番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ

紅子

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振り出しに戻りました?

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王城から帰宅した私は、自室に戻るとどっと疲れが押し寄せてきた。

「疲れたわ。少しひとりにして」

私の婚約が白紙に戻ったことで、王宮から来ていた侍女たちは私たちと入れ違いに王宮に戻って行った。初めて、この死に戻りで初めて、婚約者という立場から離れることができた。私は、ソファーに深く座り、今までと違う未来に思いを馳せる。あと3月で18歳だ。私は生き延びることができるだろうか?



コンコンコン

「レイア?クラウスが来てるんだけど、会える?」

・・・・。

「お嬢様。失礼致します。・・・・。まあ、眠っておいでだわ。坊ちゃま。どういたしましょう?」

「疲れてたんだね。そっとしておこう」

「そういた「ん」おや、起きられましたか」

「サリー。わたくし、眠ってしまったのね」

「お嬢様、クラウス様がお嬢様にお会いしたいとお見えになっておりますよ」

「まあ!クラウスが。行くわ。あら、お兄様」

扉の外、廊下にお兄様がいるのに気付いた。声をかけると部屋に入って、私の顔色を見ている。

「レイア、気分は?」

「大丈夫よ」

「クラウスが待っているから、身仕度を整えておいで?」

お兄様の言葉で、ドレスがシワになっていることに気がついた。ソファーで横になっていたからだろう。サリーに頼んで身仕度を整えると、クラウスのいる客間へと通された。クラウスが客間にいるなんて珍しい。いつもならお兄様の部屋か居間にいるのに。不思議に思いながら部屋に足を踏み入れた。



「お待たせいたしました。ようこそ、クラウス」

「レイ・・・・あの、その・・・・」

私の姿を見るとクラウスはおろおろとし始めた。なぜ?

「クラウス。落ち着きましょう?まずは、座ってお茶でもいかが?」

私とクラウスにお茶を淹れたサリーはそそくさと部屋から出ていった。

「え?サリー」

それだけでなく、いつもなら控えているはずの侍女たちの姿も見当たらない。扉は少し開いた状態で、近くに人の気配はするから完全にクラウスとふたりきりではないようだ。

「レイ」

決意を込めたようなクラウスの声が私の意識をクラウスに向けさせた。私の座るすぐそばにクラウスはいて、私の手を包み込んだ。

「レイ。君が婚約を白紙撤回された日に不謹慎だとは分かってる。でも、もう後悔はしたくない。・・・・俺と一緒に生きてくれないか?俺はレイを愛している」

・・・・。頭が真っ白になった。

「レイ?」

「・・・・」

「ごめん。急すぎるよな。返事はレイの心が決まったときでいい。待つよ」

クラウスの手が私から離れていく。私は咄嗟にクラウスの袖口を掴んでいた。無意識だった。

「あ。・・・・えっと・・・・」

クラウスの袖から手が離せない。どうしよう・・・・。あわあわとして考えがまとまらず、何を言っていいのか分からない。そんな私をクラウスはひょいっと膝に乗せた。

「レイは俺のこと嫌いじゃないよな?」

「うん。クラウスといるのは、安心する」

こてんとクラウスの胸に頭を預けた。

「そっか」

「・・・・クラウスは・・・・」

何が言いたいのかよく分からない。でも・・・・。

「クラウスとなら、良い人生を送れる気がする。だから・・・・」

クラウスの首に腕を回してちっちゃい声で「よろしくお願いします」と囁いた。クラウスも同じように私を抱え込むように抱き締めて「幸せにする」と囁き返してくれた。今回は私、幸せになれそうです。



それから半年、私はクラウスと結婚した。私を大切にしてくれるクラウスのそばで本当に幸せだった。

「クラウス、お帰りなさい」

「ただいま、レイ」

クラウスが出掛けるときと帰ってきたときに私たちは口づけを交わす。結婚してからの私たちのルールだ。

「あのね、今日は嬉しい報告があるの」

「ん?レイがそんなに嬉いこと?」

「うん!あのね・・・・フフフ」


ドンドンドンドン

騒たましいノックに話を中断された。

「クリス!いるのは分かってるんだよ!出ておいで!」

この声は・・・・ウィリアム殿下だ。今更、何の用があるというのか?クラウスも顔を顰めている。

「レイはここにいて?」

クラウスは私を居間に残して玄関に向かった。扉を少し開けて二人の様子を窺う。

「どなたですか?」

「第3王子のウィリアムだ。クリスに会わせろ!」

クラウスは扉を開けたようだ。話し声がより鮮明になった。

「クリスは何処だ?」

「レイに何の用でしょうか?」

「連れて帰る。クリスは僕の番だ!」

ビックリした。あれから8月は経っている。今更、何を言っているのか?

「レイは俺の妻です。渡すつもりはない。何より手放したのはあなただ」

「僕はあんな手紙をクリスに出した覚えはない!父上にもだ。なのに勝手に婚約を白紙とか結婚してるとか!僕がクリスのためにどれだけ頑張ったと思ってるんだ!!!どけ。王子である僕に逆らうのか?」

「・・・・」

クラウスの声は聞こえてこない。

「そうか。なら仕方ないな」

私はそっと扉から玄関を覗いた。目に入ってきたのは・・・・。剣を振りかぶるウィリアム殿下とそれを見据えるクラウスだった。ダメダメダメ!考える間もなく私は走りだした。そしてクラウスとウィリアム殿下の間に飛び込むと、クラウスに抱きついてその刃を我が身に受ける。クラウスの驚いた顔が目に映った。クラウスなら、あれくらいはいなせたのかもしれない。でも、身体が勝手に動いていた。

「ウクッ」

熱い。切りつけられた背中が熱くてたまらない。

「レイ!!!なんで!しっかりしろ!レイ!!!」

「・・・・クリス?!・・う、あ、ああああああああああああ・・・・」

私はクラウスに抱き締められながら意識を手放した。






「ハッ!」

目が覚めるとベッドの上だった。切りつけられた背中は痛くない。手を見ると小さくふくふくになっていた。私はまた、死に戻ったのだ。涙が溢れてくる。

クラウス・・・・。
私たちの赤ちゃん・・・・。


「レイ!!!」

悲しみで涙が止まらない私が、今回の死に戻りで一番初めに会ったのは、サリーではなくクラウスだった。
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