パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

文字の大きさ
127 / 130

127.本気の手加減

しおりを挟む

「……」

 俺はグレス、ルベック、ラキルの猛攻を回避しつつも、バニルたちがどうなっているか確認する余裕もあった。

 相変わらずスピカが先頭に立って大ボス――ファーストガーディアン――と対峙する中、バニルの指示でミルウとルシアが的確にスピカをサポートしているのがわかる。あれなら、少し動きの質が落ちてきたとしても持ち応えることができるはずだ……っと、こっちにも集中しないとな。

 人間ってのは、勝利を確信したときが一番危険だと感じている。あくまでも用心深く現状を分析するべきだ。グレスは当初一番強いと感じていたが、ここに来て評価がガラリと変わった。固有能力頼りで喧嘩慣れしてないのが伝わってくるんだ。

 それに比べて、ルベックとラキルは動きの質が初めの頃よりは落ちているもののそこまで変わってないし、虎視眈々とこちらの隙を窺っているような、そんな危険な臭いがした。とはいえ、こっちが優勢なのに変わりはないし、一気に終わらせるつもりもない。

 俺は左手を《ハンドクラブ》に変えると、今やたまにしかされない《神授眼》の効果が切れてすぐ、掴みかかってくる相手の勢いを利用して、ちょうどすれ違う恰好でグレスの顔に当ててやった。《神授眼》はこっちから攻撃しようとすることでも発動するが、偶然を利用した攻撃に対しては適用されなかったようだ。

「うぶぉっ!?」

 元々軟弱な体のせいか、無様に地面を転がっていくグレス。やがて起き上がるも、前歯が何本も折れている上に鼻血を出していた。これじゃ王様の威厳が台無しだな……。

「お……おにょれえええぇぇえええっ!」

【聖蛇化】して襲い掛かってきたが、今まで通り回避に徹するのみだ。この姿になるとスピードもパワーも桁外れに上昇するため、【悪魔化】したラキルや《電光石火》を使ったルベック同様、こちらからは下手に手を出さないようにしている。

「――次はお前だっ!」

「いっ……? うがあっ!」

 敵が全員素の状態に戻り次第、まずルベックの顔面に張り手スキル――《エアクラップ》――を使用してから、時間差で右手を鈍器に変えた《ハンドクラブ》で右足の膝を思いっ切り叩いてやると、やつは目を剥いて崩れ落ちるようにして倒れ込んだ。結構いい音が鳴ってたし、最低でもひびは入ったはずだ。

「ル、ルベック!?」

「……」

 へえ……ラキルのやつ、悪魔のくせに仲間の心配をしてるのか。真のクズ同士ということで気が合うに違いない。それなら仲良く転んでもらおう。

「ぎひっ!?」

 ラキルの腹に《ハンドクラブ》がめり込み、ゲロを撒き散らしながら倒れ込む。汚いなあ……。

「――グォ……ゴミセクトぉぉ……!」

「――ク、ク、クソセクト……!」

「――ゴ……ゴ、ゴミムシイィィイッ!」

 グレス、ルベック、ラキルはそれでも向かってきた。絶対に簡単には死なせてなるものかと全力で手加減しているこっちの苦労も知らずに。もちろん、油断は大敵なので手加減しつつも集中しているつもりだが。

「「「うがあぁっ!」」」

 こいつら、重なり合うようにして倒れ込んだかと思いきや、少し経ってまた一斉に起き上がって攻めてくるので、あきらめの悪さや呼吸の良さに笑いが込み上げてきそうになるが、我慢だ……。

「――ププッ……」

 ダメだ。やはり笑いが漏れてしまう。何せ、やつらの顔が一様にパンパンに腫れ上がっていて、さらに人相が悪くなっちゃってるからな。

「……う、うごぉ……あ、あ、あとは任せたぁぁ……」

 とうとうグレスが離脱してしまった。《忠節》なんて使ってないのに四つん這いになって、どこに行くのかと思いきや、不細工のカチュアのところだった。

「……カチュアぁぁ……もう……ダメ、だぁ……一緒に……死――」

「――はあぁ? 死ぬなら一人で死になさいよねぇぇ、このキモ男があぁっ!」

「ぶぼっ……?」

「……」

 カチュアが放った水とともに、怒りのキックがグレスの顔面にめり込んでる。

 体力や精神力を奪うカチュアの派生スキル《犠牲》がとどめになり、とうとう《神授眼》を使える気力さえなくなったようだ。本人はそう思ってなかったのか隙だらけだったもんだからクリティカルヒットが決まったんだろうな。今の一撃で気を失ったようだ。ひとまずこいつは後回しにするか……。

 さて、あとはルベックとラキルの二人しか戦えそうなのは残ってないわけだが、こっちはさすがにしつこく食い下がってくる。まだまだ楽しませてくれるようだな。だが……そろそろ終わりだ。

「「ぶぎっ!」」

 ラキルとルベックの声と体が仲良く重なり、ともに地面に這いつくばる形になる。

 ……ん? 全然立ち上がらないな。もしかして気を失ったのか。それとも、まさか……二人とも死んだ……? ピクリとも体が動いてないような……。

「おーい――」

「――クソセクトオオッ!」

「――ゴミムシイイィッ!」

「なっ……?」

 俺が覗き込もうとしたら、やつらは立ち上がると同時に飛び掛かってきた。しまった、罠だ。ルベックもラキルも死んだ振りをしていたんだ……。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

処理中です...