私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

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挨拶

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二人の会話を聞いているうちにいてもたってもいられなくなり思わず立ち上がる。
気づいたら口が勝手に開いていた。
 
「あ、あのっ!私なんかが口出しして良いことだとは思っていないんですけど!それでも言わせてください!大虎くんを心配する気持ちはよく分かるんです!でも、友達とか勝手に選んでこの人と仲良くしなさいって自由じゃないと思います。大虎くんを縛っていると思うしもしその子と馬が合わなかったら苦労します。恋人ならなおさら。私を選んでって訳じゃないです。大虎くんは自由と言っているけれど私には足かせが付いているように見えたんです」
 
「……何が言いたいのかしら?」
 
「大虎くんは良い子だからちゃんとお母様たちの言い付けを守ってきたんだと思います。だから、足かせにつまずくこともないし縛られていることに気づかない。気づかれそうになったら気づかれる前に許したり叱ったりして鎖を長くしているの。本当は大虎くんに自由なんて与えていないんですよね?」
 
私のその言葉に結城くんのお母様は立ち上がる。
そして、険しい顔をして怒鳴られた。
 
「なんて失礼な子なの!?私が大虎を縛っている!?どこにそんな証拠があるのよ!憶測だけで私と大虎を語らないでちょうだい!」
 
「すみません……でも、私は二人のやり取りを聞いてそう感じました。大虎くんは縛られているけどそれに気づいていないんだなって」
 
「大虎!私は認めないわよ!こんな女!今すぐ別れなさい!」
 
「……嫌だ」
 
「大虎!?私の言うことが聞けないの!?」
 
「聞かない。思い当たる節がなかったら聞いたかもね?」
 
「!! 大虎まで……そんなことを……どうして……」
 
結城くんのお母様は泣き崩れるように座りそれと同時にバンッとドアが開く。
驚いてドアの方を見ると男の人が立っていた。
その人は何も言わず結城くんのお母様の隣に座る。
 
「……あなた……」
 
「大虎はもうお前が思っているような子供ではないということだ。君も座りなさい」
 
「あ、はい……」
 
私は慌てて腰を下ろした。
 
「それじゃあ、今度こそ名前を聞いても良いだろう?大虎」
 
結城くんは黙ってうなずいて私の背を叩く。
私もうなずき返して再び立ち上がった。
そして、一呼吸置いてから口を開く。
 
「初めまして。大虎くんとお付き合いをさせていただいております。栗山莉恵と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
 
そう言って頭を下げた。
 
「栗山さん、頭を上げて座りなさい」
 
「はい」
 
私は言われた通りに座る。
結城くんのお母様は私を睨みつけていた。
その態度に腹が立ったのか結城くんが口を開こうとしたら結城くんのお父様がそれを遮る。
 
「用件を聞こうか。大虎が私たちを呼び出すなんて珍しいからな。瀬羽は恋人を紹介したいそうですと言っていたが違うのだろう?」
 
「うん。莉恵さんと二人で暮らしたいから許可をもらいに来た」
 
「なっ!?許しませんよ!!」
 
「お前は黙っていなさい。失礼だが、栗山さんは今お幾つかな?」
 
結城くんのお父様がそういうと結城くんのお母様は悔しそうに唇を噛んだ。
私は恐る恐る口を開く。
 
「今は二十四です。今年で二十五になります」
 
「なるほど……何故、二人で暮らそうと?大虎から言い出したのか?」
 
「いいえ。私です。この間、大虎くんは課題が忙しくて三週間ほど会えませんでした。やっと会えたと思ったら顔色も悪くてフラフラしていて……すごく心配になったんです。私が支えてあげなくちゃって……だから、大虎くんの大学に近いところに引っ越すから一緒に住まないかと聞きました」
 
「……そうか。大虎」
 
「はい」
 
名前を呼ばれ返事をする結城くん。
 
「進級単位は取れたのか?」
 
「はい、何とか」
 
「無理はするなと言っておいたはずだな?」
 
「無理でもしなきゃ莉恵さんに会えないしいつまでも甘やかされたくない」
 
結城くんはそうキッパリと言い切った。
 
「その結果、彼女に多大なる心配をかけた訳だ。自分自身で甘やかされることをしていることに気づけないのか?お前は完治したとは言えつい最近まで病人だったのだ。無理をして倒れたと聞かされれば心配も甘やかしたくもなる。違うか?」
 
「……はい。ごめんなさい」
 
「それじゃあ、結論を言おう。母さんは彼女のことを反対しているから許可は出せない。が」
 
「あ、あなた!?何を仰るつもり!?」
 
「私自身の意見は大虎も成人した身だ。好きにしなさいと言いたい」
 
「父さん……っ!」
 
「あなた……っ!なんてことを言うの!?」
 
「私は栗山さんを気に入ったよ。ちゃんと大虎のことを見てくれているじゃないか。私たちは大虎の顔色の悪さに気づけるだろうか?気づけていなかったから大虎はしたくもない入退院を繰り返したんじゃないかと私は思った。お前はどうだ?」
 
「そ、それは……っ!」
 
「彼女の言う通り、大虎を縛っていたと思う。大虎の友達の少なさがその証拠じゃないかね」
 
「……余計なお世話だよ」
 
「はははっ!すまない、大虎。悪気があって言った訳ではないよ。別にたくさん友達を作れと言う訳じゃない。かけがえのない友達を作ってくれれば良いんだ。大虎にはそんな友達がいるだろう?」
 
「……うん」
 
「私は嬉しいんだよ。大虎がちゃんと自分からそういう友達を作ってくれて。女を見る目もあるみたいだしな」
 
そう言って結城くんのお父様は私にウインクをする。
私は驚きながらも微笑んだ。
結城くんはそんなお父様を睨む。
 
「そう言ってくれるのは嬉しいけど莉恵さんを口説こうとしないで」
 
「ちょ、ちょっと!?結城くん!?何言っているの!?」
 
「はははっ!大虎は栗山さんにベタ惚れじゃないか!口説きはしないさ。息子の大事な人だからな」
 
「あなた!私は認めないって言っているでしょう!?私を除け者にして楽しそうに談笑しないでちょうだい!」
 
「あぁ、すまない。寂しい思いをさせたかな?大丈夫。私は君一筋だからね」
 
「そ、そういうことじゃなくて!!あぁ、もう!大虎ちゃん!どうにかして!」
 
「え?無理だよ。二人の間には入れない」
 
「おや?君は大虎の方が好きなのかな?私はもう君の一番にはなれないのか……」
 
「な、何言っているの!?あなた!」
 
「だって、君は最近、大虎のことばっかりじゃないか。私だって大虎のことは心配だが……それに君は最近仕事ばっかりで……私が食事に誘っても断るくせに大虎のことになると仕事を放って来るなんて……妬けてしまうね」
 
「自分の息子にヤキモチなんか焼かないでちょうだい!みっともない!あなただって私のこと言えないでしょう!いつもいつも仕事仕事って構ってくれないじゃないの……」
 
その言葉に結城くんのお父様はニコニコし出した。
結城くんは深いため息を吐く。
 
「そんな顔で笑わないでちょうだい!大虎ちゃんもため息吐かないで!何よ!二人して私をいじめて!もう勝手にして!私は部屋に戻ります!」
 
結城くんのお母様はそういうと立ち上がりふんっと部屋を出て行こうとする。
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