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番外編① 美琴と泰仁
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最近の僕の悩み。
それは恋人の泰仁が子ども可愛い、赤ちゃん可愛いと言ってくること。
泰仁が子ども好きなのは当然知っているけど僕はどちらかというと嫌いな部類。
っていうか、そんなに可愛いって言われても僕はどう頑張っても産めないし。
どういうつもりで言っているのかが分からなくなって僕はトラに相談することにした。
いつもは被らない休みが久しぶりに被ったのでトラを家に招待したまでは良いけどトラは僕の向かいに座るなり、医学書を読みながら缶チューハイを飲んでいる。
「……トラが飲み会でもないのにお酒飲むの珍しいね」
「んー……最近、飲みに付き合わされること多くなったから慣れておこうと思って」
「ふーん……ところでさ、僕が家に呼んだ理由、覚えてる?」
「悩み相談だろ?美琴が俺に相談するなんて滅多にないから忘れる訳ないじゃん」
「うん。じゃあ、医学書読むの止めてくれない?っていうか、休みの日くらい仕事のこと忘れなよ」
「それは無理。少しでも多く知識はいれておきたい」
「……結構、真面目に聞いてほしいんだけど」
僕がそういうとトラは医学書を閉じて僕と向き合ってくれた。
「……悪戯計画じゃないの?」
「違うよ!そんな話のためにわざわざ家に呼ばない!ここは僕と泰仁の家なんだけど!意味分かるよね!?」
「……悪かったって。で?その二人の家にわざわざ俺を呼んで何の相談?」
トラにそう聞かれて僕は深呼吸をしてから口を開く。
「……あの、さ……トラって栗山さんと結婚とか考えてる?」
「は?泰仁と結婚するために海外に行こうか悩んでるとかいう話なら帰るけど」
「ち、違うよ!そうじゃなくて!結婚したらさ、必然的に子どもの話になるじゃん?」
「……全然、話が見えてこないんだけど」
「つ、つまり!トラは栗山さんと結婚して子どもつくる気あるの?ってこと!」
「いや、だから、その答えを言ったところで美琴の悩みと何の関係があるのかが全然見えないんだって」
「~~っ!だーかーらーっ!そういう悩み!泰仁、子ども大好きじゃん!でも、僕は産めないしだからって女になる気はないし!」
「女装はするのに?」
「うるさいな!それとこれとは別だよ!僕は男だけど男が好きなの!性転換しろって言われたら別れる」
「あぁ、そう。その情報はどうでもいい。で?確かに、泰仁は俺たちの中じゃ一番子ども好きだよ?泰仁から直接自分の子どもがほしいって言われた訳じゃないんだろ?不安なら聞けばいいじゃん。何そんなことで悩んでんの?らしくないな」
「……だってさ、もし聞いて、ほしいって言われたらどうすれば良い訳?どこぞの馬の骨とも分からない女に渡せってこと?僕、そんなの耐えられないんだけど」
僕がそういうとトラはため息を吐いた。
「そんなこと言ってないだろ。泰仁なら美琴がいるだけで十分って言いそうだけど。美琴が子ども嫌いなの知ってる訳だし。そもそも、俺は何で二人が恋人同士になったのかすら知らないんだけど」
「あれ?そうだっけ?」
「そうだよ。いきなり、付き合うことになったって言われて引かなかった俺を褒めてほしいね」
「え?じゃあ、馴れ初め聞いちゃう?」
「いや、結構です。長くなりそうだから」
「あ!でも、泰仁って本当に僕のこと好きだと思う!?愛してくれてると思う!?泰仁が僕の告白にOK出したこと未だに疑問なんだよね」
「……なぁ、それ、本気で言ってる?」
トラは呆れたように僕を見る。
「え?どれのこと?」
「最初の二つ。最後のは美琴も分からないのに俺が分かる訳ない」
そう言って再び深いため息を吐いたのだった。
トラは深いため息を吐いた後、再び医学書を手に取る。
「ちょっ!今日は読まないでってば!」
そういって慌ててトラから医学書を取り上げた。
「いや、正直、本当にどうでもいい悩みで帰りたい。俺だって暇じゃないし」
「僕にとってはどうでも良くないの!」
「……美琴の悩みって女々しい」
「はぁっ!?トラの悩みだって女々しいよ!」
「……とにかくさ、美琴は泰仁と別れる気ないんだろ?なら、それでいいじゃん。泰仁だって美琴と別れるつもりないだろうし。不安なら聞いた方がいいと思うけど?」
「~~っ!仕事も恋も上手くいってる大虎には僕の気持ちは分かんないんだろうね!」
僕のその言葉に持っていた缶に力を入れギロッと睨んでくるトラ。
いつもなら全然平気なのに何故かその目に恐怖を感じた。
「……あぁ、分かんねぇよ?でも、だからってお前も俺の気持ちは理解できねぇだろ?喧嘩売ってんのか?」
トラの口調がいつもより荒い。
本気で怒っているときのトラの特徴。
この状態のトラは加減をしないから怖い。
ここは素直に謝っておいた方が得策かな……
そう思って口を開こうとした瞬間、家のドアが開く音がする。
「ただいまー……あれ?美琴、トラでも呼んだのか?」
そういって顔を出す泰仁。
僕とトラを見ると険悪な雰囲気を感じ取ったのか泰仁は少し考えた後、僕たちの間に座り再び口を開いた。
「俺だけ仲間外れにして喧嘩すんな!」
「は?」
「はぁ?」
「いいか?俺がどっちかと喧嘩してもどっちかが間に入って仲直りさせてくれるけどな!お前ら二人が喧嘩したら俺は馬鹿だから仲直りさせられない!だって、お前らの喧嘩、俺には高度すぎんだよ!数学の問題の公式はどっちの方が解きやすいとかこういう病気にはこっちの処置の方がいいだとか……俺にも分かる内容で喧嘩してくれ!それなら取り持てる!そうじゃない喧嘩ならすぐに仲直りしてくれ!」
泰仁のその言葉に僕もトラも呆れて言葉が出ない。
すると、泰仁はトラが飲んでいた缶チューハイに目を向け大声を出す。
「あーっ!!トラ!お前!それ!俺の酒!!勝手に飲むなよ!!楽しみにしてたのに!!」
「あー……悪い?じゃあ、残り返す。これ、不味い」
「何で疑問形!?しかも、不味いって!!そんなもん返すな!!」
「あー嘘嘘。スゴク美味シカッタヨ。ダカラ、ドーゾ」
「マジか!ありがとう!……って、クソ不味い!!騙しやがったな!?」
その反応に思わず僕は噴き出した。
「ぷっ……あははっ!美味しいって絶対嘘だったでしょ!何で信じるかな!本当、泰仁ってバカ!」
僕が笑うとトラも泰仁も笑う。
「……まぁ、泰仁が馬鹿なのは今に始まったことじゃないし。愛され馬鹿って奴かな。騙され易いのは直した方がいいけどね」
「えっ!?俺って愛されちゃってる?トラも俺のこと愛しちゃってる感じ?」
「バーカ。泰仁なんか愛してねぇっつーの。本当、お気楽な脳みそしてるな。羨ましいよ」
「美琴!聞いたか!?今、トラが俺のこと羨ましいって!」
「ちょっと、何喜んでんの。馬鹿にされてたでしょ?本当、都合の良いところしか聞かないんだから」
「いーや!今のトラのセリフはいい意味だ!俺はそう信じる!なぁ、トラ!そうだろ?」
泰仁がそう問いかけるとトラは肩をすくめて口を開いた。
「好きに解釈すれば?」
「じゃあ、そうする!」
「あぁ、そうだ。泰仁」
「ん?何だ?」
「泰仁って子ども好きじゃん」
「あぁ、好きだぜ?それがどうした?」
「将来的には自分の子どもほしい訳?」
「ちょっ!トラ!?」
「んー……そうだなぁ……」
泰仁の答えをドキドキしながら待ちつつ、心の中でトラを恨む。
何てこと聞くんだ!
ほしいなんて言われたらどうしたら良い訳!?
不安で押し潰されそうになりながら二人に見えないようにギュッと拳を握った。
心臓の音がどんどん大きくなる。
しばらくしてやっと泰仁が口を開いた。
「ほしくないって言ったら嘘になるけどさ、俺は美琴とトラと俺の三人でずっとこんな風に仲良くいられたら今はそれでいいんだ」
「はぁ?何で俺まで?そこは美琴と二人でいいじゃん」
「そりゃあ、一番大事なのは美琴だけどトラも美琴に負けないくらい俺の中じゃ大事な友達だからさ、ずっと三人でいたいんだよ、俺は。あぁ!栗山さんが一緒でもいいぞ!」
「……ライバルがトラだとは思わなかった」
「ライバルじゃないから。美琴、医学書返して。悩み解決したでしょ。帰る」
「……トラ、実は嬉しいでしょ?」
「別に。ほら、早く返せよ」
「はいはい」
そう言って僕はトラに医学書を返す。
受け取ったらトラは早々に立ち上がり帰ろうとすると泰仁が腕を掴み止めた。
トラはそんな泰仁を軽く睨みながら足を止める。
「何?帰りたいんだけど」
「美琴が何に悩んでたかは知らねぇけどありがとな。あと、前から気になってたんだけど、いつ、栗山さんと結婚すんの?」
「っ……うるさいな、タイミングっていうのがあんだよ。そもそも泰仁に関係ないだろ」
「子どもほしいなら早く結婚しとけって言いたかっただけだ。デキ婚が悪いとは言わねぇけどあんまりいい印象もねぇだろ?」
「あーはいはい。分かったから、離せって」
「本当に分かってるのか~?トラは慎重すぎるんだよなぁ」
「慎重にもなるだろ。これからの人生を俺にくれとか……そう簡単に言えるか」
「何で?言えばいいだろ?栗山さんなら即OKだろうしさ」
「………………と………………………………よ」
トラの言葉が聞き取れず思わず聞き返した。
「え?」
「悪い、トラ。聞き取れなかった。今、何て言った?」
すると、トラはニッと笑いながら答える。
「そういう美琴と泰仁だって俺のこと言えねぇだろって言ったんだよ。結婚云々は俺の心配より自分たちの心配しろよなー」
「よ、余計なお世話だ!」
「そう、それ。俺もその言葉そっくりそのまま返す。じゃあな。久しぶりに昔に戻ったみたいでそこそこ楽しかったよ」
そう言いながら靴を履いてドアに手をかけるトラ。
しかし、何かを思い出したかのように振り返る。
その行動に首を傾げると泰仁と僕に構う様子もなく口を開いた。
「あぁ、でも、その手の相談を俺にも莉恵さんにも持ちかけるなよ?どうでもいいから。けど、たまには莉恵さんを気分転換に誘ってやって。俺に俺の話はできないだろうし永江さんも俺のこと嫌ってるから気を遣ってしてないだろうからさ。余計なこと話したらただじゃおかねぇけど。それじゃあ、今度こそ帰る。じゃあな」
そういってトラは僕たちの返事も聞かずに出て行く。
いつもなら二人きりの邪魔すんなとか言うくせに……
まぁ、トラがそういうならたまにくらい誘うけどさ。
何となく違和感を覚えながらも今度聞きなおせば良いやと部屋に戻った。
しかし、その日を境にトラとはすれ違いばかりなのか会う機会がなくなり、連絡も取れなくなる。
それからさらに数日がすぎ栗山さんから連絡が来た。
何気なく出ると衝撃の一言を聞かされる。
「『美琴さん!大虎くんがどこにいるか知りませんか!?何度電話をかけても繋がらないんです……っ!』」
「……え?」
それから事の説明をされるが何一つとして頭の中に入って来なかった。
To be continue……?
それは恋人の泰仁が子ども可愛い、赤ちゃん可愛いと言ってくること。
泰仁が子ども好きなのは当然知っているけど僕はどちらかというと嫌いな部類。
っていうか、そんなに可愛いって言われても僕はどう頑張っても産めないし。
どういうつもりで言っているのかが分からなくなって僕はトラに相談することにした。
いつもは被らない休みが久しぶりに被ったのでトラを家に招待したまでは良いけどトラは僕の向かいに座るなり、医学書を読みながら缶チューハイを飲んでいる。
「……トラが飲み会でもないのにお酒飲むの珍しいね」
「んー……最近、飲みに付き合わされること多くなったから慣れておこうと思って」
「ふーん……ところでさ、僕が家に呼んだ理由、覚えてる?」
「悩み相談だろ?美琴が俺に相談するなんて滅多にないから忘れる訳ないじゃん」
「うん。じゃあ、医学書読むの止めてくれない?っていうか、休みの日くらい仕事のこと忘れなよ」
「それは無理。少しでも多く知識はいれておきたい」
「……結構、真面目に聞いてほしいんだけど」
僕がそういうとトラは医学書を閉じて僕と向き合ってくれた。
「……悪戯計画じゃないの?」
「違うよ!そんな話のためにわざわざ家に呼ばない!ここは僕と泰仁の家なんだけど!意味分かるよね!?」
「……悪かったって。で?その二人の家にわざわざ俺を呼んで何の相談?」
トラにそう聞かれて僕は深呼吸をしてから口を開く。
「……あの、さ……トラって栗山さんと結婚とか考えてる?」
「は?泰仁と結婚するために海外に行こうか悩んでるとかいう話なら帰るけど」
「ち、違うよ!そうじゃなくて!結婚したらさ、必然的に子どもの話になるじゃん?」
「……全然、話が見えてこないんだけど」
「つ、つまり!トラは栗山さんと結婚して子どもつくる気あるの?ってこと!」
「いや、だから、その答えを言ったところで美琴の悩みと何の関係があるのかが全然見えないんだって」
「~~っ!だーかーらーっ!そういう悩み!泰仁、子ども大好きじゃん!でも、僕は産めないしだからって女になる気はないし!」
「女装はするのに?」
「うるさいな!それとこれとは別だよ!僕は男だけど男が好きなの!性転換しろって言われたら別れる」
「あぁ、そう。その情報はどうでもいい。で?確かに、泰仁は俺たちの中じゃ一番子ども好きだよ?泰仁から直接自分の子どもがほしいって言われた訳じゃないんだろ?不安なら聞けばいいじゃん。何そんなことで悩んでんの?らしくないな」
「……だってさ、もし聞いて、ほしいって言われたらどうすれば良い訳?どこぞの馬の骨とも分からない女に渡せってこと?僕、そんなの耐えられないんだけど」
僕がそういうとトラはため息を吐いた。
「そんなこと言ってないだろ。泰仁なら美琴がいるだけで十分って言いそうだけど。美琴が子ども嫌いなの知ってる訳だし。そもそも、俺は何で二人が恋人同士になったのかすら知らないんだけど」
「あれ?そうだっけ?」
「そうだよ。いきなり、付き合うことになったって言われて引かなかった俺を褒めてほしいね」
「え?じゃあ、馴れ初め聞いちゃう?」
「いや、結構です。長くなりそうだから」
「あ!でも、泰仁って本当に僕のこと好きだと思う!?愛してくれてると思う!?泰仁が僕の告白にOK出したこと未だに疑問なんだよね」
「……なぁ、それ、本気で言ってる?」
トラは呆れたように僕を見る。
「え?どれのこと?」
「最初の二つ。最後のは美琴も分からないのに俺が分かる訳ない」
そう言って再び深いため息を吐いたのだった。
トラは深いため息を吐いた後、再び医学書を手に取る。
「ちょっ!今日は読まないでってば!」
そういって慌ててトラから医学書を取り上げた。
「いや、正直、本当にどうでもいい悩みで帰りたい。俺だって暇じゃないし」
「僕にとってはどうでも良くないの!」
「……美琴の悩みって女々しい」
「はぁっ!?トラの悩みだって女々しいよ!」
「……とにかくさ、美琴は泰仁と別れる気ないんだろ?なら、それでいいじゃん。泰仁だって美琴と別れるつもりないだろうし。不安なら聞いた方がいいと思うけど?」
「~~っ!仕事も恋も上手くいってる大虎には僕の気持ちは分かんないんだろうね!」
僕のその言葉に持っていた缶に力を入れギロッと睨んでくるトラ。
いつもなら全然平気なのに何故かその目に恐怖を感じた。
「……あぁ、分かんねぇよ?でも、だからってお前も俺の気持ちは理解できねぇだろ?喧嘩売ってんのか?」
トラの口調がいつもより荒い。
本気で怒っているときのトラの特徴。
この状態のトラは加減をしないから怖い。
ここは素直に謝っておいた方が得策かな……
そう思って口を開こうとした瞬間、家のドアが開く音がする。
「ただいまー……あれ?美琴、トラでも呼んだのか?」
そういって顔を出す泰仁。
僕とトラを見ると険悪な雰囲気を感じ取ったのか泰仁は少し考えた後、僕たちの間に座り再び口を開いた。
「俺だけ仲間外れにして喧嘩すんな!」
「は?」
「はぁ?」
「いいか?俺がどっちかと喧嘩してもどっちかが間に入って仲直りさせてくれるけどな!お前ら二人が喧嘩したら俺は馬鹿だから仲直りさせられない!だって、お前らの喧嘩、俺には高度すぎんだよ!数学の問題の公式はどっちの方が解きやすいとかこういう病気にはこっちの処置の方がいいだとか……俺にも分かる内容で喧嘩してくれ!それなら取り持てる!そうじゃない喧嘩ならすぐに仲直りしてくれ!」
泰仁のその言葉に僕もトラも呆れて言葉が出ない。
すると、泰仁はトラが飲んでいた缶チューハイに目を向け大声を出す。
「あーっ!!トラ!お前!それ!俺の酒!!勝手に飲むなよ!!楽しみにしてたのに!!」
「あー……悪い?じゃあ、残り返す。これ、不味い」
「何で疑問形!?しかも、不味いって!!そんなもん返すな!!」
「あー嘘嘘。スゴク美味シカッタヨ。ダカラ、ドーゾ」
「マジか!ありがとう!……って、クソ不味い!!騙しやがったな!?」
その反応に思わず僕は噴き出した。
「ぷっ……あははっ!美味しいって絶対嘘だったでしょ!何で信じるかな!本当、泰仁ってバカ!」
僕が笑うとトラも泰仁も笑う。
「……まぁ、泰仁が馬鹿なのは今に始まったことじゃないし。愛され馬鹿って奴かな。騙され易いのは直した方がいいけどね」
「えっ!?俺って愛されちゃってる?トラも俺のこと愛しちゃってる感じ?」
「バーカ。泰仁なんか愛してねぇっつーの。本当、お気楽な脳みそしてるな。羨ましいよ」
「美琴!聞いたか!?今、トラが俺のこと羨ましいって!」
「ちょっと、何喜んでんの。馬鹿にされてたでしょ?本当、都合の良いところしか聞かないんだから」
「いーや!今のトラのセリフはいい意味だ!俺はそう信じる!なぁ、トラ!そうだろ?」
泰仁がそう問いかけるとトラは肩をすくめて口を開いた。
「好きに解釈すれば?」
「じゃあ、そうする!」
「あぁ、そうだ。泰仁」
「ん?何だ?」
「泰仁って子ども好きじゃん」
「あぁ、好きだぜ?それがどうした?」
「将来的には自分の子どもほしい訳?」
「ちょっ!トラ!?」
「んー……そうだなぁ……」
泰仁の答えをドキドキしながら待ちつつ、心の中でトラを恨む。
何てこと聞くんだ!
ほしいなんて言われたらどうしたら良い訳!?
不安で押し潰されそうになりながら二人に見えないようにギュッと拳を握った。
心臓の音がどんどん大きくなる。
しばらくしてやっと泰仁が口を開いた。
「ほしくないって言ったら嘘になるけどさ、俺は美琴とトラと俺の三人でずっとこんな風に仲良くいられたら今はそれでいいんだ」
「はぁ?何で俺まで?そこは美琴と二人でいいじゃん」
「そりゃあ、一番大事なのは美琴だけどトラも美琴に負けないくらい俺の中じゃ大事な友達だからさ、ずっと三人でいたいんだよ、俺は。あぁ!栗山さんが一緒でもいいぞ!」
「……ライバルがトラだとは思わなかった」
「ライバルじゃないから。美琴、医学書返して。悩み解決したでしょ。帰る」
「……トラ、実は嬉しいでしょ?」
「別に。ほら、早く返せよ」
「はいはい」
そう言って僕はトラに医学書を返す。
受け取ったらトラは早々に立ち上がり帰ろうとすると泰仁が腕を掴み止めた。
トラはそんな泰仁を軽く睨みながら足を止める。
「何?帰りたいんだけど」
「美琴が何に悩んでたかは知らねぇけどありがとな。あと、前から気になってたんだけど、いつ、栗山さんと結婚すんの?」
「っ……うるさいな、タイミングっていうのがあんだよ。そもそも泰仁に関係ないだろ」
「子どもほしいなら早く結婚しとけって言いたかっただけだ。デキ婚が悪いとは言わねぇけどあんまりいい印象もねぇだろ?」
「あーはいはい。分かったから、離せって」
「本当に分かってるのか~?トラは慎重すぎるんだよなぁ」
「慎重にもなるだろ。これからの人生を俺にくれとか……そう簡単に言えるか」
「何で?言えばいいだろ?栗山さんなら即OKだろうしさ」
「………………と………………………………よ」
トラの言葉が聞き取れず思わず聞き返した。
「え?」
「悪い、トラ。聞き取れなかった。今、何て言った?」
すると、トラはニッと笑いながら答える。
「そういう美琴と泰仁だって俺のこと言えねぇだろって言ったんだよ。結婚云々は俺の心配より自分たちの心配しろよなー」
「よ、余計なお世話だ!」
「そう、それ。俺もその言葉そっくりそのまま返す。じゃあな。久しぶりに昔に戻ったみたいでそこそこ楽しかったよ」
そう言いながら靴を履いてドアに手をかけるトラ。
しかし、何かを思い出したかのように振り返る。
その行動に首を傾げると泰仁と僕に構う様子もなく口を開いた。
「あぁ、でも、その手の相談を俺にも莉恵さんにも持ちかけるなよ?どうでもいいから。けど、たまには莉恵さんを気分転換に誘ってやって。俺に俺の話はできないだろうし永江さんも俺のこと嫌ってるから気を遣ってしてないだろうからさ。余計なこと話したらただじゃおかねぇけど。それじゃあ、今度こそ帰る。じゃあな」
そういってトラは僕たちの返事も聞かずに出て行く。
いつもなら二人きりの邪魔すんなとか言うくせに……
まぁ、トラがそういうならたまにくらい誘うけどさ。
何となく違和感を覚えながらも今度聞きなおせば良いやと部屋に戻った。
しかし、その日を境にトラとはすれ違いばかりなのか会う機会がなくなり、連絡も取れなくなる。
それからさらに数日がすぎ栗山さんから連絡が来た。
何気なく出ると衝撃の一言を聞かされる。
「『美琴さん!大虎くんがどこにいるか知りませんか!?何度電話をかけても繋がらないんです……っ!』」
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