不憫な貴方を幸せにします

紅子

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契約

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今日は守護精霊との契約の日。私は浮かれてる。前世も合わせた人生の中で一番浮かれてると言ってもいい。フリルいっぱいの痛いドレスも気にならない。

フフフフフ。誰がいいかなぁ。もふもふ?フェンリルとか定番じゃない?ペガサスとかユニコーンもいいなぁ。ドラゴンもかっこいいよね。空飛びたい。ふわふわした精霊種も捨てがたいし。夢は広がるよ、どこまでも。

「ティナ、着いたよ」

私はお父様とお母様に挟まれて、ニッコニコで神殿に入っていった。その時神殿に来ていた人たちの頬を染めた表情も、私を拝む人が数人でなくいたことも、全部ぜーんぶ、アウトオブ眼中だった。

「ようこそおいでくださいました、領主様。本日はご息女様の契約の儀で宜しかったでしょうか」

ここは、シャンピーニ伯爵領の神殿。私たちは大神官に促され、すぐに客間に通された。大神官は、ボテッとした身体に開いているのか分からない細い目が特徴的な比較的美男子ぶーちゃんよりのおじさんだった。

「ああ、世話になるよ。10歳になったし体調も落ち着いたからね。忙しくなる前にと思ってね」

お話はいいから早く契約をしてほしいなぁ。大人の話が長いのはどの世界でも共通らしい。私は伯爵令嬢としてみっともない態度にならないようおとなしく座って待つことしか出来ない。お母様がちょっと意外そうな顔で見ているのは、今までの私ならこんなに長く待たされたら、癇癪を起こしているから。長いといっても15分くらいなんだけどね?漸く大人の話が一段落して、私は儀式の間に通されることになった。ドキドキする。

「では、ご息女様。陣の中央に立って祈りを捧げてください」

「はい」

祈り。それは両手を組んでこの世界の神様に呼びかけ、感謝を捧げることだったりする。ついでにこんな守護精霊がほしいなぁと付け加えてみた。図々しい?黙って心の中でお願いする分には誰にも分からないもん。

もふもふがいいかなぁ。ドラゴンもいいなぁ。誰が守護精霊になってくれるかなぁ。楽しみだなぁ。

わくわくと祈りながら浮かれていると、陣からぶわっと風が巻き起こった。

『俺だ!もふもふを望んでるだろうが』

『いいや!ドラゴンと名指ししておるのだから、我が行く!』

『まだ言うか!』

言い合いをする2体の身体がぶつかり暴風が巻き起こった。火花が物理的に散る。何が起こっているのか、全く理解できない私はポカンとその様子を見守るしかない。ちなみに私には被害はない。

「これは!!!!」

大神官の大きな声が2体の暴走を止めた。素晴らしい声量だった。

『ん?』

『何事だ?』

「2体が一度に顕れるなど前代未聞。しかも最上級の守護精霊とは!!!ご息女様には、龍様のご加護がございますぞ!」

大興奮の大神官と状況を一瞥し冷静さを取り戻した2体の守護精霊。私はその2体に挟まれる形で陣にいる。

『どうやら、神界から出てしまったようだな』

『我は戻らんぞ』

『俺たちを喚べたのだから戻る必要もないだろう』

『それもそうだな』

『改めて、俺はフェンリル。名をつけろ』

『我はドラゴン。名を貰おうか』

2体。きちゃった。チート?チートなの?そういう設定?只今、混乱中。

「・・・・・・あの。よろしくお願いします?名前ね。えっと・・・・」

白いもふもふに覆われたフェンリルとプラチナに輝く鱗?を持つドラゴン。

「フェンとゴン」

『『却下だ』』

ですよね。

「ザクロ、ライム。若しくは、鈴木、佐藤。あるいは、リン、シュガー。どれがいい?」

ザクロとライムというは2体の瞳の色から。透き通るような赤と瑞々しい緑が印象的だ。ほかは、まあ、呼びやすくて忘れなさそうだから?

『ザクロにきまってる』

『ライムだな。いいだろう』

『『契約成立だ』』

こうして私は、一度に2体の守護精霊を手に入れて、大騒ぎの神殿をあとにした。
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