私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

文字の大きさ
16 / 77

多忙

結城くんの誕生日から三週間がすぎた。
あの日以降、本当に結城くんとは会えていない。
最初の五日は電話もしていたのだけれど最近となってはごめん、今、忙しいとすぐ切られてしまう。
はぁ……
結城くんに会いたいな……
 
* * *
 
莉恵さんと会う時間が無くなって三週間。
正直、かなり辛い。
課題多すぎ、実習多すぎ、冬休みも終わりそうな勢いなんですけど。
電話できると言ったけど実際できたのは最初の五日間だけ。
それ以降は本当に寝るのも惜しむくらい課題が忙しい。
電話したいけど莉恵さんの声を聞くと手が止まるか寝そう。
それは避けたい。
有難いことに美琴が付き合ってくれているおかげで、仮に寝落ちしても起こしてくれる。
だから、助かっていた。
ここ五日ほど寝てないけど。
 
「トラ、そろそろ寝た方が良いんじゃない?」
 
「無理。だめ。寝れない。寝たら落とす。確実に」
 
「……課題レポートってあとどれだけあんの?締切は?」
 
「今やってるこれがあと五枚。あとは一昨日の実習のレポートが残り七枚……締切は明後日の朝。それが終わればレポートは片付く」
 
「ふーん……けどさぁ、今にも寝そうなその頭でまとまるの?」
 
「……まとめるんだよ」
 
「僕は寝た方が良いと思うけど。シャワー浴びてサッパリしてさ。とりあえず、今まとまってること箇条書きで書いときなよ。午後にはまた実習でしょ?シャワーくらい浴びた方が良いと思うけど」
 
「……分かった。そうする。シャワー浴びに行って三十分で戻って来なかったら寝てると思うから起こしに来て」
 
「りょーかい」
 
美琴の指示に従ってとりあえず、思ったことは箇条書きしておく。
それが終わり適当にタオルと着替えを持って部屋から出た。
シャワー室に行き、生温いシャワーを浴びる。
シャワーを浴びながら色々考え始めた。
俺専用のゼミ室があるのは良いが優遇されすぎだとも思う。
家が金持ちだとこんなにも贔屓されるものなのか。
今までだって普通に友達だと思っていた奴らは俺が金持ちだと分かると途端に態度が変わる。
元々病弱だった俺を貧弱とからかってたくせに急に気遣うようになったり気味が悪かった。
でも、美琴と泰仁の二人だけは変わらずに接してくれて今でも友達でいてくれてる。
莉恵さんにも話さなきゃとは思うけど……
もし、俺が金持ちだと知って態度が変わったらと思うと怖い。
でも、莉恵さんに隠し事してるのも辛い。
 
「あぁ……どうしよう……」
 
誕生日もあんな風に祝ってくれちゃうもんだから泣きそうになるし。
莉恵さんにはカッコ悪いところは絶対に見せたくない。
ましてや、泣いてるところなんて絶対に嫌だ。
こんなに莉恵さんのこと考えてるのに莉恵さんに会えないとか何の拷問?
莉恵さんに会いたい。
これを欲求不満って言うのかな……
っていうか、レポートのこと考えなくちゃやばいのに莉恵さんのことしか頭にないよ。
やっぱり、シャワー浴びたの失敗したかな……
サッパリどころか悶々モヤモヤするんだけど。
 
「あぁっ!もうっ!莉恵さんに会いたい!!」
 
「なら、早く終わらせれば?実習は今日で最後だしレポートも頑張れば今日中に終わるでしょ」
 
「っ!?美琴!?今の聞いて……っ!?」
 
「うん。バッチリ。三十分経っても戻らないトラが悪いと思うんだよね。っていうか、僕も噂の莉恵さんに会いたいんだけど。泰仁は会ったんでしょ?いいなー……ズルーい!僕にも会わせて!」
 
「髪切って女のフリしないって言うならいいよ」
 
「え?嫌だよ。だって、僕、そこら辺の女より可愛いでしょ?だから、その莉恵さんって人にも試すんだ~私のトラを取ったのは貴方ね!って」
 
「……だから、会わせたくないんだよ。絶対本気にするから。大学では助かってるけど莉恵さんの前ではただの迷惑だから」
 
「考えとく~それより、早く着替えてレポートの続き書きなよ。その愛しの莉恵さんに会えないよ」
 
「分かってるよ……今日、会えるかな……」
 
「トラ次第~」
 
美琴のその言葉に苛立ちながらレポートを書き始める。
何とか一つは完成させ提出。
一昨日の実習レポートは残り一枚となったところで午後の実習時間になる。
午後の実習を受けて実習の単位は確保。
この実習のレポートは無しと聞いて舞い上がった。
残り一枚を早々に仕上げて提出。
これで進級単位を何とか確保した。
 
「おめでとー!これで莉恵さんに会えるねぇ?僕もやっと解放されたし」
 
「うん、ありがとう、美琴。本当に助かった。今度なんか奢るよ」
 
「えー!奢りより莉恵さんに会わせて!」
 
「それは無理」
 
「即答!?ま、良いや。僕もやっと恋人のところに行ける訳だし。進級したらこんなことさせないでよー?」
 
「それは大丈夫。完治したらしいし。もう入院生活は送らないと思う」
 
「そ。なら良いけどさ。そんじゃあ、また一緒の講義取ろうね~」
 
「うん。またな」
 
そう言って美琴と別れる。
そして、すぐさま莉恵さんに電話した。
 
* * *
 
突然の着信。
驚いて画面を見ると結城くんからだった。
慌てて電話に出る。
 
「もしもし?」
 
「『あ!莉恵さん?やっと課題終わったよ!進級単位も確保した!』」
 
「おめでとう!頑張ったわね」
 
「『うん。頑張った』」
 
「ふふっ、じゃあ、頑張ったご褒美に夕飯食べにくる?今日はポトフを作ろうと思っているの」
 
「『え?いいの?』」
 
「もちろん。待っているわね」
 
「『うん。じゃあ、今から行くね』」
 
そういうと結城くんは電話を切った。
私は早速、ポトフを作る準備をする。
しばらくするとインターホンが鳴った。
インターホンのモニターを見ると結城くんだったので開いているから入ってと伝える。
結城くんはお邪魔しますと入ってきた。
 
「莉恵さん。いくら相手が誰か確認できるからって鍵をかけないのは危ないよ?」
 
「結城くんが来るから開けておいたんだけど……」
 
「それでもだめ。危ないからちゃんと鍵はかけておいて。約束」
 
「分かったわ」
 
「うん。何か手伝うことある?」
 
「大丈夫。もうすぐできるから上着はハンガーにかけて手洗いうがいしてきて」
 
「分かった」
 
「(結城くん、ちゃんと寝ていたのかな……?
いつもより顔も白いし目の下にクマもできているし……)」
 
手洗いうがいが終わったのかフラフラした足取りで戻ってくる。
 
「ねぇ、結城くん。ちゃんと寝ていた?食事とか……」
 
「んー……食事はコンビニで買ってきた奴で済ませてたかな……睡眠はここ最近取れてないね……」
 
「もう!無理してまで頑張らなくて良いって言ったのに!ご飯はいつでも作ってあげるから今は寝て!」
 
「え?でも……」
 
「結城くん、今にも倒れそうだもの。会えて嬉しいけどすごく心配。私のベッドで良いから寝て」
 
「……それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね」
 
「服もそのままで良いからね!?」
 
「うん、ありがとう。心配かけてごめんね」
 
結城くんはそういうと私のベッドに入りすぐに寝息を立て始めた。
 
「……謝らなくて良いのに」
 
そう言って私は結城くんの頭を撫でる。
 
「(あぁ、もう。
ここに来るまでに何度睡魔に襲われたんだろう?
ずっとフラフラしながら歩いていたのかな?
こんなになるまで頑張るのは偉いと思うけれど……
無理しすぎよ。
本当に心配。
私がちゃんと支えてあげなくちゃ!)」
 
そして、私はあることを決意した。
感想 1

あなたにおすすめの小説

ソツのない彼氏とスキのない彼女

吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。 どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。 だけど…何故か気になってしまう。 気がつくと、彼女の姿を目で追っている。 *** 社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。 爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。 そして、華やかな噂。 あまり得意なタイプではない。 どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。

フローライト

藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。 ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。 結婚するのか、それとも独身で過ごすのか? 「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」 そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。 写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。 「趣味はこうぶつ?」 釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった… ※他サイトにも掲載

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】

まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と… 「Ninagawa Queen's Hotel」 若きホテル王 蜷川朱鷺  妹     蜷川美鳥 人気美容家 佐井友理奈 「オークワイナリー」 国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介 血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…? 華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。

結婚する事に決めたから

KONAN
恋愛
私は既婚者です。 新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。 まずは、離婚してから行動を起こします。 主な登場人物 東條なお 似ている芸能人 ○原隼人さん 32歳既婚。 中学、高校はテニス部 電気工事の資格と実務経験あり。 車、バイク、船の免許を持っている。 現在、新聞販売店所長代理。 趣味はイカ釣り。 竹田みさき 似ている芸能人 ○野芽衣さん 32歳未婚、シングルマザー 医療事務 息子1人 親分(大島) 似ている芸能人 ○田新太さん 70代 施設の送迎運転手 板金屋(大倉) 似ている芸能人 ○藤大樹さん 23歳 介護助手 理学療法士になる為、勉強中 よっしー課長(吉本) 似ている芸能人 ○倉涼子さん 施設医療事務課長 登山が趣味 o谷事務長 ○重豊さん 施設医療事務事務長 腰痛持ち 池さん 似ている芸能人 ○田あき子さん 居宅部門管理者 看護師 下山さん(ともさん) 似ている芸能人 ○地真央さん 医療事務 息子と娘はテニス選手 t助 似ている芸能人 ○ツオくん(アニメ) 施設医療事務事務長 o谷事務長異動後の事務長 雄一郎 ゆういちろう 似ている芸能人 ○鹿央士さん 弟の同級生 中学テニス部 高校陸上部 大学帰宅部 髪の赤い看護師(川木えみ) 似ている芸能人 ○田來未さん 准看護師 ヤンキー 怖い

【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。 「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。 小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。 若くしてプロジェクトチームを任される彼は、 かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、 遠く、眩しい存在になっていた。 優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。 もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。 それでも—— 8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。 これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。