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夜の街
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「明日絶対筋肉痛になるな」
両手に袋に、前が見えないほど大きな紙袋を持って夜の街を歩いていた。
店までたどり着いて良かったけど、これを届けたら倒れる自信しかない。
でも、明日も仕事あるかもと考えると筋肉痛とか言ってられない。
衣食住で置いてもらってる身だからな、自己流でマッサージを覚えておこう。
紙袋の横から前を見ながら慎重に歩く。
外灯の影が大きく伸びていて、少し怖く感じた。
この時間に出歩いている人がほとんどいないからかな、物悲しさがある。
早く帰ろう、あまり遅くなるとカノンさんが心配してしまう。
歩いていると、俺の他にもう1人前にいる人が見えた。
暗がりでは誰か分からなかったが、外灯によりその姿がはっきりとした。
兵舎で別れたルイスが1人で歩いていて、俺には気付いていない様子だった。
紙袋で顔が見えないからさすがに分からないよな。
声を掛けるのは馴れ馴れしいかな、相手は騎士団長様だし…
でも、ここで会ったならせめて挨拶くらいはしたい。
きゅーちゃんと呼びたかったが、何処で誰がいるか分からない。
「ルイス様!」
俺が声を掛けるとルイスがこちらを振り返った。
その瞬間、後ろからなにかに押された感じがして荷物を全て地面に落とした。
俺の目の前には慌ててこちらに走ってくるルイスの姿が見えた。
俺もルイスのところに行きたいのに、体が動かない。
なにが起きたのか、自分でも理解出来なかった。
じんわりと肩が熱を持ち、なにかが引き抜かれて激痛に顔を歪ませた。
肩を押さえると、手の隙間から血が溢れて止まらない。
後ろを見ると、赤く染まった影が具現化したように針になって出てきていた。
まさか、これは影に擬態している魔物だったのか。
街の中に魔物が潜んでいるなんて、油断していた。
すぐにルイスにより、影は斬られて針が消えて普通の影が残った。
「うっ、いっつ…」
「少し我慢してくれ、治療する」
ルイスはそう言って、俺の服のボタンを半分外して肩を露わにさせた。
息を呑むのが分かり、酷い状態なんだと目を逸らした。
ルイスは俺の傷口に顔を近付けて、ゆっくりと舐めた。
漫画でも治療のためにベアトリスに似たような事をしていた。
しかし、あの時は口付けをして治していた。
それに、誰にでもそうするわけではなく愛しい人にしかしないと言っていなかったか?
舐められたら痛いと思ったが、温かくて痛みも引いていく。
痛みが和らいでも、流れた血が戻ってくるわけではなく、頭がボーッとする。
「ルイス、もう大丈夫だから…汚いよ」
ルイスの肩に触れて、初めてその異変に気付いた。
口元を押さえて息が荒くて、苦しそうに小さく呻き声を上げていた。
ルイスも何処か怪我をしたのか?どうしよう、早く医務室に連れて行かないと…
ルイスは人を治療出来るが、自分自身の治療が出来ない。
顔色を伺おうと髪に触れると、真っ黒な髪の色を失い銀色の髪に変わっていた。
本来の姿の白銀の龍…その姿を思い出させる容姿だった。
俺の腕を掴む手にゆっくりと力を込められる。
痛みに顔を歪ませるが、振り払う気はない。
「ルイス、何処か痛いのか?」
「力が、溢れて制御…出来な…」
「どうすれば…」
ルイスの力、どうやれば落ち着くのか分からない。
こんな事、漫画ではなかったし…ルイスのこの姿も俺は知らない。
俺は、ルイスを抱きしめる事しか出来なかった。
目の前を見ると、ルイスの後ろの影がいつの間にか集まって大きくなっていた。
まさか、まだ魔物がいたのか…しかも集合体のように大きくなっている。
腰に下げていた短剣を掴んで、初めて鞘を抜いた。
俺がルイスを守らないと、手を震わせながら魔物に向かって構える。
大きな魔物は体を無数の針に変えていて、防ぐ事が出来なかった。
逃げる体力もない今、こんなのどう戦えばいいんだ。
短剣を地面に落として、ルイスを庇うように覆い被さる。
ルイスは顔を上げて、碧色の瞳が血のように真っ赤に染まっていた。
自分の剣を撫でると、血が流れて剣を染め上げた。
そのまま後ろを見ずに、剣を地面に突き立てて俺に顔を近付けた。
俺の視界には、さっきよりも濃い赤に染まり灰のように散らばる黒いものと、唇に触れる柔らかい感触が残った。
あれ、なんで俺はルイスとキスをしているんだろう。
唇はすぐに離れて、体が見えない重力で重くなった。
立っていられないほど押し潰されそうな重力の後、体を吹き飛ばすほど強い突風に体が浮いた。
腰をルイスに支えられて、それ以上飛んでいく事はなかった。
口の端に付いた血をゆっくりと舐めて、笑みを浮かべていた。
この人は、本当に俺の知っているルイス・アイズか?
なにが起きたのか、何一つ理解が追いつかない。
髪色と瞳の色が変わるだけでこんなに雰囲気が変わるのか。
突風が止んでも、重苦しい空気はまだあった。
後ろにいた影の魔物はもう何処にもいなかった。
ルイスが強くなるのは物語の終盤、それを踏まえても今のルイスの力は圧倒的だ。
俺を治療していたらルイスが苦しみ出した。
俺の、血のせい?
ルイスの腕が俺に伸ばされて、驚いて肩をびくつかせた。
「この傷…」
「え、あっ…」
両手に袋に、前が見えないほど大きな紙袋を持って夜の街を歩いていた。
店までたどり着いて良かったけど、これを届けたら倒れる自信しかない。
でも、明日も仕事あるかもと考えると筋肉痛とか言ってられない。
衣食住で置いてもらってる身だからな、自己流でマッサージを覚えておこう。
紙袋の横から前を見ながら慎重に歩く。
外灯の影が大きく伸びていて、少し怖く感じた。
この時間に出歩いている人がほとんどいないからかな、物悲しさがある。
早く帰ろう、あまり遅くなるとカノンさんが心配してしまう。
歩いていると、俺の他にもう1人前にいる人が見えた。
暗がりでは誰か分からなかったが、外灯によりその姿がはっきりとした。
兵舎で別れたルイスが1人で歩いていて、俺には気付いていない様子だった。
紙袋で顔が見えないからさすがに分からないよな。
声を掛けるのは馴れ馴れしいかな、相手は騎士団長様だし…
でも、ここで会ったならせめて挨拶くらいはしたい。
きゅーちゃんと呼びたかったが、何処で誰がいるか分からない。
「ルイス様!」
俺が声を掛けるとルイスがこちらを振り返った。
その瞬間、後ろからなにかに押された感じがして荷物を全て地面に落とした。
俺の目の前には慌ててこちらに走ってくるルイスの姿が見えた。
俺もルイスのところに行きたいのに、体が動かない。
なにが起きたのか、自分でも理解出来なかった。
じんわりと肩が熱を持ち、なにかが引き抜かれて激痛に顔を歪ませた。
肩を押さえると、手の隙間から血が溢れて止まらない。
後ろを見ると、赤く染まった影が具現化したように針になって出てきていた。
まさか、これは影に擬態している魔物だったのか。
街の中に魔物が潜んでいるなんて、油断していた。
すぐにルイスにより、影は斬られて針が消えて普通の影が残った。
「うっ、いっつ…」
「少し我慢してくれ、治療する」
ルイスはそう言って、俺の服のボタンを半分外して肩を露わにさせた。
息を呑むのが分かり、酷い状態なんだと目を逸らした。
ルイスは俺の傷口に顔を近付けて、ゆっくりと舐めた。
漫画でも治療のためにベアトリスに似たような事をしていた。
しかし、あの時は口付けをして治していた。
それに、誰にでもそうするわけではなく愛しい人にしかしないと言っていなかったか?
舐められたら痛いと思ったが、温かくて痛みも引いていく。
痛みが和らいでも、流れた血が戻ってくるわけではなく、頭がボーッとする。
「ルイス、もう大丈夫だから…汚いよ」
ルイスの肩に触れて、初めてその異変に気付いた。
口元を押さえて息が荒くて、苦しそうに小さく呻き声を上げていた。
ルイスも何処か怪我をしたのか?どうしよう、早く医務室に連れて行かないと…
ルイスは人を治療出来るが、自分自身の治療が出来ない。
顔色を伺おうと髪に触れると、真っ黒な髪の色を失い銀色の髪に変わっていた。
本来の姿の白銀の龍…その姿を思い出させる容姿だった。
俺の腕を掴む手にゆっくりと力を込められる。
痛みに顔を歪ませるが、振り払う気はない。
「ルイス、何処か痛いのか?」
「力が、溢れて制御…出来な…」
「どうすれば…」
ルイスの力、どうやれば落ち着くのか分からない。
こんな事、漫画ではなかったし…ルイスのこの姿も俺は知らない。
俺は、ルイスを抱きしめる事しか出来なかった。
目の前を見ると、ルイスの後ろの影がいつの間にか集まって大きくなっていた。
まさか、まだ魔物がいたのか…しかも集合体のように大きくなっている。
腰に下げていた短剣を掴んで、初めて鞘を抜いた。
俺がルイスを守らないと、手を震わせながら魔物に向かって構える。
大きな魔物は体を無数の針に変えていて、防ぐ事が出来なかった。
逃げる体力もない今、こんなのどう戦えばいいんだ。
短剣を地面に落として、ルイスを庇うように覆い被さる。
ルイスは顔を上げて、碧色の瞳が血のように真っ赤に染まっていた。
自分の剣を撫でると、血が流れて剣を染め上げた。
そのまま後ろを見ずに、剣を地面に突き立てて俺に顔を近付けた。
俺の視界には、さっきよりも濃い赤に染まり灰のように散らばる黒いものと、唇に触れる柔らかい感触が残った。
あれ、なんで俺はルイスとキスをしているんだろう。
唇はすぐに離れて、体が見えない重力で重くなった。
立っていられないほど押し潰されそうな重力の後、体を吹き飛ばすほど強い突風に体が浮いた。
腰をルイスに支えられて、それ以上飛んでいく事はなかった。
口の端に付いた血をゆっくりと舐めて、笑みを浮かべていた。
この人は、本当に俺の知っているルイス・アイズか?
なにが起きたのか、何一つ理解が追いつかない。
髪色と瞳の色が変わるだけでこんなに雰囲気が変わるのか。
突風が止んでも、重苦しい空気はまだあった。
後ろにいた影の魔物はもう何処にもいなかった。
ルイスが強くなるのは物語の終盤、それを踏まえても今のルイスの力は圧倒的だ。
俺を治療していたらルイスが苦しみ出した。
俺の、血のせい?
ルイスの腕が俺に伸ばされて、驚いて肩をびくつかせた。
「この傷…」
「え、あっ…」
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