1 / 17
私は美少女?
しおりを挟む
麗らかな日差しが注ぐ晴れた日。豪奢な建物が建ち並ぶ通りの一角から「い、いやあああああぁぁぁぁ!!!!!」という悲痛な叫び声が木霊した。
私は、ベルティナ・シャンピーニ伯爵令嬢。たった今、鏡に映った自分を認識して前世を思い出した。周りから、可愛い可愛い!天使のようだ!と言われて育った私の容姿は、前世で言うところの子豚ちゃんだった。今までも鏡を見なかったわけではない。ただ、今日に限って、鏡に映る自分に違和感と疑問を持ってしまったのだ。「あれ?これ、私?・・・・可愛いか?」と。そこからは前世の記憶が奔流のように流れ込み、子豚の自分を認めて羞恥のあまり喉から声が迸った。その私の悲鳴に、誰かが慌てて飛び込んでくるのを視界に映しつつキャパオーバーで倒れてしまった。
倒れてから3日後に目を覚ました私は、不慮の事故で死んだ後、この世界に転生したことを思い出した。幸いにもベルティナとして生きてきた記憶もある。10歳のベルティナと34歳まで生きた私とでは、私の人格が勝ってしまった。仕方ないよね?少~し、我が儘だったベルティナがいい子になるくらいの変化だ。許して欲しい。
ベルティナの記憶によると、ここは魔力のある世界で守護精霊と契約すれば魔法が使える。ウヒヒヒヒ。契約の日が待ち遠しい。厨二と言われても、魔法が使えるなんて夢のようだ。ワクワクが止まらない。魔法のない世界の住人だったなら、憧れるよね?
それともうひとつ。魔法とは違って受け入れがたい事実がある。それは、前の世界とは美醜が逆転していること。何度、鏡を見ても違和感が拭えない。張りのあるまん丸な顔にくりっとしたつぶらな瞳。ぺちゃと潰れた鼻とほっぺのお肉に負けないムッチリとした唇。縫いぐるみのような凹凸のない楕円形の胴体に太く長いフランスパンの手足がアンバランスにくっついている。手の指はパンパンに膨らんでウィンナーのようだ。そんな10歳がフリフリのピンクのドレスを着ていると、ピンクブロンドの髪とか翡翠の目とかあり得ない色彩など気にならないくらい子豚ちゃんな自分に絶句する。これが、この世界の美の最高峰だ。つまり、私は超美少女と言うことになる。うへっ。
「ハァ」
どうせならスラッとした8等身が美人と言われる世界で美人に生まれたかった。そう思ってみても、既にこの世界に生まれてしまったのだから仕方ない。考えてみれば、私好みの醜男は競争率が低い。競争なんて無いに等しい。グフフフフ。
「・・・・・・・・」
とりあえず、身の周りには居なかった。ションボリへにょんだ。私基準の醜男もいないが、こちら基準の美男子もいない。フツメンばかりだ。我が伯爵家にいる騎士や下男も含めた全ての人間の中で、私の理想に最も近いのが父だったのには、四肢をついて項垂れるしかなかった。フツメンよりやや不細工寄り。10歳の貴族令嬢なんて家からなかなか出られない。故に出会いもない。折角、モテ期が来ると思ったのに・・・・。当てが外れた。魔法に楽しみを見出そうにも守護精霊の契約をしていないから、それも出来ない。なんてつまらない毎日でしょう。そう思っていたある日の晩餐で。
「ティナ。そろそろ、守護精霊の契約に行こうか」
やっと、やっと!!!この日を待ってた♪この世界では、10歳を過ぎると守護精霊を持つことが許される。神殿で1回は無料だから、みんな1体は持っている。多くても3体くらいだ。守護精霊を養うのにも魔力がいる。あまり多いと魔法行使に必要な魔力が足りなくなるのだ。
「そうね。そろそろ体調も安定してきたでしょうから、明後日にでも行きましょうか」
ちなみに、お父様は上級のノームと初級のコアウルフ、お母様は中級のフロールと中級のラビリールだ。ノームは土系の魔法を、コアウルフは回復系と火系の魔法を、フロールは花系の魔法を、ラビリールは風系の魔法をそれぞれ司っている。
私はどんな守護精霊が来てくれるかなぁ。楽しみだ♪
私は、ベルティナ・シャンピーニ伯爵令嬢。たった今、鏡に映った自分を認識して前世を思い出した。周りから、可愛い可愛い!天使のようだ!と言われて育った私の容姿は、前世で言うところの子豚ちゃんだった。今までも鏡を見なかったわけではない。ただ、今日に限って、鏡に映る自分に違和感と疑問を持ってしまったのだ。「あれ?これ、私?・・・・可愛いか?」と。そこからは前世の記憶が奔流のように流れ込み、子豚の自分を認めて羞恥のあまり喉から声が迸った。その私の悲鳴に、誰かが慌てて飛び込んでくるのを視界に映しつつキャパオーバーで倒れてしまった。
倒れてから3日後に目を覚ました私は、不慮の事故で死んだ後、この世界に転生したことを思い出した。幸いにもベルティナとして生きてきた記憶もある。10歳のベルティナと34歳まで生きた私とでは、私の人格が勝ってしまった。仕方ないよね?少~し、我が儘だったベルティナがいい子になるくらいの変化だ。許して欲しい。
ベルティナの記憶によると、ここは魔力のある世界で守護精霊と契約すれば魔法が使える。ウヒヒヒヒ。契約の日が待ち遠しい。厨二と言われても、魔法が使えるなんて夢のようだ。ワクワクが止まらない。魔法のない世界の住人だったなら、憧れるよね?
それともうひとつ。魔法とは違って受け入れがたい事実がある。それは、前の世界とは美醜が逆転していること。何度、鏡を見ても違和感が拭えない。張りのあるまん丸な顔にくりっとしたつぶらな瞳。ぺちゃと潰れた鼻とほっぺのお肉に負けないムッチリとした唇。縫いぐるみのような凹凸のない楕円形の胴体に太く長いフランスパンの手足がアンバランスにくっついている。手の指はパンパンに膨らんでウィンナーのようだ。そんな10歳がフリフリのピンクのドレスを着ていると、ピンクブロンドの髪とか翡翠の目とかあり得ない色彩など気にならないくらい子豚ちゃんな自分に絶句する。これが、この世界の美の最高峰だ。つまり、私は超美少女と言うことになる。うへっ。
「ハァ」
どうせならスラッとした8等身が美人と言われる世界で美人に生まれたかった。そう思ってみても、既にこの世界に生まれてしまったのだから仕方ない。考えてみれば、私好みの醜男は競争率が低い。競争なんて無いに等しい。グフフフフ。
「・・・・・・・・」
とりあえず、身の周りには居なかった。ションボリへにょんだ。私基準の醜男もいないが、こちら基準の美男子もいない。フツメンばかりだ。我が伯爵家にいる騎士や下男も含めた全ての人間の中で、私の理想に最も近いのが父だったのには、四肢をついて項垂れるしかなかった。フツメンよりやや不細工寄り。10歳の貴族令嬢なんて家からなかなか出られない。故に出会いもない。折角、モテ期が来ると思ったのに・・・・。当てが外れた。魔法に楽しみを見出そうにも守護精霊の契約をしていないから、それも出来ない。なんてつまらない毎日でしょう。そう思っていたある日の晩餐で。
「ティナ。そろそろ、守護精霊の契約に行こうか」
やっと、やっと!!!この日を待ってた♪この世界では、10歳を過ぎると守護精霊を持つことが許される。神殿で1回は無料だから、みんな1体は持っている。多くても3体くらいだ。守護精霊を養うのにも魔力がいる。あまり多いと魔法行使に必要な魔力が足りなくなるのだ。
「そうね。そろそろ体調も安定してきたでしょうから、明後日にでも行きましょうか」
ちなみに、お父様は上級のノームと初級のコアウルフ、お母様は中級のフロールと中級のラビリールだ。ノームは土系の魔法を、コアウルフは回復系と火系の魔法を、フロールは花系の魔法を、ラビリールは風系の魔法をそれぞれ司っている。
私はどんな守護精霊が来てくれるかなぁ。楽しみだ♪
70
あなたにおすすめの小説
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
【完結】恋につける薬は、なし
ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。
着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…
【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
「シェイド様、大好き!!」
「〜〜〜〜っっっ!!???」
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】
いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。
陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々
だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い
何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ
今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです!
文月
恋愛
私の理想の容姿は「人形の様な整った顔」。
クールビューティーっていうの? 華やかで目を引くタイプじゃなくて、ちょっと近寄りがたい感じの正統派美人。
皆の人気者でいつも人に囲まれて‥ってのじゃなくて、「高嶺の花だ‥」って遠巻きに憧れられる‥そういうのに憧れる。
そりゃね、モテたいって願望はあるよ? 自分の(密かな)願望にまで嘘は言いません。だけど、チヤホヤ持ち上げられて「あの子、天狗になってない? 」とか陰口叩かれるのはヤなんだよ。「そんなんやっかみだろ」っていやあ、それまでだよ? 自分がホントに天狗になってないんなら。‥そういうことじゃなくて、どうせなら「お高く留まってるのよね」「綺麗な人は一般人とは違う‥って思ってんじゃない? 」って風に‥やっかまれたい。
‥とこれは、密かな願望。
生まれ変わる度に自分の容姿に落胆していた『死んで、生まれ変わって‥前世の記憶が残る特殊なタイプの魂(限定10)』のハヅキは、次第に「ままならない転生」に見切りをつけて、「現実的に」「少しでも幸せになれる生き方を送る」に目標をシフトチェンジして頑張ってきた。本当の「密かな願望」に蓋をして‥。
そして、ラスト10回目。最後の転生。
生まれ落ちるハヅキの魂に神様は「今世は貴女の理想を叶えて上げる」と言った。歓喜して神様に祈りをささげたところで暗転。生まれ変わったハヅキは「前世の記憶が思い出される」3歳の誕生日に期待と祈りを込めて鏡を覗き込む。そこに映っていたのは‥
今まで散々見て来た、地味顔の自分だった。
は? 神様‥あんだけ期待させといて‥これはないんじゃない?!
落胆するハヅキは知らない。
この世界は、今までの世界と美醜の感覚が全然違う世界だということに‥
この世界で、ハヅキは「(この世界的に)理想的で、人形のように美しい」「絶世の美女」で「恐れ多くて容易に近づけない高嶺の花」の存在だということに‥。
神様が叶えたのは「ハヅキの理想の容姿」ではなく、「高嶺の花的存在になりたい」という願望だったのだ!
この話は、無自覚(この世界的に)美人・ハヅキが「最後の人生だし! 」ってぶっちゃけて(ハヅキ的に)理想の男性にアプローチしていくお話しです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる