山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子

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子にゃんこ、追い詰められる

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私が戻ると、3体いたキメラは1体になっていた。押し寄せてきた魔獣もほんんどいない。大きな黒い煤はキメラの残骸だろう。

「こっちはあの1体です。油断しないように。あれは厄介ですよ」

「魔法に耐性がある」

「え!魔女の魔法でも?」

「全く効かない訳じゃないが、思ったほど効いてない」

「分かった」

「カイザー、フィリアをお願いしますね?」

「了解!フィリア、ここに入っておけ」

私は素直にカイザーのポケットに入った。顔だけだして、キメラを観察する。カイザーとアーノは魔法を練り上げて次々とキメラに打ち込んでいくが、ここまで魔法の効き目が悪いのもなかなか居ない。

あー、そうか。そう言うことか。

効きが悪いんじゃない。表に出てきていない同化した魔獣が内側から涌き出てるんだ。一体どれだけの魔獣を取り込んでいるのか?違和感の正体はこれだったようだ。

切っても切っても金太郎・・・・

「カイザー。これ、魔法が効いてないんじゃないよ。表面のが死ぬと次がすぐに浮上してるんだよ!」

「なんだと!どうすればいい?」

「分かんない!アーノ、どうしよう?」

「知るか!!!一気に内側まで叩くしかないでしょう!」

「出来るの?」

「「・・・・」」

いや、私も出来る気はしないけどね?

「ひょわ!」

ちょっと油断した隙にカイザーのポケットから放り出されてしまった。日頃の子ネコ訓練の成果で華麗に着地したのはいいけど、カイザーは手が離せない。

ちっ!
仕方ない。転移で戻るか。

「おう!派手に飛ばされたな」

「華麗な着地だったでしょ?」

「子ネコが板についてきたんじゃないですか?」

「そりゃね?半年以上、子ネコやってるんだから、お手のものよ」

こうして、軽口を叩いている間も攻撃の手は緩めていない。でも、どんだけ~!魔獣を取り込んでんだ!

「これさ、中から壊した方が早くない?ちょっと子ネコをあの中に放り込んでよ」

「ああ。その手がありましたね」

え?私の冗談通じなかった?

驚いた私を見て笑っているから、アーノの冗談なんだろう。それとも本当に“いい手”があるのかな?まあ、どんな手でも子ネコを放り込むんじゃなきゃ何でもいい。

「どんな手だ?」

「フィリア、あの魔獣中心を貫通する魔法を放てますか?小さくていい」

「出来るよ」

「では、私とカイザーはフィリアが貫通させた後、間髪入れずに出来る限り中心から全力で凍らせます。上手くいけば、内側から氷って壊れるはずです」

「分かった!」

「了解!」

本当にちゃんとした作戦があった。効くかどうかはやってみるしかない。

「行っくよー!それ!!!」

ウォーターショットの威力を最大限まであげて中心に小さな穴を開けた。開いたと思ったときには私の放った水ごとキメラが凍りついていた。一瞬だった。

「よっし!とりあえず、ここは完了」

「さあ、こいつらを創った魔力の源を突き止めますよ!」

「このまま、マルセーの王宮の地下に飛ぶか?」

「いえ、一度、師匠の元に行きましょう」

「そうだな。アルテ姉の方も気になるな」

私たちは、師匠を標にインリア辺境伯の砦に飛んだ。そこで私たちが見たものは・・・・。


ぐったりとしたザムを握る巨大な黒い悪魔。
その悪魔の肩には、可憐な若い女性がいた。
師匠とアリーは、その悪魔と対峙しているけど、ザムを傷つけずに攻撃するのが難しいのか、決定的な一撃を放てずイライラとしている。周辺には、ぐったりと動かない騎士たちが転がっていた。

「びにゃー!!!」
ザム!!!

私はザムに駆け寄ろうとカイザーのポケットを飛び出した。

「・・・・フィー・・・・ク・ルナ・・ニゲ・ロ・」

私の声に反応したザムから微かに声が聴こえた。

生きてる!
すぐに助けなきゃ!
ザムがザムが・・・・!!!

私はザムのもとに駆けながら、辺りに転がる騎士たちに広範囲の回復魔法を放った。ザムは自分だけ助かっても絶対に後で自分を責めるだろうから、助けられるなら助ける!

攻めあぐねている師匠を追い越し、目立たない子ネコの小ささを活かして、悪魔の背後へと急ぐ。

「アルテ姉、アリー。あの肩にいる女は何だ?!」

「分からないよ」

「一緒に現れたのだから、あれが契約者じゃないの?」

じゃあ、あの女を殺ればいいってこと?

「!!!あれは!」

アーノからは死角になっていたようで、少し移動しその少女を視界に入れたアーノは驚きの表情をしている。

「ファビアーノ、知り合い?」

「ええ。嫌なことによく知っている人物ですよ」

「誰なの?」

「私の片翼の姉だった人です」

魔女にはその片翼となる相手がいる。どうやって見つけるのかは見習い魔女の私にはまだ分からないけど、アーノの片翼は私がここに存在する前にいた人だ。

「それって、300年くらい前のことよね?なぜ生きてるの?」

「ですから“だった”と言ったでしょう?あれは、魔女になりたがっていましたから、何らかの方法で延命したのでしょうね」

「凄い執念ね。あなたの片翼はそろそろ来てくれそう?」

「そうですねぇ。もういつ来てもおかしくはないですよ」

「フフ。楽しみね?」

「ええ。ですから、その前にあの女には退場願いましょう。私の片翼とはとても相性が悪い」

女がアーノに気づいたようだ。

「あら、懐かしい顔があるわね?」

「ぐあぁぁぁ!・・・・」

「にゃーあ!」
ザム!

「あら嫌だわ。大嫌いな顔を見たから思わず力が入っちゃった。この男、魔女の匂いがプンプンするから捕まえてみたんだけど、違ったのね。つまらないわ。あら、でもあの妹と同じなのかしら?」

私のせいだ。

私がザムに渡した魔道具が原因だ。無くならないようにと指に固定したのが裏目に出た。怪我の回復はしているけど、やられれば痛いし、体力や血液は戻らない。

何とかしなきゃ。
何とかしなきゃ。
何とかしなきゃ。

私は、焦りと自己嫌悪と悔しさとザムが居なくなる不安といろんな感情がごちゃごちゃになり、魔力を制御できなくなるくらいには追い詰められていた。
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