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26【眩い光】※R18
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手加減はしないという言葉通り、ゾルターンの愛撫は強かった。ルカーシュの唇は赤く腫れるほど何度も吸われた。乳首は爪できつく押し潰されたり、つねられたり、引っ張られたりもした。
その度に痛くて、喉が引き攣った悲鳴を上げると、ゾルターンは「いい声でなきますね」と間違った見方をしていた。
肩やうなじには噛み跡が痛々しく残り、赤い斑点が散った。
ルカーシュはせめてもの抵抗として、顔の前に手枷された両手を持ってきて、表情を隠した。奥歯を噛み締めながら、身体を這う手の感触の気持ち悪さに耐えた。
しかしいくら耐えても、行為は終わらなかった。きっと、最後までするつもりなのだろう。
ルカーシュの手首が掴まれて、強引に頭の上に置かれた。涙で乱れた顔を見ても、ゾルターンは熱のこもった目を変えることはない。
涙が溢れても目頭に留まることなく、こめかみに流れていく。ゾルターンが何をしているのか、わかりたくもないのに、よく見えた。
奥の入り口を探られて、身動ぎしようとするが、下半身はのしかかられて、びくともしなかった。上体だけでも動かそうとすると、頬を叩かれた。錆びた味が口の中に広がっていく。
「シモン……」
その名を零したのは、無意識だ。目の前にいるのがシモンだったらいいのにと、心から思っていた。
ゾルターンは瞳をますます赤く染めて、ルカーシュの顎を掴んだ。目を逸らすなと、強い指先が言っている。
「いま、あなたを犯しているのはシモンじゃない。私だ。あいつのことは忘れろ!」
忘れるなど無理だ。どれだけこの男に汚されたとしても、ルカーシュの中に残るのは牢獄の中の冷たく暗い記憶ではない。かつて陽だまりの中で膝枕したような温かな記憶だ。
もういっそ、このまま記憶に沈んでしまおうと思った。深く心を閉ざせば、感触は残ろうとも記憶にはならないのではないか。
温もりを失った指先の力を抜いた。抵抗をやめたルカーシュを満足そうに見下ろしながら、顎を放した。ゾルターンの雄の先端がルカーシュの尻穴に触れた。先走りを擦り付けるような動きで、背中がぞっとした。
「入れますよ。初めは痛いでしょうが、そのうち良くなるでしょう」
腰を掴まれて、どこにも逃げ場はなかった。少しでも進めば、ゾルターンの雄が自分の中に入ってきてしまう。
どうせ満足に解されていないのだ。痛みも相当だろう。血を流すかもしれない。
「いやだっ! シモン! シモン!」
最後のあがきだった。何度、殴られようと、死ぬ寸前まで抵抗してやる。
――私はそんなに弱くない。シモンのために身を引こうとも、黙ってこんなやつの慰め者になる気はない。
――死ぬことなど、怖くはない。いつ死んでもいい。そう思っていた。だからこそ、死ぬ前にやるべきことがある。
そんな思いに至った時、冷たかった指先が急激に熱くなった。肌に触れられた以上に、ルカーシュの身体は白い光に包まれた。
眩い光にもゾルターンは鼻で笑うだけだ。
「私には効かないと言ったでしょう?」
ゾルターンには効かないのはわかっている。それでもこの光を放つのは、自分がここにいることを知らせるためだ。地下室ではどう足掻いても光は届かない。
今はどうだ。光を拾ってくれる窓はいくつもある。ゾルターンは気を取り直して、腰を進めようとした。後一押しで、ルカーシュの中を貫くという時、それは起きた。
扉に向けて槌がぶつかるような重い音が響いた。何度も、何度も、音が止むことはない。
「な、何だ?」ゾルターンは慌てて、扉に目線を移した。
木でできた扉が木目に合わせて剥げた。剥げ落ちた部分から、外の世界の断片が見えた。人が立っていた。手を伸ばして、扉の内側を探るが、目的のものはなかったらしい。
「くそ、取っ手はねえのかよ!」
諦めることなく何度も繰り返すうちに、扉は無残に倒れて、外の世界に繋がるすべてを映し出した。眩みそうになるほどの光を背負いながら、その人は立っていた。
黒い騎士服は、グロッスラリアを守る証。腰に携えた剣は、王から授けられた証だ。
稲穂は豊かだ。新緑の瞳はいつだってルカーシュを見つけてくれる。頬が痩せた気がするが、些細な変化だった。
記憶に違わないシモンは、むしろ輝きを増していた。ゾルターンを蹴り飛ばして、ルカーシュの解放を先にした。シモンは小刀を取り出し、返した柄頭でルカーシュの手枷を壊した。
シモンはルカーシュを抱き起こしながら、無事かと無神経な呼びかけはしなかった。
「生きていてくれて、よかった」
それは死への執着が少ないルカーシュにとって、一番嬉しい言葉だった。苦しみ、悲しみで泣いてきた涙は冷たかったが、嬉し涙は温かく頬に残った。
シモンは上着を脱ぐと、ルカーシュの肩にかけた。まだ温もりが残っている。
「ふざけるな、私は、魔女の血を引く者だ! お前を殺すことなどわけない!」
シモンは疲れ切ったような表情で、ゾルターンを眺めた。
「やってみろよ。魔物の血を借りて、強くなったつもりだろうが、ルカーシュの力には遠く及ばない」
魔物の血と言われて、腑に落ちた。ゾルターンの瞳はどう見ても魔女のものではない。血に染まったように赤い。髪の毛も黒髪で白銀とは程遠い。母もルカーシュも白銀だった。なぜ、気づかなかったのだろう。
「赤い瞳は魔物を食らった何よりの証拠だ。しかも一度食らうと、喉が渇くらしいな。血肉を求めて食い続ける。もはや、人間では無くなってしまう」
そうシモンが指摘すると、図星だったのか、ゾルターンはうぐっと言葉を詰まらせた。
ルカーシュを暗闇に閉じ込めたのは、冷静に考えさせないようにするためだろう。視界が広がると、物事が多角的に見られる。ルカーシュは騙されたのだ。魔女崩れの男に。
「私はルカーシュと同じ……」
「一緒にすんな! ルカーシュの力は灯台みたいに明るくて、綺麗だ。お前とは違う」
シモンの言葉はどこまでも風のようにルカーシュの心に入り込む。入り口を固く閉ざしても、隙間を縫って、入ってこようとする。ルカーシュはシモンのことしか頭になかった。お互いに見つめ合う。
ゾルターンが不穏な動きをするのに、気づくのが遅れた。
突如、上がった叫び声が現実を呼び覚ました。
その度に痛くて、喉が引き攣った悲鳴を上げると、ゾルターンは「いい声でなきますね」と間違った見方をしていた。
肩やうなじには噛み跡が痛々しく残り、赤い斑点が散った。
ルカーシュはせめてもの抵抗として、顔の前に手枷された両手を持ってきて、表情を隠した。奥歯を噛み締めながら、身体を這う手の感触の気持ち悪さに耐えた。
しかしいくら耐えても、行為は終わらなかった。きっと、最後までするつもりなのだろう。
ルカーシュの手首が掴まれて、強引に頭の上に置かれた。涙で乱れた顔を見ても、ゾルターンは熱のこもった目を変えることはない。
涙が溢れても目頭に留まることなく、こめかみに流れていく。ゾルターンが何をしているのか、わかりたくもないのに、よく見えた。
奥の入り口を探られて、身動ぎしようとするが、下半身はのしかかられて、びくともしなかった。上体だけでも動かそうとすると、頬を叩かれた。錆びた味が口の中に広がっていく。
「シモン……」
その名を零したのは、無意識だ。目の前にいるのがシモンだったらいいのにと、心から思っていた。
ゾルターンは瞳をますます赤く染めて、ルカーシュの顎を掴んだ。目を逸らすなと、強い指先が言っている。
「いま、あなたを犯しているのはシモンじゃない。私だ。あいつのことは忘れろ!」
忘れるなど無理だ。どれだけこの男に汚されたとしても、ルカーシュの中に残るのは牢獄の中の冷たく暗い記憶ではない。かつて陽だまりの中で膝枕したような温かな記憶だ。
もういっそ、このまま記憶に沈んでしまおうと思った。深く心を閉ざせば、感触は残ろうとも記憶にはならないのではないか。
温もりを失った指先の力を抜いた。抵抗をやめたルカーシュを満足そうに見下ろしながら、顎を放した。ゾルターンの雄の先端がルカーシュの尻穴に触れた。先走りを擦り付けるような動きで、背中がぞっとした。
「入れますよ。初めは痛いでしょうが、そのうち良くなるでしょう」
腰を掴まれて、どこにも逃げ場はなかった。少しでも進めば、ゾルターンの雄が自分の中に入ってきてしまう。
どうせ満足に解されていないのだ。痛みも相当だろう。血を流すかもしれない。
「いやだっ! シモン! シモン!」
最後のあがきだった。何度、殴られようと、死ぬ寸前まで抵抗してやる。
――私はそんなに弱くない。シモンのために身を引こうとも、黙ってこんなやつの慰め者になる気はない。
――死ぬことなど、怖くはない。いつ死んでもいい。そう思っていた。だからこそ、死ぬ前にやるべきことがある。
そんな思いに至った時、冷たかった指先が急激に熱くなった。肌に触れられた以上に、ルカーシュの身体は白い光に包まれた。
眩い光にもゾルターンは鼻で笑うだけだ。
「私には効かないと言ったでしょう?」
ゾルターンには効かないのはわかっている。それでもこの光を放つのは、自分がここにいることを知らせるためだ。地下室ではどう足掻いても光は届かない。
今はどうだ。光を拾ってくれる窓はいくつもある。ゾルターンは気を取り直して、腰を進めようとした。後一押しで、ルカーシュの中を貫くという時、それは起きた。
扉に向けて槌がぶつかるような重い音が響いた。何度も、何度も、音が止むことはない。
「な、何だ?」ゾルターンは慌てて、扉に目線を移した。
木でできた扉が木目に合わせて剥げた。剥げ落ちた部分から、外の世界の断片が見えた。人が立っていた。手を伸ばして、扉の内側を探るが、目的のものはなかったらしい。
「くそ、取っ手はねえのかよ!」
諦めることなく何度も繰り返すうちに、扉は無残に倒れて、外の世界に繋がるすべてを映し出した。眩みそうになるほどの光を背負いながら、その人は立っていた。
黒い騎士服は、グロッスラリアを守る証。腰に携えた剣は、王から授けられた証だ。
稲穂は豊かだ。新緑の瞳はいつだってルカーシュを見つけてくれる。頬が痩せた気がするが、些細な変化だった。
記憶に違わないシモンは、むしろ輝きを増していた。ゾルターンを蹴り飛ばして、ルカーシュの解放を先にした。シモンは小刀を取り出し、返した柄頭でルカーシュの手枷を壊した。
シモンはルカーシュを抱き起こしながら、無事かと無神経な呼びかけはしなかった。
「生きていてくれて、よかった」
それは死への執着が少ないルカーシュにとって、一番嬉しい言葉だった。苦しみ、悲しみで泣いてきた涙は冷たかったが、嬉し涙は温かく頬に残った。
シモンは上着を脱ぐと、ルカーシュの肩にかけた。まだ温もりが残っている。
「ふざけるな、私は、魔女の血を引く者だ! お前を殺すことなどわけない!」
シモンは疲れ切ったような表情で、ゾルターンを眺めた。
「やってみろよ。魔物の血を借りて、強くなったつもりだろうが、ルカーシュの力には遠く及ばない」
魔物の血と言われて、腑に落ちた。ゾルターンの瞳はどう見ても魔女のものではない。血に染まったように赤い。髪の毛も黒髪で白銀とは程遠い。母もルカーシュも白銀だった。なぜ、気づかなかったのだろう。
「赤い瞳は魔物を食らった何よりの証拠だ。しかも一度食らうと、喉が渇くらしいな。血肉を求めて食い続ける。もはや、人間では無くなってしまう」
そうシモンが指摘すると、図星だったのか、ゾルターンはうぐっと言葉を詰まらせた。
ルカーシュを暗闇に閉じ込めたのは、冷静に考えさせないようにするためだろう。視界が広がると、物事が多角的に見られる。ルカーシュは騙されたのだ。魔女崩れの男に。
「私はルカーシュと同じ……」
「一緒にすんな! ルカーシュの力は灯台みたいに明るくて、綺麗だ。お前とは違う」
シモンの言葉はどこまでも風のようにルカーシュの心に入り込む。入り口を固く閉ざしても、隙間を縫って、入ってこようとする。ルカーシュはシモンのことしか頭になかった。お互いに見つめ合う。
ゾルターンが不穏な動きをするのに、気づくのが遅れた。
突如、上がった叫び声が現実を呼び覚ました。
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