私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

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結局、結城くんは翌日の夕方まで目を覚まさなかった。
全然起きる気配がないので内心怖かったのだけれど無事に目を覚ましてくれて本当に安心する。
 
「結城くん、起きた?」
 
「……んー……莉恵さん?今、何時?」
 
「もう夜の七時よ。ほぼ丸一日寝ていたわ。全然起きないから少し不安だったのよ?」
 
「……ごめん。五日くらい寝てなくて……あ、シャワーは浴びてたよ?ちゃんと清潔にはしてた!」
 
「もう……そういう問題じゃないわよ。無理しすぎ。こういう心配はあまりかけてほしくないわ」
 
「うん、ごめんね。気をつける」
 
「それでね、私、引っ越そうと思うんだけれど」
 
「えっ!?ちょっと待って!いきなり話変わりすぎじゃない!?」
 
「最後まで話を聞いて」
 
「……はい」
 
「それで、結城くんさえ良ければ一緒に住まない?」
 
「……え?」
 
「結城くんの大学の近くに引っ越そうと思うの。大丈夫!貯金はあるのよ?だから、この間みたいに三週間も缶詰になって寝不足になるなら家が近ければ良いのかなって思ったの。そうすればもっと一緒にいられると思って……結城くんの連絡をただ待つだけは嫌なの」
 
私がそういうと結城くんは無言のまま、何かを考えているようだった。
 
「結城くん?だめなら良いのよ?」
 
「いや、だめじゃないしむしろ嬉しいよ?でも、流石にこれは勝手に決められないっていうか……親に聞かないと……」
 
結城くんはそこまで言うとハッとしたように口元を押さえる。
そして、恐る恐る私を見た。
私はにっこり微笑んで口を開く。
 
「じゃあ、結城くんのご両親に挨拶に行くついでに聞いてみましょう?」
 
結城くんの顔はやっぱり!と言いたそうに青ざめた。
 
* * *
 
莉恵さんに一緒に住まない?と聞かれて嬉しくて舞い上がり口をうっかり滑らせた。
そりゃあ、今まで家族って単語すら口に出して来なかったのだからここぞとばかりに食いつくだろう。
莉恵さんは喜々として俺の両親に会う気満々だ。
勘弁してくれ。
俺でさえもう何年……下手すると何十年も会ってないのに。
入院費やら学費やらちゃんと出してくれてるしあまり使わないけどお小遣いももらって何不自由なく過ごしてるので自分から連絡することもほとんどない。
仕方がないので明日家に帰ることにした。
当然、莉恵さんも一緒に。
 
「……お願いがあるんだけど」
 
「なぁに?」
 
「とりあえず、何を見ても驚かないでね。それと家に着くまで一言も喋らないで」
 
「え?」
 
「約束してくれる?」
 
「わ、分かったわ」
 
誓約書まで書いてそれにサインしてもらう。
そこまでしてるのに莉恵さんは明日を楽しみにしているようで。
俺はこっそりとため息を吐いた。
 
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