山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子

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《閑話》ある子にゃんこの1日

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私は、フィリア。子にゃんこになって1月がたった。最初はなかなか慣れなくて、飛び乗ろうとして届かなかったり、爪だけ引っ掻けてバタバタしたり、飛び降りようとして距離感を間違え顔から突っ込んだりしていたけど、今ではお手のもの。なかなかにゃんこらしくなった、エヘン。さあ、お散歩お散歩♪




「フィー、いい加減に起きろ?」

「眠い~・・・・」

「朝飯がなくなるぞ?」

「!起きる!」

子にゃんこの朝は遅い。ザムは既に朝の自主訓練を終えて着替えも済んでいる・・・・らしい。当然それを見たことはないけど、まず、身体を解すために柔軟や体操を30分程した後、王都の近くにあるちょっとした山までランニング。往復で2時間はかからないと言っていたけど、嘘だ。普通なら4時間はかかる。戻ってくると素振りを500回に決まった型を流す程度にこなすと言うが、ぜんたいで4時間位だそうだ。私が起こされるのは8時半くらいだから・・・・。もう人間じゃないよね。その自主訓練には近衛の団長や各隊の隊長もいるという。脳筋は集団が好きらしい。

いつも通り、ザムの呆れ顔を尻目にクリーンをかけ、朝の支度をする。呆れ顔をするのは私の方だと思う。

「お待たせ。さあ、ご飯♪」

ザムの掌から肩に移動して、ご機嫌で食堂に連れていってもらう。ここの食堂のご飯は美味しい。朝は選べないけど、パン、卵料理、ハムやベーコンなどの肉料理、サラダ、スープ、フレッシュジュース、ヨーグルトと品数豊富な上、おかわり自由だ。飲み物も数種類用意されている。魔女に戻った後も時々忍び込もうかと真剣に検討中だ。それに最近、わたし専用の食器を用意してくれてとても食べやすくなった。

ご飯の後は、ザムのお仕事の手伝いだ。お昼までの間、ザムは騎士団にある執務室で書類を片付ける。ランツも一緒にしているのだが、これが・・・・。ビックリするほど効率が悪かった。見かねた私は、ザムに指示を出し、なるべく効率的に書類を並べるところからさせた。初めは、「そんなことするくらいなら、1枚でも片付けた方がいい」と言っていたザムも、書類を整理した後の方が進みが早いと気付き、今ではランツにそれをさせている。そして、もうひとつ。書類自体も変えさせた。なんの事はない。バラバラだった書式をなるべくチェックするだけでいいように統一しただけだ。騎士団はいいけど、兵士階級になると文字を書くことがないからミミズの這ったようななんとも個性的な文字が多くて読めない。そこまでしても、座っていることが苦手なザムだから今も効率がいいとは言えないけど・・・・。

そして、やっとお昼!

お昼のメニューは、2つ。日替わりのAセットとBセット。ひとつはお肉満載のボリュームたっぷりセットでもうひとつはパスタやサンドイッチなどの少し軽めのセット。両方も可。当然ながら両方だ。


「ねぇ。ザムはなんで女の人とお付き合いしないの?」

こんなに優しいのに誰も見初めないのはなんで?そりゃ、顔はね。山賊だし、人を殺しそうな笑顔だけど。あ、それがダメなのか・・・・。でも、見慣れると不憫可愛いと思うんだけどなぁ。

「・・・・。近づくだけで悲鳴をあげられる」

そんなにか!ちょっとお話ししてみれば、いい人だって分かると思うんだけど。

「・・・・」

「落としたハンカチを拾って声をかけた。振り返ったその女性は、『殺さないでぇ』と言いながら気絶した」

・・・・なんて、不憫な。

「それ以来、決して自分からは近づかないようにしている。それに、俺が声をかけるより、部下が声をかける方が喜ばれるし、結婚率もあがる」

・・・・なんて、不憫な。

「若い騎士は王宮でも人気だからねぇ。お近づきになりたい女性は多いみたい。ザムのことは私が看取ってあげるよ。私は魔女だからね。どんなに長生きでも大丈夫だよ」

「ああ。頼むよ」

ザムは、恐らく破顔したんだと思う。それはそれは、凶悪な顔だった。視線が合っただけで死にそうだ。周りの人たちが一斉に席を立ち、去って行くくらいだから、今後も女性は無理だろう。不憫すぎて可愛い奴だ。


お昼を食べると私は散歩に出る。お城の庭は広い。人に捕まりたくない私はひたすら植え込みの隙間を縫うように歩いて、日当たりのよい木陰を探す。お昼寝の時間だからだ。最近のお気に入りは、食堂からお城を挟んで反対側にあるハーブがたくさん植えられたところにある大きな木の上。そこなら余程のことがない限り誰の目にも止まらない。ゆっくりと寛げるのだ。おやつの時間前まで休む。そして、起きた後は、おやつをくれる人を探しに繰り出すのだ。まず、王様を探す。大抵は執務室にいる。愚痴が多いから面倒なときは行かない。時々王妃様のところにも寄る。後宮の庭にいることが多い。パパのところにも行く。意外や意外。パパはわたし専用の器まで用意して待っていてくれるから、足繁く通っている。パパは、私が食べるのを見ながらお仕事をしているから、心置きなく食べて、パパの膝で暫し休憩するととても機嫌がいい。この部屋で仕事をしている人たちにも歓迎される。

適当にお暇して、夕方まで腹ごなしの散歩に出る。これもまた植え込みの隙間だ。これが言い情報収集になるのだ。何度か悪巧みを聞いたりもした。すぐにザムに報告しちゃうから大抵潰される。魔女にもなると名前はすぐに分かるからね♪

そして、夕方まで遊んで食堂の一角を陣取って寛いでいると仕事を終えたザムがご飯をくれるのだ。


子ネコなら人もそんなに怖くない。
なんて、怠惰な子ネコ生活。
ビバ!子ネコ!
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