18 / 52
暗い浴室
先に身体を洗って、浴槽に入った。
全身が温かなお湯に包まれて、ホッと安心した。
いつもアパートに付いている今にも壊れそうな樽風呂で入っていた。
足をこんなに伸ばした事はなかったな。
ボーッと天井を見つめながら考える。
大浴場の外にはアルフリードがいる。
こんなに近くにいるなんて昨日は考えてもいなかった。
「有流くん…俺はずっと…ずっと…有流くんの事が…」
本人には絶対に言えない言葉、今なら言える。
これで最後にする、恋を終わりにするから…今だけは想いを口にしたかった。
髪から滴る水がポチャンと音を立てて落ちる。
ふと、影が目の前に広がっていき前を見た。
綺麗な真っ白だった壁は真っ黒に変わり、透き通っていたお湯は真っ黒な泥のようになっていた。
明らかな異変に早く起きようと思ったら、足首を誰かが掴む感触がした。
その瞬間、お湯の中に引きずり込むように引っ張られた。
息が出来なくてもがくが、ドロドロしたお湯は俺が上がるのを許してはくれない。
苦しい、痛い…誰か助けて…
身体が沈んでいく、俺をどんどん奈落の底に引きずっているようだ。
もう手しか出てはいないが、それももうすぐ引きずられて見えなくなる。
真っ暗の中、俺をジッと見つめる瞳が見えた。
冷たく突き刺さるような無機質の瞳は俺に敵意と殺意を向けていた。
足首を掴む手は、ゆっくりと足を開かされた。
なんだ、くすぐったいけど何をしているのかさっぱり分からない。
俺の手は誰かに握られて引っ張られた。
水面から顔を出して、身体が楽になる。
「カインス大丈夫か!?」
「…あ、アルフリード様」
俺の腕を掴んでいるアルフリードは慌てた様子だった。
有流くんのこの顔、初めて見た。
お湯を見ると、元の透き通ったお湯に戻っていた。
あれは何だったんだろう…それにあの目は誰だったんだ。
すぐにアルフリードに手を離されて、事情を聞かれた。
アルフリードは何者かの気配を感じて様子を見にきたそうだ。
俺は分かる限りの事を伝えた。
詳しくは突然で俺にもよく分からない。
「目と黒い泥…」
「俺、もう出ます」
「それがいい」
ゆっくりくつろぐ気にはなれず、アルフリードは俺に背を向けて浴室から出て行った。
男同士だし、そんなに気にしなくていいと思ったが、痣だらけの身体を見たらそうなるかと納得した。
脱衣所で服を来て、アルフリードと一緒に部屋に向かった。
大浴場を調べるために俺を送ってから、部屋を出て行った。
ソファーに座って布で拭いて髪を乾かしていると、足首に視線を向けた。
アルフリードにはこれ以上心配掛けないように言ったが、俺の足首にはくっきりと手の跡が残っていた。
魔物?でもアルフリードがいる兵舎の中に魔物が入れるとは思えない。
もしかして幽霊なのかもしれない。
自分で考えて背筋が冷たくなり、布を畳んでサイドテーブルに置いてベッドに潜り込んだ。
風が叩く音でもビクッと反応して目蓋を硬く閉じた。
幽霊なんているわけない、いそうな下層部に住んで今まで見た事がないんだからいない。
そう思っても、さっき見たと思ってしまったらそれはいる事になる。
実際に見たら、今まで信じていなかった事が崩れていった。
考えて考えて、考え疲れていつの間にか眠っていた。
全身が温かなお湯に包まれて、ホッと安心した。
いつもアパートに付いている今にも壊れそうな樽風呂で入っていた。
足をこんなに伸ばした事はなかったな。
ボーッと天井を見つめながら考える。
大浴場の外にはアルフリードがいる。
こんなに近くにいるなんて昨日は考えてもいなかった。
「有流くん…俺はずっと…ずっと…有流くんの事が…」
本人には絶対に言えない言葉、今なら言える。
これで最後にする、恋を終わりにするから…今だけは想いを口にしたかった。
髪から滴る水がポチャンと音を立てて落ちる。
ふと、影が目の前に広がっていき前を見た。
綺麗な真っ白だった壁は真っ黒に変わり、透き通っていたお湯は真っ黒な泥のようになっていた。
明らかな異変に早く起きようと思ったら、足首を誰かが掴む感触がした。
その瞬間、お湯の中に引きずり込むように引っ張られた。
息が出来なくてもがくが、ドロドロしたお湯は俺が上がるのを許してはくれない。
苦しい、痛い…誰か助けて…
身体が沈んでいく、俺をどんどん奈落の底に引きずっているようだ。
もう手しか出てはいないが、それももうすぐ引きずられて見えなくなる。
真っ暗の中、俺をジッと見つめる瞳が見えた。
冷たく突き刺さるような無機質の瞳は俺に敵意と殺意を向けていた。
足首を掴む手は、ゆっくりと足を開かされた。
なんだ、くすぐったいけど何をしているのかさっぱり分からない。
俺の手は誰かに握られて引っ張られた。
水面から顔を出して、身体が楽になる。
「カインス大丈夫か!?」
「…あ、アルフリード様」
俺の腕を掴んでいるアルフリードは慌てた様子だった。
有流くんのこの顔、初めて見た。
お湯を見ると、元の透き通ったお湯に戻っていた。
あれは何だったんだろう…それにあの目は誰だったんだ。
すぐにアルフリードに手を離されて、事情を聞かれた。
アルフリードは何者かの気配を感じて様子を見にきたそうだ。
俺は分かる限りの事を伝えた。
詳しくは突然で俺にもよく分からない。
「目と黒い泥…」
「俺、もう出ます」
「それがいい」
ゆっくりくつろぐ気にはなれず、アルフリードは俺に背を向けて浴室から出て行った。
男同士だし、そんなに気にしなくていいと思ったが、痣だらけの身体を見たらそうなるかと納得した。
脱衣所で服を来て、アルフリードと一緒に部屋に向かった。
大浴場を調べるために俺を送ってから、部屋を出て行った。
ソファーに座って布で拭いて髪を乾かしていると、足首に視線を向けた。
アルフリードにはこれ以上心配掛けないように言ったが、俺の足首にはくっきりと手の跡が残っていた。
魔物?でもアルフリードがいる兵舎の中に魔物が入れるとは思えない。
もしかして幽霊なのかもしれない。
自分で考えて背筋が冷たくなり、布を畳んでサイドテーブルに置いてベッドに潜り込んだ。
風が叩く音でもビクッと反応して目蓋を硬く閉じた。
幽霊なんているわけない、いそうな下層部に住んで今まで見た事がないんだからいない。
そう思っても、さっき見たと思ってしまったらそれはいる事になる。
実際に見たら、今まで信じていなかった事が崩れていった。
考えて考えて、考え疲れていつの間にか眠っていた。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
異世界で孵化したので全力で推しを守ります
のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!
難攻不落の異名を持つ乙女ゲーム攻略対象騎士が選んだのは、モブ医者転生者の俺でした。
鳴音 伊織
BL
――聖具は汝に託された。覚醒せよ、選ばれし者
その言葉と共に、俺の前世の記憶が蘇る。
あれ……これもしかして「転生したら乙女ゲームの中でした」ってやつじゃないか?
よりにもよって、モブの町医者に。
「早く治癒魔法を施してくれ」
目の前にいるのは……「ゲームのバグ」とまで呼ばれた、攻略不可能の聖騎士イーサン!?
町医者に転生したものの、魔法の使いをすっかり忘れてしまった俺。
何故か隣にあった現代日本の医療器具を「これだ」と手に取る。
「すみません、今日は魔法が売り切れの為、物理で処置しますねー」
「……は!?」
何を隠そう、俺は前世でも医者だったんだ。物理治療なら任せてくれ。
これが後に、一世一代の大恋愛をする2人の出会いだった。
ひょんな事から、身体を重ねることになったイーサンとアオ。
イーサンにはヒロインと愛する結末があると分かっていながらもアオは、与えられる快楽と彼の人柄に惹かれていく。
「イーサンは僕のものなんだ。モブは在るべき姿に戻れよ」
そして現れる、ゲームの主人公。
――……どうして主人公が男なんだ? 女子高生のはずだろう。
ゲーム内に存在し得ないものが次々と現れる謎現象、そして事件。この世界は、本当にあの乙女ゲームの世界なのだろうか?
……謎が謎を呼ぶ、物語の結末は。
――「義務で抱くのは、もう止めてくれ……」
――結局俺は……どう足掻いてもモブでしかない。
2人の愛は、どうなってしまうのか。
これは不器用な初恋同士と、彼らの愉快な仲間たちが織り成す、いちばん純粋な恋の物語。