山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子

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子にゃんこ、同僚に会う

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私の頭の上では、小難しい話しがされている。全く興味のない私は、お腹が満たされた満足感でうつらうつらと頭が揺れる。その時、ちらっと団長の手を引っ掻いたことが頭をよぎった。まあ、あの後ご飯を食べさせてもらったし、今も寝床を提供してもらっているし、治しておくか、と気軽に魔法を発動した。これが、この後、ちょっとした騒ぎの元になるとは全く考えず、呑気に眠りこけたのだが、私は悪くない。なんなら、私は魔女だから。


翌日は、聴こえてくる喧騒に起こされた。うるさいなぁと思いながらも、ご飯をねだる為に団長の肩によじ登った。

「んなぁ~」
お腹減った。

「お、起きたか。そら、お前の分だ。食え」

スープにパンが浮かんだ器をコトリと地面に置いて、私をその前に降ろしてくれた。

「な~♪」
ありがとう♪ 

お礼の為に団長を見上げると・・・・。

あれ?なんか違う?
への字の口、高いけど整った鼻、三白眼の鋭い目に・・・・。
あ!右目にあった魔物の爪痕がないんだ!どうしたんだろう?あれ、かなり古い傷だったと思うけど?
ま、いいか。
今日のご飯も美味し~い♪

「なー」
終ったぁ。

そのひと鳴きで、団長は器を片付けてくれた。私を大きな掌に乗せて、なでなでしつつ、クリーンの魔法をかけてくれたようだ。口の中も毛並みも綺麗になった。ふかふかのもふもふだ。

「しかし、不思議ですねぇ。誰も団長の右目は治せなかったのに。視力も戻ったんでしょ?この子ネコの仕業だったりして?」

「バカなことを。まあ、幸運の子ネコかもしれんがな♪近くに魔女がいたのかもしれん。たまたまその魔女の魔法に反応したんだろう、きっと」

「そんなんで治るなら、あやかりたい人はたくさんいますよ。その魔女と団長の相性が良かったとしか言えませんね。だいたい、魔女なんて気まぐれですから、お金を積んでも治してもらえるか・・・・」

「だから、幸運だったと言うんだよ」

ん?魔女の仕業?
それ、私だよね?
昨日の治癒魔法が強すぎたってことか。
気を付けよう。

「確かに。で、どうするんです?」

「何が?」

「本当に辞めるんですか?眼も治ったんだし、辞める理由もないでしょ?」

「そうだなぁ。だが、それだけが理由でもないしなぁ。まあ、フィーも田舎の方が過ごしやすいだろう」

私?うん。都会より森の中の方が落ち着くよ~。
この人、本当に私を飼うつもりなんだね。
行く宛もないし、暫くは飼われるのも悪くないかな?何と言ってもご飯が出る!


それから、私達はもう一泊の野営を経て、王宮の騎士団の詰め所まで戻ってきた。団長ポケットで寝ていた私は、知らない間ここにいる。何処か?それは・・・・。

「ご苦労だったな。今回の演習はどうだった?」

「恙無く」

「そうか。・・・・騎士団長とファビアーノを残して下がれ」

ファビアーノ!!!

団長のポケットの中でのほほんとぬくぬくしていた私は、その名前に戦慄した。だって、だって、それは・・・・!!!

「ぶーみゃーーーー!!!」
アーノーーー!!!

「びみゃーーー!!!」
薄情者ーーー!!!

一気に団長のポケットから飛び出して、ファビアーノに駆け寄りその怒りをぶつけるべく、ローブに爪を立て・・・・。

「おや、これはこれは」

だが、それよりも速く首根っこを掴まれて、ぷらーんと持ち上げられてしまった。

「んぎゃ!な、ななーお!!」
やめろー!おろせー!!

手足を動かしたくても力が入らない。どうやら、子ネコにとってそこは急所のようなものらしい。されるがままだ。

「言葉も話せなくなっていましたか。難儀ですねぇ。・・・・。これで話せるでしょう?」

「はなせー!」

「お行儀が悪いですね。えい」

「なーーー!!!」
何すぅぅ!!!

「礼儀のなっていない子にはお仕置きですよ?」

「んなぁ」
酷い・・・・。

「ちゃんと師匠の言いつけ通り、魔の森から出してあげたでしょう?」

「だからって!!!・・喋れた。森の中に置いていかないで!山賊に捕まったと思ったんだから!」

「山賊・・・・」

団長がボソッと呟いたがそれどころではない。

「寝こけている貴女が悪いんですよ?それにちゃんと拾ってもらえるところに置いてあげたでしょう?ぬくぬくの寝床も見つけたようですし。クスクスクス」

私は、ファビアーノを睨んでみたが、子ネコの姿じゃ可愛いだけだろう。ムカつく。

「ちょっと、元に戻してよ」

「いくら可愛い妹弟子のお願いでも無理ですね。師匠渾身の術ですから。それに、ちゃんと解けるようになってますし。ねぇ?」

「ウグゥ・・・・」

さすがにお見通しか。

「ゴホン。ファビアーノ、どう言うことだ?説明してくれ」

視界に入らないから忘れてた。王様と団長、いたね。ここは、王様の執務室だもんね。

「・・・・。フィーは、子ネコではなかったのか・・・・。俺は、山賊と思われてたんだな」

あっ、団長がしょんぼりしてる。
ごめんね?子ネコの皮を被った魔女なの。

「えへ。魔女なのぉ。アーノは、私の兄弟子」

「魔女・・・・。なら、俺の眼を治したのは・・・・」

「あ、それね。手の引っ掻き傷を治すつもりが魔法が強すぎたみたい。テヘ」

「もう、やらかしてましたか。しかし、フィーとは?貴方がつけたんですか?よく名前がわかりましたね?」

「いや、名前は知らない。何となく、フィーな感じがしただけだ」

野生だったか。

「ぶっは。失礼。フィリアは魔女と言っても、まだ修行中でして。人の中で修行するのを厭って師匠にこの姿で放り出されたんですよ。我々魔女にとっては必須の修行ですから」

魔女が人に紛れ込むなんて、トラブルのもとじゃないか。

「なんで人に混じるのが嫌なんだ?」

「・・・・」

プイ。

「クスクスクス。相変わらずですね。ということで、団長。はい」

はい?
なんで団長に渡すの?
アーノのところに居ればよくない?

「え?」

団長も掌にぽんと乗せられて困惑している。

「あなたが拾ったんですから術が解けるまで、面倒見てくださいね?子ネコの姿だと何かと不便ですから、いい子でお世話になるんですよ?」

「アーノのところでいいよ!」

「それでは修行にならないでしょう?それから、私と陛下と団長以外とは喋れませんからね?術が解けるまで、しっかり修行するんですよ?団長も甘やかさないように修行させてください。でなければいつまでも子ネコのままですから。私としては、それでも構いませんけど。なんと言っても、子ネコのフィリアは可愛いですから♪」

「分かった。責任をもって預かろう」

これ、無意識なんだろうなぁ。掌に乗ってからずっとなでなでもふもふされてる。

修行中子ネコの間は人の為か自分の生命の危機にしか魔法は使えませんから、充分気をつけて。さて、本題に入りましょうか」

結局、最初の予定通り団長のところで飼われることになり、人の中で修行することになってしまった。
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