私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

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多忙

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結城くんの誕生日から三週間がすぎた。
あの日以降、本当に結城くんとは会えていない。
最初の五日は電話もしていたのだけれど最近となってはごめん、今、忙しいとすぐ切られてしまう。
はぁ……
結城くんに会いたいな……
 
* * *
 
莉恵さんと会う時間が無くなって三週間。
正直、かなり辛い。
課題多すぎ、実習多すぎ、冬休みも終わりそうな勢いなんですけど。
電話できると言ったけど実際できたのは最初の五日間だけ。
それ以降は本当に寝るのも惜しむくらい課題が忙しい。
電話したいけど莉恵さんの声を聞くと手が止まるか寝そう。
それは避けたい。
有難いことに美琴が付き合ってくれているおかげで、仮に寝落ちしても起こしてくれる。
だから、助かっていた。
ここ五日ほど寝てないけど。
 
「トラ、そろそろ寝た方が良いんじゃない?」
 
「無理。だめ。寝れない。寝たら落とす。確実に」
 
「……課題レポートってあとどれだけあんの?締切は?」
 
「今やってるこれがあと五枚。あとは一昨日の実習のレポートが残り七枚……締切は明後日の朝。それが終わればレポートは片付く」
 
「ふーん……けどさぁ、今にも寝そうなその頭でまとまるの?」
 
「……まとめるんだよ」
 
「僕は寝た方が良いと思うけど。シャワー浴びてサッパリしてさ。とりあえず、今まとまってること箇条書きで書いときなよ。午後にはまた実習でしょ?シャワーくらい浴びた方が良いと思うけど」
 
「……分かった。そうする。シャワー浴びに行って三十分で戻って来なかったら寝てると思うから起こしに来て」
 
「りょーかい」
 
美琴の指示に従ってとりあえず、思ったことは箇条書きしておく。
それが終わり適当にタオルと着替えを持って部屋から出た。
シャワー室に行き、生温いシャワーを浴びる。
シャワーを浴びながら色々考え始めた。
俺専用のゼミ室があるのは良いが優遇されすぎだとも思う。
家が金持ちだとこんなにも贔屓されるものなのか。
今までだって普通に友達だと思っていた奴らは俺が金持ちだと分かると途端に態度が変わる。
元々病弱だった俺を貧弱とからかってたくせに急に気遣うようになったり気味が悪かった。
でも、美琴と泰仁の二人だけは変わらずに接してくれて今でも友達でいてくれてる。
莉恵さんにも話さなきゃとは思うけど……
もし、俺が金持ちだと知って態度が変わったらと思うと怖い。
でも、莉恵さんに隠し事してるのも辛い。
 
「あぁ……どうしよう……」
 
誕生日もあんな風に祝ってくれちゃうもんだから泣きそうになるし。
莉恵さんにはカッコ悪いところは絶対に見せたくない。
ましてや、泣いてるところなんて絶対に嫌だ。
こんなに莉恵さんのこと考えてるのに莉恵さんに会えないとか何の拷問?
莉恵さんに会いたい。
これを欲求不満って言うのかな……
っていうか、レポートのこと考えなくちゃやばいのに莉恵さんのことしか頭にないよ。
やっぱり、シャワー浴びたの失敗したかな……
サッパリどころか悶々モヤモヤするんだけど。
 
「あぁっ!もうっ!莉恵さんに会いたい!!」
 
「なら、早く終わらせれば?実習は今日で最後だしレポートも頑張れば今日中に終わるでしょ」
 
「っ!?美琴!?今の聞いて……っ!?」
 
「うん。バッチリ。三十分経っても戻らないトラが悪いと思うんだよね。っていうか、僕も噂の莉恵さんに会いたいんだけど。泰仁は会ったんでしょ?いいなー……ズルーい!僕にも会わせて!」
 
「髪切って女のフリしないって言うならいいよ」
 
「え?嫌だよ。だって、僕、そこら辺の女より可愛いでしょ?だから、その莉恵さんって人にも試すんだ~私のトラを取ったのは貴方ね!って」
 
「……だから、会わせたくないんだよ。絶対本気にするから。大学では助かってるけど莉恵さんの前ではただの迷惑だから」
 
「考えとく~それより、早く着替えてレポートの続き書きなよ。その愛しの莉恵さんに会えないよ」
 
「分かってるよ……今日、会えるかな……」
 
「トラ次第~」
 
美琴のその言葉に苛立ちながらレポートを書き始める。
何とか一つは完成させ提出。
一昨日の実習レポートは残り一枚となったところで午後の実習時間になる。
午後の実習を受けて実習の単位は確保。
この実習のレポートは無しと聞いて舞い上がった。
残り一枚を早々に仕上げて提出。
これで進級単位を何とか確保した。
 
「おめでとー!これで莉恵さんに会えるねぇ?僕もやっと解放されたし」
 
「うん、ありがとう、美琴。本当に助かった。今度なんか奢るよ」
 
「えー!奢りより莉恵さんに会わせて!」
 
「それは無理」
 
「即答!?ま、良いや。僕もやっと恋人のところに行ける訳だし。進級したらこんなことさせないでよー?」
 
「それは大丈夫。完治したらしいし。もう入院生活は送らないと思う」
 
「そ。なら良いけどさ。そんじゃあ、また一緒の講義取ろうね~」
 
「うん。またな」
 
そう言って美琴と別れる。
そして、すぐさま莉恵さんに電話した。
 
* * *
 
突然の着信。
驚いて画面を見ると結城くんからだった。
慌てて電話に出る。
 
「もしもし?」
 
「『あ!莉恵さん?やっと課題終わったよ!進級単位も確保した!』」
 
「おめでとう!頑張ったわね」
 
「『うん。頑張った』」
 
「ふふっ、じゃあ、頑張ったご褒美に夕飯食べにくる?今日はポトフを作ろうと思っているの」
 
「『え?いいの?』」
 
「もちろん。待っているわね」
 
「『うん。じゃあ、今から行くね』」
 
そういうと結城くんは電話を切った。
私は早速、ポトフを作る準備をする。
しばらくするとインターホンが鳴った。
インターホンのモニターを見ると結城くんだったので開いているから入ってと伝える。
結城くんはお邪魔しますと入ってきた。
 
「莉恵さん。いくら相手が誰か確認できるからって鍵をかけないのは危ないよ?」
 
「結城くんが来るから開けておいたんだけど……」
 
「それでもだめ。危ないからちゃんと鍵はかけておいて。約束」
 
「分かったわ」
 
「うん。何か手伝うことある?」
 
「大丈夫。もうすぐできるから上着はハンガーにかけて手洗いうがいしてきて」
 
「分かった」
 
「(結城くん、ちゃんと寝ていたのかな……?
いつもより顔も白いし目の下にクマもできているし……)」
 
手洗いうがいが終わったのかフラフラした足取りで戻ってくる。
 
「ねぇ、結城くん。ちゃんと寝ていた?食事とか……」
 
「んー……食事はコンビニで買ってきた奴で済ませてたかな……睡眠はここ最近取れてないね……」
 
「もう!無理してまで頑張らなくて良いって言ったのに!ご飯はいつでも作ってあげるから今は寝て!」
 
「え?でも……」
 
「結城くん、今にも倒れそうだもの。会えて嬉しいけどすごく心配。私のベッドで良いから寝て」
 
「……それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね」
 
「服もそのままで良いからね!?」
 
「うん、ありがとう。心配かけてごめんね」
 
結城くんはそういうと私のベッドに入りすぐに寝息を立て始めた。
 
「……謝らなくて良いのに」
 
そう言って私は結城くんの頭を撫でる。
 
「(あぁ、もう。
ここに来るまでに何度睡魔に襲われたんだろう?
ずっとフラフラしながら歩いていたのかな?
こんなになるまで頑張るのは偉いと思うけれど……
無理しすぎよ。
本当に心配。
私がちゃんと支えてあげなくちゃ!)」
 
そして、私はあることを決意した。
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