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北の街で叱られて
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私とヴィーグは、のんびりと街から街へと旅を満喫している。
「蟹が美味しすぎる」
『市場であれだけ大量に仕入れたのだ。食べ放題ではないか?』
「採れたての生はやっぱり違うよ」
『そういうものか?』
無限鞄は、時が進まないから、採れたてと言えば採れたてなんだけど、気分が違う。
「ねえちゃん、いいこと言うねぇ。採れたてに勝るものはないよ!焼いてよし、茹でてよし、生でよし。ドーンと来いだ」
店の親父が威勢よく相づちを打ってきた。目の前で蟹の足をバリッと割る音が美味しそうに響く。
「生、最高だよねぇ。ここまで来た甲斐があった」
「どこから来たんだい?」
親父が蟹の足をバリバリ折りながら話しかけてきた。
「クレイガー王国のシーアーバンス」
「シーアーバンスってぇと、大分南だな。確か海もあったんじゃなかったか?」
「うん。蟹も捕れたけど、身はねぇ。スープの出汁にすると美味しいから、よく獲りには行ってた」
『蟹を捕っていたのは我だがな』
「そうかそうか。ここにいる間に、いっぱい食えよ!ほらよっ!いっちょ上がりだ。8番テーブルな」
冬も半ばを過ぎたこの時期は、蟹目当ての旅人が多いのかもしれない。周りのテーブルには、いろいろな蟹料理を頼む客でいっぱいだ。雪深くなってきたとはいえ、この街までなら、そり馬車で往き来出来る。蟹料理を心ゆくまで満喫し、お腹がいっぱいになった私は、チラチラと雪が降り始める中、宿へと戻った。この国に来て、既に半年ちかく経っている。徐々に北上してきたが、これ以上北には行けなそうだ。雪に閉ざされて、街から出られなくなってしまう。
『明日からは南に向けて旅立つのか?』
「うん!寒いのはもういいかな。南国のフルーツが食べたい」
『食べ物ばかりだな』
「旅の楽しみは、食だよ!美味しいものを食べたいじゃない。それに、珍しい薬草とか木の実とか暖かい絨毯も買ったでしょう。ヴィーグのラグだって、新調したじゃない」
『まあな。これは気持ちがよくていい』
意外なことにヴィーグは、ラグにこだわりがあったのだ。お気に入りが見つかってよかったね。まさか、10枚も買わされるとは思わなかったよ。
「南下しながらクレイガー王国を巡って、そろそろシーアーバンスに帰ろう」
『一度、シーアーバンスの魔法ギルドに連絡を入れてはどうだ?』
「ああ。全く依頼もしてないし、ギルドにも行ってないから、行方不明にされかねないね。仕方ない、明日、出発前にここの魔法ギルドから通信してみるか」
ギルド長も副ギルド長も元気だろうか?ナーサリーたちはどうしているかなぁ。思い出したら、気になってきた。
「おはようございます」
「おはようございます。本日はどのようなご用件でしょうか」
「シーアーバンスの魔法ギルドに通信をしたいのですが」
「ギルドカードの提示をお願いします」
カードを見せるとすんなりと通信の魔道具がある部屋へと通された。
「はい。こちら、シーアーバンス魔法ギルドです」
「サイカです。ん~と、その声はナーサリーかな?」
「サイカ?!ちょっとあなたどこにいるのよ!待って!今、ギルド長たちを呼ぶわ」
暫く待つと、ばたばたと音がして、すぐに賑やかになった。
「サイカか?!お前今どこにいる?!」
ナーサリーと同じ勢いでギルド長に問われた。通信機越しでよかったと思うほどの勢いだ。
「えっとタイサルド公国の」
「は?!タイサルド公国だと?そんなところにいたのか?!てっきり国内にいるもんだとばかり」
「たまたま国境を越えた先がタイサルド公国で、そのまま観光してる。今は、クイックルノーのギルド。この後は、南下して国内を回ってから、そっちに帰るのは半年後かな?」
「ハァ。観光ねぇ。いいご身分だな、おい。こっちは大変なことになっているのになあ」
そんなこと言われても・・・・。旅に出るって言ったし。そちらで何があったかは知らないけど、私のせいじゃない!
「サイカの改造した馬車に問い合わせが殺到しています」
あっ、それかぁ。まだ、固定魔法陣に登録してなかったねぇ。すっかり忘れてた。
「他にも、テントの改造依頼が数件。それから、アダベルト様から連絡が取れないと、しつこく、しつこく問い合わせが」
うっわっ!そっちもすっかり忘れてた。通信の魔道具、無限鞄に入れっぱなしだ!
「サイカ。さっさと帰ってこ~い!!!」
「えっ?!まだ、帰らないよ。南国のフルーツ食べるんだもん!取り急ぎ、アダベルトには、連絡しておくし、馬車とテントは、半年後ってことで!」
「いいわけないでしょうが!迎えに行きますから、1月後にクレイガー王国のサバツの国境に来なさい!この問題児が!!!」
サバツか。結構南だな。1月で行けるかな?
「大丈夫です。所々で観光しても、たどり着けます」
私の考えていることが分かったのか、副ギルド長から念押しされた。
「それから、街に着くたびにギルドから連絡を入れろ」
「面倒なんだけど?」
「生存確認だ。どれだけ心配したと思ってるんだ。半年も連絡をよこさないとは思わなかったぞ」
ああ、うん。それは、私のミスだ。異世界旅行に浮かれた。ヴィーグがいるから全く危険もなくて、前の世界では忙しすぎて行けなかった旅行なだけに満喫しすぎた。
「分かった。時々連絡する」
「街ごとにだ。それから、アダベルト様には必ず通信しておけ。自分が悪かったのだからと必死に抑えておられるが、発狂寸前だ」
えっ?!発狂寸前って。まだ、半年だよ?半身怖い。
「同じように半身を持つ身としては、同情を禁じ得ません。生死不明で半年ですからね。連絡があれば、また違ったでしょうが」
それは、私が悪かったな。通信の魔道具を渡してるにもかかわらず、忘れてたんだから。
「すぐに連絡するよ」
こうして、私の自由気ままな旅は、1月後に幕を下ろすことが決まってしまった。
トホホホホ。
「蟹が美味しすぎる」
『市場であれだけ大量に仕入れたのだ。食べ放題ではないか?』
「採れたての生はやっぱり違うよ」
『そういうものか?』
無限鞄は、時が進まないから、採れたてと言えば採れたてなんだけど、気分が違う。
「ねえちゃん、いいこと言うねぇ。採れたてに勝るものはないよ!焼いてよし、茹でてよし、生でよし。ドーンと来いだ」
店の親父が威勢よく相づちを打ってきた。目の前で蟹の足をバリッと割る音が美味しそうに響く。
「生、最高だよねぇ。ここまで来た甲斐があった」
「どこから来たんだい?」
親父が蟹の足をバリバリ折りながら話しかけてきた。
「クレイガー王国のシーアーバンス」
「シーアーバンスってぇと、大分南だな。確か海もあったんじゃなかったか?」
「うん。蟹も捕れたけど、身はねぇ。スープの出汁にすると美味しいから、よく獲りには行ってた」
『蟹を捕っていたのは我だがな』
「そうかそうか。ここにいる間に、いっぱい食えよ!ほらよっ!いっちょ上がりだ。8番テーブルな」
冬も半ばを過ぎたこの時期は、蟹目当ての旅人が多いのかもしれない。周りのテーブルには、いろいろな蟹料理を頼む客でいっぱいだ。雪深くなってきたとはいえ、この街までなら、そり馬車で往き来出来る。蟹料理を心ゆくまで満喫し、お腹がいっぱいになった私は、チラチラと雪が降り始める中、宿へと戻った。この国に来て、既に半年ちかく経っている。徐々に北上してきたが、これ以上北には行けなそうだ。雪に閉ざされて、街から出られなくなってしまう。
『明日からは南に向けて旅立つのか?』
「うん!寒いのはもういいかな。南国のフルーツが食べたい」
『食べ物ばかりだな』
「旅の楽しみは、食だよ!美味しいものを食べたいじゃない。それに、珍しい薬草とか木の実とか暖かい絨毯も買ったでしょう。ヴィーグのラグだって、新調したじゃない」
『まあな。これは気持ちがよくていい』
意外なことにヴィーグは、ラグにこだわりがあったのだ。お気に入りが見つかってよかったね。まさか、10枚も買わされるとは思わなかったよ。
「南下しながらクレイガー王国を巡って、そろそろシーアーバンスに帰ろう」
『一度、シーアーバンスの魔法ギルドに連絡を入れてはどうだ?』
「ああ。全く依頼もしてないし、ギルドにも行ってないから、行方不明にされかねないね。仕方ない、明日、出発前にここの魔法ギルドから通信してみるか」
ギルド長も副ギルド長も元気だろうか?ナーサリーたちはどうしているかなぁ。思い出したら、気になってきた。
「おはようございます」
「おはようございます。本日はどのようなご用件でしょうか」
「シーアーバンスの魔法ギルドに通信をしたいのですが」
「ギルドカードの提示をお願いします」
カードを見せるとすんなりと通信の魔道具がある部屋へと通された。
「はい。こちら、シーアーバンス魔法ギルドです」
「サイカです。ん~と、その声はナーサリーかな?」
「サイカ?!ちょっとあなたどこにいるのよ!待って!今、ギルド長たちを呼ぶわ」
暫く待つと、ばたばたと音がして、すぐに賑やかになった。
「サイカか?!お前今どこにいる?!」
ナーサリーと同じ勢いでギルド長に問われた。通信機越しでよかったと思うほどの勢いだ。
「えっとタイサルド公国の」
「は?!タイサルド公国だと?そんなところにいたのか?!てっきり国内にいるもんだとばかり」
「たまたま国境を越えた先がタイサルド公国で、そのまま観光してる。今は、クイックルノーのギルド。この後は、南下して国内を回ってから、そっちに帰るのは半年後かな?」
「ハァ。観光ねぇ。いいご身分だな、おい。こっちは大変なことになっているのになあ」
そんなこと言われても・・・・。旅に出るって言ったし。そちらで何があったかは知らないけど、私のせいじゃない!
「サイカの改造した馬車に問い合わせが殺到しています」
あっ、それかぁ。まだ、固定魔法陣に登録してなかったねぇ。すっかり忘れてた。
「他にも、テントの改造依頼が数件。それから、アダベルト様から連絡が取れないと、しつこく、しつこく問い合わせが」
うっわっ!そっちもすっかり忘れてた。通信の魔道具、無限鞄に入れっぱなしだ!
「サイカ。さっさと帰ってこ~い!!!」
「えっ?!まだ、帰らないよ。南国のフルーツ食べるんだもん!取り急ぎ、アダベルトには、連絡しておくし、馬車とテントは、半年後ってことで!」
「いいわけないでしょうが!迎えに行きますから、1月後にクレイガー王国のサバツの国境に来なさい!この問題児が!!!」
サバツか。結構南だな。1月で行けるかな?
「大丈夫です。所々で観光しても、たどり着けます」
私の考えていることが分かったのか、副ギルド長から念押しされた。
「それから、街に着くたびにギルドから連絡を入れろ」
「面倒なんだけど?」
「生存確認だ。どれだけ心配したと思ってるんだ。半年も連絡をよこさないとは思わなかったぞ」
ああ、うん。それは、私のミスだ。異世界旅行に浮かれた。ヴィーグがいるから全く危険もなくて、前の世界では忙しすぎて行けなかった旅行なだけに満喫しすぎた。
「分かった。時々連絡する」
「街ごとにだ。それから、アダベルト様には必ず通信しておけ。自分が悪かったのだからと必死に抑えておられるが、発狂寸前だ」
えっ?!発狂寸前って。まだ、半年だよ?半身怖い。
「同じように半身を持つ身としては、同情を禁じ得ません。生死不明で半年ですからね。連絡があれば、また違ったでしょうが」
それは、私が悪かったな。通信の魔道具を渡してるにもかかわらず、忘れてたんだから。
「すぐに連絡するよ」
こうして、私の自由気ままな旅は、1月後に幕を下ろすことが決まってしまった。
トホホホホ。
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