ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子

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戻ってこれました

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セアベルテナータ殿下によって、私とミリーナ様は術にかかってしまいました。ブローバードとの戦闘の後で疲れて警戒心が薄れていたことは確かです。でも、まさか、避難していないなんて思わないじゃないですか!殿下はかなり強い術を使ったらしく、なかなか解呪の方法が掴めません。精神に働きかけ、術をかけた術者に従いたくなる魔術。必死に過去の記憶も掘り起こしながら、術の特定に全神経を集中させます。それが出来るのもレオナルド様の魔力が私を包み、魔力を体内に流してくれているからです。でなければ、私はすぐにでもセアベルテナータ殿下のもとに行こうとするでしょう。ミリーナ様もランスロット様が守っているはずです。手遅れになる前になんとしても解呪方法を見つけなければ!

漸く術を特定し、解呪方法を解明したときには私の精神は限界ギリギリでした。ですから、何の躊躇いもなく解呪方法をレオナルド様に伝えたのですが・・・・。正気に戻ってあれほど恥ずかしい思いをすることになるとは・・・・。私のファーストキスが・・・・。忘れたい。忘れてほしい、切実に。



「ロッテ。お帰り」

レオナルド様のその言葉を聞いて、本当に戻ってこれたんだと実感しました。ミリーナ様は私が目覚めた翌日のお昼前に無事、戻ってきました。ふたりとも後遺症はありません。ミリーナ様も解呪方法は分かっていたようで、落ち着きを取り戻してから暫くはランスロット様を見ると赤くなっていました。お互いに忘れてしまいましょう?ね?

「レオ、野外実習やブローバードやセアベルテナータ殿下はどうなったのでしょう?それにここはどこなのですか?」

「それはわたくしも知りたいですわ」

私たちは、術にかかっていた間のことをレオナルド様たちに尋ねました。

「ロッテたちが術にかかったのは、野外実習の最終日なのは覚えてる?」

「ええ」

「帰ろうとしたところで、ブローバードに出くわしたんですわよね。倒したところまでは覚えていますわ」

「その後で、セアベルテナータ殿下たちが現れて、術をかけられたのも覚えていますわ」

「それからすぐに学園に帰ってきた。ここは恐らく他国の要人などが使う学園の建物だ」

「えっ?!そんなところを使って大丈夫なのですか?」

「ナンザルト先生が連れてきたんだ。大丈夫だろ?」

ランスロット様は事も無げに言いますが、他国の要人といえば、国王とか国王とか国王とか。皇帝もいますね、この世界。

「あれから、7日くらい経ってると思うよ。私もだんだんと時間の感覚が麻痺して、どれくらい経ったか定かじゃないんだ。ここには誰も来ないように手配されてたからね」

私はそんなに時間が経っていることにビックリしてしまいました。私の感覚では、2日くらいだったからです。

「ミリーもロッテもお腹すいたんじゃないか?何か頼もうぜ。それから、ナンザルト先生にも連絡しないとな」

今、私たちは居間で話をしていますが、私たちの意識がない間、レオナルド様とランスロット様はほとんどの時間を寝室で過ごしていたそうです。ですから、レオナルド様は、ナンザルト先生と連絡を取るために外へと繋がる扉を開けた瞬間、お兄様やランスロット様のお姉様に詰め寄られるとは思ってもいなかったようです。

「ロッテは?ロッテは無事なのか?!」

「ミリーは?ランスは?どうなったの?」

「ちょ、ちょっと落ち着いて。大丈夫だから。解呪できたから、ナンザルト先生を呼んできてよ。それから、ロッテとミリーに何か消化のいいものを頼める?」

「分かったわ」「分かった」

ふたりは私たちが無事だと聞くとさっと動いてくれました。

「部屋の前に誰かいるなんて全く気づかなかったよ。ハァ。いくらロッテに気をとられてたとはいえ、不覚だった」

いえ、魔力不足なのも原因だと思います。ずっと私に魔力を流し続けていたのですから、慢性の魔力不足でしょう。



チリンチリン

どうやら、ナンザルト先生が来たようです。

「ロッテェ~!!!」

部屋に入ってきた人たちを確認する間もなく、ナンザルト先生を押し退けたお兄様が私を抱え込みました。

死ぬ!死ぬ!

せっかく解呪出来たのにお兄様に抱き潰されそうです。意識が朦朧としてきました。慌ててお兄様の背中をポコっと叩きました。1回が限界で、腕に力が入りません。

「うわあ!アレク!ロッテが死ぬから!」

お兄様が加減せずに抱き絞めているとは思っていなかったレオナルド様が必死にお兄様から私をベリッと剥がしてくれました。レオナルド様に凭れて息を整えます。

「ああ。ロッテ、ロッテ」

「おに、お兄様。落ち着いてください。ちょっと窒息しそうだっただけですから」

「窒息しそうなら、もっと抵抗しろよ!」

ごもっともです、ランスロット様。でも、私をこれほど心配してくれたお兄様を突き放すなんて出来ません。

「ごめんねぇ、ロッテ。安心したら、加減を忘れた」

「ご心配をおかけしました、お兄様」

私はオロオロとするお兄様にぎゅっと抱きつきました。お兄様はホッとしたように今度はやさしくふんわりと私のことを抱き締め返してくれます。うん。解呪出来てよかった。

「ダメだ、この兄妹」

「ふたりは放っておいて、座ろうか。ふたりの食事は、厨房に消化のいいものを頼んでおいた。レオナルドとランスロットの分は今日の分が届くはずだ」

「ナンザルト先生、ありがとうございます。・・アレクもロッテも落ち着いた?」

「はい」

「落ち着かないよ。さあ、ロッテ。お兄様と座ろうね?」

え?膝の上に座らせようとしています?

「お兄様。ひとりで座れます」

「私の心の平安のために、ね?」

うっ・・・・。それを言われると。心配をかけた自覚があるだけに、ダメとは言えません。その一瞬の躊躇で私はお兄様の膝の上に居ました。

「「「「「ハァ」」」」」

「シャルロット。もうそのままでいいから、今回のことを詳しく教えてくれ」

ナンザルト先生は私とお兄様のこの体制についてはどうでもいいと判断したようです。私はまだ、若干の反論をしたい気持ちはありましたが、誰も気に留めていないこの状況では言い出せず、仕方なくそのまま今回の術について説明を始めました。
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