〇〇、とやらをされたらしくて

蓮ヶ崎 漣

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最終章 満足、とやらをされたらしくて

四つの試練(2/2)

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 ウンディーネのところに行くと心底驚いたような顔をされる。


「まさか、第三の試練まで来るとは驚きましたです」


「それは褒めてくれてるんだよな?」


「違いますです。第三の試練ではあたくしと勝負なのです」


「え?戦うのか……?」


「そうですです。魔法を使ってあたくしを降参させることが出来たら合格なのです」


少し意外で驚く。



ウンディーネはセレンと同じ水を操る精霊でまず間違いないはずだ。

戦闘には不向きだろ……?

しかも、こう言っちゃ悪いが一番弱そうに見える。

でも、試練は試練だし……



なんてことを思っていたらウンディーネが口を開いた。


「準備は出来たです?」


「え?あ、あぁ!いつでもこい!」


「では、スタートなのです」


ウンディーネがそう言った直後に迷わず呪文を唱える。


「サンダーボルト!」


ウンディーネに落雷が落ちた。

もうこれで終わりだろうと思ったら吹っ飛ばされる。


「ぐはっ!」


「甘いのです。あたくしは水を操る精霊ですが雷に弱い訳じゃないのです。むしろ、雷とは相性は良いのです。あぁ、言い忘れていましたです。貴方の不合格の条件は戦闘不能になったらなのです。判断はあたくしがしますです。それとも、もう戦闘不能なのです?」


俺はガバッと立ち上がり叫んだ。


「そんな訳ねぇだろ!」



油断した……

確かに俺の考えは甘かった……



俺は自分の両頬をパチンッと思いっきり叩く。

その行動に少し驚いた様子を見せるウンディーネ。

だけど、すぐに戦闘態勢に入った。

俺も戦闘態勢に入る。



もう油断はしねぇ……

まずは相手の出方を見ないと……



そう思っていたらウンディーネの姿が消えた。


「なっ!?」



どこだ!?



俺がキョロキョロしていると今度は真横に吹っ飛ばされる。


「ぐっ!」


「貴方が降参しても良いのです。でも、その場合は不合格になりますです」


声の聴こえた方を向くがウンディーネはいない。



まずはウンディーネがどこにいるかだな……

仮に魔法を無効化したところでウンディーネが魔法で消えているとは限らない。

水の反射を利用していると考えるのが妥当だ。

なら、水を蒸発させればウンディーネが消えることは不可能のはず……



そこまで考えて俺は呪文を唱えた。


「ターレンスフレイム!フレイムインフェルノ!」


「!?」


辺りは灼熱地獄だ。

俺たちの周りの水分が蒸発する。

すると俺の予想通りウンディーネが姿を現した。

俺はすかさず呪文を唱える。


「エンチャントフレイム!フレイムレーザー!」


炎の光線が一直線にウンディーネに向かう。

だが、ウンディーネはガードしないどころかその場を動こうともしなかった。

俺は慌てて無効化魔法を唱える。


「バニッシュ!!」


たちまち、炎の光線はもちろん灼熱地獄も消えた。

一気に色んな呪文を唱えまくったせいか俺の魔力消耗が激しく体力もほとんど残されていない。

息切れを起こしているとウンディーネが俺の傍までやってくる。


「……どうして、無効化したです?しなければ、あたくしは負けていたのです。それで勝負は決したはずです」


「……おいおい。お前の出した条件はお前を倒すことじゃなくてお前に降参させることだろ?倒したら意味ねぇだろ」


俺がそう言うとウンディーネはニコッと笑って口を開く。


「甘いのです。甘々です。でも、あたくしの降参です。ウンディーネが認めるのです。シンヤ・フォレストール、第三の試練合格なのです」


「え?」


「次はいよいよ第四の試練なのです!サラのところに早く行くのです」


俺はウンディーネにそう言われてサラマンダーのところに行った。

サラマンダーはニッと笑って俺を出迎える。


「第三の試練まで突破するとは驚いたね。でも、休んでる暇はないよ。第四の試練では自分と向き合ってもらうからね」


「はぁ?」


「今から洞窟に籠ってもらう。出入口はアンタが入ったら閉じさせてもらうよ。魔法を使わず三日以内に出て来られたら合格だ」


「お、おい!洞窟ってことは出入口を閉じられたら真っ暗じゃねぇか!」


「当たり前だろ?真っ暗闇の中で自分と向き合ってもらうんだ。ちゃんと自分と向き合えば出て来られるよ。それとも、怖気づいたのかい?なら、試練は不合格だよ。一度始めた試練は途中で止めることは出来ないからね。どうするんだい?」


俺は舌打ちをしながら返事をする。


「やってやるよ!」


「それじゃあ、ついてきな」


そう言われついて行く。

洞窟の前に着き再度試練の内容を確認される。


「試練の再確認だよ。今からこの洞窟に籠って自分と向き合ってもらう。魔法を使うのは禁止だ。もし使ったらその時点で不合格。三日以内に出て来られたら合格だよ。心の準備は出来たかい?」


「おう!」


俺はそう言って洞窟の中に入った。

その直後に出入口を閉じられて真っ暗になる。

何も見えない。

自分でさえも。

途端に恐怖が襲ってくる。

些細な風の音にも敏感になってその場にしゃがみ込んだ。



想像以上に暗い!

怖い!



サラマンダーはファインと同じ火を操る精霊だと思っていたからてっきり火関係の試練だと思っていた。

まさか洞窟に閉じ込められるとは予想外過ぎてどうしたらいいか分からない。



自分と向き合えとか言ってたよな……

こんな暗闇の中でどう向き合えって言うんだよ!

自分の姿さえも見えないのに!



この空間はまさに無だ。

何もない。

いるはずの自分でさえもいないと錯覚してしまうほどに。

俺は深呼吸をする。

閉じた目をゆっくりと開けるとやっぱり真っ暗だった。

どれくらい時間が経ったのかも分からないがやっと暗闇に目が慣れてきたのか薄暗く感じるようになる。



大丈夫だ、俺はここにいる。

ちゃんといる。

何もなくない。

俺はいる。



そう自分に言い聞かせているとどこからともなく声が聞こえてきた。


「お前は弱い」


「っ!?誰だ!」


「お前は弱い。お前は何も出来やしない。元の世界に戻ることさえも……」


「何でそんなこと言われなくちゃいけねぇんだよ!」


「本当は元の世界なんかどうでもいい癖に」


「そんな訳ねぇだろ!?」


「お前の両親はもういないのにどこに帰るって言うんだ?」


「はぁ!?何言ってやがるんだ!」


「お前は一人だ。一人は怖いだろう?ここにいればみんながいる。一人になることはない。元の世界に戻る価値はあるのか?」


「なっ……」


「お前は気付いているだろう?元の世界に戻ったところで母親もいないことに。だから、自分が飛ばされる前の時間に戻ろうとしているんだろう?」


「ち、違う!そんなことない!」


「嘘吐くなよ。自分に正直なれ」



さっきから何なんだ!?

ここには俺以外誰もいないのに!

俺は……

俺は……



「……確かに一人は怖い」


「そうだろう?今までずっと一人みたいなものだったからな。学校に行っても無視をされ……だから、わざわざ知ってる奴が誰もいない新しい学校を選んだんだろう?」



何でそんなことまで知ってるんだよ!



頭の中が割れそうに痛い。


「認めたらどうだ?楽になるぞ?」


「俺はっ!元の世界に戻りたいっ!」



戻る?

どうして?

母さんがいるから?

じゃあ、母さんがいなかったら?

俺はあんな世界で一人になるのか?

父親がいなかったくらいでいじめがある世界で?

違う、母さんはいる。

大丈夫だ。

ちゃんといる。

一人になるなんてことはない!

大丈夫、大丈夫……



頭の中はずっと痛いままだ。

葛藤が渦巻いている。



本当は……

俺……



「……帰りたいのは建前で……帰りたくないとも思ってる……どっちも俺の本心……」


嫌な汗がたくさん流れてくる。

いつの間にか涙も流れていた。

きっと酷い顔をしている。

喉はカラカラでもう声も出そうにない。

それでも、最後にと叫んだ。


「でも!俺は!それを乗り越えるために元の世界に戻るんだっ!!」


言い切った瞬間ゴホッゴホッと咽る。

ゼェ……ゼェ……と荒い息を整えているといきなり目の前が明るくなった。

眩しさから目を細めて明るい方を見るといくつもの影が並んでいる。

俺は意識を保てなくなりその場に倒れた――――
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