山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子

文字の大きさ
16 / 22

子にゃんこ、危機迫る

しおりを挟む
騎士たちが撤退して行く中、ザムはその場から動かない。

「ザム!何してるの!危ないでしょ!ジェイ!走れ!」

ジェイに跨がったまま、キメラを視線から外さないザムにアーノの掌から声をかける。

「フィーを置いていけるわけないだろう?」

いや、置いていって構わない。
アーノもいるし、カイザーもすぐに来る。
それに、その、目があったら襲われそうな顔で、こてんと首を傾げられても逃げ出したくなるだけだ。こんな時なのにアーノは爆笑していて使い物にならない。

「フィリアは?フィリアは何処だ?!!!」

ビックリした!
咄嗟にアーノの掌から地面にジャンプした。潰されそうだからだ。

いきなり転移してきたカイザーは、爆笑中のアーノをみとめるとすぐさま掴みかかり、私の所在を問い詰めている。どうやらアーノを目印に飛んできたらしい。カイザーは何故か私が大好きだ。

「いや、今それどころじゃないよね?」

ついさっきまで大笑いしていた人がいう台詞じゃない。

「カイザー、ここだよ。久しぶりだね♪」

「え?フィリア?ここって?え?子ネコ?」

「うん。師匠に修行が終わるまで子ネコにされちゃったの」

どうやら、聞いていなかったようだ。とっても戸惑っている。

「フィリア~。可哀想に。不便だろ?なんで直ぐに俺のところに来なかったんだ?!」

私をそっと掬い上げると、ぎゅうぎゅうと抱き締めてきた。

絞まる、絞まる!!!
子ネコにそれはダメ!

「それじゃ、修行にならないよね?」

放して!死ぬ!死ぬ!!!アーノ!助けて~!!!

「誰だか知らんが、フィーが死にそうだぞ?!!!」

私が必死にもがいているのに気づいたザムとジェイが慌ててカイザーの腕から私を無理矢理引き剥がし救出してくれた。ふたりはちょっとボロッとなったけど、怪我もないから大丈夫。

ゼェゼェゼェ・・・・。

「ぬあ!お前こそ誰だよ!フィリアは渡さん!」

「もう!それどころじゃないよね?今!アリーはどうしたの?!」

「アリーは、アルテ姉のところに行かせた」

ちっ!ストッパーが居ないじゃないか!

「で、そいつは誰だ?お兄ちゃんは許さないよ」

ザムの掌にいる私とザムを交互に見ながら怖い顔で腰に腕を当てている。

何をだ?!
カイザーはお兄ちゃんだったのか・・・・。

「今の私の飼い主。子ネコだからね。ザムのところにいれば、美味しいご飯があるの♪」

「チッ・・・・。餌付けされたか」

そんなコントのような会話をしていた私たちに、騎士団のみんなが撤退していった方角から悲鳴のような声とザムとアーノを呼ぶ声が聞こえた。

「団長!ファビアーノ様!こちらにも2体同じようなものが出現しました!!!」

これにより私たちの間にあった軽快な雰囲気は散霧した。あちらは、怪我人も出たようだ。すぐに彼らの元へとザムを連れて飛んだ。4部隊の半数が怪我を負い、犠牲になった馬がキメラに食べられている。私は上級の回復魔法を広域にかけ、結界を張った。これで、欠損していたとしても元に戻ったはずだ。

しかし、3体のキメラに囲まれてしまった。1体でも厄介な相手だ。それに、3体ものキメラを創り出す魔力は何処から調達したのか?

カイザーもアーノも忌々しげな顔でキメラを見ていた。

「ファビアーノ、どうする?応援を呼ぶか?」

「いや、いらないでしょう。こっちの2体は初めのに比べると弱い。ただ、どうやって3体ものキメラを創り出したのか?やはり、フィリアの推測が正しかったのかもしれませんよ?」

「ああ、あれか?暗黒門を見つけないと埒があかないってことだな?だが、ここにはないぜ?」

「では、本拠地ですね。師匠に伝えます。それから、騎士団は邪魔ですから辺境伯の砦に送りましょう」

のんびりと話しているのは、私の結界の中だからだ。キメラたちは結界を壊そうとずっと攻撃を仕掛けている。

「ザム、騎士のみんなを真ん中に集めてくれる?ここにいても危ないから今から砦に転移するよ」

「分かった」

騎士たちが真ん中に集まってきている中、カイザーが外に出た。キメラだけでなく魔獣も集まり始めているが、カイザーにしたら魔獣など埃と同じだ。

「そうだ!ザム、これ持っていって」

私は創り貯めておいた魔道具をザムに渡す。

「これは?」

「私が創り貯めておいた魔道具。戦況によっては必要になると思って創ったの。1度だけしか使えないけど人でも使えるようにしてあるから」

私は、50個ある魔道具の機能を説明し、それぞれを最適な人に貸すようにと伝えた。壊れることはまずないし、自動回収できるから紛失することもない。

「有り難く使わせてもらう」

「うん。あと、これはザムのね。小指に嵌めてみて?」

「俺の?貸してくれるのか?」

ザムに渡したそれは、剣を持つのを邪魔しない左手の小指に収まった。

「違うよ!お菓子とご飯のお返しだよ。えっとね、回復機能と状態異常の解除を付与しておいたの!」

「!!!それは、貰いすぎだ!」

慌てて外そうとしているけど、無理だ。あれは嵌めてしまえば外れないようになっている。盗難防止だ。

「外れないよ?これからもご飯よろしくね!」

ザムは困った顔をしながらも頷き、「ありがとう」と受け取ってくれた。ただ、その顔はどう見ても強請りを楽しむ山賊だったけど。

「フィリア、転移してください。座標は、師匠です」

「OK」

魔力を込め、一斉に転移させた。そして、師匠を見つけたことで、目的地に着いたことを確信した私は、アーノたちのところへととんぼ返りした。

「じゃあザム、後でね!」

「待て、フィー・・・・」

この時、私は何事もなくザムと会えると疑うことなく、その場を後にしたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

【完結】余命半年の元聖女ですが、最期くらい騎士団長に恋をしてもいいですか?

金森しのぶ
恋愛
神の声を聞く奇跡を失い、命の灯が消えかけた元・聖女エルフィア。 余命半年の宣告を受け、静かに神殿を去った彼女が望んだのは、誰にも知られず、人のために最後の時間を使うこと――。 しかし運命は、彼女を再び戦場へと導く。 かつて命を賭して彼女を守った騎士団長、レオン・アルヴァースとの再会。 偽名で身を隠しながら、彼のそばで治療師見習いとして働く日々。 笑顔と優しさ、そして少しずつ重なる想い。 だけど彼女には、もう未来がない。 「これは、人生で最初で最後の恋でした。――でもそれは、永遠になりました。」 静かな余生を願った元聖女と、彼女を愛した騎士団長が紡ぐ、切なくて、温かくて、泣ける恋物語。 余命×再会×片恋から始まる、ほっこりじんわり異世界ラブストーリー。

『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』

星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】 経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。 なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。 「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」 階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。 全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに! 「頬が赤い。必要だ」 「君を、大事にしたい」 真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。 さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!? これは健康管理?それとも恋愛? ――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。

氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!

屋月 トム伽
恋愛
ディティーリア国の末王女のフィリ―ネは、社交なども出させてもらえず、王宮の離れで軟禁同様にひっそりと育っていた。そして、18歳になると大国フェンヴィルム国の陛下に嫁ぐことになった。 どこにいても変わらない。それどころかやっと外に出られるのだと思い、フェンヴィルム国の陛下フェリクスのもとへと行くと、彼はフィリ―ネを「よく来てくれた」と迎え入れてくれた。 そんなフィリ―ネに、フェリクスは毎日一緒にお茶をして欲しいと頼んでくる。 そんなある日フェリクスの幻獣フェンリルに出会う。話相手のいないフィリ―ネはフェンリルと話がしたくて「心を通わせたい」とフェンリルに願う。 望んだとおりフェンリルと言葉が通じるようになったが、フェンリルの幻獣士フェリクスにまで異変が起きてしまい……お互いの心の声が聞こえるようになってしまった。 心の声が聞こえるのは、フェンリル様だけで十分なのですが! ※あらすじは時々書き直します!

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました

さら
恋愛
 王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。  ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。  「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?  畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。

【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~

白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。 国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。 幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。 いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。 これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。

処理中です...