転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫

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近くて遠い

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「なにか欲しいものでもあるのか?」

「えっ!?」

「なにか必要なら言ってくれ」

アルフリードはそう言って、テーブルに向かって部屋に持ち込んだ仕事をしていた。

大人の男って感じだな、生徒会長の時の有流くんも仕事をしている時もカッコよかった。
でも、本物の大人の男は全然雰囲気が変わる。

確かゲームのアルフリードは二十歳だったよな。
有流くんにそっくりなキャラクターだったから、アルフリードの事はちゃんと調べていたんだ。
まだ付き合っていた時だから、出来た事なんだけど。

前世の有流くんもこんな顔だった気がする。

見たのは結婚報告の写真だから、じっくりは見ていない。
あの時は、メンタルが限界に近かったから自分を守るために見るのを止めた。

有流くん、ごめんね…幸せを祈ってあげられなくて…

でも、今なら大丈夫だ…あの写真は見れなかったけどアルフリードはちゃんと見れる。
写真の時よりカッコよく見えるのはなんでなんだろう。

まるで別人のような違和感がある、なんでなんだろう。

でも、気になるからってアルフリードに聞いたら優斗だってバレる。
俺が思い込みたいからという気持ちはない。
ずっと有流くんだと思っていたから、モヤモヤした気持ちでいっぱいだ。

俺が信じていたものって、いったい何なんだろう。
誰にも聞く事が出来ず、答えは永遠に分からない。

アルフリードは寝室に行き、クローゼットを開いて何かを探していた。

俺は後ろからそれを眺めていたら、近付いてきた。
アルフリードの手に持っていたのは、服とタオルだけだった。

「眠れるように風呂に行くか」

「えっ…そこまでは…」

「身体が温まれば自然と寝れる」

優しい顔を向けられると、泣きそうになる。

有流くんは、誰にでも優しいんだ…俺が一番知っている。
だからこそ皆に慕われて愛されていたんだ。

有流くんは俺と別れたくても、あんな酷い事は言わない。
目を見ていつも本音で言ってくれる、俺だって理由を言ってくれたら引きずったりはしなかった。
好きな気持ちはあるけど、素直に祝福が出来た。

心の何処かであんな事を言うはずがないと思っているから、俺は前に進めずにいた。

「今の時間なら誰もいない、気兼ねなくくつろげるだろ」

「はい」

「着替えは俺のでいいか、子供の頃のだから返さなくていい」

「ありがとうございます」

クローゼットから出した着替えを持ち、アルフリードに案内されて部屋を出た。

夜遅いからか、廊下を歩いている人がほとんどいない。
お酒を飲んでフラフラの人や夜の見回りに出かける人とすれ違う。

俺を見て不思議そうにしていて「アルフリード様、新人ですか?」と声を掛ける人がいた。
詳しくは言わずに「違う」とだけ言っていた。

すれ違う時に軽く頭を下げると、不審そうな顔をされてしまった。
新人じゃなかったら誰なんだって話だよな。
アルフリードが隠したいなら俺が余計な事を言うべきじゃない。

そのまま大浴場に来て、脱衣所で着替えを渡してくれた。

「なにかあったら外にいるから声を掛けてくれ」

「ありがとうございます、アルフリード様」

アルフリードは後ろを向いたが、思い出したようにこちらを振り返った。
油断していてドキッとする事を言われた。

アルフリードは誰もが知っているほど有名人だ。
でも、俺の名前はほとんどの人が知らない。
ただの下層部の学生だから当然だ。

「名前、聞いていなかったな」とアルフリードは言った。

俺を優斗と呼んでいたが、それは彼の勘違いだと言っていた。
俺が優斗だと知らない今、本名はまだ教えていない。

本名なんて言ったら一気にバレてしまう。

言えない、絶対に…

「俺の名前はカインスです」

「そうか、俺は気にせずゆっくり風呂に入れよカインス」

アルフリードに言われて首を縦に振って、脱衣所から出て行った。
一気に緊張が押し寄せてきて、大きく息を吐いた。

変に思われてないよな、多分。

俺の名前はユート・カインスだ、嘘は付いていない。
これで俺がユートだと思う事はない筈だ。

服を抜いで、アルフリードに渡された服を眺める。
子供の頃の服と言ってたけど、高校生のって事だよな。
もっと低い年齢だったら悲しい気持ちになる。

鼻に近付けると、洗濯しているから花のいい匂いがする。
すぐに我に返り、脱衣所のカゴの中に入れた。

何やってんだ俺は、本当に…虚しいだけなのに…

有流くんに抱きしめられた時のいい匂いはもうどこにもないんだ。

浴室の扉を開けると、大きな浴槽が見えた。
一気に数十人くらい入れそうな浴槽で、俺一人で使うのは申し訳ない気持ちになる。
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