番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ

紅子

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あれ、逃れられます?

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生誕祭の夜会以来、私の噂は大きな尾ひれがつき、私の評判は日に日に悪化している。さすがの王家もこの噂を放置するのはよくないと火消しに動いてくれているが、鎮まる気配はない。

夜会に、それも国王陛下の生誕祭に婚約者ではない女性をエスコートするなど、普通ならあり得ない。まあ、遅刻すること事態あり得ないが。それに、体調不良を理由に夜会を早々に辞去した婚約者に会うこともなく、領地へ帰っていくなど、本物の番かどうか疑うなというほうが無理だ。

「レイア・・・・」

「大丈夫ですわよ?お兄様」

実際、私はこの噂に少しだけほっとしていた。今までと同じだという妙な安心感からなのだが。今度はどんな最後を迎えるのだろう?家に迷惑がかからないような終わり方がいい。この噂も誰かが故意に流しているものだろう。王家が躍起になって消そうとしているのに未だに燃え盛っているのが良い証拠だ。私が夜会から遠ざかっている間も噂は新たな囁きを伴って広がっていった。

『本物の番はローズマリー様なのでは?』

『おふたりの邪魔をするつもりなのよ』

『領地で仲睦まじくしていると聞きましたわ』

『グラハム公爵家の別荘でご一緒にお暮らしになっているとか』

ローズマリー・・・・いつも私とウィリアム殿下の間に入り込もうとする令嬢。ウィリアム殿下をお慕いしている令嬢。どの死に戻りにも彼女は公爵家の令嬢として存在する。おそらく、私を死に致らしめる元凶。今度はどんな手を使ってくるのか?私は神経を研ぎ澄ませながら、彼女の動向を用心深く見守った。



「レイア!ウィリアム殿下から手紙が届いたよ!」

ある日、王宮から戻ったお兄様が珍しく興奮しながら私の部屋に駆け込んできた。ほぼ2年振りとなる手紙は、どうやら我が家ではなく王宮に届けられたようだ。

「ありがとうございます、お兄様」

冷静にその手紙を受け取った私にお兄様は少し興奮が収まったらしく、早く読めとばかりに視線で催促された。私は苦笑しながら手紙を開く。そこには・・・・。

「お兄様。どうぞお読みになって」

怪訝な顔で受け取りそれにさっと目を走らせたお兄様の顔は見る見るうちに険しくなり、読み終わるとくしゃりと手紙を握り潰した。

「馬鹿にするのも大概にしろ!!!」

お兄様を激昂させるには充分な内容だった。


翌日、私は両親に連れられて、王宮のそれも国王夫妻の私的な場所へ踏みいった。王子妃教育を受けていた時ですら訪れたことはない。そこには、国王夫妻の他に第1王子殿下と護衛騎士のクラウス、お兄様が私たちを待っていた。

「よく来たな。楽にしてかまわん。此度は極私的なものだからな」

「はい。では失礼致します」

国王夫妻と第1王子殿下に挨拶をしたお父様は、陛下の薦めに従って、ソファーに腰を下ろした。お母様もそれに倣ったのを確認して私も同じように腰かける。

「ウィリアムから儂宛に手紙が届いた。クリスレイア嬢宛のものも同封されておった故、そなたの兄君に渡しておいたが・・・・」

まさか!いくら家族とはいえ陛下宛のものに同封するなどあり得ない。私は驚きすぎて、顔を取り繕うことが出来なかった。

「ハァ。クリスレイア嬢の気持ちはよくわかるぞ。儂もいささか呆れておる」

陛下は苦々しい顔を隠しもせず、イライラと指で椅子の肘掛けをトントンと叩いている。

「レイア宛の手紙の内容は朝、ローランドから聞いた。何を考えてるんだか!」

第1王子殿下は苛立ちをそのまま声にのせてきた。

「わたくしとしましては、ウィリアム殿下のご希望に添うつもりでおります」

こんなチャンスきっと2度とない。これで解放されるかもしれない。

「!レイア!本当にそれでいいの?」

「クリスレイア嬢。それは、番でないと認めるということか?」

「恐れながら、認めるも何もわたくしは初めから肯定したことはございません、陛下」

番などという呪いを受け入れるわけがない。

「確かに。初めて会ったときも悲鳴をあげて倒れたな。それ以降もウィリアムから“番だ”と聞かされただけで、レイアから聞いたことはないな」

「だが、ウィリアムの手紙はおかしくはないか?『あなたを番とは認めていない。よって、婚約を見直すべきだろう』ただそれだけしか書かれておらん。番だと認めていないも何も、やつ自ら番だと認定したのだぞ?」

「そうなんだよな。レイア宛の手紙も全く同じ内容だったんだろ?」

「はい。ですが、ウィリアム殿下のお蹟によるものでございました。封蝋もウィリアム殿下のものに間違いございません」

婚約解消出来なそうな流れに私は焦った。

「宜しいですかな?私はこの婚約はなかったものとしていただきたく存じます」

「お父様・・・・」

「理由を申せ」

「はい。まず、この2年近く、ウィリアム殿下から贈り物はもとより手紙の1通もクリスレイアには届いておりません。また、過日の生誕祭でもエスコートがないばかりか、その連絡もなく、遅れた上に別のご令嬢を伴ってくるという無礼。更に、体調不良を理由に夜会を早々に退出したにも関わらず、お見舞いも言伝てもなく、翌日、かの令嬢と共に領地に帰ったとか。これ以上、我が娘に肩身の狭い思いをさせたくないと思うのは親の心情でございます。番うんぬんの前に婚約者として認めたくはございません」

お父様・・・・。

「発言をお許しください」

「許す」

「我が妹は、ウィリアム殿下に番であることを理由に、長年友人との交流を制限されてきました。それを今更、番とは認めないなど勝手極まりない所業でございます。その文章が多少おかしくとも、ウィリアム殿下の直筆に間違いはないのですから、殿下はそのようにお考えになったのでしょう。グラハム公爵のご令嬢と懇意にしておられるようですし、これ以上我が妹を悲しませたくはございません」

お兄様・・・・。

嬉しさから涙が溢れてしまった。お母様が私をそっと抱き締めてくれる。

「そうだな。この婚約は白紙としよう。婚約した事実はなかった」

陛下の決断に私たちは一斉に陛下に対して頭を垂れた。
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