〇〇、とやらをされたらしくて

蓮ヶ崎 漣

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第一章 召喚、とやらをされたらしくて

新しい家族(2/2)

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当然、馬鹿は少し驚いた顔をして足を止める。


「あ、いや、なんだ……その、そ、そう!質問があるんだ!」


「質問?シンヤからの質問なら何でも答えるよ!」


「あー……お前って男?女?どっち?」


「え?私は男だよ!さっき、狼男と言わなかったっけ?」



あぁ……

そう言えば言ってたな……

そうか、男か……



俺が心底落ち込むと馬鹿はアタフタする。


「あれ!?シンヤ!?私は何か落ち込ませるようなことを言ったの?」



いや、ほら。

普通に考えて男と手を繋ぐとか……

年齢的に……なぁ?

俺にそっちの気はないし。



「し、シンヤ?ご、ごめんね?何だかよく分からないけど……」


「……いや、気にすんな。次の質問するぞ」


「えっ!?あぁ、うん!どうぞ!」


「精霊にも性別ってあるのか?」


「うん。あるよ。エアロちゃんとセレンちゃんは女の子。ファインくんとアースくんは男の子だよ。まぁ、精霊のほとんどは女の子だから男の子は珍しいんだけどねぇ」


「そうか。じゃあ、次。精霊と妖精って何が違うんだ?」


「あぁ……精霊は自然のものから具現化した精でね、妖精は精霊と人間のハーフってとこかなぁ……そのせいか妖精の方が精霊と比べて一回りくらい大きいんだよ。まぁ、この世界の話だから他の世界ではどう区別されているか知らないけど」


「……ちゃっかり、注意事項みたいに言うなよ」


「嫌だなぁ!シンヤ!この世界にはシンヤがいた人間界、天界、魔界、ここの世界を仮に精霊界としてその他にもパラレルワールドと言う世界があるんだよ?その世界では全く同じ人物のはずなのに世界の仕組みが違うから自分と同じことをしているとは限らないんだ。もしかしたら、この世界のパラレルワールドには精霊と妖精の区別なんてないかも知れないしどちらかが存在すらしていないかも知れない。オリジナルの世界はないと言っても過言じゃないんだよ!」


「……お前はそのパラレルワールドとやらに行ったことあるのかよ?」


「え?ないよ?ある訳ないじゃない!全部なんかの書物とか伝承の受け売り!でも、面白いよねぇ!もしかしたら、どこかのパラレルワールドで私とシンヤは同級生で親友なのかも知れないよ!」


「この世界よりもっと犬猿の仲かもな」


「それは嫌だなぁ……でも、きっとどの世界でも私とシンヤは出会っているんだろうね」


「なんでそう思うんだよ?」


「なんとなくだよ。そんな気がするんだ。もちろん、エアロちゃんたちとも出会っているよ!みんな人間で毎日楽しく過ごしているのかも!そう考えると面白いでしょ?」


「……そうだな。ところで、お前、いくつだよ?」


「え?二十四だよ?」



九歳差!

想像してたよりも若かった……



衝撃の事実に驚きながらふと思い出す。

俺のいた世界とこの世界の時間の流れが違うことに。



「……それって人間界での年齢か?」


「違うよ。人間界での年齢だと……三〇歳くらいかな」



六年!?

六年も差があるのか!?

俺がここで一年過ごしたら俺のいた世界は五年も経ってるってことか!?

おいおい……

ふざけんなよ……

のんびりしてる暇はねぇじゃねぇか!

一刻も早く魔法の勉強をしなければ。



そう思ったと同時にとある疑問が頭をよぎった。


「おい。俺のここでの歳って……」


「十五歳って言うのが人間界での年齢ならここでは一〇歳ってことになるかな」



小学生じゃねぇか!!

おいおい……

マジかよ……

俺は小学校に通うのか?

勘弁してくれよ……



俺がまた心底落ち込んでいると馬鹿が声をかけてくる。


「シンヤ?言っておくとこの世界での成人年齢は十四歳だよ。あんまり人間界の常識と比べていると身が持たないから止めておいたら?」


「……そうする」


俺は立ち上がると深呼吸する。



馬鹿の言う通りだ。

この世界に召喚された以上、もう時間の流れが違うんだからいつまでも時間に縛られる訳にいかない。

けど、これだけは確認しておきたい。



そう思って口を開いた。

真剣に馬鹿の目を見る。


「……ちなみに、お前が知ってる元の世界に戻る方法では時間指定とかも出来るのか?」


俺がそう聞くと馬鹿はしばらく考え込んで答える。


「戻る時間は調整出来ると思うけど保証は出来ない。誰も試したことがないからね」


でも……と付け加えて馬鹿は続けた。


「それこそ、シンヤの気持ち次第なんじゃないかな?シンヤが戻りたい時間を強く願っていればその時間に正確に戻れるかも知れない。とにもかくにもまずは魔法を覚えなくちゃね!今日はゆっくり休むこと!明日からはいくらシンヤがもう止めてと言っても止めてあげないからね!覚悟しておくことだよ!」


そう言って馬鹿はじゃあ、寛いでいてねぇ~と残し部屋を出て行く。

けれど寛ぐ暇もなく夕飯が出来たと呼ばれた。

リビングに行き促された席に座る。

夕飯はビーフシチューのようなものだった。

恐る恐る一口食べるとすごく美味しくてがっつくように食べる。

周りからはもっとゆっくり食べろと言われたけど手が止まることはなくて結局三杯も食べた。

お腹も膨れて大満足の気分でお風呂に行く。

一番風呂と言うこともあってかすごく良い湯で思わず長い吐息が零れた。

お風呂から上がりサッパリした気分で自分の部屋に戻る。

俺は用意されていたベッドに寝そべるとゆっくり目を閉じた。



思い出すのは母さんの顔。

泣き顔も怒った顔も笑った顔も鮮明に出てくる。

手を伸ばせばすぐ届いたはずなのに今はどれだけ手を伸ばしても届かない。

本当は一人でこんなところに飛ばされて怖かったんだ。

知ってる人が誰もいなくて寂しくて。

だけど、馬鹿に会ってどこか懐かしい感じがした。

初めて会ったはずなのにどこかでもう会ってるような感覚。

聞きたいことは山ほどあるが今はこの世界のことと元の世界に戻る方法を聞くので手一杯でそんなことまで聞く余裕はない。

それに似たような奴に元の世界で会っててそいつと勘違いしてるだけかもしれない。

でも、馬鹿が笑うと何となく安心する。



気付けば目から涙が零れていた。



あぁ、俺には泣いてる時間なんてないのに。

これから一人で頑張らないといけないのに。

泣いてる暇があるなら一人でも大丈夫になるように精神力を鍛えないと、と思うのに。



涙は零れるばかりで止まる気配はない。



今だけ、今だけは泣いてもいいだろうか?

母さんのことを想って泣いていても。

目が覚めたらもう泣かないから。

少しの間だけ泣かせて……



「……うっ……くっ……母さんっ」


誰にも聞かれないように声を殺して泣いた。

泣き疲れたのか馬鹿が言ったように脳が疲れて寝たのかは分からないが目を覚ました時にはかけた覚えのない布団がかかっていて。

心は軽く気分は爽快と言う感じだった。

それから一ヶ月間あの馬鹿は本当に容赦なくスパルタで俺に魔法を教えてきた。

たまーに学校に連れてってくれたが。

そのお陰か魔法の基本は完璧にマスターした。

明日からはついに学校に通うことになる。

不安に駆られながらもまた一歩この不思議な世界に足を踏み出した――――
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