暗黒家族の令嬢は悪役ではないので、婿入り復讐計画を受け付けません

星琴千咲

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【復讐劇篇】第二十八章 加速した時間

2801 人質の逆襲

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「……運営の目的はすでに明瞭だ!――サバイバルゲームの名のもとに、本物の殺人ゲームを俺たちにやらせるつもりだ!……退屈な富豪や変態な権力者たちのために、殺し合いゲームを作り上げているんだ!!」

コアにあるメインコントロールセンター。

黒衣の青年と青野翼あおのつばさは監視カメラ越しでイズルたちと傭兵が対峙する場面を目撃した。

傭兵たちの壮言を聞いて、青野翼は仕方なさそうに笑った。

「VRの言い訳まで作って、なるべく平和に運びたいのに、彼らはどこからそんな結論を出したのかな」

「常に陰謀を考えている人間は何を見ても陰謀ありだろう」

黒いコートの青年は軽く笑って、一言を添えた。

「陰謀があるのは否定しないけどね」

青野翼はタブレットで何かを操作したら、数枚の監視スクリーンで、たくさんの柱状グラフが並んでいた。

柱の高さや色がバラバラ、それぞれの柱の下に、対応している参加者の名前と出身の組織名がついている。

スピードが異なるが、すべての柱の高さは上昇している。

一定の高さを越えたら、柱がちらちらと光って、その参加者の能力に関する詳細数値と情報が隣に投影される。

「全体的に上昇していますが、予想通り、うまく『回復』しない人もたくさんいます。測定できるレベルまでに覚醒させるには、まだまだ刺激が必要と思います」

青野翼は黒いコートの青年に説明した。

「予定外だけど、あの傭兵たちは役に立つと思います。放っといても問題ないでしょうか」

「そうしよう」

黒いコートの青年はグラフに一目をやって、左手で頬を支え、右手の五本指を自分の正面で開けた。

すると、一輪の半透明な時計の円盤が掌の先に現れた。

「それでも、かなり時間がかかりそうだな。俺たちの陰謀を期待している人たちのためにも、クライマックスを早く上演させよう」

青年の体から金色の光が浮かびあがって、半透明の時計に繋がる。

金色の光が糸のように時計の針に纏うと、針は数倍のスピードで進んだ。



***

一方、イズルたちと傭兵たちの対峙も進行中だ。

「オレの命を買う人?誰?」

イズルは眉をひそめる。

「教えるわけがねぇだろ!このバカ!」

三人の傭兵はイズルを嘲笑った。

「もしかしたら、ホカゲっていう万代よろずよ家の人?」

イズルは軽く口元を上げて、自分で答えを出した。

「!?」

傭兵たちの驚いた顔から、それが正解だとイズルは分かった。

「お前たちの目標が奇愛きあからオレになったのは今さきのことだ。オレに接点があって、この場でお前たちに注文を出せる人は、あのホカゲしかいない。こんな簡単なことを隠せると思ったものこそバカだ」

イズルは笑って、傭兵たちに言い返した。

理に適う推論だけど、リカは納得できなかった。

でも、今はそんなことを弁明する場合じゃない。

バカにされた傭兵たちはその怒りを奇愛にぶつかろうとした。

トールはダガーの先を気絶した奇愛の頸に向けた。

「チクショウ!ネズミ野郎のくせに調子に乗るな!このガキやあの女たちの命が惜しいなら、お前自身の命を捧げろ!」

突然に、トールが握ているダガーはピカッと金色に煌めいた。

「っ!そのダガーの色が変わったみたい」

リカは小さい声でイズルと緑縁にリマインドした。

「確かに、先ほどは白だったわ。異能力が発動したのかもしれない……」

緑縁の目の中で、トールの殺気・身の回りの赤い霧が更に燃え上がった。

三人の傭兵の視線はイズルたちに置かれているのか、まだ誰もダガーの変化に気付いていない。

「異能力だったら、オレが喰ってやればいいけど、あいつらは本物傭兵だ。本番で戦って勝つのは無理だろう。奇襲をかけなければ……奇愛はちょっとした傷で死なない、あいつもそろそろ来ると思う。少し時間稼ぎをしよう」

イズルたちは小さい声で作戦を伝えている間に、傭兵たちはもう待ちきれなく、もう一度叫んだ。

「さっさと決めろ!お前のせいでほかのものはどうなってもいいのか!?」

イズルの代わりに、緑縁りょくえんは傭兵たちに呼びかけた。

「あの、お金で解決させていただけませんか?身代金でいいなら、うちはかなり出せますよ」

その交渉を聞いて、奇愛を抑えている二人の傭兵が騒ぎ出した。

「侮辱する気か!俺たちはプロだぜ!依頼主を裏切るようなことはしねぇ!」

「たかが小娘が大口叩きやがって!!いくら出せるんだ!?」

「そうだ、俺たちは……っ!こら!アドゥーー!!」

細長い傭兵の話の内容に気付いたら、トール思いきり彼を叱った。

緊張な雰囲気が一瞬崩れた。

イズルは我慢できず笑い声を噴出した。

「奇愛のことなら、勝手にすればいい」

「なんだと!?」

その答えは傭兵たちの予想外のものだった。

「お前たちも見ただろ。彼女はオレを敵視している。なんでオレは自分に敵意を持つもののために自分の捧げなければならないんだ」

「嘘だ!お前たちの家は昔からの親交だ。このガキと婚約まで進んだんじゃないか!」

「婚約?なんの話……!」

一瞬おかしいと思ったが、イズルはすぐに心当りがあった。

かなり前に、エンジェを騙すために、奇愛と一緒にウェディングのモデルになる発表があった。二人が婚約するじゃないかとエンジェたちに匂わせるための仕掛けだった。

でも、奇愛の抵抗とエンジェの消滅でモデルの件は中止となった。

そんなあやふやなことも知っているということは、傭兵たちに依頼した人は自分のことを調べていたのだろう。

でもあのホカゲは昨日まで自分のことを知らなかったはず……

その依頼の後ろに、ホカゲ以外の誰かが存在するかもしれない。

疑いを口を出さずに、イズルはいかにも不真面目な口調で傭兵たちに言い返した。

「たとえ婚約があっても、今の流行りは『婚約破棄』だ。まして、そんなものは最初からない」

「!!」

「正直、あの小娘はウザすぎる。お前たちがやらなくても、いずれオレが殺してやるかもしれない。ここでやってくれれば大変ありがたい」

「!?!」

「それに、お前たちは参加者を皆殺しするつもりだろ?ここにいる人たちはどうなってもオレのせいじゃないんだ。傭兵なら戦うことに専念しよう、脅迫に向いていない」

「!?!?!」

連続に反発を喰らって、もともと話術に長けていない傭兵たちはもう返せる言葉を思いつかない。

「こ、このぉぉ……!!血を見せないと分からないみたいだな!」

トールはダガーの先を奇愛の顔に向けて、傷をつけようとしたその瞬間。

「誰が、こいつと婚約するって……?」

「!!」

気絶したはずの奇愛はいきなり喋り出した。

両腕が抑えられているが、足がまだ動ける。奇愛は強力キックでもう一度、トールの肝心な部位を攻撃した。

「がぁぁぁ!!」

この一撃はライフルの一撃より遥か激しい痛みをトールに与えた。

「リカ!」

「うん!」

イズルはリカに一目をやって、二人が一緒に傭兵たちに駆け出し、それぞれ左右で奇愛を抑えている傭兵を叩き込んだ。

自由になった奇愛はトールを地に叩きつけて、その体に座った。

「あたしはね、馬鹿イズルを誘き出すために気絶のふりをしただけだったのよ!黙っていたら、お前たちが喋り放題!あたしのああだのこうだの、もう許さないわ!」

奇愛はダガーを拾って、トールの鼻先で素手で二つに折った。

「っ!!ばっ、化け物ぉ……!!」

戦場帰りのトールもこの人間離れの技に呆気にとられた。

「一回だけチャンスをやるわ!あたしの配下になって一緒に馬鹿イズル倒すのか、あたしに倒されるのか、さっさと選べ!」

「……な、なんだと!?お、お前……っ!!」

奇愛は方手でトールの胸を押さえて、片手を拳に握ってトールの鼻の上に置いた。

奇愛より三、四輪もデカいトールはまったく身動きを取れない。

こんな小さな少女は何処からこれほどの力がでたのか、トールは思考する余裕もなく、ただ反撃一心に力を絞った。

「三、二……」

トールは手足でもがいたら、一本の木の枝を掴んだ。

「チクショウ!!舐めやがってぇぇ!!」



メインコントロールセンター。

監視スクリーンで、トールの異能力値を表す曲線が凄まじい勢いで急上昇した。



木の枝が金属質の光を放った。

トールは容赦なく、その枝を奇愛の頭に刺さす。

「奇愛ちゃん!」

最初に気づいた緑縁だけど、それを止める術がない。

「ぎゃ――!!」

奇愛は悲鳴を上げて、頭を押さえて倒れた。

トールはさっそく立ち上がって、金色になった木の枝をもう一度奇愛に刺そうとする。

「やっぱり貴様を最初に生贄にすべきだぁぁ!!」

イズルとリカはそれぞれ傭兵を離して、救援に行こうとしたが、彼たちの距離では間に合わない。

その時――

「奇愛!!」

大地が一度ブルと揺れて、とある人影は弾丸のような猛スピードで駆けてきて、トールを飛ばした。

「大丈夫か!奇愛!」

「……」

奇愛を救ったのは顔に傷跡の男だった。
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