったのか。外がなんだか騒がしい。その騒がしさに閉じていた目を開いた。馬車の中を見回しても誰も居ない。

「あれ?休憩?」

キンキンカンカンガッガンカンキーン

「グア!」

「殺すなよ!」

「魔法が効いているうちに武器を奪え!」

いやいやいやいや。ちょっとぉ。戦闘中ですか?!マジで?外から聞こえる物騒な会話にブルッと身体が震えた。この世界に来てから、初めて身近に感じる命のやりとりの音だった。

『起きたか』

声のした方を見ると、足元にヴィーグが寝そべっていた。

「ヴィーグ。何が起こってるの?」

『賊が出ただけだ。すぐに終わるだろう。昨日から視線がうるさかったからな』

「え?え?え?助けとか?でもどうすればいいの?私、ここにいていいのかな?あっ!役立たずだね、私!ヴィーグは?行かなくて大丈夫なの?」

そんなに悠然と構えていていいの?この世界でもあっちの世界でも初めての事態に頭が追いつかない。アワアワとして自分が何を言っているのかもよく分からなかった。

『落ち着け。そう慌てなくても、こちらの戦力過剰だ』

あっ!納得した。ダンジョンが観光になる戦闘狂の副ギルド長がいるんだから、ここに居れば大丈夫。ヴィーグも居るしね。そう思ったら、少し落ち着いた。




ほどなくして、外の喧騒は静まった。そして、馬車の入口が開いて副ギルド長が顔を覗かせた。

「ああ。サイカ。起きていましたか。ちょうどよかった。協力してもらいたいことがあります」

促されるままに外に出ると、そこにはフードを外された魔術師らしき3人と体格がよく身なりも悪くない魔法剣士らしき5人が縛られた状態でいた。あれ?見覚えがあるような?首を傾げてその人たちを見た。

「こいつらは、あの野営地にいた商隊のひとつだ」

な~る。道理で見たことがあるはずだ。

「こいつらを次の街まで連行するんですが、魔力を封じる魔法陣を持っていませんか?費用は後ほどギルドから精算します」

「あるよ。3枚でいい?」

「いえ、全員分」

私は、無限鞄から9枚取り出して副ギルド長に渡した。

「1枚多いですが?」

「ちょうどだよ。ほら、ヴィーグが引き摺ってきた」

ひとり、随分離れたところで見ていて、逃げようとした人がいたのだ。ヴィーグはそれを追って捕まえてきた。

「何処に?!」

賊に気付かなかった副ギルド長は、驚きに目を見開いていた。

「あの岩の影から逃げていくのをヴィーグが見つけたの」

『サイカ、鑑定してみるといい』

え?

ヴィーグの声は、私にしか聞こえない。私は、ヴィーグを褒めているふりをして、魔法剣士らしき人を鑑定した。既に鑑定を阻害する魔道具は、取り上げられている。

「え?」

他の人も鑑定する。その結果にちょっと、頭を抱えたくなった。

「副ギルド長」

呆然と信じられない思いで副ギルド長を呼んだ。

「どうしました?何かありましたか?」

「この人たちのうち誰かに自白の魔法陣を使ってもいいかな?」

あちらがここまでするなら、自衛のためにも躊躇ってはダメだ。

「何故?そんな高価な物を使うほどのことですか?」

「ちょっと知りたいというか・・・・」

「私が鑑定してもいいのですよ?」

「うぅん。鑑定もしてほしいけど」

副ギルド長でも見破れるかどうか。

「まずは、鑑定してみましょう?」

「うん」

さて、副ギルド長の鑑定でどれくらいの情報が出てくるかなぁ?

「隷属されていますね。それらしい魔道具は見当たりませんが。主人までは分かりませんねぇ・・・・」

えっ!?凄い!隷属までは分かったんだ!さすが、伊達に副ギルド長やってないわぁ。

「ちが、違います!隷属ではありません!」

それを聞いた9人は一斉に抗議してきたが、無視だよ無視。

「だったら、一時的に効果無効にするから、自白させよう!」

「「「「「はあ?!」」」」」

私は、私の・・鑑定の結果から隷属の魔法陣が刻まれているという足の裏に、無効化する創作魔法陣を巻いた。布製にしておいてよかったわ。今回の隷属は、魔道具を使ったものではなく、人体に直接刻まれる魔法陣を使用していた。目の玉が飛び出るくらい高価な結晶化魔石を使用して使い捨てする大富豪仕様だ。結晶化魔石は、普通の魔石をそれ専門の魔法師が数ヶ月から数年かけて特別処理するのだが、出来ちゃうんだなぁ、私。まさしく、チート!

「そんな魔法陣が存在するなんて。一時的にでも無効化するなど、高等すぎます。何処で手に入れたのですか?」

「うーんと。あっ、ハ、ハルシュバーンのコレクションのひとつだったかな?あれ?」

しまった・・・・。誤魔化せて、ないよねぇ。胡散な目でこちらを見る副ギルド長を見なかったことにして、話を先に進めたい。

「ハルシュバーンの、ねぇ」

「け、研究のためにいろいろ集めてたから、そんなのもあったんだよ、たぶん」

副ギルド長だけでなく、捕らわれた3人の魔術師も顔を蒼ざめさせた。隷属の魔法陣のことは、神様によってインストールされた情報が教えてくれた。通常、隷属は魔道具で行われ、固定魔法陣が使われる。ただし、幾重にも保護されているため、国が管理する解除専用の固定魔法陣以外では、魔道具を外すことはおろか、魔法陣を無効化することも難しい。まあ、それをしたら犯罪になるんだけどね。

「狙われるわけだ」

ぼそっと誰かの呟きが聞こえてきた。その場の全員が、納得の表情を見せたのには、私が納得できない。とにかく、一時的にでも隷属が解けたところで、早速、この集団のリーダーに自白の魔法陣を施した。

「さて、誰に隷属を施されましたか?」

「うっ、ぐっく!ちがっ!はっぐぅ。くらっ!くっふ」

副ギルド長からの質問にリーダーは必死に抵抗して黙秘しようとしている。隷属させられていたにもかかわらず、義理堅いことだ。

「クライスター」

私の一言にかすかに目を見開いた。

「何故、ふぐっ、ぞれぐを。ちがっ!」

「まさか?!」

「嘘でしょ?あのクライスター様が?!どうして?」

《肉追い人》は、ヤバいことを聞いたという苦い表情を隠しもせず、自白を聞いている。

「もう一度尋ねます。誰に隷属をかけられましたか?」

「隷属ではあり・・・・ぐっっ!」

「質問を変えます。主人は誰ですか?」

副ギルド長は、隷属という言葉をぼかして尋問し始めた。

「っクライスター・ハインツ・・ライト様ですっぐ」

こうなってはもう抗っても無駄だと諦めたのか、暫くすると抵抗することなく自白を始めた。他の人たちも俯いている。

「何故、我々を襲ったのでしょう?」

「そこの娘を生け捕りにしろと。邪魔者は排除して構わないと言われました。従魔は確実に殺すようにと指示されています」

「指示されたのはそれだけですか?」

「はい。娘は魔法陣さえ描ければいいから、抵抗するなら腱を切れとも言われました」

「他にも同じ状態の者はいますか?」

「いいえ。私たち9人がクライスター様直属です。時々、ハインツライト侯爵家の魔法剣士や魔術師を護衛に呼ぶことはありますが、彼らは何も知りません」

「何故、それを受け入れたのですか?」

「俺は、娘がハインツライト侯爵家の侍女をしていて、その娘の粗相で高価な魔道具を壊した借金の代わりに」

副ギルド長は、他の人たちに視線を向けた。

「私は、父が騙されて、店を乗っ取られそうになっていたのを救ってもらいました」

「僕は、両親が作った借金の肩代わりをしてもらいました。お蔭で家族が路頭に迷うことなく暮らせています」

「弟が賭博で借金を作って、妹がその形に連れて行かれそうになって、助けてもらいました。弟はいまだ行方知れずです」

「友人に騙されて、犯罪者に仕立て上げられそうになったところを無実だと証明していただきました」

「幼い娘が重い病にかかっていて、その治癒を対価に受け入れました」

「姉が嫁ぎ先で、不貞を働いたと賠償金を請求されました。その時にそれを事実無根として証明してくださったのがクライスター様です」

「両親に奴隷として売られました。買ったのがクライスター様です」

「僕は、勤め先で横領したとして犯罪者にされそうになったのを真犯人を突き止めてくれて。だから」

《肉追い人》は、クライスターの善行に困惑している。

「我が国のみならず、どの国も犯罪者以外を隷属させるのは禁じられているのはご存じですよね?ハァ。いくら、恩を感じても相手を犯罪者にしてしまっては意味がないのですがね」

呆れているギルド長に食ってかかるように9人は抗議の声を上げた。

「れ、隷属ではありません!眷属だと、ハルシュバーンに個人的に創ってもらったものだとおっしゃっていました!」

は?!聞き捨てならないことを聞いた!ハルシュバーンの実績として、幾つか既存の魔法陣を提供したが、そんなものは創ってない。あれの創作者は別にいる!

「嘘だよ。ハルシュバーンは、個人からの依頼は一切受けなかった。全部ギルドを通してた!」

副ギルド長は、コクンとひとつうなずいた。

「サイカが言うなら、そうなのでしょう。ですが、個人の依頼まではギルドでは証明できません。まっ、とりあえず、聞きたいことは聞けましたから、そろそろ出発しましょう」

そう、既にここは、ルクセンバルグ王国なのだ。

「本当なのにぃ。創作者はもっと昔の人だもん!」

納得いかない!

「それを証明するのは、現時点では難しい。分かりますね?この者たちは、次の街で王都の騎士団に引き渡してもらうように説明します」

9人は、しっかりと拘束し直されて、自分たちが乗ってきた荷馬車に放り込まれた。その後は順調に進み、予定通り隣国の王都に辿り着いた。途中で副ギルド長がギルド長と連絡を取っていたので、帰る頃には厄介事は片付いていることを祈る!丸投げともいう!
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