18 / 49
暗い浴室
しおりを挟む
先に身体を洗って、浴槽に入った。
全身が温かなお湯に包まれて、ホッと安心した。
いつもアパートに付いている今にも壊れそうな樽風呂で入っていた。
足をこんなに伸ばした事はなかったな。
ボーッと天井を見つめながら考える。
大浴場の外にはアルフリードがいる。
こんなに近くにいるなんて昨日は考えてもいなかった。
「有流くん…俺はずっと…ずっと…有流くんの事が…」
本人には絶対に言えない言葉、今なら言える。
これで最後にする、恋を終わりにするから…今だけは想いを口にしたかった。
髪から滴る水がポチャンと音を立てて落ちる。
ふと、影が目の前に広がっていき前を見た。
綺麗な真っ白だった壁は真っ黒に変わり、透き通っていたお湯は真っ黒な泥のようになっていた。
明らかな異変に早く起きようと思ったら、足首を誰かが掴む感触がした。
その瞬間、お湯の中に引きずり込むように引っ張られた。
息が出来なくてもがくが、ドロドロしたお湯は俺が上がるのを許してはくれない。
苦しい、痛い…誰か助けて…
身体が沈んでいく、俺をどんどん奈落の底に引きずっているようだ。
もう手しか出てはいないが、それももうすぐ引きずられて見えなくなる。
真っ暗の中、俺をジッと見つめる瞳が見えた。
冷たく突き刺さるような無機質の瞳は俺に敵意と殺意を向けていた。
足首を掴む手は、ゆっくりと足を開かされた。
なんだ、くすぐったいけど何をしているのかさっぱり分からない。
俺の手は誰かに握られて引っ張られた。
水面から顔を出して、身体が楽になる。
「カインス大丈夫か!?」
「…あ、アルフリード様」
俺の腕を掴んでいるアルフリードは慌てた様子だった。
有流くんのこの顔、初めて見た。
お湯を見ると、元の透き通ったお湯に戻っていた。
あれは何だったんだろう…それにあの目は誰だったんだ。
すぐにアルフリードに手を離されて、事情を聞かれた。
アルフリードは何者かの気配を感じて様子を見にきたそうだ。
俺は分かる限りの事を伝えた。
詳しくは突然で俺にもよく分からない。
「目と黒い泥…」
「俺、もう出ます」
「それがいい」
ゆっくりくつろぐ気にはなれず、アルフリードは俺に背を向けて浴室から出て行った。
男同士だし、そんなに気にしなくていいと思ったが、痣だらけの身体を見たらそうなるかと納得した。
脱衣所で服を来て、アルフリードと一緒に部屋に向かった。
大浴場を調べるために俺を送ってから、部屋を出て行った。
ソファーに座って布で拭いて髪を乾かしていると、足首に視線を向けた。
アルフリードにはこれ以上心配掛けないように言ったが、俺の足首にはくっきりと手の跡が残っていた。
魔物?でもアルフリードがいる兵舎の中に魔物が入れるとは思えない。
もしかして幽霊なのかもしれない。
自分で考えて背筋が冷たくなり、布を畳んでサイドテーブルに置いてベッドに潜り込んだ。
風が叩く音でもビクッと反応して目蓋を硬く閉じた。
幽霊なんているわけない、いそうな下層部に住んで今まで見た事がないんだからいない。
そう思っても、さっき見たと思ってしまったらそれはいる事になる。
実際に見たら、今まで信じていなかった事が崩れていった。
考えて考えて、考え疲れていつの間にか眠っていた。
全身が温かなお湯に包まれて、ホッと安心した。
いつもアパートに付いている今にも壊れそうな樽風呂で入っていた。
足をこんなに伸ばした事はなかったな。
ボーッと天井を見つめながら考える。
大浴場の外にはアルフリードがいる。
こんなに近くにいるなんて昨日は考えてもいなかった。
「有流くん…俺はずっと…ずっと…有流くんの事が…」
本人には絶対に言えない言葉、今なら言える。
これで最後にする、恋を終わりにするから…今だけは想いを口にしたかった。
髪から滴る水がポチャンと音を立てて落ちる。
ふと、影が目の前に広がっていき前を見た。
綺麗な真っ白だった壁は真っ黒に変わり、透き通っていたお湯は真っ黒な泥のようになっていた。
明らかな異変に早く起きようと思ったら、足首を誰かが掴む感触がした。
その瞬間、お湯の中に引きずり込むように引っ張られた。
息が出来なくてもがくが、ドロドロしたお湯は俺が上がるのを許してはくれない。
苦しい、痛い…誰か助けて…
身体が沈んでいく、俺をどんどん奈落の底に引きずっているようだ。
もう手しか出てはいないが、それももうすぐ引きずられて見えなくなる。
真っ暗の中、俺をジッと見つめる瞳が見えた。
冷たく突き刺さるような無機質の瞳は俺に敵意と殺意を向けていた。
足首を掴む手は、ゆっくりと足を開かされた。
なんだ、くすぐったいけど何をしているのかさっぱり分からない。
俺の手は誰かに握られて引っ張られた。
水面から顔を出して、身体が楽になる。
「カインス大丈夫か!?」
「…あ、アルフリード様」
俺の腕を掴んでいるアルフリードは慌てた様子だった。
有流くんのこの顔、初めて見た。
お湯を見ると、元の透き通ったお湯に戻っていた。
あれは何だったんだろう…それにあの目は誰だったんだ。
すぐにアルフリードに手を離されて、事情を聞かれた。
アルフリードは何者かの気配を感じて様子を見にきたそうだ。
俺は分かる限りの事を伝えた。
詳しくは突然で俺にもよく分からない。
「目と黒い泥…」
「俺、もう出ます」
「それがいい」
ゆっくりくつろぐ気にはなれず、アルフリードは俺に背を向けて浴室から出て行った。
男同士だし、そんなに気にしなくていいと思ったが、痣だらけの身体を見たらそうなるかと納得した。
脱衣所で服を来て、アルフリードと一緒に部屋に向かった。
大浴場を調べるために俺を送ってから、部屋を出て行った。
ソファーに座って布で拭いて髪を乾かしていると、足首に視線を向けた。
アルフリードにはこれ以上心配掛けないように言ったが、俺の足首にはくっきりと手の跡が残っていた。
魔物?でもアルフリードがいる兵舎の中に魔物が入れるとは思えない。
もしかして幽霊なのかもしれない。
自分で考えて背筋が冷たくなり、布を畳んでサイドテーブルに置いてベッドに潜り込んだ。
風が叩く音でもビクッと反応して目蓋を硬く閉じた。
幽霊なんているわけない、いそうな下層部に住んで今まで見た事がないんだからいない。
そう思っても、さっき見たと思ってしまったらそれはいる事になる。
実際に見たら、今まで信じていなかった事が崩れていった。
考えて考えて、考え疲れていつの間にか眠っていた。
91
あなたにおすすめの小説
悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る
桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
【書籍化決定】カメラ越しのシリウス イケメン俳優と俺が運命なんてありえない!
野原 耳子
BL
★執着溺愛系イケメン俳優α×平凡なカメラマンΩ
平凡なオメガである保(たもつ)は、ある日テレビで見たイケメン俳優が自分の『運命』だと気付くが、
どうせ結ばれない恋だと思って、速攻で諦めることにする。
数年後、テレビカメラマンとなった保は、生放送番組で運命である藍人(あいと)と初めて出会う。
きっと自分の存在に気付くことはないだろうと思っていたのに、
生放送中、藍人はカメラ越しに保を見据えて、こう言い放つ。
「やっと見つけた。もう絶対に逃がさない」
それから藍人は、混乱する保を囲い込もうと色々と動き始めて――
★リブレ様にて紙書籍・電子書籍化が決定しました!
応援してくださった皆様のおかげです! 本当にありがとうございます!
発売日などの詳細は、決まり次第、作者のXや近況ボードなどでご報告させていただきますのでお待ちいただければ幸いです。
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる