〇〇、とやらをされたらしくて

蓮ヶ崎 漣

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最終章 満足、とやらをされたらしくて

卒業式

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 気付けば、もうすぐ卒業式を迎えようとしていた。

転送術は何とかみんな習得したが人間界に戻せるほどの転送術は習得出来ず。

未だに学校が終わってはミレイたちと共に転送術の習得に尽力を注いでいる。

そして、もう明日には卒業式が待っていた。

今年の主席はミラ。

次席はアーシャだ。

その次にミレイ、俺と続き何とかみんなと一緒に卒業出来ることに安心した。

卒業式当日。

学園長の答辞やらミラの卒業生代表の言葉など長い式が終わると今度はノヴァ先生の話を聞くために教室へ。

ノヴァ先生からは今までありがとうと感謝の言葉をもらって涙を流す生徒も多かった。

卒業出来たのは嬉しいが転送術をマスター出来てなかった俺たちはどこか上の空で周りの生徒が帰っていくのをただただ眺める。

しばらく教室に佇んでいると学園長に話しかけられた。


「やぁ、卒業おめでとう。諸君。君たちはトップクラスで卒業式を迎えたのにまだ卒業しないのかい?」


喋り方がカナそっくりで俺は思わず驚く。

すると学園長はクスクス笑う。


「今、カナエールと喋り方が似ていると思ったね?その理由は簡単だ。カナエールが私の喋り方を真似しているからさ。本来、カナエールはあまり口を開かない奴でね、友人は多い方ではなかったな……っと……話が逸れてしまったね。すまない。それで?諸君は何故まだ教室にいるんだい?」


何故と聞かれて全員で首を傾げた。

ただ何となく教室にいただけで深い意味はない。

みんなそう思っていたらしく答えを出せる奴は一人もいなかった。


「ふふっ、すまない。意地悪な質問だったね。本当はカナエールから全て聞いているんだ。フォレストール君が人間界から来たことも諸君が転送術を習得しようとしていることも全部ね。だから、諸君が教室にずっと佇んでいる理由は聞かなくても分かってはいたのだけれど……誰も気付いていないとは驚いたよ」


学園長の言葉にミラが口を開く。


「……どう言う意味ですか?」


「私が言っても良いのかい?諸君が自分で気付くべきことではないかな?」


学園長はニコニコしながらそう答える。

考えてはみるがやっぱり何となくいただけであって理由は思い浮かばなかった。


「そうそう。カナエールが悩んでいたよ。自分の教え方が悪かったのかって。そもそも、カナエールは人に教えることを得意としていないからね」


俺たちは何の話をしているのか一瞬分からなかったが転送術のことを言っているんだと気付いた。


「……そんなことはないです。僕たちの覚えが悪かっただけの話ですから」


ミラがどことなく苛立っているのを感じる。

自分で言っていて悔しいのだろう。

ミラは負けず嫌いで自分にはとことん厳しいから。

自分には出来なかったという事実を認めたくないのだろう。


「実はね、カナエールから私が諸君に転送術を教えてあげてほしいと頼まれたんだよ。でも、残念なことに諸君には転送術を習得する資格はないね」


その言葉に俺たちは思わずガタッと立ち上がる。

カナがわざわざ学園長に頼んだことも驚いたがそれ以上に資格がないと言われて衝撃を受けた。


「どうして!僕たちに資格がないんですか!」


ミラがそう言うと学園長は答える。


「諦めている子に教えることは何もないよ。諸君が教室から出なかったのは何となくではなく転送術の習得を諦めかけているからだ。カナエールの話じゃフォレストール君を帰すほどの転送術が習得出来なかっただけで基本は習得しているんだろう?諸君はこの世界でずっと一緒にいたいと思っているからだろうね。そこで満足してしまっている」


俺たちは言葉を詰まらせた。

そんな俺たちの反応を見て学園長はため息を吐く。


「……誰も反論しないとは……カナエール。残念だが今回の話はなかったことにしよう」


学園長がそう言うとどこから聞いていたのかカナが教室に飛び込んできた。


「ロキ!待ってくれ!彼らは疲れているだけだ!しばらく休めばきっと……っ!」


「……俺はそれで一向に構わないが、シンヤ・フォレストール君にはそこまでの余裕があるのかい?彼の目標は?人間界に戻るために魔法を習いこの学校に入学したんだろう?そして、彼はもう学校を卒業するんだ。目標達成ではないのかい?後は人間界に戻るだけだろう?彼の道にこの世界に残ると言う気持ちがあるのなら別だがな」


学園長の言葉にカナは押し黙る。

そして、学園長はさっきまでの笑顔が嘘のように冷たく俺を見た。


「つまり、全て君次第ってことだ。シンヤ・フォレストール。一番習得する気持ちがあるくせに出来ない理由は君自身がこの世界から離れることを惜しんでいるからだ。一番最初に教わらなかったのか?魔法は強く願っていれば出来ないことはないってことを。カナエール自身が身に沁みて分かっていることを教えないはずはないと思うんだが」


その言葉を聞いて確かにカナにそう教わったことを思い出す。

時間はかかるかも知れないけど出来なくはない、と。


「……ちゃんと教わってる」


俺がそう答えると学園長は再びため息を吐いた。


「カナエール。お前はこの少年を甘やかし過ぎたな。頭の回転が非常に悪い。目の前のことばかりで一歩先が見えていない。だが、安心しろ。この少年はお前が懸念している道には進まない」


俺たちは何の話をしているのか分からず首を傾げる。

カナはどこか安心したような顔をしていたが学園長は続けた。


「今のまま行くともっと残酷なことになるだろうな」


その言葉を聞いてカナが学園長の胸ぐらを掴む。

カナの行動に俺たちは驚いた。


「……どこが安心出来るんだよっ!また間違えたってことじゃないかっ!僕はそれが嫌だからお前に相談していたんだぞ!?」


学園長はあっさりカナの腕を振り解くと口を開く。


「今のまま行くと、と言っているだろう?お前の気持ちは分かっているつもりだ。俺だってお前にあの時と同じ苦しみを与える気はない。だから、学校への入学も許可したしお前の願いは全て聞き入れたはずだ。違うか?」


「……っ」


カナが言葉に詰まると学園長が息を吐いた。


「……全く、俺もお前を甘やかし過ぎていたみたいだな。ミサが知ったら一生涯氷漬けにされそうだ。それは俺も困る。アドバイスはした。後は諸君らの頑張り次第だ。一回しかお手本は見せない。しっかり目に焼き付けておくんだぞ?」


学園長はそう言うとパチンッと指を鳴らす。

するとそこは学校ではなくどこかの森の中だった。
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