巻き込まれて死亡?!神様、責任とってくださいね?

紅子

文字の大きさ
17 / 23

北の街で叱られて

しおりを挟む
私とヴィーグは、のんびりと街から街へと旅を満喫している。

「蟹が美味しすぎる」

『市場であれだけ大量に仕入れたのだ。食べ放題ではないか?』

「採れたての生はやっぱり違うよ」

『そういうものか?』

無限鞄は、時が進まないから、採れたてと言えば採れたてなんだけど、気分が違う。

「ねえちゃん、いいこと言うねぇ。採れたてに勝るものはないよ!焼いてよし、茹でてよし、生でよし。ドーンと来いだ」

店の親父が威勢よく相づちを打ってきた。目の前で蟹の足をバリッと割る音が美味しそうに響く。

「生、最高だよねぇ。ここまで来た甲斐があった」

「どこから来たんだい?」

親父が蟹の足をバリバリ折りながら話しかけてきた。

「クレイガー王国のシーアーバンス」

「シーアーバンスってぇと、大分南だな。確か海もあったんじゃなかったか?」

「うん。蟹も捕れたけど、身はねぇ。スープの出汁にすると美味しいから、よく獲りには行ってた」

『蟹を捕っていたのは我だがな』

「そうかそうか。ここにいる間に、いっぱい食えよ!ほらよっ!いっちょ上がりだ。8番テーブルな」

冬も半ばを過ぎたこの時期は、蟹目当ての旅人が多いのかもしれない。周りのテーブルには、いろいろな蟹料理を頼む客でいっぱいだ。雪深くなってきたとはいえ、この街までなら、そり馬車で往き来出来る。蟹料理を心ゆくまで満喫し、お腹がいっぱいになった私は、チラチラと雪が降り始める中、宿へと戻った。この国に来て、既に半年ちかく経っている。徐々に北上してきたが、これ以上北には行けなそうだ。雪に閉ざされて、街から出られなくなってしまう。

『明日からは南に向けて旅立つのか?』

「うん!寒いのはもういいかな。南国のフルーツが食べたい」

『食べ物ばかりだな』

「旅の楽しみは、食だよ!美味しいものを食べたいじゃない。それに、珍しい薬草とか木の実とか暖かい絨毯も買ったでしょう。ヴィーグのラグだって、新調したじゃない」

『まあな。これは気持ちがよくていい』

意外なことにヴィーグは、ラグにこだわりがあったのだ。お気に入りが見つかってよかったね。まさか、10枚も買わされるとは思わなかったよ。

「南下しながらクレイガー王国を巡って、そろそろシーアーバンスに帰ろう」

『一度、シーアーバンスの魔法ギルドに連絡を入れてはどうだ?』

「ああ。全く依頼もしてないし、ギルドにも行ってないから、行方不明にされかねないね。仕方ない、明日、出発前にここの魔法ギルドから通信してみるか」

ギルド長も副ギルド長も元気だろうか?ナーサリーたちはどうしているかなぁ。思い出したら、気になってきた。

「おはようございます」

「おはようございます。本日はどのようなご用件でしょうか」

「シーアーバンスの魔法ギルドに通信をしたいのですが」

「ギルドカードの提示をお願いします」

カードを見せるとすんなりと通信の魔道具がある部屋へと通された。

「はい。こちら、シーアーバンス魔法ギルドです」

「サイカです。ん~と、その声はナーサリーかな?」

「サイカ?!ちょっとあなたどこにいるのよ!待って!今、ギルド長たちを呼ぶわ」

暫く待つと、ばたばたと音がして、すぐに賑やかになった。

「サイカか?!お前今どこにいる?!」

ナーサリーと同じ勢いでギルド長に問われた。通信機越しでよかったと思うほどの勢いだ。

「えっとタイサルド公国の」

「は?!タイサルド公国だと?そんなところにいたのか?!てっきり国内にいるもんだとばかり」

「たまたま国境を越えた先がタイサルド公国で、そのまま観光してる。今は、クイックルノーのギルド。この後は、南下して国内を回ってから、そっちに帰るのは半年後かな?」

「ハァ。観光ねぇ。いいご身分だな、おい。こっちは大変なことになっているのになあ」

そんなこと言われても・・・・。旅に出るって言ったし。そちらで何があったかは知らないけど、私のせいじゃない!

「サイカの改造した馬車に問い合わせが殺到しています」

あっ、それかぁ。まだ、固定魔法陣に登録してなかったねぇ。すっかり忘れてた。

「他にも、テントの改造依頼が数件。それから、アダベルト様から連絡が取れないと、しつこく、しつこく問い合わせが」

うっわっ!そっちもすっかり忘れてた。通信の魔道具、無限鞄に入れっぱなしだ!

「サイカ。さっさと帰ってこ~い!!!」

「えっ?!まだ、帰らないよ。南国のフルーツ食べるんだもん!取り急ぎ、アダベルトには、連絡しておくし、馬車とテントは、半年後ってことで!」

「いいわけないでしょうが!迎えに行きますから、1月後にクレイガー王国のサバツの国境に来なさい!この問題児が!!!」

サバツか。結構南だな。1月で行けるかな?

「大丈夫です。所々で観光しても、たどり着けます」

私の考えていることが分かったのか、副ギルド長から念押しされた。

「それから、街に着くたびにギルドから連絡を入れろ」

「面倒なんだけど?」

「生存確認だ。どれだけ心配したと思ってるんだ。半年も連絡をよこさないとは思わなかったぞ」

ああ、うん。それは、私のミスだ。異世界旅行に浮かれた。ヴィーグがいるから全く危険もなくて、前の世界では忙しすぎて行けなかった旅行なだけに満喫しすぎた。

「分かった。時々連絡する」

「街ごとにだ。それから、アダベルト様には必ず通信しておけ。自分が悪かったのだからと必死に抑えておられるが、発狂寸前だ」

えっ?!発狂寸前って。まだ、半年だよ?半身怖い。

「同じように半身を持つ身としては、同情を禁じ得ません。生死不明で半年ですからね。連絡があれば、また違ったでしょうが」

それは、私が悪かったな。通信の魔道具を渡してるにもかかわらず、忘れてたんだから。

「すぐに連絡するよ」

こうして、私の自由気ままな旅は、1月後に幕を下ろすことが決まってしまった。

トホホホホ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されました。親友は第一王子に惚れられて、ぽっちゃりな私は聖女として精霊王とイケメン達に愛される!?〜聖女の座は親友に譲ります〜

あいみ
恋愛
ーーーグランロッド国に召喚されてしまった|心音《ことね》と|友愛《ゆあ》。 イケメン王子カイザーに見初められた友愛は王宮で贅沢三昧。 一方心音は、一人寂しく部屋に閉じ込められる!? 天と地ほどの差の扱い。無下にされ笑われ蔑まれた心音はなんと精霊王シェイドの加護を受けていると判明。 だがしかし。カイザーは美しく可憐な友愛こそが本物の聖女だと言い張る。 心音は聖女の座に興味はなくシェイドの力をフル活用して、異世界で始まるのはぐうたら生活。 ぽっちゃり女子×イケメン多数 悪女×クズ男 物語が今……始まる

無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いてほしい!!

カントリー
恋愛
懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。 でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。 大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きなぽっちゃりした女子高校生。 今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。 異世界先は獣人の世界ークモード王国。住民の殆どが美男美女で、おデブは都子だけ。 ダーク 「…美味そうだな…」ジュル… 都子「あっ…ありがとうございます!」 (えっ…作った料理の事だよね…) 元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが… これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。 ★いいね・応援いただけると嬉しいです。創作の励みになります。

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

千年に一度の美少女になったらしい

みな
恋愛
この世界の美的感覚は狂っていた... ✳︎完結した後も番外編を作れたら作っていきたい... ✳︎視点がころころ変わります...

好感度0になるまで終われません。

チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳) 子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。 愛され続けて4度目の転生。 そろそろ……愛されるのに疲れたのですが… 登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。 5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。 いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。 そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題… 自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。

"番様"認定された私の複雑な宮ライフについて。

airria
恋愛
勝手に召喚され 「お前が番候補?」と鼻で笑われ 神獣の前に一応引っ立てられたら 番認定されて 人化した神獣から溺愛されてるけど 全力で逃げ出したい私の話。 コメディ多めのゆるいストーリーです。

処理中です...