転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫

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・アルフリード視点3・

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姿は似ていても、中身が違ったらそれはもう別人だ。
もしかしたら、会いた過ぎて幻覚を見ているのかもしれない。

彼は優斗ではない、優斗はこの世界にいない。

そう思っても、どうしても部屋に居るのが優斗にしか見えない。

俺を見る瞳も口にする言葉も、考え事をしている時目蓋を閉じる仕草も優斗と重なる。

突然俺を「有流くん」と呼んでも違和感がない。
実際に言われたら、別人なのに心がざわつく。
彼が俺の本当の名前を知らないから呼ぶわけがない。

でも、放っておけない。

生まれ変わっても、優斗以外に手料理を食べさせた事はない。
彼は優斗ではないけど、別の料理を用意するのは面倒だから一緒に食事をした。
優斗と一緒にいるみたいだからか、普段なら人と一緒に食事をするのは抵抗があったが今は平気だ。

雰囲気だけでも優斗と一緒に居られた気がした。
代わりにしているようで、申し訳ない気持ちだ。

代わりにするつもりはない、俺は優斗しか愛さない。

彼の名前はカインス、当然優斗という名前ではない。

何を期待しているのか、優斗の面影を感じる不思議な少年という事には変わりない。

今はカインスが風呂に入って、俺は扉の外で終わるのを待っていた。

吹っ切れたつもりだったのに、俺は…俺だけは優斗をずっと想っている。

今、優斗は何処で何を思っているんだろう。
誤解とはいえ、優斗に前世の記憶が残っているなら俺が振ったと思い込んでいる。

誤解を解く事はもうない、別の世界で生きているんだ。
俺ではない別の人間に恋愛感情を向けて、俺の知らない顔を向けるのだろうか。

身体の奥底から湧き上がってくるものは魔力だ。
こんなところで力が溢れてくるなんて、最悪だ。

周りに誰もいない事を確認して、小さく息を吐く。

「俺の優斗なのに、なんで他人に奪われなきゃいけない…優斗…優斗」

名前を口にすると、もっと会いたい気持ちになる。
そして、誰にも渡したくないという独占欲が強くなる。

今、死ねば優斗の世界に行けるのだろうか。
もし、行けるとしたらこの命惜しくはない。

力を込めて氷の刃を作るが、ここで死ぬのはさすがに人が多すぎる。
どうでもいい人間でも、トラウマを植え付けるわけにはいかない。

余計に力が悪化してきた、このままだと身体から溢れそうだ。
この身体の熱はどうしようかと考えていた。

その時、大浴場からなにかの気配を感じて視線を後ろにある扉に向けた。
魔物に近い気配は、結界が強い兵舎にいるはずがない。
今までも目撃情報はなかったのに、何故今気配が出てきたんだ?

今までと違うから魔物が引き寄せられた、まさかカインスか?

浴室に入ると、もがいて暴れる腕が見えて掴んだ。
引っ張り上げると、カインスが出てきて咳き込んでいた。

背中を撫でると、やっと落ち着いた様子で俺の方を見つめていた。
その瞬間、俺の中のなにかが暴れて外に出ようとしていた。

本能が、カインスを求めている…優斗じゃないのに心がざわつく。

気付かれないようにカインスになにがあったか聞いた。
事情を聞かないといけない、魔物の気配がない今なにが起きているのか俺には分からない。

カインスが見たのは真っ黒な水とカインスを見つめる目だけだった。

姿が見えない魔物か、未熟な魔物ならカタチが出来ていないのかもしれない。

カインスを先に部屋に送ってから、大浴場に戻ってきた。

身体の中の魔力を落ち着かせるために、魔物がここにいるなら力を使えばいい。

小さく息を吸って、吐いて…隠れている魔物を引っ張り出す。

浴室を隙間なく包み込むようにして、氷で覆った。

気配はまだない、でももうすぐ現れる…強い結界の中から外には出れない。

氷にヒビが入り、その瞬間浴室を覆っていた氷が砕け散った。

なにかがこちらに向かってくる影が見えて、魔力を剣に変えてすぐに金属音が響いた。

重力を失い床に落ちて転がる銃弾と、目の前で銃を構える男。
風がない室内で、金色の髪が静かに揺れていた。

魔物とは思えない黒い眼帯の男が俺を睨みつけていた。

「魔物…?」

「……」

答えないが、唯一殺気だけは分かる…明らかな敵意。

今の俺は魔力の制御が出来ない、加減は難しいな。
剣に魔力を込めると水を纏い、振り下ろした。

水の柱が出現して男に向かって波のように倒れる。

男を飲み込み、水を貫いて銃弾が飛んできた。

剣で弾き飛ばして、剣を振り下ろして斬撃を与えた。

衝撃波で壁が崩れて、真っ暗な外の景色が見えた。
水に濡れた床と瓦礫だけが残されて、男の姿はもうなかった。

追いかけていくより、あまりカインスを一人にしない方がいい。
あの男の目的も何も分かっていない、調査は明日にして部屋に戻る事にした。

部屋に戻ると、カインスはもうベッドの中で眠っていた。

俺はソファーで寝るから構わないけど、カインスの寝顔を見る。

優斗の寝顔もこんな感じだろうか、泊まった事がないから見た事がない。
クラスメイト達は修学旅行で見ていると思うと心がモヤモヤしていた。

本物の優斗の寝顔がいい、姿ではなく中身の優斗が…

「おやすみ、優斗」

何故か自然と優斗の名前を口にしてベッドを背にして眠った。

あのぐらいじゃまだ魔力が十分に消費していない。
息が荒くなり、苦しくて身体が破裂しそうなほど痛い。

優斗を考えると、絶対に会えない寂しさと誰かのものになるイラつきで不安定になる。

背中に触れる温もり、全身に温かさが広がっていく。
スッと辛い痛みも苦しさもなくなり、呼吸が出来る。

この優しい手の感触には決して忘れる事がないほどの覚えがあった。

あの時、下層部で感じたものがもう一度感じられるとは思わなかった。

『大丈夫、大丈夫だよ』

「優斗!」

目を覚まして起き上がると、部屋が太陽の光で明るくなっていた。
朝の囀りが外から聞こえてきて、周りを見渡した。

優斗もカインスも、部屋には誰もいなかった。
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