私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

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幽霊

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生きるのを諦めた瞬間、大きな声で叫ばれる。
 
「手を伸ばせ!」
 
驚いて目を開けると目の前には手が伸ばされていた。
私は必死でその手を掴んだ。
手を掴むとものすごい力で引っ張られる。
ドスッという鈍い音がして、私は屋上に戻ったことを認識した。
その手はすごく冷たくて、でも力強さから男だと分かる。
 
「間に合った……」
 
「……あ、貴方、どうして私を助けたの?」
 
「どうしてって……人を助けるのに理由が必要?」
 
「それは……」
 
「でも、そうだな……あえて理由を言うとしたらアンタが必ず後悔するから、かな」
 
「ど、どうして貴方にそんなことが分かるのよ?」
 
「分かるよ。だって俺、幽霊だから」
 
「えっ……」
 
確かに手は冷たかったけど……
でも、掴めたわよ!?
 
「それに、さっき飛ばされたとき、死にたくないって思ったでしょ?」
 
「そ、それはそうだけど!でも、貴方が幽霊なんて信じられないわ!」
 
「なら、信じなければいいんじゃない?」
 
「うっ……」
 
なんか自称幽霊に正論を言われてちょっとだけ悔しい。
 
「か、仮に貴方が幽霊だったとして!なんでここにいるの?」
 
「え?そんなの簡単でしょ?俺がここで自殺したから」
 
「なっ!?」
 
自分は自殺したくせに人には自殺するなって言っていたってこと!?
 
「説得力ないじゃない!」
 
「えー?あるよ。自殺したことを俺が後悔してるから、せめて他の人が自殺して後悔にしないようにって。ど?これ以上の説得力はないと思うけど?」
 
「くっ……」
 
こんな奴が幽霊なんて思いたくない。
というか、幽霊に触れて話しているなんて認めたくないわ!
 
「な、名前!そうよ!名前教えて!」
 
「え?知ったところでどうするの?」
 
「探すわよ!貴方が幽霊じゃないって確認するために!」
 
そう言ったら自称幽霊は笑い出した。
 
「ははっ!なんだそれ?まぁ、それで自殺を止められるのなら喜んで教えるけど。俺の名前は結城大虎ゆうきたいが
 
「……漢字は?」
 
「えぇ?そこまで?本当に変な人だなぁ……結城は結ぶ土に成る城で、大虎はそのまま大きい虎だよ」
 
「結城大虎……覚えたわ。私の名前は栗山莉恵。助けてくれてありがとう。それと……」
 
私は立ち上がり靴を履き、自称幽霊こと結城大虎を振り返る。
 
「自殺を止めてくれてありがとう。また会いましょう」
 
そう言ってその場を去った。
家に帰ってすぐに遺書を取り出して破り捨てる。
これを書いた私はあの強風で飛ばされて死んだわ。
今の私には新しい目標が出来たからもう大丈夫。
まずは結城大虎を探す。
見つけたら、今度は私がお説教してあげるから。
覚悟していなさい!
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