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この世界、比較的安全でしたよね?
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固定魔法陣の登録をしてから、1月後、無事に登録が完了した。魔法ギルドは大忙しらしい。ちょっと覗いてみたけど、人でごった返していた。今は近づきたくない。私は、漸くアダベルトから解放されて、家の中なら1人で過ごせるようになった。それまでのことは・・・・。離宮にいた頃よりはマシだったとだけ。
「やっぱり、任意の場所に転移できるようにしたい」
『それか。以前から言っておるな』
「うん。追跡不可は魔力遮断を加えることで成功したんだけどねぇ。せめて、行ったことのある場所に転移できればいいんだけど、なかなか難しくて」
『転移自体が難しいからな』
魔法陣に行き先を描き込めるものなら既にある。が、実用としては使えない。例えば、この家を行き先にしたとして、森からこの家に帰るのにそれは使えない。なぜなら、街の出入りは、魔力で記録されているからだ。出て行くだけの記録しかないのはおかしい。
「でも、いざとなった逃げられるようにどこか安全なところを指定しておきたいかなぁ」
いくら否定してもハルシュバーンの弟子だと言われるのだから、安全策は講じておきたい。第2のクライスターが現れないとも限らないのだから。
『なんだ、彼奴から逃げる算段か』
「違うから!もうあんな日々はごめんだし!あっ、そっか。逃げるだけなら、個人を特定しておけばその人のところに行けるか。ああ、でもそれだと・・・・。う~ん。今1番安全なのは、ルクセンバルグ王国のあの離宮なんだよねぇ。悔しいことに。いざという時のためだから、とりあえず、指定しておけばいいのか?」
『彼奴にも協力してもらえ。サイカに何かあれば、あれは怒り狂うぞ』
「だよねぇ。ルトが本気で暴れて、手に負えるのって、ルトの家族だけだよねぇ。ああ。でも、話を聞く限り、一緒になって暴れそうで嫌だ」
『否定は出来んな』
アダベルトは、家族みんなから可愛がられてるっぽいんだよね。じゃなかったら、王族のままこんなにあっさり国を出られるわけがない。そのアダベルトは、私の家の一室に住み、ギルドの依頼を受けている。
「ただいま」
噂をすれば、その本人が帰ってきた。
コンコンコン
「サイカ?いないのか?」
「いるよ。おかえり。リビングに行く」
「分かった」
トットットと階段を降りていく足音がした。「ハァ」と溜め息が出る。ダベルトは、私が1階にいないと必ず部屋を訪ねてくる。帰ってきて私がいると安心できるらしい。以前、離宮に帰っても私がいなかったことがトラウマになっているようで、アダベルトよりも帰宅が遅くなったときがあったのだが、半狂乱で帰った私にしがみついてきた。その日から5日間ほど離してもらえなかった。
「ギルドはどうだった?」
「相変わらずだな。魔法陣を描ける奴らはこぞってあの依頼を受けてるし、馬車の魔法陣も常設になってる」
新人でも描ける《ホカホカ》と《ヒエヒエ》の魔法陣は、ギルド員ならほぼ誰でも描ける。そういうふうにした。使い捨てな分、数が必要になるのだ。馬車の揺れを軽減する魔法陣は、中級くらいの腕がなければ恐らく発動は難しい。が、その分、依頼料も高い。常設ってことは、数が足りていないのだろう。あの馬車の揺れ加減なら、どの貴族も欲しがると思えば、今が書き入れ時だよね。
「じゃあ、馬車の魔法陣は私も納品しようかな」
「そう言えば、副ギルド長も“サイカは依頼を受けないのですか?!”って鬼気迫ってたな」
それほどか。
「そっか。じゃあ、明日行こうかな。近々、長期留守にするし」
「は?!どこに行くつもりだ?!!!俺も行く!」
いきなり、アダベルトが私の両肩をがっしりと掴んできた。
「ちょっと、落ち着いてよ。もちろんルトにも一緒に行ってもらうよ?」
一緒と聞いてストンと大人しく隣に腰掛けた。
「そうか。何処に行くんだ?」
「あのね、私、ハルシュバーンの弟子だと思われてるでしょ?ギルド長も言ってた通り、第2、第3のクライスターが現れないとも限らないじゃない?だから、避難先は必要だなぁって」
「確かに。何があるか分からないからな、サイカは」
アダベルトは私の話に神妙に聞き入って、何やら考えている。
「転移の魔法陣で任意の場所に転移できるのが1番なんだけど、これが難しくて。で、とりあえず、今ある魔法陣の行き先にルトの離宮を指定出来ないかなぁと。ダメ?」
「ダメじゃない。是非そうしてくれ」
「うん。よかった。じゃあ、近いうちにルクセンバルグ王国に行かないとね。離宮のどこかに魔法陣を仕込ませて?」
「そういうことなら、早いほうがいいな。明日、ギルドに行って、明後日出発しよう」
「ルトは大丈夫なの?」
「問題ない。サイカのテントがあれば野営も心配ないし、護衛も必要ない。俺の馬に一緒に乗っていけばいいから、馬車も必要ないだろう?」
馬車よりも馬の方が何かと小回りが利く。
「じゃ、その予定で。転移の魔法陣のことは、内緒にしてね?私の創作魔法陣だから」
「分かってる。俺も魔法陣の知識くらいはあるからな。転移の魔法陣を個人が扱えるとなると危険度が増すどころじゃなくなることくらい分かる。サイカも気付かれるようなことは慎んでくれよ?」
やっぱりか。以前、ヴィーグに転移の魔法陣を登録するのを止められたことがあったし、私の持つ魔法陣はヤバいものが多すぎるのは、自覚した。禁忌とされていた隷属の魔法陣の存在が、クライスターによって、権力者に知られてしまったからには、もっと対策を立てた方がいいのかもしれない。そして、アダベルトは否でも応でも私に巻き込まれる。
「ハァ。もっと気楽に人生楽しみたいんだけど」
おかしい。寿命を全うするためにこの世界に来たはずなのに、どんどん身の危険度が増してる気がする。比較的安全な世界じゃなかったのか?!
何がどうしてこうなった?!
人はそれを自業自得という。
「やっぱり、任意の場所に転移できるようにしたい」
『それか。以前から言っておるな』
「うん。追跡不可は魔力遮断を加えることで成功したんだけどねぇ。せめて、行ったことのある場所に転移できればいいんだけど、なかなか難しくて」
『転移自体が難しいからな』
魔法陣に行き先を描き込めるものなら既にある。が、実用としては使えない。例えば、この家を行き先にしたとして、森からこの家に帰るのにそれは使えない。なぜなら、街の出入りは、魔力で記録されているからだ。出て行くだけの記録しかないのはおかしい。
「でも、いざとなった逃げられるようにどこか安全なところを指定しておきたいかなぁ」
いくら否定してもハルシュバーンの弟子だと言われるのだから、安全策は講じておきたい。第2のクライスターが現れないとも限らないのだから。
『なんだ、彼奴から逃げる算段か』
「違うから!もうあんな日々はごめんだし!あっ、そっか。逃げるだけなら、個人を特定しておけばその人のところに行けるか。ああ、でもそれだと・・・・。う~ん。今1番安全なのは、ルクセンバルグ王国のあの離宮なんだよねぇ。悔しいことに。いざという時のためだから、とりあえず、指定しておけばいいのか?」
『彼奴にも協力してもらえ。サイカに何かあれば、あれは怒り狂うぞ』
「だよねぇ。ルトが本気で暴れて、手に負えるのって、ルトの家族だけだよねぇ。ああ。でも、話を聞く限り、一緒になって暴れそうで嫌だ」
『否定は出来んな』
アダベルトは、家族みんなから可愛がられてるっぽいんだよね。じゃなかったら、王族のままこんなにあっさり国を出られるわけがない。そのアダベルトは、私の家の一室に住み、ギルドの依頼を受けている。
「ただいま」
噂をすれば、その本人が帰ってきた。
コンコンコン
「サイカ?いないのか?」
「いるよ。おかえり。リビングに行く」
「分かった」
トットットと階段を降りていく足音がした。「ハァ」と溜め息が出る。ダベルトは、私が1階にいないと必ず部屋を訪ねてくる。帰ってきて私がいると安心できるらしい。以前、離宮に帰っても私がいなかったことがトラウマになっているようで、アダベルトよりも帰宅が遅くなったときがあったのだが、半狂乱で帰った私にしがみついてきた。その日から5日間ほど離してもらえなかった。
「ギルドはどうだった?」
「相変わらずだな。魔法陣を描ける奴らはこぞってあの依頼を受けてるし、馬車の魔法陣も常設になってる」
新人でも描ける《ホカホカ》と《ヒエヒエ》の魔法陣は、ギルド員ならほぼ誰でも描ける。そういうふうにした。使い捨てな分、数が必要になるのだ。馬車の揺れを軽減する魔法陣は、中級くらいの腕がなければ恐らく発動は難しい。が、その分、依頼料も高い。常設ってことは、数が足りていないのだろう。あの馬車の揺れ加減なら、どの貴族も欲しがると思えば、今が書き入れ時だよね。
「じゃあ、馬車の魔法陣は私も納品しようかな」
「そう言えば、副ギルド長も“サイカは依頼を受けないのですか?!”って鬼気迫ってたな」
それほどか。
「そっか。じゃあ、明日行こうかな。近々、長期留守にするし」
「は?!どこに行くつもりだ?!!!俺も行く!」
いきなり、アダベルトが私の両肩をがっしりと掴んできた。
「ちょっと、落ち着いてよ。もちろんルトにも一緒に行ってもらうよ?」
一緒と聞いてストンと大人しく隣に腰掛けた。
「そうか。何処に行くんだ?」
「あのね、私、ハルシュバーンの弟子だと思われてるでしょ?ギルド長も言ってた通り、第2、第3のクライスターが現れないとも限らないじゃない?だから、避難先は必要だなぁって」
「確かに。何があるか分からないからな、サイカは」
アダベルトは私の話に神妙に聞き入って、何やら考えている。
「転移の魔法陣で任意の場所に転移できるのが1番なんだけど、これが難しくて。で、とりあえず、今ある魔法陣の行き先にルトの離宮を指定出来ないかなぁと。ダメ?」
「ダメじゃない。是非そうしてくれ」
「うん。よかった。じゃあ、近いうちにルクセンバルグ王国に行かないとね。離宮のどこかに魔法陣を仕込ませて?」
「そういうことなら、早いほうがいいな。明日、ギルドに行って、明後日出発しよう」
「ルトは大丈夫なの?」
「問題ない。サイカのテントがあれば野営も心配ないし、護衛も必要ない。俺の馬に一緒に乗っていけばいいから、馬車も必要ないだろう?」
馬車よりも馬の方が何かと小回りが利く。
「じゃ、その予定で。転移の魔法陣のことは、内緒にしてね?私の創作魔法陣だから」
「分かってる。俺も魔法陣の知識くらいはあるからな。転移の魔法陣を個人が扱えるとなると危険度が増すどころじゃなくなることくらい分かる。サイカも気付かれるようなことは慎んでくれよ?」
やっぱりか。以前、ヴィーグに転移の魔法陣を登録するのを止められたことがあったし、私の持つ魔法陣はヤバいものが多すぎるのは、自覚した。禁忌とされていた隷属の魔法陣の存在が、クライスターによって、権力者に知られてしまったからには、もっと対策を立てた方がいいのかもしれない。そして、アダベルトは否でも応でも私に巻き込まれる。
「ハァ。もっと気楽に人生楽しみたいんだけど」
おかしい。寿命を全うするためにこの世界に来たはずなのに、どんどん身の危険度が増してる気がする。比較的安全な世界じゃなかったのか?!
何がどうしてこうなった?!
人はそれを自業自得という。
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